"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

医学の趣味人"Med-Hobbyist"のブログへようこそ。医学に関連する「なぜ」・「なに」といった好奇心を大切にする場所として、体験・読書をシェアする場所として、過去の失敗談やヒヤリを棚卸する場所として、傷を舐め合う場所ではなく何かヒントを得られるような場所にしたいと思います。少しでもお役に立てば幸いです。

気管支肺胞洗浄液による起炎菌検索|肺炎×BALFと鑑別疾患

気管支肺胞洗浄液による起炎菌検索

~肺炎×BALFによる鑑別疾患~

 

<目次>

 

 気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar: BALF)による肺炎の起炎菌検索を目にしました。BALFに至るまでの喀痰培養ではGeckler分類にてグループ1やグループ6といった喀痰で、BALFがもっとも役立ちそうな印象を受け、BALFによる起炎菌検索に興味を持ったので詳しく深堀りしてみます。

 

1.喀痰の評価

 まずは、「Gecklerって何?」という辺りの喀痰の評価から簡単に復習します。良質な喀痰が採取できれば、グラム染色でも起炎菌の推定に役立ちます。肉眼的な喀痰の質の評価がMiller &Jones分類顕微鏡による喀痰の質の評価がGeckler分類になります。

 

Miller &Jones分類

M1: 唾液、膿を含まない純粋な粘液痰

M2: 粘液痰の中に膿性痰が少量含まれる

P1: 膿性痰で、膿性部分が全体の1/3以下

P2: 膿性痰で、膿性部分が全体の1/3~2/3

P3: 膿性痰で、膿性部分が全体の2/3以上

 

Geckler分類

(顕微鏡の1視野あたりの細胞数、100倍)

・グループ1: 白血球数<10, 扁平上皮>25

・グループ2: 白血球数10~25, 扁平上皮>25

・グループ3: 白血球数>25, 扁平上皮>25

・グループ4: 白血球数>25, 扁平上皮10~25

・グループ5: 白血球数>25, 扁平上皮<10

・グループ6: 白血球数<25, 扁平上皮<25

 

(出典)イヤーノート2020

 

 ここぐらいまではイヤーノートなので学生のうちに知っている人も多そうです。だいたいどの喀痰が良いのかも聞いたことがある人がいると思います。実際にどのような喀痰が検査に適するかも気になるところです。

 

 膿性部分が含まれるP1~P3が細菌検査に適します。

 白血球が多くて上皮細胞が少ないものが「良質な痰」となります。Geckler1~2の喀痰は質がよくないので培養に適しません。Geckler3以上であれば培養に出しますが、成人の市中肺炎ではGeckler分類の4あるいは5の検体が培養に適しているとされます。

 

(出典)『レジデントのための呼吸器診療最適解』, 中島啓, 2021

 

 なので、さきほどのGeckler1や6でしたら、喀痰としては培養に適していないようです。もちろん、そこから培養もされていましたが、BALによる細菌検査も有効かなと考えました。BALの役割を深堀りしてみたいと思います。

 

 

2.気管支肺胞洗浄(BAL)の役割 ~起炎菌診断

 調べてみたところ、BALの役割は大きく2つあるようです。

 

気管支肺胞洗浄(BAL)の役割

感染性肺疾患の起炎菌検索(感染症の除外を含む)

非感染性肺疾患の診断

 

BALが有用な疾患

<感染性肺疾患> 

疾患

診断の参考になる項目

細菌性肺炎

(特に院内肺炎)

好中球上昇

定量培養で10^4 CFU/uL以上

抗酸菌感染症

結核菌、非結核性抗酸菌の検出

ニューモシスチス肺炎

ディフクイック染色、PCR

サイトメガロ肺炎

核内封入体の証明、シェルバイアル法



<非感染性肺疾患>

特発性器質化肺炎

相細胞数増加、リンパ球上昇、CD4/CD8 低値(組織生検も必要)

好酸球性肺炎

好酸球上昇

急性過敏性肺炎

リンパ球上昇、CD4/CD8 低値

サルコイドーシス

総細胞数増加、リンパ球上昇、CD4/CD8 高値

膠原病間質性肺炎

リンパ球上昇

薬剤性肺炎

リンパ球上昇、好酸球上昇

肺胞出血

徐々に濃くなる血性のBALF、細胞診でヘモジデリン貪食マクロファージ検出

肺胞蛋白症

米のとぎ汁様のBALF

アスベスト

BALF中のアスベスト小体検出

 

(出典)『レジデントのための呼吸器診療最適解』, 中島啓, 2021

 

 今回は難治性の細菌性肺炎を疑われている症例であったので、BALとそこから得られる細菌検査とその感受性がこの先の治療方針に役立ちそうです。

 気管支肺胞洗浄(BAL)ということで、そもそも呼吸器についてある程度以上詳しく検査をしたところでBALということになると思います。BALだけでなく、それまでの他の所見も参考になることが大いにあると思いますが、BAL起炎菌検索や鑑別に参考になると知ることができました。

 そもそも、非感染性疾患が疑われている場合を含め、感染症でないという可能性もありそうですね。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

眼振の分類と原因・鑑別|垂直性眼振は中枢性!?

眼振の分類と原因・鑑別

~垂直性眼振は中枢性!?~ 

 

<目次>

 

 先日の勉強会のカンファレンスにて、垂直性眼振(vertical nystagmus)で中枢性の原因を疑い、まさかの最後は傍腫瘍性神経症候群による垂直性眼振でした。
 めまい診療等でも重要ですが、眼振原因鑑別疾患について深堀してみたいと思います。

 

1.眼振の定義・分類

 まずは、眼振の定義からチェックしています。

 眼振とは不随意的に振れ動く眼球の往復運動のことである。
(出典)マクギーのフィジカル診断学 原著第4版

 

 この項目における眼振の分類等が改めて新鮮でしたので、紹介します。

 眼振には先天性によるものと後天性によるものがあり、両眼性もしくは単眼性に認められる。両眼性の眼振は、両眼がそれぞれが同じ動きをする協同型(conjugate)と、両眼が異なった動きをする解離型(dissociated)がある。眼振は、行き来する運動の速さとリズムが一定である振り子様(pendular)と、一方向には遅く逆方向に速い律動性(rhythmic)の場合がある(律動性の眼振は通常、衝動性眼振とよばれる)。衝動性眼振は、その速く動く方向で命名される(例:右衝動性協同眼振)。また、眼振には水平性、垂直性、および回転性がある。
(出典)マクギーのフィジカル診断学 原著第4版

 

 最後の水平性眼振、垂直性眼振、回転性眼振という分類は国家試験までにも耳にすると思います。一方で、その手前の記述部分(共同型、解離型など)は、しっかり使ったというような記憶はありません。

 

 今回は垂直性眼振ということで中枢性の原因が疑われましたが、眼振の分類だけみても当てにならないので、実際に鑑別に使えるような情報を集めてみたいと思います。

 


2.垂直性眼振は中枢性!?

眼振(中枢性めまい vs. 末梢性めまい)

分類

中枢性めまい

末梢性めまい

眼振

眼振が存在する可能性があり、水平、垂直、多方向へ任意の形態をとることがある。

・KEY POINT:自発性垂直性眼振のほとんどが中枢性病変を示唆する。

眼振が通常は存在し、多くは単方向性、水平で、非罹患方向を見たときに増悪する。

・急速相は非罹患側を向く

・中枢性めまいの眼振と異なり、完全には止められないとしても固視によってよくせうすることができる。

その他

通常、他の脳幹や小脳の所見(四肢運動失調、筋力低下、感覚変化、複視、構音障害、嚥下障害、頭痛など)を伴う。

通常、耳鳴や難聴を伴わない。

・めまいのエピソードは短期である傾向がある。

・患者が座っているか横になっている間、神経所見は正常となる。

・重度の末梢性めまいでは、歩行が非特異的なパターンで傷害される可能性がある。

 (出典)セイントとチョプラの内科診療ガイド 第3版

セイントとチョプラの内科診療ガイド 第3版

 

 末梢性による眼振の多くが単方向性、水平であることから、引き算的に垂直性眼振のほとんどは中枢性を示唆すると言うことができそうです。何となく知っていも、改めて調べると、発見がありました。「垂直性眼振だから中枢性病変」というのは、初心者にはワンステップ飛んでいるようなものだと感じました。
 垂直性眼振がみられる際に末梢性と中枢性の鑑別のポイントとなる所見もあるようです。

 

 ビデオヘッドインパルステスト(vHIT)におけるanticompensatory eye movementは特発性眼振による末梢性の眼振を示唆しうる。
(出典)Tarnutzer, Alexander A; Straumann, Dominik (2018). Nystagmus. Current Opinion in Neurology, 31(1):74-80.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 原則的には垂直性眼振の原因は中枢性でも、鑑別のコツはあるようです。しかし、一般的には中枢性の眼振が生じる状況・原因に注目しつつ、他の症候や所見等も加味することになりそうです。中枢性めまいによるものらしいということであれば、中枢性めまいの原因として“MAIN”を考えるとなりそうです。

 

中枢性めまいの原因 “MAIN”
・Multiple sclerosis: 多発性硬化症
・Acoustic neuroma or other cerebellopontine angle / brainstem tumor: 聴神経腫やその他の小脳橋角/脳幹腫瘍
・Ischemia of CNS: 中枢神経系の虚血
・Migraine or medications: 片頭痛または薬剤(抗痙攣薬など)

(出典)セイントとチョプラの内科診療ガイド 第3版

 

 この"MAIN"が覚えやすいかは人次第だと思います。ネモニクスが苦手な人にとっては、多発性硬化症に関しては思い浮かべば理解可能であり、片頭痛・薬剤性に関しては抜けないように気をつけるというように意識したいと思います。

 

 

3.眼振の分類と病変部分

 他にも眼振について調べている際に、眼振と病変部分・原因とのつながりも見つけました。下向き(下方向)眼振、上向き(上方向)眼振、顕著な注視誘発性眼振に関しては原因となる病態や部位があることをハリソン内科学で確認しました。

 

下向き眼振downbeat nystgmus
 頭蓋頸部結合部の近傍の障害(Chiari奇形、頭蓋底嵌入症)で起こる。また、脳幹や小脳の卒中、リチウムや抗痙攣薬の中毒、アルコール依存症多発性硬化症に併発することが方向されている

上向き眼振upbeat nystgmus
 脳卒中脱髄疾患、腫瘍による橋被蓋の障害に伴う

注視誘発性眼振gaze-evoked nystagmus
 多くの健常人にも、軽度の注視誘発性眼振がみられる。顕著な注視誘発性眼振は、薬物など(鎮痛薬、抗痙攣薬、アルコール)、筋不全麻痺、重症筋無力症、脱髄疾患、小脳橋角部・脳幹・小脳の障害によって引き起こされる。

(出典)ハリソン内科学 第5版


 先ほどの『マクギーのフィジカル診断学 原著第4版』ともまた異なり、教科書ごとに異なる記述項目等も興味深いものです。それにしても、眼振は奥が深く難しく、理解しきれていないと感じました。垂直性眼振、水平性眼振、回転性眼振といった眼振の方向による分類は表面をなぞったというような印象で、もっと眼振の所見を詳しく、さらに興味を持ってみてみたいと思えるようになりました。

 

 取っ掛かりにくい印象もある眼振ですが、少しでも詳しく眼振があれば、眼振を診てみようと思ってもらえたりすれば幸いです。眼振診察時の記載の仕方も調べてみたところ、サパイラで見つけました。

 

 眼振を、眼振が出現する注視方向によって記録する専門家もいれば、すばやく動く急速相の向かう方向で眼振を記録する専門家もいる。前者では正中位の眼振を表現できず、後者の方法では振子様眼振が表現できないので、症例記録には特定できる表現(例:「右方視で水平性眼振、急速相は下方」など)にすべきである。

(出典)サパイラ 身体診察のアートとサイエンス 原書第4版

 

 せっかく眼振の診察をして眼振をみつけたら、分かったことを正確に伝えたくなりますよね。難しい印象もある眼振の診察をせっかくしたなら、少しでも活かせるような形で記録して、モチベーションも保っていきたいものです。

 

