いつ取る!? 血液培養
~悪寒戦慄、発熱の程度、Shapiroのルール、qSOFA等~
<目次>
病棟での発熱報告、救急外来での発熱患者等、発熱患者対応する機会のない方はほとんどいないと思います。一方で、特に深夜の病棟などの状況によって血液培養を取るべきか悩むことはありませんか。
今回は血液培養を取るかの判断の際のヒント探しをしてみたいと思います。
1. Shapiroのルール
まずは、血液培養をどのような時に取るべきかを探った臨床予測ルールのようなものがあります。Shapiroらによって書かれた論文のため、「Shapiroのルール」と呼ばせて頂きます。
それでは中身をチェックしていきます。
血液培養採取のための臨床予測ルール
- 大学附属の3次救急病院の救急外来に来た成人男性の前向き観察研究
- 対象:受診または入院後3時間以内に血液培養を採取した患者3901名
血液培養 Shapiroのルール 大基準1つ以上または小基準2つ以上を満たす場合に血液培養を採取
- 大基準:体温 > 39.5℃、血管カテーテル留置、心内膜炎疑い(臨床上)
- 小基準:体温38.3℃~39.4℃、年齢 > 65歳、悪寒、嘔吐、血圧低下(収縮期血圧 < 90 mmHg)、好中球割合 > 80%、白血球数 > 18000/µL、桿状核球割合 > 5%、血小板数 < 15万/µL、クレアチニン > 2.0 mg/dL
上記基準を満たさない場合は低リスクとし、低リスク患者では血液培養陽性者は4名(0.6%)であり、感度は96%(95% CI, 94-100%)であった。
- 各項目の尤度比は次の通りであった。
血液培養 病歴・所見等のオッズ比 (出典)J Emerg Med. 2008 Oct;35(3):255-64. doi: 10.1016/j.jemermed.2008.04.001. Epub 2008 May 16.
各項目の陽性尤度比は心内膜炎疑い(OR 6.5)、体温>39.4℃(OR 4.8)、血管カテーテル(OR 3.4)、悪寒(OR 2.3)、Cr > 2.0 mg/dL(OR 2.2)、好中球割合 > 80%(OR 2.0)と続くものの、それ以外の項目〔体温>38.3℃、血圧低下(sBP < 90 mmHg)、嘔吐、白血球数>18,000個/mm3、桿状核球>5%、血小板数<15万/mm3)の陽性尤度比は2未満であり、多くの所見はあくまで組合せで、そこまでひとつの所見での特異性はなさそうです。
ただし、菌血症・敗血症を引っかけることを目的とすれば、やはり感度の方をある程度優先して考えることになると思います。
それぞれの項目に注目してみると、「嘔吐」という項目に関しては、腎盂腎炎・敗血症性アシドーシス、さらに考えていって急性腎障害による尿毒症、敗血症の原因が消化管の場合等には分かりますが、何にでもオールマイティに使えるとも限らない項目もあります。そういう意味では組合せといったところでしょうか。
ただし、このShapiroのルールの項目だけでなく、悪寒と比べて悪寒戦慄の方が菌血症に対する尤度比が高いというような論文や、体温(発熱の程度)と血液培養の陽性率に有意差がないとするような論文もあり、それらも紹介したいと思います。
2. 発熱・悪寒の程度と血液培養等
先ほどは、Shapiroらによる臨床予測ルールのようなものについて触れてみました。他にもJAMAの総説等もあります。やはり血液培養を取るタイミングについて悩むことが多いのでしょうか。
発熱が高ければ高いほど、血液培養が陽性になりそうというイメージとは異なる結果も紹介されています。
発熱や悪寒と血液培養陽性
発熱や悪寒の程度と血液培養陽性
- 血液培養が陽性(菌血症)であるための陽性尤度比は、悪寒(発熱患者) 2.2 (1.4-3.3)、悪寒(発熱の有無によらず) 1.6 (1.3-1.8)、主観的な発熱の訴え(subjective fever) 1.0 (0.96-1.1)、悪寒戦慄 4.7 (3.0-7.2) 、体温40℃以上 0.3 (0.13-1.0)、体温39℃以上 1.1 (0.79-1.6)、体温 38.5℃以上 1.4 (1.1-2.0)、体温 38.3℃以上 1.2、体温 38.0℃以上 1.9 (1.4-2.4)、体温 37.8℃以上 1.5 (1.2-1.9) であった。
感染部位と血液培養陽性率
- 低リスク群:蜂窩織炎 2%、救急外来患者 2%、市中肺炎 7%、市中発症で入院となった発熱患者 13%
- 中リスク群:腎盂腎炎 13%
- 高リスク群:重症敗血症 38%、急性細菌性髄膜炎 53%、敗血症性ショック 69%。
SIRSと血液培養陽性
- SIRSの際には、感度0.80 (0.64-0.90)・特異度0.47 (0.41-0.53)・陽性尤度比1.8 (1.6-2.0)とする報告や、感度0.96 (0.74-1.00)・特異度0.27 (0.19-0.23)、陽性尤度比1.1 (0.89-1.4)とする報告がある。
(出典)JAMA. 2012 Aug 1;308(5):502-11. doi: 10.1001/jama.2012.8262.
