医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

時短×自分らしいPowerPoint①【スライドマスター作成前に】

時短×自分らしいPowerPointの作り方①

スライドマスター攻略

 

1.自分らしさとは

2.スライドマスター作成(次回記事)

※スライドマスター作成についてさっと知りたい方は下記URLへお進みください。

 臨床推論の症例提示の際など、勉強会で用意しているパワーポイントに関して「どこにもそんなテンプレートはないけど、いつもどのようにして作っているのか?」というようなことを聞かれました。私自身は書籍を参考にして、そのスライドのデザインを使ってきただけで大したことはないと思うのですが、先日のその返答(スライドマスター作成)に関するブログへの記事起こしです。

※スライドマスター作成方法のみであれば、Google先生で検索すれば(ググれば)見つかると思いますので、せっかくブログにするということで「自分らしさ」についても書くことにしました。

 

 デザインをこだわるにしても、毎回パワーポイントのデザインから作っていたら時間がもったいないと思います。ましてや、情報発信効率を考えた際には、オンデマンドでもなくZoomで1回しか使わないパワーポイントのデザインの細部にまでこだわること自体も時間的にもったいないと思うこともあります。そもそも他の媒体・方法での情報発信等が良いのかも含めて検討することもひとつです。

 

 そこで、自分らしさは出したいけど、いつもそこまで時間をかけたくないというのを両立させるのが、スライドマスターです。

 スライドマスターを作成しておけば、あとはいつものようにパワーポイントを作るだけで「自分らしい」パワーポイントとなります。

 

 「自分らしさ」には、もちろん綺麗さとか、かっこよさとか、かわいらしさとか、見やすさとかいうようなことを盛り込むことができます。あなたの「自分らしさ」や求めているものを毎回、統一感を盛り込めるスライドマスターに興味があれば、ぜひ作ってみましょう!

 

1.自分らしさとは

 そもそもパワーポイント作成の目的はなんでしょうか?情報発信の一部でしょうか?学習の一環としてのアウトプットの一部でしょうか?

 いろいろな目的があると思います。しかし、忘れてほしくないと感じるのは

内容×見やすさ」の両輪

という部分です。正直なところ、見やすさに関してはある程度以上は主観的なこと感じておりで私自身はそこまで気になりません。膠原病セミナーとか、感染症セミナーとか、救急問答とか、エビデンスに基づいたEBM等のセミナーやレクチャーでは、スライドのコツに関して世間で言われていることはあまり当てはまらない気がします。お話の内容そのものや展開が魅力的であると感じます。とても興味深い内容の講演会やセミナーというだけで満足(内容優先)で、スライドは「あっ、〇〇先生っぽいなー」という程度で、先生の語りとともにニッチな内容も楽しく学べます。もちろん、一般的な教育現場等では、見やすく・楽しくしないと興味を持ってもらいにくいというような現状もあるかと思いますが、パワーポイントの体裁だけでなく、内容、話し方や人柄等から「この人の話を聞いてみよう」と思ってもらえることも大切かと思います。

 

  「自分らしさ」について考えれば考えるほど、分からなくなると思います。そこで、パワーポイント作成の目的も考えてもらえればと思います。この界隈は幸か不幸か、スライドマスターを作るだけでもう個性になることが多そうに感じます。目的や個々の目的のバランスは人によって異なると思いますので、あなた自身の目的に合わせてスライドマスター作成すれば「自分らしい」パワーポイントが作れると思います。

 

 よく言われている「見やすいパワポについては

  • 文字は24pt以上
  • 文字のフォントはメイリオ
  • 目線の流れを綺麗に
  • 箇条書き

 

 これに関しては、異論もある部分があっていいと思います。パワーポイントを流れるように用いるのか、持ち帰り資料としても用いるのか、印象的な話ではなくエビデンスをしっかり伝えようと思うのかでも異なります。お持ち帰り資料やエビデンスの紹介としての際には、箇条書きで大きな文字1フレーズだけドンっと印象だけを残すかのように載せただけではいまひとつだと思います。やはり、内容や用途で異なると考えています。

 

 それ以外にも、文字を短く体言止めを意識する等だけでなく、

  • 文字の配置
  • 余白、行間の設定
  • 太文字や下線の使い方
  • 文字の大きさのメリハリ(ジャンプ率
  • 関係性ごとに縦配置と横配置の使い分け・整列
  • フォントの使い分け
  • 色ごとの役割の設定(3色程度)
  • 色の組み合わせ・割合・配置
  • イラストや写真を使う
  • 箇条書きの羅列を避ける
  • シンプルにする
  • 1スライド1メッセージ

など、見やすくするためにこだわる(もしくはスライドマスターにする)こともできる部分もあります。もちろん、作成時間や情報発信効率等との葛藤もあり、すべてを実践できるわけではないですが、スライド作成の費用対効果ならぬ時間対効果を考えながら導入するのがおススメです。いつも使うもともとのスライドのテーマでは満足できずに変更していた部分(フォント、文字の配置、行間など)が、スライドマスターによってフォントを変更する手間や文字の配列・行間を変更するなどの毎回の手間が省けます

 他にも血液検査結果等は、罫線を一部消した表(Excel)を利用してスライドへ貼り付けたりしていました。

 

 イラストや写真に関しては主に(一部に)iStockを利用しています。これはインパクトを与えたり、訴えかけたりというような印象を残すため、雰囲気を和ませるため等に使うことができます。iStock以外にも素材を提供しているところを検索して見つけることができます。

 余談ですが、私自身は趣味の一つが写真を撮ることなので実際に自分自身で撮影した写真も使っています。

 

 デザインの部分に関しては、気に入った書籍等をみつけて、それを参考にしてみるとよいと思います。私自身は書店で平積みの本から選んで決めたという程度です。『一生使える見やすい資料のデザイン入門』という書籍です。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51zitFko96L._SX394_BO1,204,203,200_.jpg

https://www.amazon.co.jp/dp/484433963X/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_VQHFWPCQFARB0DBNMD8

 

見やすい資料の10箇条

  1. 「1スライド=1メッセージ」になっている
  2. フォントの特性を利用している
  3. 色を使うルールを決めている
  4. 色の特性を利用している
  5. 脱・箇条書き
  6. 装飾がシンプルで無駄な要素がない
  7. 情報が凝縮されている
  8. 情報のグループ化を行っている
  9. テキストや図が整理されている
  10. 情報と情報の間には余白をとっている

(出典)一生使える見やすい資料のデザイン入門

 

 上記の10箇条に基づいて書かれています。以前に買って参考にしてきた書籍なので2016年に発売の書籍です。もっと新しいものもあります。どの書籍のデザインが自分に合うかを見てみたい人は書店に足を運んでみる等すると良いでしょう。気になる方は手に取ってみてもいいかもしれません。

 上記の書籍にもスライドマスターの作成方法はもちろん記載されています。次回は具体的なスライドマスターの作成方法について紹介していきます。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。