 本日もお読みくださいましてありがとうございました。

 

 

Capnocytophaga canimorsus感染症の特徴を探せ

Capnocytophaga canimorsus感染症の特徴

 

<目次>

 

 Capnocytophaga canimorsus菌血症の症例と勉強会のカンファレンスで出会う機会がありました。しかし、犬猫という接触歴以外のことを基本的に知らず、Capnocytophaga canimorsus感染症(カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症特徴のようなものはないかと疑問に感じたので、深堀してみることとします。

 

1.一般的な内科学書(セシル)より  

 まずは一般的な内科書からということでセシル内科学書を調べてみました。

 

Capnocytophaga canimorsus感染症

DISEASE

INFECTIOUS AGENT

CLINICAL FINDINGS

VECTOR/ACQUISITION

化膿性皮膚感染症

C. canimorsus

敗血症、皮膚感染症

犬による咬傷

(出典)Goldman-Cecil Medicine, 25th Edition

 

 だいたい、このあたりが有名なんだなという程度や人獣共通感染症であるという辺りは分かりますが、何か診断や病原体を考える上でのヒントを「犬」以外にも探してみたいと思います。

 

 

2.感染症の専門書("マンデル")より

 続いて、感染症の教科書と言えばマンデルということで、マンデルを調べたいと思います。

 

Capnocytophaga canimorsus感染症

Epidemiology

・0.5-1.0感染/100万人年

・男性に多い(2.7-3.8:1)

・50歳以上に多い(70-90%)

・犬による咬傷歴または接触歴(60-84%)

罹患率

→無脾症(13-33%)、アルコール依存(20-31%)、免疫抑制(3-6%)、リツキシマブ、ステロイド治療


Pathogenesis and Clinical Manifestations

・Capnocytophaga属感染症のうち、人獣共通感染症にあたる

(C. canimorsusとC. cynodegmiが一般的な人獣共通感染症

・C. canimorsusは犬や猫の口腔内常在菌(犬の58-70%、猫の15-57%)

・2種類の人獣共通感染症のCapnocytophagaにおいて命を脅かすもののうち、C. canimorsusが90%を超える

・犬による咬傷のような貫通する傷口、ペットとの濃厚接触による見えない傷からの侵入

 

・潜伏期間:1-8日

 

<症状>

菌血症

・C. canimorsusによる菌血症の症状は非特異的で他のグラム陰性の病原体と同じく、発熱、下痢、腹痛、嘔吐、頭痛、意識障害といったような症状がみられる

・C. canimorsusの診断に寄与する特徴として、体幹または四肢に斑状皮疹または丘状皮疹から電撃性紫斑病のようなより重症な皮疹までみられることがある(20-40%)

・全体での致死率は13-33%

 

髄膜炎

・2番目に多い

・少なくとも96%の患者で頭痛、発熱、項部硬直、意識障害のうち2つがみられる

・致死率は3%

 

その他

・心内膜炎(致死率25%)

・脳膿瘍

仙骨硬膜膿瘍

・眼感染症

・骨感染症

・関節感染

蜂窩織炎

・糸球体腎炎

・腎不全

・肺炎



<合併症>

・播種性血管内凝固(DIC)

→脾摘または機能的に無脾症の患者ではDICを伴う敗血症に進展しやすい

・Waterhouse-Friderichsen症候群

・Stevens-Johnson症候群

血栓性血小板減少性紫斑病

・溶血性尿毒症症候群

 

(出典)Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Disease, Ninth Edition

 

 さすがは、マンデルですね。マンデルでも見つからなければ、Systematic Reviewを探してみようかと思っていました。

 犬猫との接触や咬傷以外にも、菌血症の際の皮疹体幹または四肢に斑状皮疹または丘状皮疹から電撃性紫斑病のようなより重症な皮疹)も診断・病原体を考える上でのヒントになりそうで、皮疹が見られれば特異的なのでしょう。しかし、20-40%にしかみられないことも、やはり診断を難しくしているといえそうです。皮疹がみられない可能性の方が高いので、皮疹があればラッキーと考えて、犬猫との接触や咬傷も菌血症や敗血症を疑った辺りで聞いてみることも必要であると思った次第でした。

 

 あとは、グラム陰性桿菌(with tapered ends)が見つかった時には候補に入れる、脾摘アルコール依存症免疫抑制状態も起因菌として考える時のヒントとなりそうです。その時のお勉強スライドでは、思っているほどはアルコール依存などの人の割合は高くもないというような文献も提示されており、納得もしましたが、それでもある程度可能性が高い・ある程度特徴的と初心者レベルでは言えるのではないかと思います。

 

 ひとまず、Capnocytophaga canimorsus感染症について臨床像から疑うヒントのようなものが少しでも手に入り、ひとまずホッとひと段落です。診断に関しては、グラム染色の登場というところでしょうか。疑わないことには始まらないということを感じました。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 

 今回、やはり感染症について安定の記述で注目であった本 "マンデル感染症学"(『Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases』)について読者レビューをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。

Semantic Qualifierを意識した診断推論

Semantic Qualifierを意識した診断推論(臨床推論)に向けて

 

<目次>

 

 先日、千葉大学鋪野紀好先生が編集をされたレジデントノート増刊号『症候診断ドリル』をご恵贈いただきました。この書籍の特徴は23の症候診断の中でSemantic Qualifier(SQ)を意識した書籍であるという点です。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51h0vz57WPL._SX352_BO1,204,203,200_.jpg

 

 診断推論(臨床推論)において、SQ診断にたどり着くために、とても魅力的であると感じる一方で、SQを前面から意識した書籍は数少ないと感じます。今回は、このSQが素晴らしいか深堀りしてみたいと思います。

 

1. SQとは何ですか?

 まずは、Semantic Qualifier(SQ)とは何かをご存じの方もいらっしゃると思いますが、お付き合いください。

 キーワードとなる臨床情報を医学的に分類し、より上位の概念に置き換え、普遍化した用語に置き換えます。そのプロセスで抽出された用語を、Semantic Qualifier(セマンティック・クオリファイヤー:SQ)と言います。

(出典)レジデントノート vol.23 No.2(増刊)『症候診断ドリル エキスパートの診断戦略で解き明かす必ず押さえておきたい23症候』

 

 上位概念に置き換えるということで、堅苦しく考える前に簡単・身近な例を挙げます。ペットショップ〇〇店の〇〇円のシルバータビー(銀色)のアメリカンショートヘアという猫がいたとします。

 ペットショップ〇〇店の〇〇円のシルバータビー(銀色)のアメリカンショートヘア < シルバータビーのアメリカンショートヘア < アメリカンショートへア < 猫 < ペット < …というような感じで、上位概念へと抽象化していくことで、ペット探しに役立つかもしれません。

  このように、程よく上位概念にしていくことで見つけることに役立つかもしれません。臨床推論(診断推論)、さらには医療に限らずGoogleで日常的なことを調べたり、誰かに説明したりする際にも役立つでしょう。

 では、具体的に症例で使ってみましょう!

 

 

2. 実際にSQを使ってみる

 キーワードからSQへの変換の具体例を挙げてみます。

<キーワード>
・81歳
・失神の既往なし
・靴ひもを結んでいる姿勢での失神
・身体所見上有意な所見が認められない

<SQ>
・高齢者(older adults)
・初発(new onset)
・座位での失神(syncope in sitting)
(出典)レジデントノート vol.23 No.2(増刊)『症候診断ドリル エキスパートの診断戦略で解き明かす必ず押さえておきたい23症候』

 

 まずは、その症例からのゲシュタルト作りに役立ち、情報が探しやすくなったと思います。ここで、一般的な鑑別疾患を探してみて、診断仮説に基づき身体所見より先に進む、もしくは身体所見までで攻める問診や特異的な所見を探してみるというような事もできそうです。
 今回の例では、失神の患者さんにおいて除外したい心血管性失神のうち、不整脈の可能性が高くなったようにも感じます。

 他にも、診断推論を練習していくうえで用いた書籍にもSQを意識したものがあり、診断に対してはもちろん、短時間のカンファレンス(症例提示)でも有効であると感じました。

 

<症例提示>
 狭心症、心房細動、糖尿病がある80歳女性が、3週間前からの上腹部不快感、嘔気、嘔吐と受診2時間前からの胸痛、呼吸苦を訴えて来院した。
 認知症があり施設入所中である。もともと自力歩行可能であるが、3週間前より上腹部不快感、嘔気、嘔吐、食欲低下を訴えるようになってからは臥床がちとなっていた。上腹部不快感は食事中~食後に起こり、1~2時間すると改善する。発汗はないが、胸焼けと嘔気を伴っていた。徐々に食事摂取量が減少してきており、ここ1週間は‥‥(以下略)

<SQを意識した病歴の要約>
 狭心症、心房細動、糖尿病がある高齢女性に3週間前から進行する食中、食後の上腹部膨満感と嘔気、嘔吐、体重減少があり、来院2時間前から強い前胸部重圧感と呼吸困難、末梢チアノーゼをきたして来院した。
(出典)『診断推論 Step by Step 症例提示の6ステップで鑑別診断を絞り込む』


 病歴の要約やゲシュタルト作り(illness script作り)にも、SQを身に着けたいものです。

 


3. 診断困難例で使ってみる

 読んでいて、島根大学の和足孝之先生の書かれたセクション(嘔気・嘔吐)で、さらに気になるものを見つけました。次のようなE-diagnosisという手法にも、SQが使えるようです。

 Additional filtersというところでCase reportだけを選択するようにするだけで自分の症例や鑑別疾患ときわめて類似した症例報告を集めることができます。また、このようにSQをいくつか複合的に検索するだけで、ほとんどの診断困難例の診断名が列挙されることが多いです。ぜひ診断に困ったら行ってみてください。

(出典)レジデントノート vol.23 No.2(増刊)『症候診断ドリル エキスパートの診断戦略で解き明かす必ず押さえておきたい23症候』

 

 PubMedにて検索してみたところ、”older adults”, “new onset”, “syncope in sitting”の3つをキーワードにした際にはヒットするものがありませんでした(2021年3月31日現在)。それぞれのキーワードを失神(syncope)と合わせて検索してみました。

 “older adults syncope”にてCase Reportsを指定して検索したところ、3,670件ヒットしました。たくさんヒットしすぎて、どのような診断があるのか、どのようなCase Reportsがあるのか絞り込めていない印象がします。
 もっとキーワードを増やして、”older adults syncope in sitting”にてCase Reportsに絞り込んで検索をかけてみたところ、17件がヒットしました。その中から起立性低血圧のような明らかに違うものを除くと、具体的には下記のような原因・病態がありました。

 

  • Platypnea-Orthodeoxia Syndrome
  • 排尿性失神
  • 肺癌によって誘発された神経介在性失神 →読み始めてみると起立性低血圧でした
  • 大脳基底核の一過性の血行力学的虚血 →読み始めると起立性低血圧でした
  • カルバマゼピンによって誘発された房室ブロック
  • 延髄被蓋病変
  • 僧帽弁置換の左房血栓
  • 脊髄ブロック
  • 房室解離
     …

 

 やはり、Case Reportsというだけはあって診断困難例向けですね。不整脈の類も含まれていてヒントになる気がしますが、やはり王道の診断(今回では不整脈等の頻度の高いものや重要なもの)を疑って、それでもはっきりしないときにCase Reportも検索するより有効だと思いました。

 

 

4. 最後に

 SQを意識すると、症例一つひとつから得られるものも多く、診断困難例をはじめ情報を探しやすくなると思いました。SQより意識し、具体的に取り入れるきっかけとなる書籍をご恵贈してくださり、誠にありがとうございました。SQはじめ、気になる方はぜひ手に取ってみて欲しいと思います。

 

 また、これをきっかけに臨床推論(診断推論)に興味を持ち、仲間と気軽に/自学自習してみたいという人がいらっしゃいましたら、下記も参考にどうぞ。

mk-med.hatenablog.com

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 

 今回取り上げた書籍です。アマゾンの読者レビューをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。

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 本日、4月からの期待もありつつ不安の中で年度末(3月31日)を迎えました。これからも、マイペースで更新していきたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

