医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

小児がんと急性リンパ性白血病 ~ゴールドリボンをきっかけに~

小児がん急性リンパ性白血病
ゴールドリボンをきっかけに~

 

1.ゴールドリボンとは

2.小児がん:日本の疫学 ~急性リンパ性白血病まで~

3.小児がんの症状や所見 ~急性リンパ性白血病まで~

 

1.ゴールドリボンとは

 今月は「ゴールドリボン 世界小児がん啓発月間」ということで、9月9日などには全国のお城やタワーなどの様々な施設が金色にライトアップされるということがありました。

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金色にライトアップ

 「ゴールドリボン」とは何のことかご存じでない人も多くいるかと思います。一方でピンクリボンなら乳がんで知っているけど、という人も多いと思います。小児がんの啓発カラーがゴールド(金色)であり、それにちなむものです。

 小児がんの支援団体はたくさんありますが、今回(今月)は小児がん啓発月間であり、ゴールドリボンということから、ゴールドリボンにちなむ団体を紹介させていただきます。

 

『認定NPO法人 ゴールドリボン・ネットワーク』 

www.goldribbon.jp

 こちらでは、小児がんの患者さんへのニット帽やマスクのプレゼント、交通費等補助制度、奨学金制度(給付型)、イベント等を行っています。もちろん、ここだけではないですが、ホームページの「応援する」というボタンからクレジットカードで簡単に寄付することができました。寄付をすると「ゴールドリボン」のピンバッジもいただけるようで到着が楽しみです。

 今回はこのゴールドリボンの啓発月間ということで、小児がんについて調べてみたいと思います。

 

 

2.小児がん:日本の疫学

 UpToDateではアメリカでの罹患率などの疫学となってしまうので、日本の疫学を探しました。小児からAYA世代(adult young adulthood世代)の0歳から39歳までに診断された人の疫学になります。(今回は小児がんということで14歳までを中心に扱います)

 

日本における0~14歳の悪性腫瘍の粗罹患率(100万人年あたり)

・男性:120.2

・女性:105.1

・男女:112.8

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0~14歳における悪性腫瘍の種類

 最も多いのが白血病(38.1%)、次いで中枢神経腫瘍(16.1%)、リンパ腫(9.2%)、胚細胞性腫瘍ならびに性腺腫瘍(7.6%)、神経芽細胞腫(7.4%)であった。

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(出典)Jpn J Clin Oncol. 2017 Aug 1;47(8):762-771. doi: 10.1093/jjco/hyx070.

 

 小児がんにおいて白血病が最も多いようです。とりわけ、急性リンパ性白血病(ALL)が内訳としても多いです。今回はこの中でも多い白血病罹患率について年齢ごとの変化を深掘りします。(中枢神経腫瘍、リンパ腫、胚細胞性腫瘍、骨肉腫などの他の腫瘍も出典の文献に記載があるので気になる方はご覧ください)

 

年齢(群)ごとにおける白血病ならびにリンパ腫の罹患率の変化

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・リンパ性白血病罹患率は小児の血液腫瘍でもっとも高く、年齢が上がることに罹患率が低下する。

急性骨髄性白血病罹患率は、0~4歳群にて高く、5~9歳群にてやや低く、その後は年齢の上昇とともに増加する。

・ホジキンリンパ腫の罹患率は20歳代ならびに30歳代にて高い。

非ホジキンリンパ腫罹患率は年齢共に増加し、30歳代では血液腫瘍にて最も高い。
(出典)Jpn J Clin Oncol. 2017 Aug 1;47(8):762-771. doi: 10.1093/jjco/hyx070.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 小児がんには様々な腫瘍があり、年齢により好発のものとそうでないものがあることが具体的に分かりました。では、小児がんに気がつくにはどうしたらいいのかについて考えてみたいと思います。

 

 

3.小児がんの症状や所見

 小児がんに気がつくためにはどのような症状があるかを調べてみました。

警告症状

 小児がんを疑う症状には次のようなものがある。詳細な病歴聴取が第一歩となり、主訴が大切である。

 

・説明のつかない顔色不良、元気のなさ

・異常なしこり、腫瘤、腫脹

・説明のつかない発熱、症状の持続

・容易に生じるあざや出血

・長期的または継続的な身体の痛み

跛行

・頻繁な頭痛(とりわけ朝に生じやすく嘔吐を伴う)

・突然の聴力または視力変化

(出典)UpToDate > Overview of the presenting signs and symptoms of childhood cancer, last  updated: Jun 09, 2021.

 

 例えば、貧血による顔色不良や元気のなさ、血小板減少による易出血性によってあざや出血(例:点状出血)は白血病でも見られますね。今回は、疫学的にも多い急性リンパ性白血病(ALL)の臨床所見について深掘りしてみます。急性リンパ性白血病症状や所見のあたりのゲシュタルトづくりが出来れば思います。

 

受診時の最も一般的な小児のALLの臨床所見

・肝腫大(64%)、脾腫大(61%)
 →臓器腫大は食欲不振、体重減少、腹部膨満、または腹痛として現れる

・リンパ節腫脹(約50%)

・発熱(≧50%):感染または腫瘍熱

・血液学的異常

 >出血(約50%):点状出血や紫斑、診断時の血小板数<100,000/microL(約75%)

 >貧血(≧50%):蒼白、倦怠感

 >白血球数:正常または増加(WBC<10,000/microLが約50%、>50,000/microLが20%)

・筋骨格系の痛み(43%)

 

一般的ではないALLの臨床所見

・頭痛(<5%)
 →白血病が中枢神経に浸潤した場合は頭痛、嘔吐、傾眠、項部硬直、稀に脳神経異常を伴う

・精巣腫大(<1%):左右差に注意
 ※白血病の再発の際には男児で最大10%に達する

・縦隔内腫瘤による上大静脈症候群(SVCS)、気管の圧迫
 →疼痛、嚥下障害、呼吸困難、頸部・顔面・上肢腫脹

(出典)UpToDate >Overview of the clinical presentation and diagnosis of acute lymphoblastic leukemia/lymphoma in children, last  updated: Apr 13, 2021.