 

【P.S.】紹介

◆スライドマスターを勉強会で作る

 過去に、学生時代に臨床推論グランプリでお手伝いなどでかかわっていたTEAM関西という医療系学生勉強団体にて2021年12月12日(日)14:00~17:00にスライドの作り方の勉強会があるようです。(去年より臨床推論グランプリのTEAM関西での実施はなく、少し前の話で申し訳ございません。)

 自分自身でスライドマスターを作ってみるのはちょっと…という人は参加して、仲間と作成してみるのもいかがでしょうか。勉強会の内容に関して詳しくは分かりませんが、よろしければ下記のHPよりどうぞ。COIもなければ(笑)、運営に関っているわけでもございませんので、ご了承ください

TEAM関西HP〕https://teamkansai2.web.fc2.com/

 上記URLのHP右端のFacebook欄に記載があります。そちらより詳細をご確認ください。

血管炎② 疾患ごとの特徴と臨床症状

血管炎②

~血管炎ごとの特徴・臨床症状まとめ~

 

1.大血管炎

2.中血管炎

3.小血管炎

4.その他の血管炎

 

 明日のDGPJ 2021に向けた記事の血管炎②です。昨日の血管炎①では血管炎の分類「血管炎っぽい」と感じたときの血管炎以外の鑑別を紹介したりしました。

 今回は、その記事に続いて血管炎の疾患ごとの特徴(主に臨床症状)をまとめたものです。

前回の記事はこちら>血管炎① Pivot and Clusterを考えてみる - 医学生からはじめる アウトプット日記

 

【お断りとお詫び】

 どんどん書いていきたかったのですが、やはり時間がありません。教科書にも各疾患の記載はあると思うので、定性的なものや便利な表(table)の一部を紹介する程度の記事になってしまいました。前回の記事のほど、流れを意識して書くこともできませんでしたが、途中までのものをこのままにしておくのももったいないので、公開することにしました(手直しはすることもあります)。また、有料文献へのアクセスの可否により、閲覧可能であったものを検索して紹介するというような流れになっています。申し訳ございませんが、予めご了承ください。

 

1.大血管炎

1-①.高安病

 大血管(動脈)に炎症が生じる高安病(高安動脈炎,大動脈炎症候群)です。患者像は若い女といったところでしょうか。

 

<高安病の臨床症状>

動脈

動脈造影上の異常所見の頻度(%)

発現しうる症状

鎖骨下動脈

93

上肢の跛行、Raynaud現象

総頚動脈

58

視力障害、湿疹、一過性脳虚血発作、脳卒中

腹部大動脈

47

腹痛、悪心、嘔吐

腎動脈

38

高血圧、腎不全

大動脈弓または大動脈起始部

35

大動脈閉鎖不全、うっ血性心不全

椎骨動脈

35

視力障害、めまい

腹腔動脈

18

腹痛、悪心、嘔吐

上腸間膜動脈

18

腹痛、悪心、嘔吐

腸骨動脈

17

下肢の跛行

肺動脈

10-40

非定型的な胸痛、呼吸困難

冠動脈

<10

胸痛、心筋梗塞

(出典)ハリソン内科学 第5版

 

1-②.巨細胞性動脈炎(GCA

 巨細胞性動脈炎(GCA: giant cell arteritis)といえば、主には50歳以上の高齢者ですかね。とりあえず、典型的な症状とOccut manifestationを見つけたので紹介します。

 

f:id:mk-med:20211203222620j:plain

f:id:mk-med:20211203222636j:plain(出典)Curr Opin Rheumatol. 2002 Jan;14(1):3-10. doi: 10.1097/00002281-200201000-00002.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11790989/

 

 大血管炎は、小血管炎に比べて、皮膚所見にも乏しく症状も身体の正中よりにあるような個人的な印象があります。しかし、それ以上、期日的にも調べる時間がなく、申し訳なく思います。完成度が表はない部分に関してもKelly and Firestein’s Textbook of Rheumatologyなどの教科書を読んだほうがいいかもしれません。



2.中血管炎

2-①.結節性多発血管炎(PAN, PN)

 続いて中血管炎です。まずは、結節性多発血管炎(PAN, PN: polyarteritis nodosa)から紹介します。50歳前後(40-60歳)ぐらいの男性に多いイメージです。

 

<結節性多発動脈炎における臓器損傷に関連した臨床症状>

臓器

発生率(%)

臨床症状

腎動脈

60

腎不全、高血圧

筋骨格系

64

関節炎、関節痛、筋痛

末梢神経系

51

末梢性ニューロパチー、多発性単神経炎

消化管

44

腹痛、悪心および嘔吐、出血、腸梗塞および穿孔、胆嚢炎、肝梗塞、膵臓梗塞

皮膚

43

皮疹、紫斑、小結節、皮膚梗塞、網状皮疹、Raynaud現象

心臓

36

うっ血性心不全心筋梗塞、心膜炎

尿生殖器

25

精巣・卵巣・精巣上体の疼痛

中枢神経系

23

脳血管障害、精神症状、痙攣

(出典)ハリソン内科学 第5版

 

 

2-②.川崎病

(PASS)



 

3.小血管炎

 まずは、ANCA関連血管炎や免疫複合体性小血管炎のような小血管炎らしい症状・所見を見かけた際の鑑別です。よく、肺や腎臓などに症状が生じますが、それぞれで病変の生じる部位にも特徴があります。

f:id:mk-med:20211203222944j:plain

(出典)Am Fam Physician. 2002 Apr 15;65(8):1615-20.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11989638/

 

 しかし、上記の表だけ見ると、定量的な表現ではないのが気になります。古いNEJM(疾患名も含め)ですが、参考程度にどうぞ。

 

f:id:mk-med:20211203223016j:plain

(出典)N Engl J Med 1997; 337:1512-1523

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9366584/

 

 

3-1.ANCA関連血管炎

3-1-①.ANCA関連血管炎と鑑別

 他にも、ANCA関連血管炎を疑った際の肺病変であれば、びまん性肺胞出血なのか、結節や空洞病変なのか、といったそれぞれの鑑別の載っているものもありました。意外と便利かと思います。

f:id:mk-med:20211203223200j:plain

(出典)Rheum Dis Clin North Am. 2010 Aug;36(3):491-506. doi: 10.1016/j.rdc.2010.05.009.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20688246/

 

  • ANCA関連血管炎だけでなく様々な疾患でANCAが陽性となる

ということも、上記の文献にも記載がありました。DGPJに参加するほどの人にはいう必要ないかもしれませんね。

 

3-1-②.多発血管炎性肉芽腫症(GPA)

 多発血管炎性肉芽腫瘍(GPA、Wegener肉芽腫瘍)といえば、触知可能な紫斑(palpable purpura)という言葉を聞くイメージです。こちらも中年の人に多いイメージです。それはされおき、臨床症状。所見が教科書でも項目がたくさんですが、まとめっていました。