読書ログ: 【Dr.K】医学生・若手医師のための誰も教えてくれなかったおカネの話|節税・資産運用

読書ログ(書籍紹介)

医学生・若手医師のための誰も教えてくれなかったおカネの話』~節税・資産運用~
Dr. K(著)


 この業界では話すことすら一種のタブーにも感じている「お金」に関する書籍です。

 この書籍は少し前からあったのを知っていたのですが、このタイミングで書店で手に取ったところ、はじめの項目の将来の年収(一般的な医師の収入源や年収)とかが立ち読みで気になった書籍です。どれぐらいの貯金計画が必要なのかといったような一般論や、お給料に加え、節税や資産運用をはじめとする一般的全体像を知りたくもなりました。例えば、独身であり、それなりに貯金があれば将来のファイナンスのことを今この場で気にする必要性はないと思いますが、家庭ができた際にそこで初めて悩んでも大変だと思い、このタイミングで読みました。医学生や医師向けということで特化された情報の有無が気になります。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51B1LwqsmKL._SX350_BO1,204,203,200_.jpg

 

【こんな人に読んで欲しい】

※書籍のタイトルにある通り、若手医師ぐらいまでが主な対象になると思います。

  • 医師になればお金のことは考えなくても大丈夫だと思っている人
  • 将来の一般的な医師の年収を知りたい
  • 大学の医局に入るか悩んでいる
  • 家庭を持った後、子供ができた後のことを考えたい
  • 節税に興味がある
  • 老後の備えが不安
  • 保険について知りたい 

 

 書籍の中では、収入編、支出編、節税編、資産運用編、保険編、その他という順でお話があります。いずれも具体的な方法論を知るための本ではなく、まずは「こういう概念・やり方」があるということを知るための本になっていると感じました。例えば、節税編の中では個人型確定拠出年金iDeCo)のお話もあります。概念すら知らない人には、医師になってやっていく上でひとまず必要なものに上手に絞られていると思います。

 そもそも、医師になれば医局に入ろうが、留学しようが、常識の範囲内で何かをしようがお金には困らないと思っていた学生(医学部生)や高校生にも、考えるきっかけになればと思います。医師の平均年収ぐらいであることを前提にして、留学や家庭のことをぼんやりと考えていたけれども、実際に大学の医局に所属する際の給料でやりくりするとなれば、思っていた以上に給料が低く、事前に準備をするなり、いろいろと考えることがあると思います。

 私自身は留学(というより海外)に興味があり、想定(医師の平均年収で考えた場合)以上に早めからお金を貯めておく等の対策を取る必要性があると感じていた時期もありました。

 保険では医師賠償保険というような学生には聞き慣れないと思われるものもありました。初期研修を終えるまでには必ず考えておくべきことも含まれているのではないでしょうか。


 この大学に入る前から個人的に株式投資をしていたこともあります。その辺りのことで知っていることは周りの同期よりも多いとは思うのですが、医師としてのお金の話は知らないことが多く、マネリテラシーが低い人が多いので、買ってみて良かったと感じるもそれなりにいると思います。

 この本をきっかけにいろいろと考えてみる、調べてみる、行動を始めてみる、そのようなはじめの一冊のような書籍でした。

 ふるさと納税、様々な控除など、初歩的なことも知らない人であれば、本当に価格に見合った内容であるかの妥当性が分からない有料Note(しかも高額)を買うぐらいなら、まずはこれぐらいからで良いのではないでしょうか。

 

 一方で、既存の多くの人が歩むキャリア+αや節税についてのお金の話であり、お金についての知識が疎い人向けの本でした。医者向けの本の中では、これぐらいの浅さ・広さの方がむしろ需要がある面もあるとは思いますが、それなりに知識がある人が読むと、これだけか…、となる面は否定はできません。また、最近東大医学部の卒業生が起業するというような話も耳にはさみますが、その方面でのお金の話ではなかったというのも少し残念な気もしました。そちらの(既存の臨床医や、それ以外の医系技官や製薬会社のような雇われる以外の)お話ももっと知りたかったです。でも、それはお金というより、キャリアの話かもしれません。また、タイトルで医師向けを謳う書籍ではないもののほうが、そういう人には向いているものは多そうです。

 まずは、キーワードからしてもふるさと納税をはじめとする節税など、身近なところからという感覚で始めてみたい人には良いと思います。

 

 よくありそうな勤務医としてのキャリアを始めていく上でも役立つような「まずはここから」というような内容です。開業して、副業をはじめて、地元の信用金庫や地銀にお世話になるというような話ではありませんのであしからず。

 

 

【Dr.Kの株式投資戦術】

 今回の読書ログのDr.Kの書籍と比べ、株式投資に特化した本もありました。株式投資(個別株)に興味はあるものの手を出したことがないぐらい人にとっておススメの書籍です。株式投資的を絞っており、内容も今回の書籍以上に具体的な感じが好印象でした。

mk-med.hatenablog.com

 

【個人のお金の話を全般的に】

 節税資産設計・ライフプランニング、相続、年金保険金融商品、不動産といった個人のお金の話をもっと広く学んでみようという方にはFP(ファイナンシャル・プランナー)という資格勉強をきっかけにするという方法もあります。

mk-med.hatenablog.com


【つみたてNISA×投資信託の選び方】

 研修生活スタートなどで働き始めたり、仕事に少し余裕ができてきて資産形成について興味が出てきた人はいかがでしょうか。NISA制度により、院内PHSにかかってくるいかがわしい勧誘とはことなり、国の制度として運用益の節税になります。

mk-med.hatenablog.com

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 

 今回取り上げた書籍です。アマゾンの読者レビューをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。

 

 


P.S.

 最近は、いつも以上にミヒャエル・エンデ(著)の『モモ』のような全く医学と関係ない本を読んだりもしており、書籍紹介の頻度が少なくなりがちであると感じました。そちらの本の紹介もやろうか悩んでいますが、際限がなくなってしまうので、しばらくは現状維持とします。

 

中枢性顔面神経麻痺 「これって麻痺ですか?」

中枢性顔面神経麻痺

~これって、そもそも麻痺ですか?~

 

<目次>

 

 先日、病棟での回診の際の身体診察にて中枢性顔面神経麻痺のフィジカル(身体所見)に出会う機会がありました。中枢性の顔面神経麻痺は麻痺があまりはっきりとせず、分かりにくいというのが第一印象でした。顔面神経(第VII脳神経)末梢性の顔面神経麻痺と中枢性顔面神経麻痺の違いや、顔面神経麻痺を疑った際の麻痺の判断について深堀りして、顔面神経麻痺のフィジカルを使いこなせるようにしたいと思います。

 

1.顔面神経(第VII脳神経)障害の全

 まずは、顔面神経(第VII脳神経)の障害全般について調べていきます。

 顔面神経の病変では、顔貌の左右差が生じ(同側の鼻唇溝が浅くなり、同側の眼瞼裂が悪大する)。同側のほとんどの顔面筋で筋力低下が起きる(会話、まばたき、眉毛挙上、笑み、額のしわ寄せ、閉眼、歯を見せる動作、顎を引く動作にかかわる筋肉)。同側の流涙(涙腺)、聴覚(アブミ骨筋)、味覚(前 2/3)、角膜反射や眉間反射にも異常をきたしうる。

(出典)マクギーのフィジカル診断学 原著第4版, Steven McGee, 2019

 

 さすがはマクギーで、顔面神経麻痺(障害)の際の具体的な症状や所見が載っているのがいいですね。例えば、顎を引く動作においても筋力低下が見られることは忘れがちかと感じました。

 

 

2.顔面神経: 中枢性障害と末梢性障害の比較

 それでは、中枢性障害と末梢性障害の違いについて調べていきます。まずは、国試レベルから確認します。

顔面神経の中枢性障害と末梢性障害

 

中枢性障害

末梢性障害

麻痺

・病変の対側顔面下部に表情筋の麻痺がみられる

・上部(前頭筋)は両側支配であり正常である

・障害部位と同側の顔面(上部、下部とも)に麻痺がみられる

診察

額のしわ寄せ:〇

・閉眼:〇~×*

鼻唇溝の深さ:×(浅い)

・口角を上げる:×

額のしわ寄せ:×

・閉眼:×

鼻唇溝の深さ:×(浅い)

・口角を上げる:×

*眼輪筋が両側性支配の場合には閉眼可能だが、片側性の場合には中枢性障害であっても閉眼障害が現れる.

 

(出典)病気がみえるvol.7 脳・神経(第2版)

 

 国試に向けて勉強している多くの人は、中枢性と末梢性の顔面神経麻痺の違いは額のしわ寄せの有無であると考えている人は多そうです。確かに、額のしわ寄せが明らかにできなければ、末梢性の顔面神経麻痺で良さそうです。

 しかし、実際にこれだけではAll or Noneのように白黒はっきりし過ぎているように感じます。中枢性の顔面神経麻痺を「麻痺」と認識できなかったりするのは、このせいでしょうか。やはり、他の医学書で深堀します。

 

顔面神経麻痺における末梢性障害と中枢性障害の特徴

 

<末梢性障害>

・Bell麻痺に代表される第VII脳神経の末梢での障害では、顔面の上部、下部の筋の麻痺がともに顕著である

<中枢性障害>

・中枢の障害では下部の筋の麻痺が主である



末梢性障害

(例:Bell麻痺)

中枢性障害

(例:左大脳半球の脳血管障害)

閉眼時

・閉眼困難

・眼球は上転

鼻唇溝の浅薄化

眉毛の挙上時

・額のしわ寄せ不十分

・眉毛の挙上不十分

・顔面下部の麻痺

閉眼時

閉眼はできるが力は弱い

鼻唇溝の浅薄化

眉毛の挙上時

額のしわ寄せ可能

眉毛の挙上可能

・顔面下部の麻痺

 

安静時や会話時の顔面神経麻痺のチェック

・左右差(特に鼻唇溝

・チックなどの異常運動

・一側の顔面神経麻痺では、微笑んだり顔をしかめたときに、麻痺側の口角が下垂する

(出典)ベイツ診察法, リン S. ビックリー, ピーター G. シラギ, 2008 

 

 続いて、中枢性と末梢性の違いをマクギーも新たなことがないか調べてみます。

 

 末梢神経病変では患側のすべての顔面運動が障害されるが、中枢病変では随意運動は障害されるものの感情に伴った運動は障害されない。中枢病変による顔面神経麻痺では(例えば、大脳半球における脳卒中)では、片側の口角挙上は随意的にはできなくなるが、笑ったり泣いたりするときいは問題なく挙上することができる。このようなことが起こるのは、感情による顔面神経核への入力信号は、運動皮質から発生していないためである。

(出典)マクギーのフィジカル診断学 原著第4版, Steven McGee, 2019

 

 これは驚きでした。中枢性の顔面神経障害の場合は、感情に伴った運動は障害されないんですね!いろいろと調べて新たなことも分かりました。OSCEでの診察法もやりましたが、自分なりにまとめてみます。

 

 

3.まとめ

 今回調べたことを私なりにまとめてみました。

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1.顔面神経麻痺を疑ったら、まず鼻唇溝をチェックして麻痺かを判断

2.末梢性では麻痺が顕著であることが多い。

 →中枢性では閉眼もできるものの力が弱い(睫毛兆候陽性)

3.中枢性であれば、下部の筋の障害が主。

→額のしわ寄せは比較的保たれる

4.中枢性では感情に伴う運動は障害されない

(例:泣いたり笑ったりする際の口角挙上は問題ない)

 

 額のしわ寄せの可否で中枢性と末梢性障害の判断はできうるものの、他にも中枢性は麻痺が顕著ではなくはっきりしにくいこともあるということを確認することができました。脳梗塞等で中枢性の顔面神経麻痺を疑ったときには、顕著な麻痺ではない可能性もあると思って診察し、鼻唇溝が浅い(左右差)あたりを麻痺の有無の判定に使うと良いと思いました。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

初期研修病院選び(マッチング)|研修先チェック項目etc

初期研修病院選び(マッチング)

~研修先チェック項目~

初期研修先決定まで・研修開始後振り返って

 

<目次>

 