 

 ALLの際に、稀ながらも精巣腫大の有無も生じるというのは大発見でした。ALLの浸潤・転移によるものだそうです。ALLと分かった際には身体所見としても確認を忘れないようにしたいですね。

 

 この先として小児科の疾患の深掘りか、プライマリケアでの白血病の手がかりや全体像などが気になります。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

疫学:がん患者の発熱の原因

疫学:がん患者の発熱の原因

 

1.白血病の感染源・発熱原因

2.がん患者の発熱の原因

 

 少し前のことになりますが、急性白血病の患者さんで発熱性好中球減少症(febrile neutropenia; FN)があり、血液培養は陰性であり他にも疑わしい熱源がなく、芽球割合の変化からも原因が腫瘍熱であろうということがありました。

 『発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン(2012年)ではMASCCスコアやキノロン予防投与の有無によって、静脈注射や経口、抗菌薬の種類の差こそあれ、抗菌薬が投与されます。もちろん、好中球の数が少なく易感染状態であり、先手先手に対応していくのは納得です。一方で、そのうちどれくらいの割合でどのような感染症が原因であるかといったことが気になりました。今回はそこを深掘りしてみたいと思います。

 

1.白血病の感染源・発熱原因

 

 "Causes of fever in cancer patients (prospective study over 477 episodes)"というタイトルのorginal articleを見つけました。症例の件数的には参考程度ですが、その中で白血病の患者における感染症の原因の件数をまとめたものがありました(後で固形癌含め詳しく扱います)。

 

白血病を伴う患者における感染症の原因

原因

症例数

割合 (%)

耳鼻咽喉科領域

10

16.1%

呼吸器

11

17.7%

消化器

5

8.1%

尿路

2

3.2%

神経

4

6.5%

軟部組織

4

6.5%

敗血症

3

4.8%

一次性菌血症

11

17.7%

二次性菌血症

11

17.7%

その他

1

1.6%

合計

62

100%

(出典)Support Care Cancer. 2006 Jul;14(7):763-9. doi: 10.1007/s00520-005-0898-0. Epub 2006 Mar 10.

 

 白血球患者の発熱を伴う感染症の原因として呼吸器感染症、一次性菌血症、二次性菌血症がいずれも17.7%で最も多く、それらに次いで耳鼻咽喉科(ORL)領域の感染症多いがという結果でした。この際の白血病患者はFNの状態とFNではない状態の両者が含まれています。この文献には、他にも固形癌やリンパ腫の場合の感染源の割合もあり、さらにこの文献を読み進めて行きたいと思える内容でした。

 少し脇道に逸れますが、FNのときはガイドラインにて抗菌薬投与でしたが、一方で小児の急性リンパ性白血病(ALL)ではありますが、ALL診断時の発熱のみに対して抗菌薬が必要であるのかということについて深掘りした文献も見つけました。

 

METHOD

・ALLと診断された21歳未満(診断時)

・体温(口腔)38.3℃、38℃以上にて4時間、最近の発熱、また敗血症の疑いのある発熱のみ患者

 

RESULT

・221名中126名(57%)で発熱を認め、血液培養が採取

・血液培養を採取された126名のうち、2名(1.6%)で陽性

・血液培養陽性例では、A群β溶連菌(GAS)1件と大腸菌1件

(出典)J Pediatr Hematol Oncol. 2015 Oct;37(7):498-501. doi:10.1097/MPH.0000000000000417.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 この結果を考えると、発熱のみで感染源が分からないとも考えられる発熱の場合は菌血症、敗血症の可能性は低そうです。好中球の数にもよりますが、化学療法前(診断時)なので特に好中球減少症の状態であるわけではなさそうです。このことも考慮に入れれば、当たり前ではありますが非感染性の発熱の原因(例えば、腫瘍熱、薬剤性)をしっかりと考えないといけなさそうです。



2.ガン患者の発熱の原因

 それでは先ほど紹介した担癌患者の発熱の原因というタイトルの文献から、担癌患者さんの発熱の原因について深掘りしていきたいと思います。この文献の良いところはFNの患者さんとそうでない患者さんに分けて解析している点にもあると思います。

 

METHOD and PATIENT

発熱の定義

・体温38.5℃を超える

・または38℃を超える24時間以内の2回のピーク、

好中球減少症

・好中球減少群は好中球数が500/uL未満

発熱患者の診察

・病歴

・身体診察

・胸部X線

・尿培養

・血液培養2セット

・呼吸器症状を認める場合:肺炎クラミジア、レジオネラ、肺炎球菌の血清学的検査

・疑わしい部位の培養

 

RESULT

・477 episode(371名)の前向き研究

・53名が白血病、26名がリンパ腫、292名が固形癌

・好中球減少症は24%(116 episodes)

感染症が原因:67%

・非感染症が原因:23%

・不明熱(FUO):10%

・好中球減少症の伴う感染性の原因(239/357)と好中球減少症を伴わない感染性の原因(80/115)の間に頻度の有意差はなし

 

<非感染性の原因>

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・FUOは好中球減少症群で頻度が高い〔20/115(17%)vs. 26/357(7%), p=0.0015〕

・FUO以外の原因は非好中球減少症群で頻度が高い〔92/357(26%)vs. 15/115(13%), p=0.0046〕

 

感染症の感染源>

・好中球減少症の有無による差異

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・腫瘍の種類ごとの差異

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<菌血症の病原体>

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・感染に関連する死亡率

 →好中球減少症群 4.3%(5名) vs. 非好中球減少症群 11.1%(40名) (p=0.03)