 

<多発血管炎性肉芽症の臨床症状・所見>

発現する症状

初発時の

陽性率(%)

全経過中の

陽性率(%)

腎臓

   

・糸球体腎炎

18

77

耳鼻咽喉

73

92

副鼻腔炎

51

85

・鼻障害

36

68

・中耳炎

25

44

・難聴

14

42

・声門下狭窄

1

16

・耳痛

9

14

・口腔病変

3

10

45

85

・肺浸潤

25

66

・肺結節

24

58

・喀血

12

30

・胸膜炎

10

28

   

・結膜炎

5

18

・涙嚢炎

1

18

・強膜炎

6

16

・眼球突出

2

15

・眼痛

3

11

・視力低下

0

8

・網膜病変

0

4

・角膜病変

0

1

虹彩

0

2

その他

   

・関節痛/関節炎

32

67

・発熱

23

50

・咳

19

46

・皮膚異常

13

46

・体重減少(体重の10%以上)

15

35

・末梢性ニューロパチー

1

15

・中枢神経系疾患

1

8

・心膜炎

2

6

甲状腺機能亢進症

1

3

(出典)ハリソン内科学 第5版

 

 

3-1-③.好酸球性多発血管炎性肉芽腫瘍(EGPA)

(PASS)

 

3-2.免疫複合体性小血管炎

(PASS)

 

 

 

4.その他の血管炎

4-1.ベーチェット病(Bechet’s disease)

 ベーチェット病といえば、まず思いつくのは比較的若年の男女で、再発性口腔内アフタのイメージですが、実際にはどうなのか調べてみたいと思います。

 中国人を対象とした論文が見つかりました。

f:id:mk-med:20211203223427j:plain

(出典)APLAR Journal of Rheumatology  2006;  9: 244–247

 

 口腔内アフタが100%ではないのも少し気になりますが、2番目に多いのは陰部潰瘍(76.3%)のようで、特異度が高いそうなイメージでしたが、頻度が意外と高い印象を受けました。

 

4-2.Cogan症候群

 中々、アクセス可能な文献かつ定量的なものも見つからず、時間切れとなってしまいました。ハリソン内科学で特徴だけでも確認して終わりにしたいと思います。

 

  • Cogan症候群は角膜実質炎と前庭聴器官症状を特徴する
  • 全身性血管炎、特に大動脈弁の障害を伴う血管炎を合併することがある。

(出典)ハリソン内科学 第5版

 

 定量的な表現はありませんでしたが、疾患像は掴みやすいし、読みやすいと思います。他にも定量的な表現(症状等の頻度)では症状などの経過の一部分を切り取ったもの(例:診断時)であったり、最終的な症状であったりと、もちろんすべてを切り取れるわけではありません。ハリソンやKelly and Firestein’s Textbook of Rheumatologyなどの教科書で症状などの経過や危険因子、合併症等もみてみてください

 

 申し訳ないのですが、そろそろ時間切れなのでここまでにしたいと思います(手直しをする可能性等はあります)。Table等が英語のままですが、思った以上に記事作成時間短縮になりました。ご了承ください。また、次回以降の記事に関しても、作業効率とアウトプットのスピード的には翻訳に時間をとられるので英語のものは英語のままでも良いのではないかと感じました。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 明日のDGPJ 2021もぜひ楽しみましょう!!

 

 

【前回の記事(血管炎①)はこちら】

mk-med.hatenablog.com

血管炎① Pivot and Clusterを考えてみる

血管炎①

鑑別疾患Pivot and Clusterを考えてみる

 

1.血管炎の分類

2.血管炎を疑った際の鑑別疾患

 

 去年からオンラインで始まった診断グランプリ(DGPJ 2021)がまもなく開催ですね。今年も後輩が意志を継いでTBL JAPAN運営・開催してくれることは有難く、とても嬉しい限りです。

 

 DGPJとはDiagnostic Grand Prix Japanの略です。去年のDGPJ 2020では、診断は難しいけれども学びがいのある豪華12症例でした。今年はどのような症例かワクワクです。DGPJ2020について、詳しくは下記をご覧ください。

 【DGPJ 2020 ホームページ】https://tbljapanmedicine.wixsite.com/dgpj2020/flyer

 

 今回は運営のどまんなかではないので症例は事前に知らないままのはずのため、おそらく回答権もあると思います。このまとめで対策になるレベルか分かりませんが、少し対策になるかもしれない内容を復習しておきたいと思います。

 

 今回は「血管炎っぽいかも…」と思った際の「Pivot and Clusterを考えてみよう」という際のもととなるような鑑別疾患をはじめとしたまとめです。

 国家試験対策講座+α程度であれば、血管炎(血管炎症候群)といえば、

  • 大血管炎に高安病と巨細胞性動脈炎があって、
  • 中血管炎に結節性多発動脈炎、川崎病があって
  • 小血管炎にANCA関連血管炎、免疫複合体性血管炎がある

というような感じかと思います。

 

 でも、これだけでは血管炎すら掴めていない気がします。例えば、ベーチェット病なんかも血管炎であり、分類から調べ直してみたいと思います。



1.血管炎の分類(CHCC2012分類)

 血管炎の分類は大学時代に学んだ大血管炎、中血管炎、小血管に加えて、血管のサイズ以外の視点で分類されたものとして、

  • 種々の血管を侵す血管炎
  • 単一臓器の血管炎
  • 全身性疾患に続発する血管炎
  • 原因の推定される続発性血管炎

があります。

 

f:id:mk-med:20211202233832j:plain

血管炎の分類

 血管炎を考えた際に、これらも血管炎として考えるのをお忘れなくというところでしょうか。最近ですと、VEXAS syndromeなんかも血管炎のひとつということが解明されたように、様々な自己免疫性疾患が解明されつつもあります。新しい血管炎はおそらく「その他」に分類されるでしょう。

【VEXAS syndromeに関してはこちら】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33108101/

 

 新しいものはさておき、まずは血管炎(血管炎症候群)の分類をざっくりと把握しておくことが役立つと思います。CHCC2012に基づいた血管炎の分類を、血管炎・血管障害診療ガイドライン2016年改訂版より詳しく紹介したいと思います。

 

<CHCC2012*の分類と疾患名>

Large vessel vasculitis,LVV 

  • Takayasu arteritis,TAK
  • Giant cell arteritis,GCA 

大型血管炎

  • 高安動脈炎(大動脈炎症候群)
  • 巨細胞性動脈炎

Medium vessel vasculitis,MVV

  • Polyarteritis nodosa,PAN
  • Kawasaki disease,KD 

中型血管炎

Small vessel vasculitis,SVV

>Antineutrophil cytoplasmic antibody(ANCA)-associated vasculitis,AAV

  • Microscopic polyangiitis,MPA
  • Granulomatosis with polyangiitis(Wegener’s),GPA
  • Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis(Churg-Strauss),EGPA