 在学中に勉強会サークルの設立や活動を支えてくださった先生と久しぶりに偶然にも空港でお会いしました。その時に「今だからこそ記憶が鮮明なうちに残せるものを書き残して後輩へ伝えてほしい」と言われました。このブログをはじめたきっかけは「やって良かったと思う勉強法」についてでしたが、今回は先生とお会いしたのをきっかけに「研修病院選び」について書いてみることにします。(その後、後輩からも質問を頂きました)

 世間的には国家試験の結果発表を終えた時期、私もこの時点での振り返りとして研修先病院を実際にどのように探してきたかを紹介するものです。初期研修病院を探すうえで私自身がどのように考え、どのような点を見てきたかを紹介します。 

7.【反省点】チェック事項を含む部分が、一般的なところではあまり紹介されていない研修をしてみた入職後の反省点です。すでにいろいろとすでに一般的な病院のチェック・検討をされている方には7.【反省点】をご覧いただくことをお勧めします。

 

 

1.初期研修具体的目標

 私自身は、初期研修においてファーストタッチをしっかりとできるようになりたいという希望や、BPSモデルのB(Bio)の部分をとりわけしっかりと研修したいという希望、家庭環境やこの先の進路から、救急や内科をそれなりにしっかりとやれる病院を探すことにしました。まずは、皆さんも初期研修における軸となる目標をみつけると病院探しに良いかと思います。意外と多くの病院で満たせるものもあります。

 また、初期研修後も含めた長期的な視点で将来どのような医師として働きたいか(診療科だけでなく、どのような夢や目標があるか、どのようなワークライフバランスでありたいか)によって、初期研修における目標を考えるようにしました。人によって大きく違うでしょう。極端な例を挙げれば、大学病院から大学院に行って無給医であってもラットを使って実験したい人から、医師免許で保険診療以外も含めて早いうちに稼ぎ切ることに重きを置く人もいるでしょう。

 優しい無責任というのか、自己啓発のような「やりたいこと・好きなこと・楽しいことだけ」でなく、重要なことも目標に入れておくことを個人的にはおススメします。重要なことは10-20年後への視点やお金を稼いで家族を幸せにするなど、様々でしょう。それを満たす初期研修での目標を逆算して考えてみるのはいかがですか。

 

 

【補足】お金/プライド/時間/立地優先順位

 研修そのものでの目標以外にも、初期研修をはじめ、医師(臨床医?)のキャリアにおいて、お金、②プライド(名誉・やりがい含む)、③時間、④立地の大きく4の要素があるように感じます。4つのうち、2~3つまでなら両立しやすい反面、4つともとなると大変であるとも感じます。上手にこのあたりの優先順位バランスも付けるとよいと思います。1つの項目を飛び抜けて最優先にする場合は合計2つまでなら狙いやすくなると思います。また、①の給料に関しては、③の時間と合わせて働きに見合ったお給料かという視点も大切でしょう。ハイパーで高給取りも、ゆったりとそれなりにいい給料も、どちらも同じようにメリットです。個人の価値観やハイパーへの体力の有無等になってくるでしょう。

 初期研修でいうと、①給料、②有名病院/ブランド病院(教育系ブランド病院も含む)、③時間(当直・待機の多さ、帰宅時間等)、④都道府県(東京・横浜近辺?)、所在地の環境になるでしょう。このうち、1つのみである場合はもう1つぐらい狙うぐらいの病院でもよいと思います。

<例>

  • ①お金 を最優先 ①のお金を優先すれば、北海道(特に札幌以外)なども視野に入ってくるでしょう。④の立地こそ捨てていますが、③時間も手に入りやすいところを選べる可能性もあります。 (注)レジナビ等でのお給料の表記の仕方(額面、時間外手当込みor抜き)、サービス残業(自己研鑽)の現状には気をつけましょう。

 

  • ②プライド を優先> 有名ブランド病院であれば、②のプライドは満たせるでしょう。あとは病院の立地によって東京のいい場所にあれば、④の立地も満たせるでしょう。①や③は病院次第ですね。東京でもTやらSやらでも異なってきます(笑)。条件の良い場所であれば①のお給料まで狙えますが、これこそ激戦だと思います。自身の売りを考えてみましょう。

 

  • ②プライド を最優先> 教育系ブランド病院であれば、②のプライドは満たせるでしょう。房総半島のみならず、南の島(本島)や九州の大都市の衛星都市にある有名病院であれば、立地の割に周りと比べて②のみの人も多いのではないでしょうか。1つしか満たしていませんので、立地として利点を感じるのは南の島好きか、その都市の近くの人という事になると思います。もちろん、教育は良いはずなので、名誉や今後のキャリアだけをどこまで飛び抜けた優先度で考えられるかだと思います。しかし、一般的にはメリットと感じる人は昔ほどではなく、メリットは少なくなっているはずです。(注)一部同業者内のやや外から見たブランディングマーケティング(例:先進的な教育病院というイメージ)には成功していても、実際の研修環境には疑問を感じたり、一部の集団からの評価でしかない内集団バイアスのような病院もあります。例えば、北関東の東の方でしょうか。その辺りの乖離にも注意してください。

 

  • ③時間 以外優先> いわゆるハイパー病院志望の場合、③の時間捨てる代わりに、①の高収入を狙える可能性が高くなります。サービス残業の病院はさておき、大手Tグループのようなところではお給料は狙いやすいでしょう。④の立地も大都市圏でもぼちぼち狙えたり、研修医内でマウントのような「ハイパー病院勤務歴」という②のプライドも満たせたりするでしょう。

 

  • ④立地 を優先 東京を考えたりすれば、④を満たせます。しかし、お給料は低い傾向にあるところが多いので、もう一つ満たせるのは時間の可能性が高くなると考えられます。

 

 地方などでどれも満たせないような病院は希望者が少ないことも容易に想像がつきます。また、地方・募集人数の少ない病院に対する意識も結婚や家庭等と絡んでくることもあるでしょう。

 また、地域枠の場合は入試でのメリットと引き換えに④の立地をはじめ、すでに交換済みのような状況かもしれません。それでも、その都道府県の中であれば、「事前マッチング」のようなものがあり、優位に選べるような面もあると聞いたこともありますので、実態に合わせて選んでみてください。

 また、詳しくは分かりませんが、その県内での研修医の供給と募集枠のバランスで供給が多いと、市場の原理が働きにくい部分があるかもしれません。地域枠の多い県主要都市など、県の中央にあるような場所にある病院では、地域枠をアテにしたような待遇等の設定に感じられる場所もありますので、その場合は一般枠の学生さんの場合は少し損に感じてしまうかもしれません〔中には公立(みなし公務員)で待遇をよくできないことが原因かもしれませんが…〕。それこそ、入試の際に地域枠が大きくて入りやすい可能性があるものの、逆手に取れば非地域枠には残るメリットが減ってしまうような気がします。

 

 あなたは、上記の4項目の中で何をどの程度求めているでしょうか。「プライド」とか、「お金」というと恥ずかしいかもしれませんが、言語化してみると良い候補が見つけやすくなるかもしれません。さらに、方向性の異なるプランAとプランBで揺れている場合は、その両方もしくはその間の候補をマッチングの時に用意しておくのもひとつの手段でしょう。例えば、救急医になりたくて有名なハイパーな断らない救急に行きたいプランと、家庭の事情で家族の時間や収入が一定確保するプランでは病院探しの方向性も異なります。マッチする/決断するまでは悩んでいる両方の方向性候補を考えて用意しておくとよいでしょう。

 また、初期研修に限らず、卒後3年目以降にもぜひ意識してみてください。

 

 

 

2.チェック項目アウトライン

 いきなり具体的に初期研修先をチェックする際の項目・条件と言われても困る人も多いと思います。また、従来からの記事の部分でチェック項目の箇条書きで、まとめにくく失礼致しました。そこで、どのような点をチェックしたらよいのかアウトラインとしてスライドにまとめてみました。

臨床初期研修病院選び(チェックリスト)

 上記のスライドはあくまでチェック項目です。例えば、スライド中の「当直・日直・待機の回数/制度」というのがあります。回数と言えば、見学時に何となく研修医の先生に聞けば教えてもらえますが、少し良く言われたり、直観的な把握になってしまいます。当直は初期研修医を必ず毎晩2名配置するシステム(制度)で…とか具体的に聞ければ、客観的に把握できます。

 他にも「大変な診療科」とありますが、例えば、診療科部長の先生へのローテーション前のご挨拶や人間関係が大変であるとか、1回経験しないと想像しにくい話もあると思います。その辺りを具体的にこの記事で後ほど、もしくは「初期研修 中断のトリセツ ~お休み90日までなら2年で研修修了可能~」といった関連記事の具体的な話から、チェック項目具体的な内容を肉付けしてもらえればと思います。特に、7.【反省点】にて入職後の反省点も書いています。

 このスライドをチェック項目としても、全体図のようなものとしてもお使いいただければ幸いです。それでは、具体的な話に行きたいと思います。

(2022年9月末にこのセクションを追記)

 

 

 

3.見学先 絞り込み条件

 では、具体的にどのように探したのかを紹介します。まずは、データ的な部分からある程度の絞り込みをかけました。

  • 立地、地域
  • 給与、手当、賞与(ボーナス)の有無も
  • 宿舎の有無・必須(安くて満足できる宿舎があれば、実質給与UPのようになる、必須は困る等)
  • 家賃補助、引っ越し費用の補助の有無
  • 当直回数(データ上)、当直時間帯(準当直、当直)
  • 救急車の台数(たくさん診たい人のスクリーニングとして。台数はあっても初期研修医のファーストタッチの割合次第)
  • 何次救急か(どのような疾患がみられるか)
  • 診療科、先生
  • カリキュラム
  • 同期の人数
  • 出身校
  • (お世話になった先生からのおすすめ・ご縁)
  • (宗教、思想)雇用契約・法律を超えてよいと思えるか等
  • (雇用体系や保障 ※特に出産等を考えている場合)
  • 3年目以降残るか(上記以外にも残る場合の勤務体系・公務員扱いやアルバイト・副業の可否、医局、都会の人気診療科であるか等)
  • (出願必要書類等の手間/手書きの必要性)


 大学病院と市中病院に関しては、初期研修での目標や、上記条件で絞り込みを行うと自然とある程度決まってくると思います。また、大学病院でも希望の診療科がないこともあるので、はじめから私は大学病院だけを候補にするとか、市中病院だけを候補にするということはありませんでした。

 

 カリキュラム(表の系統だったプログラム)は、たすき掛け先をはじめ、チェックするのは言うまでもないと思います。救急車の台数というのはあくまでも目安ですが、初期研修医の人数に対して救急車が来なければ、そもそもファーストタッチは厳しいと思います。さらには、診療科に自分自身の好きな診療科・興味のある診療科があるかというのは大きな指標になりました。

 教育的かどうかは、宣伝文句やホームページに書いてあることからでは絞れません。何をもって教育的とするか(病棟指導、セミナー等)を含めてはっきりさせて、信頼できる状況の分かる先輩にでも聞くか、見学に行くしかないと考えています。


 立地(地域)に関して、本人だけでは決まらない面もあるかと思います。地域枠はもちろんのこと、家族・パートナーとの関係性などによっても絞られてくることと思います。地域によっては閉塞感のある場所や医局の強さ、さらにはもっと細かい立地によって2次救急でも実質的な地域の拠点病院として3次救急寄りの症例の数、民度(患者層)・ファーストタッチの度合いへの影響などもあります。

 給与に関しても、独り立ちして病院の近くに住むことができるかをクリアしているかを考えることができればよいと私は考えましたが、人それぞれのバランスがあると思います。給与も、労働時間当たりにして考える場合は本来であれば労基が入るようなブラックからホワイトまであるでしょう。

 立地では東京を最優先、特に3年目以降に人気診療科に行きたい場合はそれら後期研修のある病院に行くというような視点もあります。他にも、東京のような激戦区では、「どういう人材を病院が必要としているか?」を考える必要性が高まります。就活でも同じですが、必要とされている人材を演じ、心電図検定のような資格で競うよりも、面接やエントリーシートではQOLを求めない」・「ブラック部活のような環境に適応できる」側の発言を取り繕うなどの対策や演技が必要となるところもあるでしょう(そういう病院に第一志望で行きたいかはさておき、第二志望等で考えている場合も含む)