 

(出典)Support Care Cancer. 2006 Jul;14(7):763-9. doi: 10.1007/s00520-005-0898-0. Epub 2006 Mar 10.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 例えば、一次性菌血症が好中球減少症群で多いのは予想通りでしたが、意外な結果が大きく2つほどありました。1つ目は、好中球減少症の有無による感染性または非感染性の原因の頻度に有意差は認めないというのは、好中球が少ない方が感染症になりやすいような印象と異なり意外な印象を受けました。

 2つ目は、感染に関連する死亡率において好中球減少症群の方が死亡率が高いと予想していたのですが、結果は非好中球減少症群の方が死亡率が高いという結果でした。これは、好中球減少症を伴う方が治療介入等がすぐに入るから等と推測できますが、それでも好中球の数の影響よりも治療介入等によって予後が変わることに驚きは隠せませんでした(いくら好中球減少症がなくても必要であれば治療介入はすると思うので)。

 

 臨床をしている時の頻度が多そうとか少なそうとか、個人の肌感覚の怖さ(エビデンスと意外とズレている)を感じるエビデンスでした。この文献内には他にも好中球減少症群群と非好中球減少症群群の感染症全体での病原体の差異等の記載もありました。詳しくは文献をご確認ください。

 

 他にも、担癌患者の発熱の原因や病原体の疫学はエンピリックに治療をする際にも役立ちそうです。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。

塩代替物は心血管系イベントを減らすのか? @NEJM

塩代替物心血管系イベントを減らすのか? @NEJM

 

1.食塩摂取と日本の現状

2.塩代替物の有効性(心血管イベント、死亡率)@NEJM

 

 世の中では、以前から減塩というものをよく目にすると思います。高血圧のある方では、「食塩の摂取量を6g/日 未満にしなさい」とか聞いたことがある人もいると思います。もちろん、塩分使用量を素直に減らすことができれば簡単に解決する面もありますが、塩分(ナトリウム)摂取を減らす手段として塩代替物(例:低ナトリウム食卓塩)を利用した際に、減塩で目的とするような健康上の懸念事項(例:心血管系イベント)を改善できれるのかということは疑問でした。

 

  今回は同期に「循環器分野の面白い論文がないか」と聞かれて探していた時に私自身にとって興味深いものを改めてみつけることができました。またもやブログネタとしてはNEJM(New England Journal of Medicine)からですが、1回目にはスルーしていたものを再度見つけることが出来たのは同期のおかげです。タイトルも”Effect of Salt Substitution on Cardiovascular Events and Death”ということで、医学でもよくある臨床の各専門分野で尖った部分というよりも万人が興味が湧きやすい直球ストレートのような論文です。

 

1.食塩(塩化ナトリウム)摂取と日本の現状

 本題の前に日本の塩分摂取に関する現状から調べてみたいと思います。日本人の食塩の摂取量はやや減少傾向ではあるものの相変わらず、塩分摂取量は厚生労働省の推奨摂取量やWHOの摂取推奨量からすると多いのが現状です。

 

表1. 日本人の食塩摂取量の推移(20歳以上)

 

平成21年(2009年)

令和元年(2020年)

総数

10.7 g/day

10.1 g/day

男性

11.6 g/day

10.9 g/day

女性

9.9 g/day

9.3 g/day

(出典)厚生労働省:令和元年 国民健康・栄養調査の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf

 

厚生労働省の塩分摂取推奨量

・男性:7.5 g/day未満

・女性:6.5 g/day未満

(出典)日本人の食事摂取基準(2020 年版)

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

 

一般的な高血圧患者の塩分摂取推奨量

・6.0 g/day未満

(出典)高血圧治療ガイドライン2019

 

WHOの塩分摂取推奨量

・5.0 g/day

(出典)WHO Home/Newsroom/Fact sheets/Detail/Salt reduction

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/salt-reduction

 

 日本人の食塩摂取量も徐々に減少してきていますが、相変わらず世界標準から見れば塩分摂取が多いのが現状です。もちろん、食事や文化も違うのでただただ塩分だけを減らすのは難しい部分もあると思います。そこで、塩代替物で塩化ナトリウム摂取量を減らすことで心血管イベント等を減らすことができれば素敵だとも考えていました。



2.塩代替物の有効性(心血管イベント、死亡率)

 それでは”Effect of Salt Substitution on Cardiovascular Events and Death”という論文を簡単に紹介していこうと思います。

 

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METHOD

・open-label, cluster-randomized trial

・中国の農村地域の600の村

・参加者:脳卒中の既往を持つ人、または高血圧の既往をもつ60歳以上の人

・塩代替物群と通常の塩群を1:1に割付

・塩代替物:塩化ナトリウム75%、塩化カリウム25%

・塩代替物の使用量(全ての料理、味付け、食物の保存)は約20 g/day

 

RESULT

・20,995人を割付け

・参加者の中間年齢:65.4歳

・参加者のうち、脳卒中の既往は72.6%、高血圧の既往は88.4%.