>Immune complex SVV

Anti-glomerular basement membrane(anti-GBM)disease

  • Cryoglobulinemic vasculitis,CV
  • IgA vasculitis(Henoch-Schönlein),lgAV
  • Hypocomplementemic urticarial vasculitis,HUV(anti-C1q vasculitis)

小型血管炎

>抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎

  • 顕微鏡的多発血管炎
  • 多発血管炎性肉芽腫症(Wegener 肉芽腫症)
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Chung-Strauss 症候群)

>免疫複合体性小型血管炎

  • 抗糸球体基底膜抗体病(抗GBM 病)
  • クリオグロブリン血症性血管炎
  •  IgA 血管炎(Henoch-Schönlein 紫斑病)
  • 低補体血症性蕁麻疹様血管炎(抗C1q 血管炎)

Variable vessel vasculitis,VVV) 

  • Behçet’s disease,BD
  • Cogan’s syndrome,CS

多様な血管を侵す血管炎

  • Behçet 病
  • Cogan 症候群

Single-organ vasculitis,SOV

  • Cutaneous leukocytoclastic angiitisCutaneous arteritis
  • Primary central nervous system vasculitis 
  • Isolated aortitis
  • Others

単一臓器血管炎

  • 皮膚白血球破砕性血管炎
  • 皮膚動脈炎
  • 原発性中枢神経系血管炎
  • 限局性大動脈炎
  • その他

Vasculitis associated with systemic disease 

  • Lupus vasculitis
  • Rheumatoid vasculitis
  • Sarcoid vasculitis
  • Others

全身性疾患関連血管炎

  • ループス血管炎
  • リウマトイド血管炎
  • サルコイド血管炎
  • その他

Vasculitis associated with probable etiology 

  • Hepatitis C virus-associated cryoglobulinemic vasculitis
  • Hepatitis B virus-associated vasculitisSyphilis-associated aortitis
  • Drug-associated immune complex vasculitis
  • Drug-associated ANCA-associated vasculitisCancer-associated vasculitis
  • Others

推定病因を有する血管炎

  • C 型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症性血管炎
  • B 型肝炎ウイルス関連血管炎
  • 梅毒関連大動脈炎
  • 薬剤関連免疫複合体性血管炎
  • 薬剤関連ANCA 関連血管炎
  • がん関連血管炎
  • その他

*Chapel Hill Consensus Conference 2012

 

(出典)血管炎・血管障害診療ガイドライン2016年改訂版

 

 上記の表はCHCC2012(2012年~)による分類です。CHCC1994のときには、分類は大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎のみでした。それに4つの分類が加わったといえます。大学時代はもしかすると古いCHCC1994(1994年~)を大学の講義で学んだのかもしれないと感じました。

 血管炎を疑ったら、まずは血管炎として大・中・小血管炎以外にも

  • 種々の血管を侵す血管炎、
  • 単一臓器の血管炎、
  • 全身性疾患に続発する血管炎、
  • 原因の推定される続発性血管炎

鑑別疾患として想起できればと思います。そこから、既往歴やSick Contact、各疾患特有の症状などを探してみるのもひとつだと思います。



2.血管炎を疑った際の鑑別疾患

 Pivot and Clusterを作るにあたり、血管炎を疑った際の血管炎以外の鑑別疾患も忘れないようにしたいと思います。

 

  • 感染症(例:心内膜炎、HBVHCVHIV
  • アテローム動脈硬化
  • 血栓塞栓性疾患
  • 先天性の原因〔例:大動脈縮窄、腹部大動脈狭窄症(Mid aortic syndrome)〕
  • 遺伝性疾患(例:Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群)
  • 線維筋性異形成
  • 凝固亢進状態(例:APS、TTP)
  • 血管れん縮性障害(例:RCVS、薬物曝露)
  • その他の多系統性炎症性疾患(例:サルコイドーシス、Susac症候群)
  • 悪性腫瘍(例:リンパ腫、白血病
  • 医原性(例:放射線療法後)
  • IgG4関連疾患

 

(出典)UpToDate>Overview of and approach to the vasculitides in adults, last updated: Mar 30, 2021.

 

 他にも、感染症の例として結核を含む抗酸菌も何でもありな印象があります。

 少し、鑑別疾患も少ない(ありきたり?)と感じたので、ハリソン内科学も調べてみました。

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  • 血管炎が疑われる患者の診断は、血管炎に似た臨床症状を呈する他の疾患を除外することから始める。
  • 特に、よく似た臨床症状を呈する感染症を除外することは重要であり、患者の状態が急激に悪化し、免疫抑制療法による経験的治療を考慮すべき場合には非常に重要となる。

(出典)ハリソン内科学 第5版

 

 抗GBM病のように分類上、CHCC2012と異なる部分もありますが感染症や薬物中毒における鑑別疾患において、役立ちそうです。

 

 以上から、「血管炎っぽいなー」と思った際には、スライド2枚を特に意識して

  • 種々の血管炎(※大・中・小血管炎以外も忘れず)
  • 血管炎以外の鑑別疾患

 の鑑別を考えたいと思います。

 

 DGPJ 2021に間に合えば、主な血管炎における血管炎ごとの特徴・鑑別も考えてみたいと思います。

 本日もお読みくださりありがとうございました。

 

【続きはこちら

血管炎② 疾患ごとの特徴と臨床症状 - 医学生からはじめる アウトプット日記

mk-med.hatenablog.com

 

自己免疫性脳炎と精神症状

自己免疫性脳炎と精神症状

 

1.自己免疫性脳炎の概要・特徴

2.自己免疫性脳炎と精神症状

 

 精神科のローテーション中にとても興味深いお話を聞く機会がありました。昔、精神症状によって器質的疾患の除外をされて精神科へ紹介になったものの、後日再度頭部MRIをはじめとする検査をしたところ、抗NMDA受容体脳炎だと診断された症例もあったというお話を伺いました。

 

 そこからのお話の展開で「今後もっと自己免疫性脳炎の研究が進んで新たな抗体が見つかったりすれば、いままでは精神症状により何らかの診断がついていた人の診断が変わるかもね」なんていうお話から、「自己免疫性脳炎でNMDAは有名かもしれないけど、他の自己免疫性脳炎でも精神症状がみられるから調べてみたら?」ということでとても興味深いお話を聞きました。

※DGPJ2021(診断グランプリ)や他の記事の内容との順番などを意識したりしていたところ、記事の公開がとりわけ遅くなり申し訳ございません。

 

 今回は自己免疫性脳炎の復習と、精神症状を調べてみたいと思います。

 