 出身校の偏りはその地域性もあるので仕方がないとは思います。私自身は様々な大学出身の人が集まる方が刺激が大きく成長しやすいと思ったため、出身校が様々な傾向にある病院を優先しました。地域によって、○○大学系列の病院は見学に〇回以上、学外病院実習で選択した方が良いなどという噂も聞きました。

 お給料に関して、額面から税金・社会保険費用等で引かれるお金がそれなりにあって手取りと解離があります。レジナビなどのお給料の記載は額面と手取りなどバラバラなので必要な手取りの金額があるかを考えました。病院の近くに住むことを前提とした家賃などを計算して、自立できるかを最低限確認しました。寮や家賃補助、実家から通える範囲であると東京都内の薄給の病院でもなんとかなるかもしれません。医学書を買うことや急な出費、せめて月に3万円程度の長期投資として、つみたてNISAをすることなどもそれぞれ考慮し、立地(主に家賃)や光熱費、食費などから計算してみましょう。

 また、ストレスによる出費の増加も見越した方がいいかもしれません。2年目で住民税もかかることや、3年目に向けた準備や学会、引越し費用も考えると最低でも額面20万円後半/月ぐらいという人も少なくないと思います。仮に額面で月30万円だとすると、所得税20%、住民税10%、厚生年金10%弱、社会保険料(6%前後)などが引かれます。

 薄給でも税金、年金、社会保険料が高く感じます。将来、もっと稼ぐとさらに税率も上がったり、貰う金額は同じなのに稼ぐほど月の納付金額が増える年金に違和感を感じるかもしれません。はじめの一歩レベルのマネーリテラシーは以下のような本でも掴むことができます。全体としてマネーリテラシーが低いゆえに専門職のダンピングをされている面があると感じますが、全員にこの本まで必要かは微妙です。

 

 他にもレジナビにも2回ほど行って、実際にお話を聞くことがありました。研修病院の一覧する本では見逃していた病院を知る機会にもなりました。それ以上に研修医の先生とお話できるところでは、雰囲気を垣間見ることができました。

 

 このような条件からある程度自分が行きたいと思う研修先が絞られてきた後が、初期研修先選びの本番であると思います。現在(執筆時)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で十分に見学に行けないこともあると思います。オンライン説明会も便利ですが、やはり見せるところを選ばれやすかったりもしますので、オンライン説明会で映る部分(多くはデータ的な部分や表向きな部分)以外に、大切であると思う部分がたくさんあり、そこをチェックして欲しいと思います。一般企業であれば、就活生と直接やり取りをする部門は好印象の人を選んで配置しているところもあります。しかし、働く時に一緒になる人は、それ以外の会社の人が主となります。可能であれば必ず直接見学に行くことをお勧めします。

 すべてありのままが見えるわけではありませんが、見学に行けば、オンラインや説明会以上に、病院側説明会等で見せようとしていないリアルな面が知りやすい状況になります。医学生への初期研修説明会ではスライドチェックが入り、言いたいことを言えない病院もありました。「教育に力を入れている」のような表の面は説明会でも病院自らアピールしてきますが、その実態(例: 質の不明な地方会への医局関連のノルマ的な症例発表⇆興味のある全国の学術大会への自主的な参加+交通費補助)のチェックや、表では言いにくいことをチェックしてきましょう。

 

 

 

4.見学時チェックする項目

 実際に見学に行った際には病院全体の雰囲気はもちろんですが、次のような部分を見ていました。また、見学の希望診療科は救急や興味のある診療科を中心にリクエストしていました。

 

<実際見学時チェックするところ>

  • 研修医の先生の自主性
  • 研修医の先生の忙しさ〔持ち患者数(診療科による差もあり)、研修医室にいる人数と時間帯など〕
  • 教育的か(病棟で指導医からの指導、セミナーなど)
  • 研修医の裁量できること(段階的?最初からやれて当然?など)
  • 勤務時間/曜日(土曜日も日当直関係なく勤務日の場合は要注意)
  • 上級医の先生から研修医へのフィードバックの有無
  • 実際に何次救急か(断らない救急だと3次でも酔っ払いまで運ばれてくる、小さな地方都市で2次なのに3次レベルが来る等)
  • 救急等での研修医のファーストタッチの程度(台数が来ていても乖離あり)
  • 救急等での研修医1年目と2年目の違い  →この病院で研修をすれば、2年目にはこの程度ファーストタッチができるという目安になる。
  • 研修医の雰囲気  →明るい・楽しそうかはもちろん、真面目さが自身と合うか、泥臭いことを皆でやっているか?押し付け合いはないか?等
  • 研修医室の形態
  • 特徴的な研修(地域研修など
  • 大変かもしれない診療科(救急、麻酔科など
  • 休憩場所や食堂/売店、更衣室
  • 1つ上の先輩の学年の研修医の雰囲気が合うか?  →見学に行った後に、ある程度候補が絞れてきた場合は6年生のときに雰囲気を確認することをお勧めします。
  • 出勤時間や帰宅時間  →診療科ごとの帰宅時間や、病院全体での帰宅時間への気遣いなど
  • お給料(残業代の有無や残業代込みで)
  • カルテ業務等(サマリー等)のしやすさ・している時間帯(パソコンの台数・場所、スマホ端末の有無)
  • 実際の当直時のお話or見学(忙しさ・指導体制もチェック)
  • 当直時の勤務体系(宿直/当直/夜勤の扱いや、給与体制)
  • 病院内での研修医向けの勉強会の内容や頻度・時間、参加率や雰囲気等  →究極は自分に合うかということを考えるために、いろいろと見ました。勉強会も院内でやる必要性や質、さらには出席するという同調圧力など。
  • レーニング施設や図書館の有無
  • 見学回数、試験情報(過去問までいかなくてどんな感じであったかも)

※出身大学による採用されやすさに関しては、はじめから明らかな偏りのあるところではもちろん聞きませんでした。

 

 教育的かどうかは、人によって違う主観的な面もあります。何を求めているはっきりさせたほうが良いでしょう。宣伝文句だけでは絞れません。見学でチェックしましょう。

 セミナー(勉強会)のようなものを求めている人もいれば、病棟や救急外来での実際の業務にあたって指導やフィードバックがあるか、教えてもらえるかというような点を重視している人もいます。勉強会やセミナーは時間帯や回数、出席の強制の有無、時間外手当の有無をチェックしましょう。(追記)勉強会参加で時間外手当までつく病院があることはあとで知ったのですが、時間外手当がつかない場合はなおさら、変な時間帯にあったり、内容や質とタイミングによっては自主学習良いと感じることがありました。

 

 お給料・労働時間/形態に関しては働き方改革ホワイトになっていくところもあれば、表面的クリアして、引継時間以降やカンファレンスなどは時間外労働として認めずに自己研鑽サービス残業にすることで乗り越えるような旧体質的な病院に分かれることが考えられます。初期研修、後期研修それぞれがどちらになるかも病院毎で様々であったりします。去年の先輩までは残業代がついたのに…というような事態から、早く帰れるようになる、宿直許可という抜け穴など、様々でしょう。勤務時間等も含めて見学時にその年までの流れだけでも把握してみてください。初期研修はあまり関係ないですが、みなし公務員大学病院のような宿直許可等の表面的な抜け道が得意でインフレにお給料がついていきにくい場所が多い傾向にあるところもあるでしょう。一方でお給料に見合った長時間労働であった場所はどうなるか見守るしかありません。

 見学の際に担当してくれた先生が、その辺りに疎い人の可能性もそれなりに高いことも考えられます。残業代が正確に出ているか以前に、給与明細も振込金額以外チェックしていないようなレベルの先生も多数います。聞いてみてもはっきりしないだけというような場合もあります。先生のマネーリテラシーに触れるような話題で、この先生は「大丈夫かな」と思ったら聞いてみるという安全策もあります。医局の関連病院等の兼ね合いもあるかもしれませんが、マネーリテラシーの高い先生少ないほど、お給料や労働環境としてはいまひとつな職場かもしれません。

 さすがに手取りいくらもらっているかを把握していない先生も少ないと思うので、そこから自分自身で基本給がいくらで、残業代から時給の1.25倍つくから残業時間は何時間ぐらいが推定されて、先生の言っている残業時間が何時間ぐらいとすると、というように計算してみてもいいかもしれません。

 正直なところ、9-17時という働き方やワークライフバランスひとつの正解、しかし、もっと稼ぎたい人/もっと働きたいは時間外の上限制限なく稼げる環境ひとつの正解というように選択肢が増えればよいとは思うのですが、2024年の働き方改革でそうもいかない面もでてきます。一番キツいのはすべてがサービス残業になってしまうことでしょうか。

 自己研鑽(サービス残業)などの詳しい話については、具体例として下記の記事も参照のほど、よろしくお願い致します。

 

<+α>

  • 寮の部屋、住居(プライバシーや快適さなど 例:ユニットバス、ウオシュレットの可否)
  • 建物の新しさ(私自身はあまり重要視していません)
  • 病院の周りの居住環境(スーパー等)  →見学中に先輩からお話を聞くことができるときもありました。地方見学の際には同世代として必要なものがあるのか・車が必要かというような参考にもなりました。
  • (病院との連絡)  →とある病院で見学のお願いをしてから、日程の確定までに1週間以上かかったこともありました。
  • どのような有料文献の契約や図書室があるか

 

 あとは、私自身はこの項目はこの基準を超えたら満足とか、この項目は相関的に上がれば上がるだけ良いとか、バランス付けをしましたが、やはり最後は初期研修での目標に立ち戻って、受験する候補や希望順位を決めました。

 

【補足】CBTは高得点が必要!?

 病院によっては85%程度(IRTも含め)が足切りになる病院もあるでしょう。しかし、CBTの成績の提出があったとしても、あまりにも下位で国試浪人のリスクが高すぎないかという程度の見方をしているところもあります。CBTはあくまで参考程度のところも多いでしょう。

 それ以上に、「体育会系」を求めているのか、論文発表などへの興味やそれに伴う「頭の良さ」を求めているのか、「角の立たない性格」を求めているのか、というように、病院ごと求められていることを考えることが大切になります。例えば、当直が月に8回程度ある病院であれば、「体育会系」の体力・ノリが求められる可能性は高いでしょうし、学術・教育などにも手を入れているのであれば、学会等への興味や「頭の良さ」を求められる可能性は高いでしょう。他にも行きたいかはさておき、地方の病院であれば、3年目も残ってくれるような人が特に求められたり、サービス残業も当たり前の病院であれば、QOLのような単語は謹んで、労働基準法とかは知らないで事を荒立てない「和」を乱さないような人が求められる可能性は高いでしょう。

 その病院が何を求めているかも含めて考えるべきで、よほどの人気病院で明らかにCBTも足切りをしていて見劣りしているような場合を除いて、CBTだけで病院を候補から外してしまうのはもったいないと感じます。見学前のデータ(誰がいるか)や見学時に感じることができるのではないかと思います。これはマッチングに限ったことではないとは思いますが、その辺りも、行きたい病院に合わせて嘘にならない程度に演じたり、合わせたりするとよいと思います。

 

 

 

5.候補・滑り止めについて考える

 マッチングの際の候補は少なくとも、

  • 3~4つ

程度、用意してかけるようにしておくと良いと個人的には考えました。5、6つ以上用意すると大変になってくるかもしれませんが、見学期間や試験・面接期間を終えてから悪い噂や事実を聞いたりして優先順位を変えたり、揺れている方向性から両方の候補を用意したりする必要があります。志望する病院の人気度や、アンマッチをどれだけ許容するか、滑り止めをどこまで受け入れられるか、3次募集でも第一志望を狙うか、というような個人的な考えで変わってくると思います。あくまで個人的な考えです。

 

 私自身は絞り込みをした後に、見学をして順位付けをしました。その候補の中で優先順位が下の病院がどこまで滑り止めになるかについて考えました。他にも、滑り止めとして出身校の大学病院を受けるというような人もいると思います。設定した条件のうち、譲ることができる部分やその程度を考えておくとよいと思います。例えば、希望診療科の有無は譲れないが、地域・立地は譲ることができる(むしろ、郊外へ行くと給料が増えることもあります)、というように自分自身で調節し、過去の人気度(倍率)を見ながら滑り止めになりそうな候補を増やせばいいと思います。