・追跡期間の中間値は4.74年

 

表.塩代替物の心血管系イベントならびに死亡率への効果

Outcome

塩代替物

通常の塩

Rate Ratio (95%)

単位;件数/人年

脳卒中

29.14

33.65

0.86 (0.77-0.96)

非致死的急性冠症候群

3.79

5.12

0.70 (0.52-0.93)

死亡(全原因)

39.28

44.61

0.88 (0.82-0.95)

・不明

8.58

9.58

0.89 (0.75-0.98)

・非血管性

7.76

8.73

0.89 (0.77-1.03)

・血管性(ACSも含む)

22.94

26.30

0.87 (0.79-0.96)

 

・高カリウム血症に起因する重大な有害事象には有意差がなかった

 (塩代替物群 3.35件/1000人年 vs. 通常の塩群 3.30件/1000人年)

 

(出典)N Engl J Med. 2021 Aug 29. doi: 10.1056/NEJMoa2105675.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 興味深い内容でした。こんな介入ができるのかと驚いた面もあります。詳しくは論文をお読みください。

 一部、塩代替物の使用量が約20 g/dayというのが、摂取量ではないので通常の塩の摂取量がどの程度の人が塩代替物に変えたら効果があるのかというのは気になります。仮に元から塩分の摂取量の多い人の方が心血管系イベントが減ると考えられるので、日本人の摂取量ではどの程度の効果があるのかも気になります。

 一方で、仮にこの集団以上に塩代替物の使用量が多い場合には高カリウム血症のリスクはどの程度増えるのかも気になります。この研究は2014年4月から2015年1月に登録された人であることも踏まえつつ、中国人の塩分摂取量を調べてみたいと思います。

 

 2010年から2012年における成人の中国人の塩分摂取量は9.6 ± 0.3 g/dayであり、男性では10.4 ± 0.4 g/day、女性では8.8 ± 0.3 g/dayであった。

(出典)Zhonghua Yu Fang Yi Xue Za Zhi. 2016 Mar;50(3):217-20.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 多少、年は違いますが数年では塩分摂取量は大きくは異ならないと思います。あとは、農村地域と都市部の違い等を考慮する必要はありそうですが、日本と同じく世界的には塩分摂取が多い地域であると考えられそうです。

 

 そうすれば、日本人でも塩代替物による効果も期待できそうです。もちろん他の因子だけでなく、個人的には味とか他の面での違いも気になりますが…。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。

失神と臨床予測ルール(CPR) San Francisco Syncope Rule & Canadian Syncope Risk Score

失神の臨床予測ルール(CPR)

 

1.失神の臨床予測ルールの全体像

2.San Francisco Syncope Rule 

3.Canadian Syncope Risk Score(JAMAの文献あり)

 

 

 前回、一過性意識消失の鑑別として失神と痙攣があり、両者を区別する「Historical Criteria」を紹介しました。

mk-med.hatenablog.com

 

 その後、失神についてさらに調べることにし、失神についての臨床予測ルール(CPR)を探していました。San Francisico Syncope Rule(”CHESS”)やCanadian Syncope Risk Score(CSRS)あたりは項目こそしっかり覚えていたわけではないにしても、名前も知っていたのですが、探せば探すほど想像していた以上に様々なCPRが多く、どれがいいのかも分からなくなってしました。

 

1.失神の臨床予測ルールの全体像

 まずは臨床予測ルールの全体像から把握してみたいと思います。Systematic Reviewにとても便利な表を見つけました。

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pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 主な失神の臨床予測ルール(CPR)がまとめられています。上記の6つのCPRですが、短期間のリスク評価するものと、長期間のリスク評価をするものに分けられます。

 

<短期間のリスク評価>

・Boston Syncope Rule(30日間)

・Canadian Syncope Risk Score(30日間)

・ROSE study(1ヵ月間)

・San Francisco Syncope Rule(7日間)

 

<長期間のリスク評価>

・EGSYS score(2年間)

・OESIL risk score(1年間)

 

 救急外来で失神となれば、その場で入院として経過観察をするかという視点も入って来ると思います。そういう意味では長期間のリスク評価をしたものでは、後日の外来フォローでいいのかがはっきりしない印象を受けます。そういう意味では短期間のリスク評価をしたものの方が使いやすいような気がします。

 

 他には感度や特異度という視点で見てみたいと思います。特に救急外来で引っかけると考えれば感度が大切であると思います。そういう意味ではROSE studeyは感度が低く、EGSYS Scoreもやや低い印象を受けます。

※Canadian Syncope Risk Scoreに関してはこの文献が発表された時には、Validation(検証)中でしたが、感度97.8%、特異度44.3%でした(詳細は後半へ)。

 

 すると、引っかけるという視点から感度が高いものは下記の4つになります。

感度が高いもの

・Boston Syncope Rule

・Canadian Syncope Risk Rule

・OESIL score

・San Francisco Syncope Rule

 

 このうち、OESIL scoreは長期間のリスク評価であることや、Boston Syncope Ruleが25項目の変数があることによりあまり実践的ではないと記載があります。そういう意味では、Canadian Syncope Risk ScoreとSan Francisco Syncope Ruleが使いやすいと考えられます。



2.San Francisico Syncope Rule

 チェックすべき項目がCHESSというネモニクスまであるSan Francisco Syncope Ruleから紹介します。

 

“CHESS”

C: Congestive heart failure history

うっ血性心不全の既往

H: Hct <30%

ヘマトクリット値<30%

E: ECG abnormal

心電図異常(変化)

S: Shortness of breath history

呼吸困難

S: Systolic BP < 90 mmHg

収縮期血圧<90mmHg

下記の項目の1つでも満たす場合、7日以内の重篤なイベントが生じるとされる(感度98%, 特異度56%)

 

 確かに5項目で単純明快、使いやすいですね。それでいて感度も高いというのもメリットであると思います。



3.Canadian Syncope Risk Score (CSRS)

 簡単に振り返ります。スコアリングは下記の通りです。

項目

点数

臨床評価

 

・血管迷走神経症状らしい素因

-1

・心疾患の既往

1

収縮期血圧<90 mmHgまたは>180 mmhg

2

検査

 

・トロポニン値の上昇

2

・QRS軸の異常(<-30°または>100°)

1

・QRS幅>130ms

1

・QT間隔>480ms

2

救急での診断

 

・血管迷走神経性失神

-2

・心原性失神

2

上記のスコアリングにて-1点以上の場合の重篤なイベントが生じるとされる(感度97.8%、特異度44.3%)