1.自己免疫性脳炎の概要

 まずは自己免疫性脳炎について、主な抗体、抗体それぞれの臨床像について調べてみたいと思います。抗NMDA受容体脳炎は精神症状が出やすいとは聞いたことがありますが、他の抗体によるものはどうなのでしょうか。お恥ずかしいですが、疾患についての知識もあまりないので調べてみることにします。ハリソン内科学では自己免疫性脳炎の項目はなく、今回はUpToDateにて調べてみました。精神症状がどれほどあるかわかりませんが、自己免疫性脳炎の症状や合併する腫瘍等の特徴を抜粋してみます。

 

<自己免疫性脳炎の各特徴>

種類

臨床症状

腫瘍・その他関連

抗NMDA受容体脳炎

前駆症状の頭痛、発熱、またはウイルス感染のような経過で数日後に以下のような症状が多段階的に進行する

  • 著明な精神症状(不安、動揺、行動異常、幻覚、妄想、思考異常等)
  • 睡眠障害:発病時の不眠および回復期の過眠傾向
  • けいれん
  • 意識障害、緊張病の特徴を伴う昏迷
  • 頻回のジスキネジア:口腔顔面、舞踏アテトーゼ、ジストニア、硬直
  • 自律神経障害:高体温、血圧の変動、頻脈、徐脈、心停止、低換気
  • 言語機能障害:発話障害、反響言語

卵巣奇形腫(女性患者の約50%)

その他

  • 精巣胚細胞腫瘍
  • 縦郭奇形腫
  • 小細胞肺がん
  • ホジキンリンパ腫
  • 卵巣嚢胞線維腫
  • 神経芽細胞腫

男性患者では腫瘍の検出は稀


単純性ヘルペスウイルス脳炎(先行感染)が引き金になると疑われている

抗LGI1脳炎

  • 記憶障害、錯乱、およびけいれんを発症する
  • 低ナトリウム血症や急速眼球運動(REM)睡眠障害を発症することがある

症例の5-10%が癌と関連

  • もっとも一般的な関連腫瘍:胸腺腫

抗Caspr2関連脳炎

  • 発症年齢中央値65歳
  • 男性に多い
  • 辺縁系脳炎やモルバン症候群(神経筋緊張症、記憶喪失と錯乱、睡眠障害、自律性不安定性)として現れるときがある
  • 臨床症状は様々であるが、患者のほぼ80%が、認知変化、小脳症状、末梢神経興奮、自律神経興奮、自律神経機能障害。不眠症、神経陰性疼痛、体重減少の3つ以上の中核症状を発症する。
  • 一般的には腫瘍と関連しない
  • 腫瘍(通常は胸腺腫)の患者は、孤立した中枢または末梢症状よりもモルヴァン症候群を発症する可能性が高い

抗AMPA受容体脳炎

  • 患者の約3分の2に腫瘍を認めた。
  • 肺癌、胸腺腫、乳癌が一般的であった。

抗GABA-A受容体脳炎

  • 報告症例の約半数が小児
  • 難治性発作、てんかん重積、持続性部分てんかん発作を伴う休息に進行する脳炎を発症する
  • 患者の40%(成人のほとんど)に腫瘍を認める。
  • 主に胸腺腫

抗GABA-B受容体脳炎

  • 主に辺縁系脳炎を呈する成人例で報告
  • 症状は様々
  • 小児症例では、脳症、難治性発作、および混同運動障害(眼球クローヌス、運動失調、舞踏病)を特徴としていたという報告もある
  • 約50%が腫瘍随伴症候群

抗IgLON5病

  • 発症年齢中央値62歳(42-91歳)
  • 進行性核上性麻痺に似ている
  • 診断時には以下の4つの臨床症状が報告されている;睡眠時無呼吸を含む睡眠障害、唾液分泌過多、喘鳴、急性呼吸不全を含む球麻痺症候群、認知機能の低下
 

抗DPPX脳炎

  • 体重減少、下痢、またはその他消化管症状を前駆症状とし発症する
  • 発症数か月後に脳炎を発症し、びっくり病、興奮、ミオクローヌス、振戦、発作などの中枢性興奮を伴う。
  • 腫瘍の合併は稀
  • 合併した場合、B細胞由来がほとんど

抗GlyR脳症

抗mGluR5脳炎

  • しばしば、運動障害、睡眠障害、発作などの辺縁系脳炎に関連
  • 気分および人格変化、前向性健忘、方向感覚喪失といった神経精神医学的特徴、相貌失認、頭痛、不随意運動、発作が生じうる
  • ホジキンリンパ腫またはSCLCに関連しているが、腫瘍がない場合にも発症する

抗mGluR1脳炎

  • わずかに男性に多く、年齢中央値は55歳
  • 小脳性失調で発症
  • 多くの場合、認知変化、発作、または精神症状を伴う
  • 患者の15%未満が孤立発症
  • 通常は腫瘍と関連しない
  • 数名が血液悪性腫瘍、1名が皮膚T細胞リンパ腫を併発していたという報告がある

抗neurexin-3α脳炎

  • 年齢中央値は44歳(比較的若い)
  • 急速な意識低下、口腔顔面ジスキネジア、および一部の患者では抗NMDA受容体脳炎に類似した中枢性低換気を伴う

※5人の患者での報告

  • 患者5人のうち4人に全身性自己免疫疾患があったとの報告

自己免疫性GFAPアストロサイトパチー

  • 頭痛、視神経乳頭浮腫および視神経乳頭炎、進行性脳症、自律神経不安定症、脊髄症、振戦および精神症状を含む一連の症状を呈した
  • 患者の約3分の1で全身性腫瘍を伴っていた。

その他:抗mGluR2脳炎、抗SEZ6脳炎

 

(出典)UpToDate >Paraneoplastic and autoimmune encephalitis,  last updated: Nov 03, 2021.

 

 腫瘍随伴性脳炎ならびに自己免疫性脳炎の項目よりまとめてみました。検査結果等についてはUpToDateや他のFree articleのreview等をご覧ください。日本語がよければ少し古いかもしれませんが、J-stage等でも見つかりました。

 主な症状やゲシュタルト作りや鑑別として役立ちそうでですね。一方で、精神症状が主な症状でないものや精神症状について詳しく書いてない印象を受けました。自己免疫性脳炎についての復習、臨床像の確認はこれぐらいにして、今回の自己免疫性脳炎を調べるきっかけとなった精神症状について調べてみたいと思います。




2.自己免疫性脳炎と精神症状

 

 精神症状からみた自己免疫性脳炎の鑑別になります。比較的新しいReviewからです。精神症状から、自己免疫性脳炎をまとめている表になります。

 

<精神症状からみた自己免疫性脳炎の鑑別>

f:id:mk-med:20211109142211j:plain

(出典)J Neural Transm (Vienna). 2021 Jan;128(1):1-14. doi: 10.1007/s00702-020-02258-z. Epub 2020 Oct 7.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 精神症状として、見当識障害(disorientation)、認知障害・記憶障害(coginitive and memory dysfunction)、行動異常(behavior)、精神病症状(psychosis)、気分障害(mood dysfunction)、不安(anxiety)、緊張病(catatonia)、睡眠障害(sleep dysfunction)、強迫性障害(obsessive-complusive behavior)、自殺念慮(suicidality)と細かく分けてあります。