 また、マッチング先が決定すると、留年や国試浪人にでもならない限り、必ずその研修先で研修を開始しなければなりません。中には、マッチングの際に大学病院を滑り止めとして順位を下の方に書いて、大学病院に研修先に決まりがっかりしていた人もいました。逆に、1次マッチングで決まったことで2・3次マッチングまで考える必要性がなく、精神的な負担を少しでも少なくして国家試験対策をすることができた人もいました。自身の性格等も考慮するとよいと思います。

 

 

6.実際見学いってみよう

 病院見学の申込方法(メールの文面)や、見学の際の服装など、他にも気になる方はGoogleで検索してみると見つかったり、下記の様な書籍もあります。もちろん、この本やネットのやり方が絶対に正しいひとつの方法ではありません。あくまで参考程度です。

 私自身が一番はじめに偶然手に取ってマッチングの部分を参考にした(かじった)本は『マッチング対策 (シリーズ まとめてみた)』 、天沢ヒロ(著)でした。気がつけば、国試対策が追加され改訂されていました(改訂版を読んだことはありません)

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51gC-BAV2IL._SX351_BO1,204,203,200_.jpg

 

 

 他にも試験を受ける病院が決まった後にはTECOMの『ハローマッチング 20XX―小論文・面接・筆記試験対策のABC』 にて過去問について調べたりもしました(毎年、出版されていますので20XXはその年の最新版等をご確認ください)。

 また、研修病院の情報としてHokuto residentも信用しているという人の話も聞きました。一方で、自分の行きたい病院が人気にならないように、良いことはあまり書かない/悪いことを書くというような、戦略的嘘を書く人がいるという噂も聞いたこともあります。

www.hokto.jp

 口コミサイトもですが、見学生がお客さん対応を受ける病院なのか、実習生のような対応を受ける病院なのかと、その程度でも口コミ評価は変わってくるので、あくまで参考程度でもあります。多くの見学生は、親しい先輩から聞いた裏話までは口コミサイトに書かないと思います。

 見学に行っても、目を光らせてチェックしておかないと気がつかないような側面もあります。救急で見やすい患者さんにアテンドする形になったり、見学者からは分からない時間外の都合の悪いこと等は見れないし、わざわざ自らは教えてくれない可能性は十分にあります。例えば、自己研鑽のようにそれが当たり前だと思っている可能性もあります。それでも、オンライン面談・説明会よりは気がつきやすいでしょう。

 また、給料・口コミ評価、立地などの数値的なスペックがいいのに結果的近くの大学から研修医集まらないところも、要注意かと思います。あくまでも、こういうものは私の中では参考程度と考えてながら、もっとアンテナを張ればよかったと考えています。

 

 

 

7.【反省点】チェック項目

 反省点は研修医として病院内部に入り見えてしまったゆえの重たい部分もあるかと思い、追記にしました。今だから感じる大切なこと2年間を無事に終えることができるかという視点や、有名で/ハイパーでキラキラしているところでも3年目によほど直結しなければそこまで大差がないかもしれないという一歩引いた視点が大切だと感じましたん。あくまで研修制度とはいっても就労ということでハイパー・ハイポだけでなく、やりがい搾取されていないか、サービス残業(自己研鑽)がどれだけあるかというようなブラックホワイト大切であると思います。むしろ、ある程度のハイパーまでであれば、ブラックかホワイトの方が大切かもしれないと感じました。雇用契約を守ったり、搾取でない状況で、やりがいやハイパー・ハイポ等が各個人とマッチするとよいというようなある程度、順番も大切であると感じます。ワークライフバランスも幸せ な生活のための手段のひとつであると思うので、各個人の塩梅になってくると思います。

 その中で言えば、曲者のいる診療科や大変診療科のチェックと自分自身の苦手な診療科のチェックも入念にしておくと良いと感じました。例えば、麻酔科が待機や診療部長や中堅の先生ごとで言うことが異なって大変、曲者の指導医がいる、救急科のローテのときは寝れない/断らない救急で救急外来連続24時間勤務突入の悲劇のようなことも考えておく必要性を感じました。これこそ、宿日直許可の有無も参考になるかもしれません(笑)。

 また、2年で完成するということもないキャリアなので、2年間だけ限界に挑戦してみて変えるもよし、持続可能な働き方を意識してみたりするのもいいと思います。あまりチェックしなかったり、楽観視しすぎたりすると痛い目に合うかもしれませんし、学生の時には想像もしていなかったような現場の”常識”に触れることから考えを改めることがあるかもしれません。

 他にも下記の様な点を見学の際にチェックできたと反省しました。他にもスーパーローテーションの宿命として、全ての診療科に興味を持とうとしても、興味のある・持った診療科だけではないのが現実なので好き診療科等を伸びしろにしやすい環境や、生活のベースラインを整えておく意味で残業休暇、福利厚生やお給料のチェックも欠かせないと感じました。

 教育研修システム明文化されているものか、そのときの責任者の裁量によるものか、という点も責任者の交代時のリスクにもなります。仕事の評価を明文化されており、それがしっかりとした定量的なものであれば、気疲れ少なく明確だと思います。定性的な評価では、その上司に気に入られるかというような評価する側の主観で判断されます。例えば、「頑張りが足りない」とかが定性評価のよい例でしょう。意見を申してコミットするにしても、最後は上司の判断となってきますので、これこそ明文化されていた方が各日であると感じます。また、教育研修システムそのものではなく、基本的な給料や各個人の福利厚生ならまだしも、社員旅行のようなプラスαの部分で良さを推すのは、研修の理念や研修システム・リフレッシュや報酬で推しているわけではないということは注意かもしれません。

 そして、ハイパーやハイポだけでなく(以上に?)、雑務による忙しさか、明らかに歯車的な存在として扱われるか、充実感のある(教育的な)忙しさか、「楽しめる」(責任範囲内でやれることが明確なことや主体性、上の複数の意見の板挟み)かというような点や、自分はこれをされたら折れるという点(例: 勤務上はお休みの日のサービス残業のオペ)というような限界点もかなり大切です。お忘れなく。