 

 先述のSan Francisco Syncope Ruleに比べて項目も多く、点数化もやや複雑な気がします。もちろん、-1点を閾値にした際に多くの人を引っかけられているということもできますが、引っかけるだけであればSan Francisco Syncope Rule "CHESS"で良いような気がします。

 

 Canadian Syncope Risk Scoreのメリットは、点数化によるリスク階層ごとの評価にあると思います。検証された文献を用いて詳細を確認します。まずはスコアリング(血管迷走神経症状らしい素因等の詳細含む)から、最終的にはCanadian Syncope Risk Scoreによるリスク階層別の評価を確認します。

 

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<点数によるリスク階層分け>

・-3点から-2点:very-low risk群

・-1点から0点:low risk群

・1点から3点:medium risk群

・4点から5点:high risk群

・6点から13点:very-high risk群

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(出典)JAMA Intern Med. 2020 May 1;180(5):737-744. doi: 10.1001/jamainternmed.2020.0288. 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 Very lowリスク群とLowリスク群の死亡率は1%以下であり、Mediumリスク群の死亡率は10%弱、Highリスク群の死亡率は約20%、Very highリスク群は約50%という結果でした。感度が高いのでただ重篤な結果になりそうな人を引っかけるだけでなく、この人は点数的にやや危ないのか、危ないのか、とても危ないのかという辺りまでイメージできるのが良いと思います。

 

 

~最後に~

 重篤な結果になりそうな人を簡便に拾い上げるという意味ではSan Francisco Syncope Ruleの”CHESS”リスク階層別に具体的に可能性をイメージしながら重篤な結果になりそうな人を拾い上げるにのCanadian Syncope Risk Scoreが良さそうです。

 また、MKSAP18の失神の項目では起立性血圧の測定を推奨していたりと具体的な診察についてはMKSAP等の失神の項目を学ぶのも良さそうです。 

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

新型コロナワクチンの安全性(有害事象) @NEJM

新型コロナワクチンの安全性(有害事象)を調べてみる!

 

1.調べたきっかけ

2.ファイザー製コロナワクチンの安全性(有害事象)@NEJM

※(お断り)このブログ記事は、紹介する内容・文献が未来半永久的に絶対的に正しいという主旨ではなく、普段このような感じで疑問等を感じて調べているという過程を紹介する一例になります。

 

1.調べたきっかけ

 ブログ記事にしているうちに日付が翌日になってしまいましたが、8月26日の朝のYahoo!ニュースにて、ファイザー製ワクチン 3ヵ月後の抗体量4分の1に』というタイトルのニュースが飛び込んできました。

 

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(出典)https://news.yahoo.co.jp/articles/4df059bb27de5a56326b68eecbfe34f8795610c1

 

 

 正直なところ、まったくの深掘りもない記事で文章はたったのこれだけでした。具体的な抗体価の数値も記事中の文字になければ、日本のマスコミらしい記事でした。これだけ見れば、最後の文章の「量の減少がワクチンの発症予防効果にどの程度影響しているかは今後も研究が必要」という部分の印象はほとんど残らず、この先の結果によらず「ワクチンは効かない」というような不安も残しそうです(もちろん、本当に有効性が抗体価がある一定以下になることで効果がない可能性もありますが、それ以上に印象だけで操作されている感じがします)。

※マスメディアについての常日頃からの意見等はありますが、本題ではないので今回はこれぐらいにて割愛します。

 

藤田医科大学のホームページにて詳しいものを見つけました。

ファイザー社の新型コロナワクチンで、接種約3ヶ月後に抗体価が低下することを発表しました | 藤田医科大学 - Fujita Health University

 

 まだ、論文としてアクセプトされたものではなく、209名の抗体価(IgG)の結果が出たというプレスリリースというところでしょうか。特に論文へのリンク等はありませんでした。抗体価そのものは2回目ワクチン摂取後14日目で高く(20~30歳代、40~50歳代で約250 U/mL、60~70歳代で約150 U/mL)、2回目ワクチン摂取後3か月目に低下している(約50 U/mL)という結果でした。抗体価低下が風疹等ではワクチンの再接種の目安になってたりというのもあるので一理はあるとは思いますが、獲得免疫ができればある程度下がっても問題ないと思います。さらにワクチン接種後に感染という刺激がなければ抗体価はワクチン接種時(2週間後)ほど高くならないというのは当たり前ではないでしょうか?「抗体価の減少≠獲得免疫の消失」なので、どの程度の抗体価減少で感染の重症化の程度にどの程度影響があるのかの続報が必要かと思います。抗体価だけでなく、その中和抗体の中和能力の高さの変化(中和能力がより高いものがつくられている等)があれば、そのことも考慮しないといけません。

 「抗体価の低下がどの程度ワクチンの発症予防効果、重症化予防効果などの低下を示しているかは今後も研究が必要」と先ほどの藤田医科大学のホームページに書いてあります。やはり今後の研究結果を待ちたいですね。今後、どのような結論になるのかが気になります。

 これをきっかけに新型コロナワクチン(ファイザー製)を打つことになったらという視点で有害事象について再度調べてみました。最近、忙しさ等のために追えていなかった新型コロナウイルスに関する科学的な情報のアップデートを行いました。有名Journalの最近のもののタイトルを見ながらチラ見をし、Pubmedgoogle Scholarでの検索も軽くしてみました。その際にNew England Journal of Medicine (NEJM)でワクチンの有害事象についての文献をタイムリーに見つけたので紹介します。

 

 

2.新型コロナワクチンの安全性(有害事象

 ファイザー新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンBNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine)の安全性についての論文です。国レベルの広範囲・大人数での安全性(有害事象: adverse events)について調べたものになります。NEJM 2021年8月25日号の“Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting”という論文です。