 このレビューもFree Articleなのでよろしければアクセスしてみてください。各脳炎ごとの記載に目を通してみるのもよいと思います。

 

 自己免疫性脳炎についてまだまだ解明されていないことや解明中のこともあると思います。抗NMDA受容体脳炎統合失調症グルタミン酸仮説といったような興味深いつながりも、今後、新たに解明されていく興味深い分野でもあると思います。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。

抗うつ薬はやめられるか?@プライマリケア領域(NEJM)

抗うつ薬はやめられるか?@プライマリケア領域(NEJM)

 

 今回は「この結果は今の日本に当てはめることは難しいかもしれない」という疑問から少し深堀りするきっかけとなったNew England Journal of Medicineの記事(9月末)に対する感想のようなコメント記事です。

 以前の記事「医学英語論文を読んでみよう START編 & 書籍紹介(医学書ログ) - 医学生からはじめる アウトプット日記」における論文の読み方を意識したものになります。

 

 

【まずはアブストラクトを読んでみよう】

 それでは、NEJMの論文をアブストラクトから読んでいきましょう!こっそり、Conclusionから見ていただいても大丈夫です。

 

f:id:mk-med:20211113195221j:plain

Background

 

Methods

 

Results

 

Conclusion

 

(出典)N Engl J Med. 2021 Sep 30;385(14):1257-1267. doi: 10.1056/NEJMoa2106356.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

アブストラクトをすべて訳してはおりません。すべてを読む際には上記URLからどうぞ。

 

<まずは素直に結果を信じたとして>

 まずは、素直に結果を信じた(日本にあてはめられる)として考えてみます。

 当たり前といえば当たり前のConclusionですが、First Outcomeにおける抑うつ症状の再発は、抗うつ薬群で39%(92/238名)、プラセボ群で56%(135/240名)(HR, 2.06; 95% CI, 1.56-2.70; p<0.001)という部分をどう捉えるかというのは、解釈が分かれると思います。

 抗うつ薬を飲んでも飲まなくても、再発率は39% vs. 56%なので、そこまで大した差ではないと感じる人もいると思います。



【Methodsに注目してみる】

 次にNEJMの論文のMethodsを詳しく見てみます。

 

<研究はUK、でもここは日本のプライマリケア

 まずは、UKのプライマリケア(そこの辺りは詳しくありません)における研究です。

 言うまでもなく、日本のプライマリケアとは大きく異なると思います。日本であれば基本的には精神科の開業医は専門家であるので、よくみられそうな精神科開業医には当てはまりにくいかもしれません。専門医の視点というものがあると思います。どういう状況下かによってどの程度当てはまるかどうかも違ってくると思います。

 

<患者の選び方について>

 他にも、患者の選定の過程において、ICD-10のDepressionの定義に当てはまることを用いています。

 

The CIS-R asks about depressive symptoms during the past week and determines whether the symptoms indicate a diagnosis that meets the ICD-10 criteria for depressive episodes.

(出典)N Engl J Med. 2021 Sep 30;385(14):1257-1267. doi: 10.1056/NEJMoa2106356.

 

 ここでは、うつ病だけではなく双極性障害躁うつ病)のうつ病相が含まれている可能性が考えられます。もちろん、うつ病患者と言われていて、後になって双極性障害うつ病相であったということはつきものですが、さらに患者像をresultsで深堀りしてみます。

 

 

【Resultsに注目してみる】

 論文のResultsに注目してみます。岩田健太郎先生の書籍でも「まずは”Table1”」でしたね笑。冗談はさておき、まずは表や図を中心にでしたね。今回、用いるのは本当にTable 1です。

 

f:id:mk-med:20211113195933j:plain

(出典)N Engl J Med. 2021 Sep 30;385(14):1257-1267. doi: 10.1056/NEJMoa2106356.

 

 今回、ここで特に注目したいのは「過去に3回以上抑うつ症状を経験した回数(≧3 previous episodes of depression)です。抗うつ薬群で94%、プラセボ群92%といずれも高い状況です。それを裏返すように初発年齢はいずれも30歳代前半、患者年齢は50歳代半ばです。

 「過去に3回以上抑うつ症状を経験した回数」が高いということは、再発のうつ病を考えた際に双極性障害である可能性も考えると思います。ここからも、双極性障害が紛れ込んでいるのではなかと考えました。

 他にも、様々な患者像が分かります。気分評価スコア(重症度)もここで分かります。恥ずかしながら馴染みのないスコアもありますが、これぐらいの重症度の人をUKではプライマリケアで診ているという参考にもなるかもしれません。

 

 

【Disccusion:Limitationを読んでみる】

 さて、Disccusionを読んでみましょう。岩田健太郎先生の書籍では特にLimitationに注目でしたね。Limitationでは、「この論文はこういうところにヌケはあるけど、…」っていう記述があります。

 

主なLimitations

  • 一部の抗うつ薬等を使っている人の除外
  • 抗うつ薬をやめてもいいと感じている患者のみ
  • 患者の多様性の欠如
  • リコールバイアス
  • 抗うつ薬の処方・診断に関する詳しい情報の欠如

(出典)N Engl J Med. 2021 Sep 30;385(14):1257-1267. doi: 10.1056/NEJMoa2106356.

 

 おそらく、今回の結果に双極性障害の人が含まれる可能性があるというのも、limitationの「抗うつ薬の処方・診断に関する詳しい情報の欠如」に含まれるかもしれませんね。

 しかし、Backgroundにもある通りこの論文の意義はUKにおけるプライマリケア領域での抗うつ薬の中止・継続に関するデータというところになると思います。RCTであり、プライマリケア領域において意義のある研究であると思います。

 

 さらに調べてみたいこととして、日本や他の国での「抗うつ薬はやめられるか?」というデータも調べてみたり、プライマリケア医だけでなく専門家(専門医)による診療の場合も調べてみたり、例えば重症度が異なるというような患者像が異なる場合も調べてたりすると、今回の結果もより参考になり、理解も深まると思います。

 

 あくまで、背景知識等はあまりなく初心者的な読み方ですが、医学英語論文の読み方の一例としても使わせていただきました。その上でこの結果を自分の普段の現場で使うことができるか等を考えながら読むと、医学英語論文を読むのがもっと楽しくなるかもしれません。

 論文そのものにも、よろしければアクセスしてみてください。

 

P.S.