  • ブランド等への幻想の強さ(学生時代に思った以上に薄給/ブラックが堪えたり、研修に違いを感じない同期もいました。勉強会・学会に参加している一部の学生は教育系病院への思想・信仰が強い人もいました)
  • 関連病院として病院が大切にされているのと、医師が大切にされているのは異なる(例:大学の関連病院の中でも基幹病院として施設・規模の維持したくて、そのために医師を酷使している場合もある)
  • 定員割れ・定員減のリスク(当直回数等に影響)
  • 初期研修医ありきか(例:救急外来が研修医前提で回していると、当直回数は研修医内で必ず全日必要数を確保→定員減のリスク、連休は休みにくい、有給日にも夜に当直がある、指導体制も微妙で野戦病院みたい等)
  • 退職/休職のリスク(中断はまだデータとして分かりやすいものの、中断に至らないまでもお休み・休職した研修医の数・程度。※どうやってチェックするのかは信頼できる先輩でもいないと不明)
  • 休職やバーンアウトからの戻りやすさ(復帰時:半日からなど臨機応変さ ※さらには病院の柔軟さの一部の指標にもなりうる。休職した先輩や同期を見ているだけでもかわいそう)
  • 研修医室などの空調(時間外や休日には空調がつかない)
  • 研修医の医療外の仕事(医局の掃除、ごみ捨て等 ※もちろん夜にサービス残業(自己研鑽)となることもある)
  • 研修医の業務上の義務と伸びしろ: 業務上で研修医がいることが前提かどうか(いなくても業務がまわるか)、ベースラインの業務量と伸びしろとして余力に合わせて増やせるか。
  • 手技などの業務内容と場面(病棟では採血はしないが、救外では採血、ルート準備してやCTにもストレッチャーで連れていくというような、雑務や手技の内容と場面。場面によって大変さも異なる)
  • 何次救急かはあまり参考にならない疾患の偏り:近くに循環器センターなど、断らない救急で酔っ払いが多い等。指導体制:指導体制のなしで研修医だけでこなさないといけない自転車操業状態の救急か、ぼちぼち余裕のある指導体制のある救急か)
  • 断らない救急の表裏(重症患者だけでなく、何次であっても近隣病院ブラックリスト入り患者や無保険患者等の来る「断れない救急」)
  • 当直の勤務体系:夜勤扱い/宿直扱いなど → 当直中の身体拘束と勤務の一致(当直手当なく当直室で寝ている時間は勤務外扱いだが下宿等へは帰れない、引継時間以降はサービス残業宿日直扱いで時間外割増がつかない、なぜか断らない救急で「宿直扱い」で寝れなくても翌朝は帰れない等、研修医も制度・実態との乖離を意識していない場合もある。)
  • 研修医1人当たりの救急車の台数/1晩:1人当たり6-7台/1晩 以上でファーストタッチを研修医がすべてやっているとすると、ウォークインまで含めると寝れない可能性が高い
  • ERローテと当直・日直時間帯の違い(指導の有無も)
  • 日直の扱い:プラスの給料(時間外手当)?機能した代休制度
  • チーム制と主治医制(休日と言えど、どの程度休める?)
  • 担当患者の指導医が同一チームか?(チームの異なる患者がいると指導を受けながらやっていくのに大変)
  • 土日や夜の当番制の徹底度(土日や夜にふいに電話がかかってくる?休まる?)
  • 地域研修/外病院のときの給与・勤務体系、自己研鑽(研修先の給料で計算?一律で残業は自己研鑽? 当直の有無)
  • 有給やリフレッシュ休暇〔システムとしてリフレッシュ休暇期間をとれるのか、ただ事務から具体性なく有給とってくださいねと言われるだけで診療科との調節はしないのか、取れない(有給扱いの日に自己研鑽として出勤なのか)等
  • サービス残業の有無と程度〔例:引継ぎ前後、夜、説明会) →出勤時間管理の形態もヒントになる面もあります(※一般企業であれば、出勤簿に印鑑押すだけの昔からの形態のものであれば後で残業時間が何とでもなりうるが、タイムカード、ましてや会社の入り口の社員証が必要なゲートは動かぬ証拠になってしまうため社員の残業時間が増えないように気を使う傾向がある、ハンコ文化で同じハンコを事務に預ける等) レジナビのようなリアル会場での説明会のときに横についてくれた研修医に「今日は時間外いくらもらってるんですか?」って聞いてみましょう笑
  • 連続勤務日数(土日の日当直に加えて説明会等に雑用のサービス残業として駆り出されていると出勤簿では"休日"ですが、休日の当直等も含めて実質連続14~21日勤務もザラです。)
  • 固定残業代の場合の残業時間の実態(例えば月に40時間の残業代を固定でもらい、青天井に残業しているなど)
  • 引継ぎの程度(本当に時間で引継ぎか、職務時間よりかなり前に集合か?、引継時間までに来た人を全部診るのか)
  • 食事(時間がなくて食事以外に楽しみがないときもあります笑。病院によって事務に注文すると日替わりでお弁当が頼めたり、そもそも良い食堂があったり。他にも当直の際のお弁当に関しても:文化として救急で忙しくても研修医が上の先生の要望含めて注文を取りまとめるところもあったり、おいしいお弁当が貰えるところもあったり。食事のみがQOLになるときに大切!
  • 電子カルテの使いやすさや台数(職務後に空いているカルテを探したり、夜に残ってカルテを書いたり、カルテの落ちやすさ)
  • 実際の給料(ただ「いくら?」とポジショントーク的に答えやすいように漠然と聞くだけでなく、当直・日直代や残業代の有無含む金額か、基本給や手当、額面か手取りかも注意しましょう。 例:救急当直が勤務上は宿直扱いで呼び出し時のみ時間外手当がつく、引継時間以降は引継できなくてもサービス残業等 ※人によっては給与明細を見せてくれた先輩もいました)
  • 有給・長期休暇時の当直の有無(研修医内で当直を回し、回数も多いところは有給の日の夜に当直に入らないといけない場合もある。仮に長期リフレッシュ休暇があったとしても分断される。)
  • 当直の引継ぎ(勤務時間内に来た人全員が帰宅後・入院後まで、時間で途中でも引継ぎなど)
  • 当直明けの帰宅時間、帰宅前の業務
  • 当直とローテ先の兼ね合い(例: 地域研修のときは土日に日直・当直ばかりで辛い等)
  • 当直室(シャワー等、部屋は個室?、静かさなど ※そもそも寝れない病院もある
  • 休憩/昼食時間(ER、内科、外科などによって異なるが、お昼ご飯の時間が10分しかないなど)
  • 症例レポート(EPOC)の書く環境・承認状況(研修中の経験症例のレポートの提出のしやすさで仕事以外での時間の浪費具合も変わってきます。1症例のサマリーあたりに可能な項目数や承認状況も要チェック。1症例あたり2項目以上はただ「指導」という名で添削など具体的なコメントなく突き返されるのは一番厄介。)
  • 院内の売店や食堂、周りのお店の営業時間(帰宅が遅くなりがちなので夜遅くまでやっているか)
  • 更衣室やロッカーの有無/寮からユニフォームでの通勤前提?
  • 知り合いの先輩からどこでお話を伺ったか(どれほど親身なお化粧のない情報か!?、ポジショントークか?、どんな価値観の先輩か
  • 先輩と親しい後輩もその病院で研修しているか(ポジショントーク抜きの話で同じ病院に積極的理由で入ったと考えられる後輩。特に地元などや出身大学の近くといった地域的な理由もない場合は信頼性が高い)
  • いろいろな大学から集まることの意味(全国区で有名?地元では実習で来た学生から人気がない真の情報の伝わらない他大学の後輩が交互に受験するだけ?)
  • 研修の診療科が変わる毎でのつながり・シームレスさ(その診療科をから次にローテーションしていった後のつながりや連続期間や連続性、配慮)
  • 小さな病院の方がシームレスな可能性(例: ローテ前から顔が見れていて、内科の中でも4週で慣れたと思ったら次の診療科へというようなことにもなりにくい
  • ローテーションでの診療科へのご挨拶〔院外研修時でも直接(有給・直明けの昼過ぎに等)が必須? 曲者への配慮など〕
  • ローテーションの決定時期(分からないことの多い入社時に2年目のローテも決める?)
  • ローテーション先/地域研修先の実質的な選択肢の自由さ/多さ (例:地域研修の記載先だけでなく、外来研修の日数などで実質行ける研修先の数も注意)
  • 診療科選択の時期自由度(1年目はメジャー科中心のような院内ルールがあると、3年目志望の診療科候補を2年目の夏までに進路を決める参考にならない。案内にはそのような制約は書いてないので研修医に聞いてみないと分からないこともあります)
  • 説明してくださった先生のポジション/価値観(教授のように既存のシステムで上がりきった人であれば、「医は仁術なり」というようなことや研修は学びというような点しか触れなくても、そもそもその人はポジション等が保証されている人で他の視点が抜けている可能性が上がる。宗教観等に染まってない中堅の先生の方がその辺りは参考になる可能性が高い。)
  • 若手・中堅の先生〔よく指導してもらうことになる先生の考え・価値観、若手・中堅の先生が抜けてしまう環境かのチェック(医局で送られてくるだけの場合もある)〕
  • 先生を目当てに行くと転勤などのリスクもあるので、カリキュラム・制度もチェックする
  • 癖強指導医(ハラスメントじゃないか?と思うような人が研修必修診療科の部長クラスにいると…)
  • 研修中に相談してくださる(研修センター等の)先生方の考え方/価値観(安心して相談できる人? 給料のことは聞くなとかいう人? 女性であることを意識しろとかいう人? チームマネジメントに興味がある人?など言葉・文脈・雰囲気含め)
  • 後期研修の同一病院での継続率〔残りたくて残ったか、有給などがとりにくく見学に行きにくくて残った(消極的理由により残った)か?〕
  • 「段階的」・「指導」という言葉の曖昧さ(「ステップで」と謳っていても実は初めからやれて当然のような環境、指導環境なんてなくてただ権限だけアップしていく等)
  • 教育の内容(宣伝文句にされがちだが、案外曖昧主観的項目なので要チェック): 夕方18時とかからやる全体のレクチャーは珍しく早く帰れる日には邪魔であったり、そもそも参加しにくく内容・質も先生による面もあり、中途半端なものであればCareNetのようなオンデマンドや本の自習学習で良い。無いよりいいかもしれないが、メリットかと言われると考えもの。病棟での実際のやり取りでの指導の方が嬉しい。EPOCのレポート指導などもちゃんとした状況に応じた指導ならまだしも形式的なものは手間なだけ。)
  • 院内の研修医勉強会の手間(学生のときのような準備に手間のかかる勉強会か?事務がどれぐらい準備等してくれるか? ※準備に手間がかかるのに新しめのエビデンスでもなければ院内の慣習的なことレクチャーだけであれば、存在意義に疑問)
  • 院内勉強会の時間帯: 内容や質、疲れによって、寝れる日の朝は寝たいし、帰れる日には帰りたいと思うことも。誰かに参加圧のようなものも…。
  • 学会参加・発表(自分で行きたい人/したい人に全国への交通費や指導がつくのは良い。一方で、県の中央や中核の医療センター等の医局関連の診療部長・教授の先生の地方会等のための忖度で大したことない症例報告をさせられるのは考えもの。特に月に1回土日があるかないか程度の休暇の少ない病院ではなおさら。)
  • 院内・研修医内での係(小学校の〇〇委員やごみ捨て係みたいなもの)の有無や程度(充実、積極的、サービス残業的、面倒、本来は事務の人がやること?など)
  • 研修医室のありがたさ(特にサマリ作成などの自己研鑽の時間を考えると、働き始めてリラックスできる環境がより大切になりました。)
  • 入社時の歓迎会(コロナで今は消滅しているところがほとんどだと思いますが、この界隈では全身タイツとかではなく、男性では局部を隠す裸芸なども笑 どうしてもだめな場合は研修先を考えましょう)
  • 面談(普段から打ち解けたり相談できる環境が大切、普段からかかわりのない/頑固な先生との形式的な面談は行くだけ面倒で調節が手間でむしろ負担)
  • 有給がとれる/とれないような診療科の有無・程度
  • 当直時・後の放射線科医の読影の有無(振り返りのしやすさ含め)
  • レーニング施設・図書室の利用時間(17時までなら使えないに近い→縫合の練習に糸が欲しくても…など)
  • 研修医以外の求人情報(職場の雰囲気・給料・立地などのトータルバランスから辞めていくことが多いかの指標として、常に求人をしていれば、何かありと思います。立地ならわかりやすいですが、…。 ※職種間の解離や医局との関係もあるので参考部分もあり)
  • 複数ある寮から選べるか〔広さや設備、禁煙/喫煙(※関係ないほど修繕・ルームクリーニングされていれば別)→選択肢の中で最低を想定する(※最低の選択肢を見せていない場合もある)
  • 部屋(寮)のバスタブ(私はなで肩で肩こりしやすいのですが、浴槽が小さく肩まで全部お湯に浸かることはできないときには困りました。また、全自動のお風呂(追い炊き可能)はお風呂に入る人としてはお湯を無駄にしないので水・ガス代が安い以上に便利。ウオシュレットなしは特に困りませんでした。稀に国立・公立病院の宿舎の中には昭和の公務員宿舎のところもあります)
  • 寮への配達方法(同一敷地内(住所)だと、荷物が病院に届くことがある:お茶を買ったときに病院に届くと大変だが、ゆう〇〇はいつも病院の事務へ届けてくれるだけならまだしも、事務不在の土曜日には受け取れるはずの荷物が事務に行ってしまい月曜日まで受け取れないなど。)
  • 駐車場(出入口の中に段差がひどいところがあり、スポーツカーでもないのに何度も車のお腹を擦りました、駐車場の大きさ・遠さ ※病院の駐車場に合わせて車を買い替える人を除く)
  • 部屋の洗濯機・冷蔵庫(タスキがけの1年という短期間であれば大型家電はお金がかかる(レオパレスなども考慮)/時短道具のドラム式洗濯機が置けるか)
  • 福利厚生/研修という名の全員参加の会〔例: 病院内飲み会、全員での旅行・出し物等。トップは気持ちよくなれるものの、下っ端は有給の方が効果が高いことが多い。〕
  • 副業規定/許可(すでに起業している人の場合。みなし公務員にも注意。

 

 同期がどのような人たちになるかはやっぱり最後まで運ですかね。あとは、教育・大変さなどの主観的な項目に裏切られても、客観的な項目(立地、給料等)に救われたというような人もいました(もちろん給料の金額を研修開始まで盛られているリスクもあります)

 

 家賃補助や寮の有無のように研修先の決め手の一部になるわけではありませんが、寮の場合は特に入居可能時期駐車場の使用開始時期は要チェックです。寮の入居日が3月末となれば、引っ越し代が高くなり、15万円を超えることもザラです。数週間前に入居可能日を知ってから、見積もりをとったら、荷物が少なくても15万円程度で冷蔵庫などは捨てていく方が良いという選択に至りました。入居日より駐車場の利用可能日がアナウンス上では1-2週ほど後のため、駐車場を考えるのにも苦労でした。

 あとは、引っ越し費用に加え、初任給は5月に振り込まれるところも多いため、少し貯金しておいた方が良いかもしれません。また、3年目の引っ越し費用も考えておかないと、その病院で継続以外の選択肢がなくなってしまうかもしれません笑

 また、お給料が良くてもストレスフルな職場や立地などの環境要因、ストレス発散にかかる費用・方法等で出費が増えてしまうこともあります。高消費(浪費?)の危険性など、トータルで考えてみてください。ストレスフルで薄給という組合せであれば、考えものでしょう(働き始めても実家からの補填がある人もいました)。

 他にも、人や場所によっては臨床研修を通じて、厳しすぎて・ワークライフバランスを優先して3年目以降病棟の有無や保険診療だけでなく、臨床に進むかどうかを含めて根本的に見直すきっかけとなったり、ちょうどよい厳しさでやりがいや成長を感じて前進あるのみという状況となったり、臨床医での結婚や家庭の在り方を意識したりと、研修を始めてみればさらに視点も増えると思います。様々な可能性(選択肢は狭めない方がいいかもしれません。

 

 

【補足】当直回数・勤務形態の客観的把握

 見学の際やレジナビのような際に当直回数を聞いたりする人も多いと思います。研修医の先生に尋ねると教えてもらえますが、言葉の定義もあいまいなため、研修医の当直の次のようなシステム的な部分を聞くと、客観的に把握しやすいかと思います(これは、給料欄も同じく基本給なのか、総額なのかなど、表記があいまいで上手に記載したもの勝ちなところもあります)。

 

◆当直、準夜、日直の客観的捉え方

 「当直」の示す言葉も病院によって微妙に異なったりもします。当直はその日の夕方から翌朝まで、日直は土日祝日の朝から夕方までというような感じです。準夜は夕方から24時ごろまでで、当直は24時頃から翌朝までというところもあったりします。さらには病棟直と救急外来での当直の2パターンがあるところもあります。

 そこで「当直は何回ですか?」と聞くと、人や情報源によって日直を含めるか・病棟直を含めるかどうかを含め、当直回数があいまいになります。定義とセットで聞くといいでしょう。

 あとは、回数に関しても個人的な把握の仕方になるので、当直や日直の研修医枠の数システムを聞くとよいと思います。そうすることで、当直・日直が休日に多い、平日に多いかなどが比較的客観的に分かります。

 例えば、定員12名の研修病院があったとします。救急外来の当直(夕方~翌朝)の研修医枠が各日2名、土日祝日の日直(朝から夕方)の枠が各日2名ずつ固定であったとします。すると、土日(金曜日の夜から日曜日の夜の当直の枠)は計10名分になります。3連休の場合は14名分となります。そうすると、普通の土日で日直や当直のない人は単純計算で2名となります。3連休では2回しないといけない人が2名となります。平日と土日の当直の比率も分かってきます(直明けが平日であるかも分かります)。実際には、地域研修・定員減などで当直・日直に入れる研修医の母数が減っている場合もあります。