 イランにおける884,828人のワクチン摂取群と同人数の対照群を比較したものになります。

 

f:id:mk-med:20210827011232j:plain

(出典) N Engl J Med. 2021 Aug 25. doi: 10.1056/NEJMoa2110475

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2110475

 

 10万人あたりの差異になります。そもそも10万人あたりの差異ですので、そこまで差が多くはないですが、ここで有意差があったものは次の通りです。急性腎障害、貧血、頭蓋内出血、その他血栓症にてなんと減少傾向が認められました。虫垂炎帯状疱疹、リンパ節腫脹、心筋炎の増加傾向が認められました。もちろん有害事象が報告レベルであり、しっかりと因果関係が分かっているものだけではなく相関関係といったレベルのものも含まれています、

 しかし、この論文の良いと感じるところはこの後に新型コロナウイルス感染症になった際ワクチン接種の際をも比較しているところです。

 

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2110475/20210824/images/img_xlarge/nejmoa2110475_f3.jpeg
Figure3. Risk Ratios for Adverse Events after Vaccination or SARS-CoV-2 Infection.

 

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2110475/20210824/images/img_xlarge/nejmoa2110475_f4.jpeg

Figure4. Absolute Excess Risk of Various Adverse Events after Vaccination or SARS-CoV-2 Infection.

(出典) N Engl J Med. 2021 Aug 25. doi: 10.1056/NEJMoa2110475

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2110475

 

 例えば、心筋炎や深部静脈血栓症はワクチン接種でも相対的に増えていますが、新型コロナウイルス感染症となればさらに深部静脈血栓症になる可能性が高いということができます。理由までは分かりませんが、貧血や頭蓋内出血に関してはワクチン接種をした方が少ないという結果になっています。

 もちろん、ワクチン接種をした人とワクチンを接種しなかった人でどれほどかかりやすさが違うか等の考慮は必要ですが、「ワクチンを打てば有害事象が生じうるものの、新型コロナウイルス感染症にかかればワクチン接種のときの有害事象と同様の症状等が生じうる」ということや新型コロナウイルス感染症にかかればもちろん他の症状が生じることを暗に示してくれているように感じます。

 ワクチンの有害事象も考えることは大切ですが、そもそものワクチンの恩恵を忘れてもいけないということですかね。その両方を忘れずに両方をアップデートし、各個人に合わせて判断していく必要性を感じました。

 

 他にも、国や人種さらには環境や背景が異なること、ワクチン接種した人の年齢の中間値が38歳であること(日本の高齢者接種より若い)等をどのように、どの程度、自分自身の現場や日本全体に当てはめていくかという課題はありますが、とても参考になると思います。

 

 あくまで私自身のさらっと目を通した解釈になります。新型コロナウイルス関連の論文は無料で読むことができます。読みやすい英語で書かれていますので、是非原文に目を通してみてください(下記URL)。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2110475

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

本:こんなときオスラー -『平静の心』を求めて

『こんなときオスラー - 『平静の心』を求めて』

平島修、徳田安春、山中克郎(著)

 

 かの有名なウィリアム・オスラー先生のお言葉を残してくださった故 日野原重明先生の『平静の心』をさらに読みやすく、とっつきやすくしてくださった書籍です。

 しかも、総合診療に関することを学んだ人であれば、知らない人はいないであろう平島修先生、徳田安春先生、山中克郎先生が書かれています(私自身も大変お世話になりいました)。具体的に『平静の心』からオスラー先生のお言葉を引用しつつ、具体例や症例を持ちながら、分かりやすく説明してくださっています。

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https://www.amazon.co.jp/dp/4260036920/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_5BJS8QEFG8668CHZYPZS

 

【こんな人におススメ】

医学生や医師としての理想的な心構えが欲しい人

・時代を超えたメンターが欲しい人

医学生や医師として生涯成長し続けたい

・『平静の心』を読んでみたいけど、とっつきにくさを感じる

 

 この本のタイトルの一部にもある『平静の心』は、故 日野原重明先生がウィリアム・オスラー先生のお言葉を後世に残してくださった素敵な書籍です。やはり忙しいときに読もうと決心するのはしんどい時もあると思います。そのような時でも、オスラー先生の素晴らしさに触れることができる書籍になります。『平静の心』をすでに読んだという人にとっては解説から平島修先生、徳田安春先生、山中克郎先生のご自身での経験を交えた解説の素晴らしさに触れることができる書籍であると思います。

 では、具体的に紹介していきます。思ったよりも説教地味ていないところも素敵なところかと思います。

 

1 医師という職業に挫折しそうになったとき

 オスラーの理想と実践

(実習でのエピソード:病歴聴取の際に、「ちゃんとわかっている医師に代わってください」と患者から言われ、翌日に病院実習に行くのが億劫になっていた。)

オスラー先生の言葉:私が理想とするものの1つは、その日の仕事を精一杯やり、明日について思い煩わないことである。この理想だけでは満足できないと今まで言われてきたが、私にはそうは思われない。この理想で十分に事足りる。(中略)その日の仕事に徹して、自分の能力を最大限に発揮する努力をし、明日のことは明日に任せるという能力に、私はどれだけ恩恵をこうむってきたことであろうか。

 

 やはり、目の前のことに集中することの大切さを説いています。しかし、このように言われても目の前の事だけに徹することがどれだけ難しいことかと感じる私自身もいます。確かに納得ですが、具体的にどのように対処していくのかにも興味があります(むしろ、私自身は目の前のことだけでなく翌日以降のことにも気を割いていました)。

 これを本当に実行できることのすごさがオスラー先生ではないのでしょうか。私自身は、今日のようにならないようにと何か準備はできないかと空回りしてしまいそうな気がします。

 

2 理想的な医師になりたいとき

オスラー先生の言葉;一般の医師は、世の人々のために熱心に働く。この自己犠牲を伴う献身的な態度が、ひいては立派な仕事の刺激となるのである。

 