【医学英語論文の読み方の書籍紹介記事について】

  岩田健太郎先生の書かれた医学英語論文の読み方の書籍『Dr.イワケンのねころんで読める英語論文』の書籍紹介を交えたブログ記事はこちらです。

mk-med.hatenablog.com



 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

痛風 ~痛風発作部位はどこ?~

痛風 ~痛風発作部位はどこ?~

 

1.一般的な痛風発作部位のゲシュタルトづくり

2.高齢者の場合

3.具体的な数値を探して(定量化を試みて)

 

 痛風(gout)の症例で、身体の体幹に近い部位に痛風発作が生じるというような症例がありました。Dual Energy CTにて診断まで至っておりましたが、結晶性関節炎の中でも偽痛風らしくも感じてしまう症例でした。

 痛風といえば、末梢の冷たくなりやすい部位にできやすく、その一例として母趾の中足趾節関節によく痛風発作が生じるというようなイメージを持っています。



1.一般的な痛風発作部位のゲシュタルトづくり

 今回は痛風発作の部位を中心に深堀りしてみてみます。まずは、教科書レベルからゲシュタルトを作ります。

 

 急性関節炎は最も多くみられる痛風の初期症状である。通常は、最初に単関節が侵され、続いて急性の多発性関節炎が生じる。好発部位は母趾の中足趾節関節(第1中足趾節関節)であるが、足根関節、足関節、膝関節もしばしば侵される。特に高齢の患者や重症の患者では手指関節も障害される。炎症性のHeberden結節またはBouchard結節は、痛風性関節炎における最初の兆候である。

(出典)ハリソン内科学 第5版

 

 さらに詳しい情報をUpToDateで探してみました。

 

  • 下肢に多く、初発の80%は単関節炎であり、最も多いのは第1中足趾節関節または膝関節である
  • 足関節、足趾、手関節、手指、または肘頭滑液包での初発発症はありうるものの、再発性で一般的であり、他の滑液包、肩、腰、胸鎖関節においても潜在的には発症することもある
  • 軸関節は稀であるものの、脊椎および仙腸関節にも発生する可能性がある

(出典)UpToDate >Clinical manifestations and diagnosis of gout, this topic last updated: Dec 01, 2019.

 

 いずれにしても、定量化はそこまでできなかったものの定性的にはイメージは掴めてきました。多少、初発時と再発時の関節炎の部位に違いがあるようですね。



2.高齢者の場合

 さらに高齢者の痛風の場合には次の特徴があるようです。今回は中年の方の症例でしたが、違いについても注目してみます。

 

<高齢者の痛風

 高齢者の痛風では、より多関節炎が増加し、上肢の関節や指などの小関節の侵襲が増加する。また女性の割合が増加し、関節リウマチや血清返納陰性関節炎との鑑別が重要となる。痛風結節も早期から出現し、部位も非特異的となる。指に出現することが多い。

 

表.高齢者の痛風と典型例との比較

特徴

典型的な痛風

高齢者の痛風

年齢

中年~40歳代

65歳以上

性別

男性>>女性

男性=女性

関節炎

急性単関節炎

下肢優位で母趾MTP関節が60%

多関節炎が増加

上肢関節炎が増加

指関節炎が増加

痛風結節

発症数年経過して出現する

早期、発作がなくても出現する

関連因子

肥満、脂質異常症、高血圧、アルコール

腎機能障害、利尿薬使用

アルコール関連は少ない

(出典)ジェネラリストのための内科診療フローチャート

 

 典型的には単関節、上肢優位、男性が多かったものが、高齢者になると多関節炎、上肢や指関節が増え、男女比も同程度となるようです。

 さらに定量的な記述を探したいと思います。



3.具体的な数値を探して(定量化を試みて)

 痛風発作の部位による定量した表現も見つけました。さすがは、内科診断リファレンスです。

 

痛風発作>

  • 体温の低い部位に結晶が析出するため第1中足趾節関節炎を認めることは診断的価値が非常に高い。一方、体幹に近い肩・股関節は罹患しがたい。
  • 耳介や関節伸側・手指などに痛風結節を認めることも特異度が高い所見である
  • 女性の場合25%が手指の初発症状を訴えるが、男性では0%である
  • 初発発作は85-90%が単関節炎であり、60%が第1中足趾節関節に起こる
  • 第1中足趾節関節の発作:感度96%(91-100%)、特異度97%(96-98%)、LR+ 31(21-49)、LR- 0.04

(出典)ジェネラリストのための内科診断リファレンス

 第1中足趾節関節痛風発作感度96%、特異度97%、陽性尤度比(LR+)31であり、とても縛らしい結果ですね。男女差も多少あるようです。もう少し、定量化されたものを深堀りして探してみたいと思います。

 

痛風部位>

 Kohらによる報告

  • シンガポールでの100名(男性77名、女性23名、年齢中間値50.9歳、中国人89%)の後ろ向き研究の結果
  • 痛風発作の際、足首(39%)と膝(27%)が一般的であり、第1中足趾節関節(MTP)関節は26%であった。
  • 多関節炎での発症は稀であった(6%)。

(出典)Ann Acad Med Singap. 1998 Jan;27(1):7-10.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

痛風の初発部位>

f:id:mk-med:20211116214822j:plain

  • 稀な痛風発作部位を過去5-10年のMedlineで検索してみると、椎体、仙腸関節、肩峰鎖関節、胸骨柄などの報告がみられる
  • Kohらによる報告との違いの理由は定かではないが、彼らの症例は女性患者が含まれること、気候、人種差などが関与しているのではないかと推測される
  • (患者年齢)29歳以下12.4%、30-39歳28.0%、40-49歳27.2%、50-59歳19.1%、60-69歳9.3%、70歳以上4.0%

 

(出典)森脇優司ら、痛風発作の臨床、痛風核酸代謝第24巻第2号

 

 いずれも昔の報告であり、後者は最初痛風発作が生じた部位という限定もあります。したがって多少の差異はあると思います。それでも、第1中足趾節関節や足首、膝といった下肢に多いようです。また、椎体、仙腸関節、胸骨柄といった稀な部位の症例報告もあるようですね。

 また、Dual Energey CT等の診断技術の向上により、体幹に近い(関節液を採取しにくい)部位の診断報告も増えているかもしれません。しかし、UpToDateのような最新の二次文献においても体幹に近い部位の関節炎(痛風発作)が特に多いというようなことはなく、体幹に近い部位の痛風発作は少ないには変わりないと考えられます。

 

 定量化もあくまで参考値ですが、個人的には多い・少ないという言葉よりもイメージしやすくなりました。UpToDateや教科書のイメージを元に上記のような報告もあると考えられればと思います。

 また、他の結晶性関節炎との比較をすることも興味深そうです。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。

医学英語論文を読んでみよう START編 & 書籍紹介(医学書ログ)

医学英語論文を読んでみようSTART編)

& 書籍紹介(医学書ログ)

 

Dr.イワケンのねころんで読める英語論文

岩田 健太郎(著)

 

 今回は英語論文を読み始めた時の体験から書籍紹介(医学書ログ)の合同企画のような記事です。「どうして・どうやって英語論文を読んでいるの?」と聞かれた際に下手な駆け出しの私自身が体験談として話すより、私自身の学んだ本を紹介したほうが早くて確実だと思うからです。