発熱の程度ごとの陽性尤度比を見ていると、先ほどのShapiroのルールとはまた異なる点が見えてきます。今回の論文で最も気になる部分は「悪寒」の程度(戦慄の有無)による陽性尤度比の差だと思います。戦慄まである場合は比較的尤度比が高いですが、それ以外はそこまでで微妙ですね。過去にも詳しく取り上げていますので、詳しくは下記記事をご覧ください。
あとは発熱の程度も39℃を越えてきたあたりから、逆に菌血症(血流感染)らしくなくなるというのは少し意外に感じました。
SIRS(Systemic Inflammatory Response Syndrom)も、① 体温< 36℃または>38℃、②脈拍 90回以上、③呼吸数>20回/分またはPaCO2<32 mmHg、④白血球数<4,000/µLまたは12,000/µLまたは幼若好中球>10%の4項目うち、2項目以上満たす場合ですが、感度が高いと思っていたのですが、感度80%という報告もあるので、ぼちぼちといったところでしょうか。
もう一つの視点として、どこの感染症かによって菌血症(血液培養陽性)となる確率が異なってきます。例えば、典型的な蜂窩織炎(低リスク群の感染症)と判断できるのであれば、血液培養は取らなくても良いだろうとか、感染症ごとの血流感染症のリスクの高低も考える一助にはなると思います。
総説をみていると、様々なものがある程度幅のある結果ですが、いろいろと組み合わせるしかないのかなといったところに感じます。感度も特異度のどちらかだけでも頼りにするというのも少し厳しそうです。前回の記事の肺炎の診断に似ているようにも感じました。
3. qSOFA・プロカルシトニン等
SIRSと来たら、次はquick SOFA(qSOFA)についても触れておきたいと思います。過去の記事でプロカルシトニンと一緒に触れているので、こちらでは簡単に触れておきます。
qSOFA
- 菌血症(血液培養陽性)となる陽性尤度比は、qSOFA≧2点で2.46(95% CI, 0.76-9.05)、頻呼吸(呼吸数≧22/分)で4.06(95% CI, 1.92-9.58)であった。
プロカルシトニン/CRP
- 最も鑑別に優秀なバイオマーカーはプロカルシトニンでAUC 0.80(95% CI, 0.72-0.88)であり、プレセプシン(P-SEP)がAUC 0.69(95% CI, 0.60-0.79)、CRPがAUC 0.60(95% CI, 0.49-0.70)と続いた。
- プロカルシトニンのカットオフを0.377 ng/mLとすると、菌血症である感度74.1%、特異度73.7%であり、陽性尤度比は2.82であった。
(出典)Sci Rep. 2022 Jul 1;12(1):11121. doi: 10.1038/s41598-022-15408-y.
qSOFAは、①呼吸数 ≧ 22/分、②収縮期血圧 ≦ 100 mmHg、③意識障害(GCS<15)の3項目のうち2つ以上満たす場合に陽性となります。この中でも呼吸数(頻呼吸)の陽性尤度比が高いようです。敗血症によるアシデミアでの代償(呼吸性アルカローシス)でしょうか。
SOFAやqSOFAは臓器障害をチェックするのを基本的な目的で作られているので、菌血症・敗血症だけを主眼においているわけでもありません。そう考えると、この程度の陽性尤度比でしょうか。
2025年にJAMAでSOFA-2スコアが話題になりました。SOFA-2スコアと菌血症の関係についての直接的な論文が出てくることに期待しつつも、主眼はあくまで臓器障害であり菌血症とは異なるのでどれほど有用なのかも気になるところです。
プロカルシトニンは使えないこともないかもしれませんが、プロカルシトニンの結果が出てから、血液培養を取るかを判断するのも遅い、手順としても他の採血もするときに1セットだけでも取っておきたいと思うので、やはり微妙だと思います。
CRPであれば、前医(開業医の先生)からの診療情報提供書等で知ることができることも多いと思いますが、さすがにプロカルシトニンまでその場で測れる開業医は「本当に開業医かな?」と感じます。
こちらの2項目は過去記事で詳しく取り上げています。よろしければ、下記の記事をご覧ください。
4. 血液培養を取る際に
それでは、実際に血液培養を採取するとなったら、しっかりと”あるべきもの”は陽性にして結果を参考にしたいと思いませんか。「しっかりと陽性のときには陽性にする」ためにはどうしたらよいかという視点を追加したいと思います。
4-1. 血培は何セット?
今さらかもしれません。「血液培養は2セット」と言われる所以について紹介しておきたいと思います。
入院24時間以内に採取された血液培養
- 3回以上の血液培養が実施された単一菌種のエピソード629例のうち、460例(73.1%)は最初の血液培養で検出され、 564例(89.7%)は最初の2回の血液培養で検出され、618例(98.2%)は最初の3回の血液培養で検出され、628例(99.8%)は最初の4回の血液培養で検出された。
- 24時間以内に4回以上の血液培養が実施された単一菌種感染エピソード351例のうち、 257例(73.2%)は最初の血液培養で検出され、308例(93.9%)は最初の2回の血液培養で検出され、340例(96.9%)は最初の3回の血液培養で検出され、350例(99.7%)は最初の4回の血液培養で検出された。
- 本研究の結果は、24時間以内に2回の血液培養を行うことで、成人の血流感染症の約90%を検出できることを示している。検出率を99%以上に高めるには、最大4回の血液培養が必要となる可能性がある。
(出典)J Clin Microbiol. 2007 Sep 19;45(11):3546–3548. doi: 10.1128/JCM.01555-07.