 もはや、これは医学部の入試の際の面接での模範解答のようです。もちろん、このような考えは医師を志すものとして誰もが持っていると思いますが、われわれ人間が100%これだけで行動できるかは疑問です。もちろん立派な仕事の刺激になる場面は多いと思いますが、守るべき人やもの(ホームがあるからこそ頑張れる)が崩壊しかけたりしないようにも配慮しながら、こなせる力が必要そうです。

 

5 医師として最終的に勝利を収めたいとき

 医学は「人類への奉仕」である

オスラー先生の言葉;最終的に勝利を収めるには、できうる限り骨を折り、労を惜しまないことである。(中略)手がけている内容が取るに足らないものであったにせよ、全精力を傾ける意気込みでやり、やり遂げたあとは批判的な眼でその成果を点検し、容赦せず自分自身に厳しい審判を下すとよい。

 

 たしかにその通りでございます、としか言いようのない内容です。例に野球選手のイチロー選手のことも書いてあり、粘り強く努力を重ねること「グリッド(grid)」が大切であると書かれていますが、継続するための方法を自分なりに探すことが課題になりそうです。

 

 いかがだったでしょうか?

 やはり、崇高な理想であると感じました。他にも日野原重明先生が書かれた『平静の心』には医学生に向けて「二十五年後に」ということで、次のようなことも書かれていました。

・余技となるもの(芸術、科学、文学の世界と接触を持つのに役立つ知的な気晴らし)を持つように心がけるべきである

・勉学に純粋で熱烈な喜びを味いつつ、勉学に没頭するあまり他の関心事を排除するようなことはあってはならない

・仲間の学生に交わってスポーツや娯楽を共にすべき

 

 私自身の拙い言葉で言い換えれば、いわゆるスーパーマンでしょうか。確かにこれだけのことがすべてしっかりとできている医学生お手本でしょう。多くの人がこのようなお手本となる医学生になりたいと少なくとも一度は感じたことがあると私は思います。しかし、このようになりたいと心では思っていても理想像ばかりでは辛いことも多いと思います(特にバーンアウトしかけた時や理想を追うことに疲れた時)。実際にどのようにして達成していくかという具体的な方法論については分からないと感じたり、基本的には具体的な達成方法の記載はないという印象も受けました。私自身はコーチング(PX2)を受けたことがあり、一部の方法等に違和感の様なものを感じる場面もありました。

bwf.or.jp

 

 個人的な見解では、好きで熱中している姿が、周りから見たら「頑張っている」というように理解されるような現象でしょうか。しかし、いずれにせよオスラー先生が聖人君子的な理想の医師像であると感じずにはいられませんでした。そこまで突き進むことができたゆえの当たり前の結果なのかもしれません。

 

 医師を志した人の多くにはオスラー先生の様な理想の医師像があると思います。一方で、以前紹介させて頂いた『医師の感情』のような「平静の心」が崩れるときにどのように対処していくかも大切であると再認識しました。以前のブログの記事でも紹介いたしました。

mk-med.hatenablog.com

 

 理想を追求するためにどうするかを考えてみます。さきほども述べましたが、「平静の心」を維持していく具体的な方法を考えていかないといけないと感じた書籍でした。むしろ、多くの人はそこが課題になるのかもしれません。

 私は、根本的な全体のゴールはコーチンで学びました。さらには、

・感情をコントロールする技術

・効率的な方法

タイムマネジメント

・学習法

というようなことを具体的に他の本などで学ぶことは必要だと思います。Amazonや書店で本を探してみるとよいと思います。このような具体的な方法を考える前に、医師の理想像について考えるきっかけ(鵜呑みにするという意味ではなく理想の医師像の一例やヒント)となる本が『平静の心』やこの『こんなときオスラー』であると思います。特に『こんなときオスラー』は読みやすく、始めるきっかけになると思います。

 

 これをきっかけに『こんなときオスラー』、さらには『平静の心』を読んでみたいと思う方は是非、手に取ってみてください。

『こんなときオスラー』https://www.amazon.co.jp/dp/4260036920/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_5BJS8QEFG8668CHZYPZS

『平静の心』

https://www.amazon.co.jp/dp/426012708X/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_GJTMW3QJ11HKKW8GZ9Z2

 

 また、自分自身の環境や心境が変わった際に再び読んでみてどのように感じるかも気になるものです。

 本日もお読みくださりありがとうございました。

意識消失の鑑別 失神 vs. 痙攣 ~Historical Criteria~

意識消失の鑑別

1.意識障害

2.一過性意識消失:失神、痙攣 → Historical Criteria

 

 意識消失の患者さんと聞くと、「失神、痙攣、意識障害のどれ??」ってなることがあると思います。3つのうち、どれかによって鑑別疾患も異なれば検査も異なってきます。まずは、意識消失を分類してみたいと思います。

 

 大きくは意識障害が一過性かどうかになってくると思います。一過性でなければ、来院時も意識障害(診察中にも改善していかない意識障害)があるわけです。一方で、一過性意識消失であれば、来院時には意識障害がなく(もしくは診察中に意識障害がなくなっていく)と言えます。

 実際には失神であれば、来院時には意識障害はなく、痙攣であれば意識障害が徐々に良くなっていくようなイメージですかね。

 

 では、それぞれ意識障害と一過性意識障害についてまとめて行きたいと思います。



1.意識障害

 意識レベルが低下したままであれば意識障害と考えることが出来ます。意識障害の場合は、まずDo DON'T、次に疑わしい鑑別、最後にAIUEO-TIPSといったところでしょうか。

 Do DON’Tは知らない人もいるかと思いますので念のため紹介しておきます。DON'Tの頭文字から来ているネモニクスです。低血糖、低酸素、麻薬、ウェルニッケ脳症を念頭にしたものです。