 紹介する書籍は、おそらく知らない人はいないであろう岩田健太郎先生の書籍です。COVID-19をはじめ、感染症のお話でもエビデンスに基づいたお話をよくされているところを聞いたことがあると思います。

 エビデンスってなると、日本語だけで情報を手にするのは難しいところがあります。例えば、翻訳に時間がかかっている(例:教科書)、そもそも日本語になっていないというような弊害があります。そのような点を克服していくためにも、英語で情報を入手する必要があると思います。

 

 予めお断りをしておくと、英語がとても苦手(「英語アレルギー」)で、英語論文を読み始めてみようと思う人向けの書籍です。アブストラクトぐらいは自分自身で読んでおり、そこからさらに必要に応じて本文を読みに行くことはしているというような人には少し物足りないかもしれません。さらに、英語論文の批判的吟味がしたい、Journal Clubをやってみたいというような人はすでにこの書籍の次のステップであると思います。次回以降に機会があれば、次のステップの書籍や実際の論文でこの書籍の読み方を紹介をしたいと思います。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51gG4TMfTPL._SX350_BO1,204,203,200_.jpg

https://www.amazon.co.jp/dp/4840465797/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_0T17TS7421VKA4G5TR9

 

【こんな人におススメ】

  • 英語論文にこれからチャレンジしてみたい人
  • 自信がなく、まずは「これでいいんだ!ときっかけにしたい人
  • 岩田健太郎先生の考え方に触れながら英語文献を読んでみたい人

 

 こんなお堅いことを書いてみましたが、はじめの一歩を踏み出す時はどおしても大変と感じることも多いと思います。そんな気持ちを抱かないように上手にスタートするきっかけになると思います。

 

<本編の流れ>

1.ガイドラインを読んでみよう

2.PubMedでレビューを読んでみよう

3.論文のアブストラクト(概要)を読んでみよう

4.アブストラクトを見ながら、論文本文を読んでみよう

5.図や表を中心に、論文を読んでみよう

6.いろいろな形の論文を読んでみよう

 

Tips

・語彙を増やすコツ

・論文のつくりを理解して、ほしい情報まで近道しよう

(例)英語論文はアブストラクトから読もう

・英語のノリ・クセをつかもう

(例)英語は区切って、「つっこみ」ながら読もう

 →本書内の論文の解説の全体的な流れにもなっています。

 

 上記のような流れになります。何より英語論文の読み方で特徴的なのは、スラッシュで切って読んでいく方法です(受験生の時に使われた方も多いと思います)。

 いきなりですが、本文です。

 

 Both technical factors - appropriate catheter use, aseptic insertion, and proper maintenance - and socioadaptive factors, such as cultural and behavioral changes in hospital units, are important in preventing catheter-associated UTI.

 

 上記のような文章を何も問題なく読めている人は大丈夫だと思いますが、以下のようにスラッシュ等が入って解説されています。

 

 ただ、スラッシュで切って読むだけであれば、この本の魅力は半分以下だと思います。実際に、ユーモアにあふれながら、会話形式の楽しい解説がついています。

 

f:id:mk-med:20211111192919j:plain

  • まず、Both tequnical factors・・・・うにゃうにゃと、techenical factorsの説明があって、・・・(以下略)
  • それぞれ、ダッシュ(ー)やsuch as(「たとえば」)の後に、うにゃうにゃ・・・違った、詳しく説明しています。ちなみに、・・・(以下略)
  • 社会適応要素(socioadaptive factors)についてが、いまいちピンときませんが。 この説明では、病院職場での文化とか行動とかの変容ってことですね。「入院患者はとりあえず尿カテ入れ溶けや、ゴルァ!」みたいな非理性的な習慣がculturalな要素「手指消毒必要なんだけど、めんどくさいから端折っておこうぜ」みたいな「わかっちゃいるけどやめられない」のがbehaviorの要素です。そういう文化とか行動の変化(change)をだけではありません。その辺の変容をもたらすのが、socioadaptive factorsってことです。納得とか、そういうのがないと、技術だけでは減らせへん・・・(以下略)

(出典)Dr.イワケンのねころんで読める英語論文(一部抜粋)

 

 上記のように、解説も読み方や理解する背景を示唆してくれるかのような解説です。

 他にも、自分自身の知っている分野の英語論文は読めるのに違う分野のものになると読めないというのは、自分の分野の場合は知識で補っているのであって英語で読めているわけではないというような示唆もありました。

 文字だけで読んでいても、社会適応要素がイメージできなければ理解するのがつらいと思います。一方で、うにゃうにゃというようなメリハリの利いた読み方も大好きです。

 

<論文の読む順番>

 Tipsからの例です。英語論文はアブストラクトから読もう(そしてこっそりConclusionから読んじゃおう)という項目では、

  1. Conclusion
  2. Results
  3. Methods
  4. (Background)

の順でこっそり読んでいる人もいることが紹介されていたりします。結論を把握できていると、その他の内容も把握しやすくなるためです。(初心者向けに、Methodsが研究において最重要部分ですが、最初はあえて軽~く読みましょうという配慮まであります。)

 

<論文の構成とコツ>

 他にも、Tipの論文の構成についてのところでは、IntroductionからDisscussionまでの読むコツまであります。ざっくりと言うならば…

  • Introduction:論文の内容にあまり詳しくない人は丁寧に
  • Methods:「批判的に読む」のが重要!
  • Results:特に注意したいのは”Table1
  • Disccusion:特にLimitationに注目!

 

 最後は「本当の戦いはこれから」ということで毎日英語を勉強し続けてくださいねということがこの本でも書かれています。

 そのきっかけにおススメの一冊です。詳しくは書籍内で解説・説明されています。

 教えあうことはとても素敵ですが、我流の中途半端なところで教えあって変な癖がつくよりも、何か本などを軸にしてみんなで教えあい、相談しながらやってみるとかもよいと思います。ぜひ、今の自分から前進するきっかけにしてみてください。

 分類上、書籍紹介以外にもなぜ「その他」なのかというのは、英語論文を読む際の土台になっているからというのと、自分自身のビンっときた内容を中心にまとめすぎたからです。

 

続編

 これを記念して『Dr.イワケンのねころんで読める英語論文』を意識して実際にNEJMの論文を読んでみました。よろしければ、ご覧ください。

https://mk-med.hatenablog.com/entry/2021/11/26/172115

mk-med.hatenablog.com

 

【論文を読んでみたい方へ】

PubMed

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/

(検索語画面の左側に”ARTICLE TYPE”, ”TEXT AVAILABILITY”などがあるのでそこから、無料の論文、レビューだけなど絞り込みができます)

 

New England Journal of Medicine(NEJM)へ

https://www.nejm.org/

書籍の中でも用いられていた文章も主にNEJMからでしたので、紹介させて頂きました。

 

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。