過去にも血液培養の感度に関するいろいろな報告(2-3セットで十分等)がある中、2004年頃から3セットでも感度がすごい高いわけでもなさそうという報告(F. R. Cockerill et al., Clin. Infect. Dis. 38:1724-1730, 2004)があり、それを受けたものです。
エピソードによりばらつきはあるものの、血液培養1セットの感度は70-75%程度、2セットで90%程度、3セットで90%後半、4セットで100%近いということが想定できそうです。
1セットでは明らかに感度が低いことや、コンタミとの区別がつきにくいことも踏まえると、「血液培養は2セット以上」が基本と言えると思います。また、不明熱等で血流感染の有無をチェックしているようなときであれば、4セット取ることも考えてもよいと考えられます。
4-2. 採血量は?
次に、血液培養を取る際に、何となく過去に周りから言われて20mLのシリンジで取ってくる、というようなことが染みついている人もいると思います。採血量と感度についてもチェックしておきます。
血液培養の各ボトルの採血量
- 血液量が4mL以下、4.5~6mL、6.5mL~8mLのボトル(3群)の間での検出率に有意差はなかった(血液培養陰性率88.7-90.4%)。
- 3群の間においてコンタミネーション率にも有意差はなかった(2.5-5.6%)。
*****
- 血液培養ボトル1 本(主に6.5-8mL)ではなく 2 本(主に13-16mL)を使用することで、臨床的に重要な微生物を含む血液培養陽性率が全体として平均 17 % 増加した。つまり、培養された血液 1 ミリリットルごとに、検出率が平均 2.3 % 増加した。検出率の向上は、エンテロバクター属およびグラム陽性球菌において同様の結果(16~17%)が認められた。嫌気性菌の平均追加検出率は43%(5株)であった。追加検出率において、大腸菌(16%)および肺炎球菌(12%)と比較して、黄色ブドウ球菌(26%)は高くなる傾向が見られたが、有意差は認められなかった
(出典)Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 1989 Sep;8(9):838-42. doi: 10.1007/BF02185857.
各ボトルの採血量では有意差がないという報告です。しかし、採血量全体(ボトル数も増加)では検出率が上がるという報告です。また、次のような報告もあります。
敗血症が疑われる患者への血液培養
・血液培養において、20 ml(2セット)および30 ml(3セット)の血液を用いた血液培養における検出率は、10 ml(1セット)の血液を用いた場合よりもそれぞれ38%および62%高かった。
(出典)Diagn Microbiol Infect Dis. 1983 Jun;1(2):107-10. doi: 10.1016/0732-8893(83)90039-1.
確かにこれは検体の血液量が多いと感度が上がるという古典的な報告ですが、採血量が増えるごとに血液培養のセット数も増えています。そういう意味では1つのボトル当たりの採血量はそこまで気にしなくても良い反面、多少でも採血量が多いと検出率は良さそうと個人的には考えています(笑)。
採血量を増やすという意味でも2セットで合計30mL以上ぐらいは取っておきたいかなと思ったりします。また、頑張っても血が引けないというようなことがなければ、血液培養で1カ所(1セットあたり)あたり10mLではなく15mLは取っておきたいかな、と個人的には思ったりします。
採血量はあくまで血液培養のセット数(ボトル数)と比例して増えるということに近いようにも感じました。
5. まとめ
少し長くなったので、最後にまとめておきたいと思います。
病院であれば、個人的には血液培養の閾値は高くすることなく、敗血症・菌血症を疑った際はもちろん、血流感染症の確率の低い感染症以外で抗菌薬を投与する前に取っておけばよいと思います。
今回チェックしたことを活かして、発熱に加えて尤度比の高い悪寒戦慄があったり、頻呼吸(背景を考えれば、血液ガス検査で乳酸値上昇やアシデミア)があったりする場合、qSOFAやSIRSのような指標を満たす場合には血液培養を取ればよいと思います。また、発熱患者でShapiroのルールの小基準のようなものを複数満たしてくる場合や、高齢者等で「何か怪しい」と感じたときも血液培養を取っておけば、陰性でも陰性の確認になる側面もあると思います。
前回の肺炎の診断の記事と同じく、「これ!」といった病歴・所見等だけではないように感じました。病歴・所見等を組み合わせながら、「こんなときも血液培養を取ろう」と思ってもらえれば幸いです。
本日もお読みくださいましてありがとうございました。
ChatGPTのDeep Search等の生成AIを使う機会や、生成AIでのサブblog(?)での記事が増え、こちらの更新頻度が減っておりますが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
【生成AI de 臨床疑問】