・D:ブドウ糖(dextrose)

・O:酸素(oxygen)

・N:ナロキソン(麻薬拮抗薬)

・T:チアミンビタミンB1



2.一過性意識障害:失神、痙攣

Historical Criteria まで~

 もし、意識消失を主訴にして来院したとしても来院時に意識障害がない場合は、失神(syncope)か痙攣(seizure)か分からなくなると思います。もちろん、失神か痙攣でその先の検査や鑑別疾患は異なってきます。

 例えば、失神か痙攣のいずれであるかを判断する際に、失神の方が意識消失時間が短いのですが、来院時に意識障害がなければ、どちらであるかははっきりしません。もはや、病歴(目撃情報が大切)、舌咬傷(側縁)の有無といった身体診察を元に考えていくしかないと思います。その際に、何となく失神っぽいとか痙攣っぽいとかだけでなく、どのような病歴や身体所見等があれば失神らしいのか、痙攣らしいのか調べてみました。

 

<失神と痙攣の鑑別>

 

失神

痙攣

顔色

青(顔面蒼白)

赤(怒責その後チアノーゼ)

冷汗

あり

なし

痙攣

意識消失後に数秒

いきなり数十秒以上

舌咬傷、泡

なし、あっても舌先端

あり、舌側縁

尿・便失禁

なし、時々尿失禁

あり

首、眼位

首は下がる、眼球上転

一方向に持続

誘因、状況

あり

なし(予兆はありうる)

直前の症状

動悸、嘔気、熱い感じなど

既視感、匂い・味など

意識消失時間

20秒以内、座位だと長い

長い、30秒以上

意識消失時のトーヌス

弛緩性、長時間では緊張

緊張、まれに弛緩性痙攣

回復

早い

ゆっくり、意識朦朧

回復後の症状

血管迷走神経失神では嘔気

意識障害、興奮

逆行性健忘

なし

あり

徐脈

迷走神経ではあり

なし、頻脈が多い

Todd麻痺

なし

ありうる

既往歴

なし、心血管系疾患

てんかん、アルコール、脳卒中

呼吸

保たれる

無呼吸その後頻呼吸、叫び声

怒責による点状出血

なし

ありうる

褥瘡

なし

ありうる

乳酸・アンモニア

正常

上昇

CK

正常

上昇

(出典)ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第2版

 

 上記が失神と痙攣の比較項目のようです。思ったより項目が多くてビックリしました。しかし、失神と痙攣を鑑別する際に、どのような症状や所見にどの程度の重みがあるのか(鑑別に重要か)について深掘りしてみたいと思います。

 

 一過性意識消失(transient loss of consceiness)における失神と痙攣の見分け方にも臨床予測ツールがあり、Historical Criteriaというものがあることを知りました。

 

<Historical Criteria>

項目

点数

舌咬傷

2

異常運動:昏迷・異常体位・四肢の痙攣様運動

1

情動的ストレスを伴う意識消失

1

既視感や未視感といった前駆症状

1

前失神

-2

長時間の起立や座位での意識消失

-2

発作前の発汗

-2

 上記のスコアの合計が1点以上であれば、痙攣らしいとする臨床予測ルールです。

 (合計1点未満は失神らしい)

 

 実際にどの程度の感度や特異度であるのか、尤度比なんかも気になります。今回はこのHistorical Criteriaについて深掘りしてみます。

 

 “Historical criteria that distinguish syncope from seizures”というタイトルの通り、671名の一過性意識消失の患者(うち痙攣が102名、失神が437名)において118項目の病歴等に関する質問を元にしたです。

 まずは痙攣らしい項目(症状等)は下記の通りです。

f:id:mk-med:20210809175527j:plain

(出典)J Am Coll Cardiol. 2002 Jul 3;40(1):142-8. doi: 10.1016/s0735-1097(02)01940-x.

 

 思ったよりたくさんあるといったところでしょうか。ここから、陽性尤度比の高いもの(痙攣らしいもの)と陽性尤度比が低いもの(失神らしいもの)を組合せて臨床予測ルールにしています。この文献内では痙攣の回数(number of spells)が30回を超えるかの有無で2パターンの臨床予測ルールを作りましたが、痙攣の回数という項目はなくても大差がないというよりむしろ回数の項目がない方が良いということでした(笑)。そこで痙攣の回数という項目はない臨床予測ルールになったようです。

 

 では、実際の臨床予測ツール(Historical Criteria)の各項目の詳細と感度、特異度は次のようにあります。

f:id:mk-med:20210809175605j:plain

f:id:mk-med:20210809175619j:plain

(出典)J Am Coll Cardiol. 2002 Jul 3;40(1):142-8. doi: 10.1016/s0735-1097(02)01940-x.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 スコアが1点のときが痙攣の感度94%、特異度94%ととても高いものになっています。2点以上であれば、100%痙攣(実際には100%とは言えなくてもかなりの確率で痙攣)といえます。-1点や0点は感度は100%あたりで特異度も70-80%程度あるので、痙攣か失神か悩むことになりそうです。

 

 失神か痙攣かで行う検査なども異なってくるため、どちらか迷ったときにはスコアリングしてみることも有用だと感じました。

 失神であると分かれば、臨床予測ルール(CPR)としてはSan Francisico Syncope Rule"CHESS"をチェックする、OESIL Risk ScoreCanadican Syncope Risk Scoreをチェックするというようなことになると思います。これらのCPRの統計的な調査の対象等は気になるところ・掘り下げてみたいところがあり、より最近の状況・自身の環境での適応具合も気になりますね。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。

 

【関連記事】

 失神の臨床予測ルールnについてもブログ記事を書きました。よろしければ、こちらをご覧ください。

mk-med.hatenablog.com