 他の例として、小さめの病院の場合の例です。その病院では、必ず研修医の当直や日直の枠があるわけではなく、救急の当番日の中から研修医4名が月に4回ずつ入り、足らない部分は補完されるというような病院もあります。さらには、上記のような救急外来の日直・当直に加えて、〇〇科の場合にはこういうシステムで当直(病棟)がある、◯×科ではこういうシステムで待機があるとか、聞けば分かるでしょう。他にも、研修医は指導体制のある平日に入りやすいとか、人の足らない休日に多いなど、事情はさておき傾向を知ることができます。もちろん、当直そのものの多さや大変さだけが指標ではありませんが、客観的にみておくことも大切だと思います。

 お給料(基本給によって時間外の歩合も決まる、日直は時間外手当の増し分だけで代休か、すべて時間外か、手当か)というようなのと同じく、客観的に把握しておくと役立つでしょう。レジナビのようなところでは上手にもやっと表現されている病院もあります。

 

◆当直に対するその他

 当直・日直を誰が決めるかです。これは好みですが、内部でのイザコザや不公平感があるので事務の人に決めてもらいたい、研修医内で決めると恨みを買いそう、研修医内で決めたほうがうまくいきそうなど、病院の研修医内の雰囲気をはじめ、実際に病院ごとで同じシステムでも良し悪しはありそうです。

 また、当直・日直が病棟業務であるのか、救急外来であるのか(こちらが多いと思います)というような点も念のため。

 さらには、当直が宿直扱いでは実働時間のみの時間外でお給料となるなど勤務体系によって異なります。勤務体系については、下記のような柴田綾子先生が書かれた記事(特に「落とし穴」の部分)を見てみるなり、各自調べてみるとよいと思います。

 また、2024年の働き方改革に向けて宿日直許可を無理やり取得したような病院もあります。宿日直許可では、軽度や短時間の業務であり、応急患者の診察や入院等に対応することが稀であることなどの条件があるのですが、断らない救急・救急車1万台/年のような場所まで残業時間数字合わせで導入していたり、隠れ残業となる病院も出てきています。直近での勤務形態等の変化にも注目してみてください。

 

 

【補足】誰からどこで聞くか?

 お話ベースで情報を得た場合は「誰からどのような状況で聴いたか」も意識しましょう。医学生向けの説明会用資料には研修センターの校正が入って、例えば、宿直扱いの話など、事実でも消された(こちらから自主的には言わない)ことなどありました。いろいろなところでやっていると思いますが、良い所しか見せないという手段です。

 他にも、研修医内でも「事実を伝えると人が来なくなる」内部の肩を持つような側の人と、ファクトベースのまま伝えたい人と両方いました。他の人がいないところでいろいろと話してくれそうな人から聴けるかによって情報も異なってくるでしょう。そういう視点では高校の友人・知人大学の先輩等のつながりがあると赤裸々に聞きやすくなります。

 初期研修医として働き始めて1、2年にも関わらず、サービス残業などを含めて内部の肩を持つ側になってしまう人も多数いることに驚きでした。医学生にマッチングで自身の病院が不利になる悪いことは言わずに、「慣習」に染まってしまうことに"すごさ"を感じました。ポジションを考えれば、地域枠その病院の医局で残ることを前提としている人は悪いことを言いたがらない人が多いでしょう。他にも、良くも悪くも社畜精神が満載の旧来の考え方の人はサービス残業とかを当たり前だと思っているかもしれません。そこの病院に残ることを考えていて、理由がお給料等の客観的にしやすい数字の場合は場合はサービス残業への懸念は少ないかもしれません(初期研修と後期研修で異なることもあるので注意)。

 他にも、「この診療科を考えていたから残る」という人で他の面を考えていない/話さない場合は、「その診療科がある」こと以外他の面いまひとつかもしれませんし、無頓着かもしれません。その診療科のある他の病院との比較もしれているはずです。比較対象がなければ、否応なくそこになったはずです。

 誰から聴いたのか、どのような状況で聞いたのかも意識してみると、入職後に「聞いていたのと違ったという事が少しは減るのではないでしょうか。

 

 

 

8.研修医なる前に(勉強以外編)

 マッチングも決まり、国試も終えたら、春休みですね。3次狙いの人もいるとは思いますが、その人でも国試の合格発表までは1カ月ほどの春休みがあると思います。ぜひ、学生のうちやっておいて良かった(やっておいたほうが良い)と思ったことも紹介します。

 一言で言えば、まとまった時間のかかるもの、役所などの窓口のような時間的制約の強いもの、想定外のことが起こりそうなことです。仕事が始まると病院によってはなかなか決まった時間までに帰れない、有休も年5日(最低消化分)ぐらいと取るのがやっとの職場であったとか、土日は自己研鑽で病棟に顔を出さないといけない待機(オンコール)で病院の近くでスタンバイのような状態が多いというような診療科もあるからです。もちろん、春休みに限らず長期休暇を含む学生のうちにしておくのも良いでしょう。

<やっておくとよいことの例>

  • 車の免許(さすがに在学中には…
  • 旅行(海外、放浪旅、人と一緒に行く
  • 複数人会う
  • つみたてNISAの準備(証券口座とセットのクレカ・キャッシュカードが住民票のある住所に郵送されるので住民票がおきにくい寮の場合
  • 脱毛(女性のみ? 忙しくなると手間にも…
  • 予約困難な店(グルメな人向け
  • 会社を作る(一部の人向け
  • 手間取る試験の受験(過去の例: USMLE Step2 CS

 

 上記はあくまで例です。自身に合わせて想起するきっかけとなれば幸いです。

 例えば、「車の免許」という項目では、車以外の免許を考えている人も同様にお考え下さい。地方に行くと、深夜に移動するとなると車の免許が欲しくなります。

 旅行も日帰りや短期間では行きにくいところ、人と会うような日程調節が大変なものを優先するとよいと考えています。また、仕事を始めてからは遠慮しがちな途上国の旅なんかも良い思い出になると思います。個人的にはバイクを2人乗りで後ろに乗せてもらって街を見たことなんかも、思い出深いです。

 また、同じ診療科に行く人同士であれば、休みの取れない業界でも「古き悪しき風習」として学会で会うこともしやすいですが、他の診療科となると会いにくくなります。そうはいっても、研修中に進路も変わるものなので行ける間に行くことをお勧めします。

 予約困難な店というのは、ミシュランのレストランなどの数カ月先まで予約がいっぱいのような店や施設です。特に地方にあるようなレストランの場合、自身のお休みとの兼ね合いまで考えたら、厳しくなると思います。同期の多さや当直人員の豊富さによっては当直を変わってもらうこともできますが、そもそも当直等の予定が1カ月前に決まっているか怪しいような病院もあります。

 住民票を病院の寮等に移さないような場合は、住民票(身分証)上の住所に届く郵送物を扱いやすくするという意味でも、証券口座の開設やクレジットカード(むしろ在学中にすべき?)などの様々な準備をしておくとよいでしょう。ネット証券でもポイントを貯めようとするとクレジットカードをそれに合わせてつくったりというような状況もあります。時間的な制約はありませんが、稼ぎ始めるということでつみたてNISAの準備をしつつ、何を買うのか決めておくのも良いと思います。iDeCoで何を買うかも同様に何を買うかを考えることができるでしょう。

 投資こそ複利で効いてきます。短期的な視点はさておき、長期的な視点で見れば、早く始められるなら早く始めるに越したことはないでしょう。

 

 他にも「病院を仕事割り切るためにスマホ2台持ちにする」、手間を省く家電(ロボット掃除機、ドラム式洗濯機など)を考慮する、地方に戻るのでその前に都会でマッチングアプリを使っていろいろな人に会ってみる(地方の閉塞的な社会に戻る前やってみたいこと)など、考えることがある人もいるでしょう。

 急性期病院での勤務医として一般的な道に進むと自由な時間が特に限られることになる現状を踏まえて、「時間」に意識して列挙してみました。お金は働く場所(地方・都会、大学・市中など)による部分もあるので、初期研修で失敗したという人は3年目以降の進路について考えてみてください。

 

 もちろん、4月からの新生活に向けて勉強したいという素晴らしい志を持った人もいるとは思います。しかし、時間的制約の強いものでやりたいことが残っている/勉強か悩む場合は、時間的制約の強いものを優先したほうが生活スムーズになったり、後悔しにくいと考えています。現場を見て、必要とするものが明確になったり、理解度もまた変わってくるでしょう。

(2023年3月7日追記)

 

 

 

9.最後に

 有名・ブランド研修病院だから、必ずしも誰にでも良いというわけではなかったり、客観的に良い労働環境とは言えないところもありました。確かに有名な先生がいらっしゃる病院もありましたが、それが初期研修プログラムにつながっているとも限りません。

 最後には、おおむね選択肢も絞られて、マッチングの際の順位付けという中で覚悟を決めて思い切ることになると思います。まずは条件で絞り、究極的には言葉にはしにくい部分もありますが、直接見学に行って「恋人選び・作り」と同じように思い切って決める覚悟も必要だと思います。案外、研修が始まってみると/見学に行って見ると、ここ違う、大したことないというようなことも普通にあります。例えば、残業代も出なくて、その後は自腹分のある飲み会が多数あるところに対して、クソだなと思う人も入れば、飲み会大好きみたいな人もいるわけです。ここは違う/大したことないと分かったら、すぐに次に行きましょう。5年生ぐらいからでも、大学のカリキュラムが少し大変でも躊躇せずにぜひ見学に行ってみてください。病院見学の方が、普段の大学病院の実習よりも勉強にもなったりします。

 

 あとは、一般的な就職活動ほど大変な競争もないでもない反面、クローズドな印象です。大卒の一般企業への就職の際には最初の3年で3人に1人が離職、1年目で10%強が離職する流動性の高い場所である反面、初期研修は病気などの特定の理由がないと中断しにくい状況です(中断者は1%強のみ)。このことやその先のレールに乗り続ける一般的な既存のよくあるキャリアのことを考えると「やっぱり違ったから転職します」というわけにもいきにくく、気持ち的に難しくしている側面があると思います。それでも、何かあったら辞めることも選択肢に入れつつ、フリーズするぐらいなら一歩を踏み出してほしいと思います。

 これは私個人の覚書きのようなものですが、1人でも多くの後輩が、よりよい研修先を見つけられる手助けとなれば幸いです。2024年問題根本的に良くなっているところと、残業時間を認められずにサービス残業もしくは表面的にクリアするなど、勤務形態が大きく変化している場合もあります。残業(時間外手当)込みで稼ぐつもりであったのに残業(時間外手当)が減っていたとか、勤務形態が宿日直扱いや代休制度にシフトしていたとか、その辺りもお忘れなくチェックをお願い致します。

 

 マッチング登録の際には、自分希望順に書きましょう!システム上、1位が人気すぎるからという理由で、2位以降の希望が不利になることはありません。

 考えている病院の中から「1位に登録してもらえませんか」というようなお願いが来ることがあります。中には(本当は良くないものの)、病院と医学生の両者で確約し合うというようなことをしている病院もあります。しかし、一方的にお願いされただけの場合は従う必要はありません。上手に嘘でもいいのでかわしましょう。

 

 

お勧め外部ブログ】

 セレン様の書かれている記事が①から⑥まででとても具体的で読みやすい構成となっております。初期研修先を選ぶ際に失敗してほしくないという思いから、とても参考になるので紹介させていただきます。興味がございましたら是非お読みください。

sedoctor.hatenablog.com

 

 私のブログよりも詳しく書かれています。気になる方はぜひ見てみてください。

 

 

【関連記事】

 初期研修中断について見聞きしたこと(中断をするか悩む環境)についてもブログにしました。初期研修無事に修了するという視点から、マッチングでの研修先選びの参考となれば幸いです。例に挙げた「大変な診療科」や病院の持つ価値観のような具体例もあります。

mk-med.hatenablog.com

 

【医学部生活参考記事】

 マッチング以外に大学生活でやってきたことを勉強を中心に振り返った記事もあります。少しでも参考になる部分があれば幸いです。

mk-med.hatenablog.com

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 

 今回取り上げた書籍になります。アマゾンでの読者レビューをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。