医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

しゃっくり(吃逆)の原因 ~High Yieldな症候?~

しゃっくり(吃逆)の原因

High Yieldな症候Low Yieldな症候?~

 

 実際に聞いた話しですが、「しゃっくりが止まらない」と救急外来に患者さんがきたら、どうでしょうか。何となく、GERDの患者さんで生じることがあるとか耳学問で聞いたことあるレベルです。

 しゃっくりの原因なんて考えたことがないという人が他にもいればと思い、深掘りしてみることにしました。しゃっくりの原因の緊急性についてや、そもそも「しゃっくり」という症候がhigh yieldな症候であるのかについても考えてみたいと思います。

 

 まずはと思って調べた『ハリソン内科学 第5版』の索引には「しゃっくり(吃逆)」という言葉は見つかりませんでした。そこで、UpToDateで”singultus”と検索して、しゃっくりという項目を見つけました。

 

しゃっくり hiccups

 

 しゃっくりは、英語ではhiccup、hiccoughもしくはsingultus(”gasp”や”sob”を意味するラテン語のsingultが由来)として知られている。

(出典)UpToDate > Hiccups, 2021年6月7日

 

 何かあって日本語の教科書等で見つけられなければ、英語で検索することも多いと思うのですが、胸痛=chest painとは違って、こういう単語はなかなか思いつかないので、冒頭にこのような記載記載があり、ちょうどよかったです。

 

 では、しゃっくりについて深掘りしていきたいと思います。



しゃっくりの分け方

持続時間で分ける:特に48時間!!

 

<48時間以上続くしゃっくり(持続性 ”persistent”)>

稀に重大な病気によるものであることがある

・問診、身体診察、いくつかの検査により根底にある原因を探す(多くの患者では特異的な原因が見つからない)

・病因を探す間に症状を取ることも行う

・しゃっくりが日常生活にどの程度影響を及ぼしているかを評価すべき

 

※1カ月以上続くものは”intractable”

 

<48時間以内のしゃっくり>

典型的には重大な病気によらない

・症状の改善に重点を置く⇒physical maneuver

 

(出典)UpToDate > Hiccups, 2021年6月7日

 

 

 しゃっくりの原因(鑑別疾患)を基本的に頭の片隅にでも考えるのは、48時間以上しゃっくりが続く場合と言えそうですね。では、しゃっくりの原因について挙げていきます。

 

しゃっくりの原因(鑑別疾患)

 

中枢神経系疾患

・血管系

虚血性・出血性脳卒中*、動静脈奇形(AVM)、巨細胞性動脈炎

感染症

脳炎*髄膜炎、脳膿瘍、神経梅毒

・構造的原因

頭部外傷*、頭蓋内腫瘍、脳幹腫瘍、多発性硬化症、脊髄空洞症、水頭症

迷走神経および横隔神経の刺激

甲状腺*、咽頭炎喉頭炎、異物もしくは毛髪による鼓膜の刺激、頸部嚢胞またはその他腫瘍

消化管疾患

・胃拡張、胃炎、消化性潰瘍、膵炎、膵癌、胃癌、腹部膿瘍、胆嚢疾患、炎症性腸疾患、肝炎、空気嚥下症、食道膨満、食道炎、腸閉塞

胸部疾患

感染症または新生物によるリンパ節の腫大*、肺炎、膿胸、気管支炎、喘息、胸膜炎、大動脈瘤、縦隔炎、縦隔腫瘍、胸部外傷、肺塞栓

心血管系疾患

心筋梗塞、心膜炎

中毒・代謝性疾患

アルコール*、糖尿病、低カルシウム血症、低CO2血症、低ナトリウム血症、尿毒症

術後

全身麻酔、挿管(声門の刺激)、頸部伸展(横隔神経根の伸展)、胃拡張、内臓の牽引

薬剤性

・αメチルドパ、短時間作用型バルビツール酸系、化学療法(例:カルボプラチン)、デキサメタゾンジアゼパム

精神疾患

・食思不振症(AD)、転換反応、興奮、ストレス、統合失調症詐病

その他感染症

横隔膜下膿瘍、マラリア結核帯状疱疹、COVID-19

*より一般的な原因

 

(出典)UpToDate > Hiccups, 2021年6月7日

 

 

 しゃっくりの原因は多岐にわたり、そもそも48時間以内の際に原因を考えるべきかというのに加え、とてもLow Yieldな症候であり、何でもありな印象を受けました。

 

 逆流性食道炎が”chronic hiccups(48時間以上続くしゃっくり)”の原因の中で50%を占める

(出典)Rev Med Interne. 1992 Nov;13(6):454-9. doi: 10.1016/s0248-8663(05)81547-4

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 上記のような一報告もありますが、これ以外にも様々な報告があり、UpToDateぐらいが上手にまとまっているように思います。



 今回は、しゃっくりの原因が少ないであろうという期待はハズレでした。鑑別疾患を絞り込むのに使えるHigh Yieldな症候かと思いましたが、アテにはならなさそうです。しゃっくりだけでなく、他の症候があれば他の症候の方が診断のヒントになることが多そうです

 

P.S. 

 ちょうど、そんなことを言っている間に総合診療2021年6月号が発売になりましたね。タイトルにも、この診断で決まり! High Yieldな症候たちとあって、類似性があるとか思いきや、ちょっと違いました。例えば、呼吸困難ではなく「歩くと楽になる呼吸困難」というような特徴的な病歴でした。

 

患者さんがいろいろ言っている中で、「これは意義が高い」、「このことを言えば病気が絞れる」というHigh Yieldな症候がいくつかあるので、それを知っておくことは“強み”ですよね。病歴を聞くだけで、グッと絞りに行けますから。

(出典)Vol.31 No.6 2021-June, 総合診療, 693.

 

 特集の中の志水太郎先生と上田剛士先生の対談の形式の病歴聴取に関する部分からです。是非、タイトルやその表紙のHigh Yieldな症候(例:風が恐い、ヘソが毎月痛む、歩くと楽になる呼吸困難?、…)に興味のある方は是非どうぞ。しゃっくりの鑑別の様な主旨とは違いますが、このような症例が49症例も紹介されています。 

 

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 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

急性精巣上体炎 ~急性陰嚢痛の鑑別~

急性精巣上体炎

急性陰嚢痛から考える鑑別疾患~

 

 発熱が38℃台で症状は下腹部痛という急性精巣上体炎の症例に巡り合いました。精巣上体炎は陰嚢痛ではないのかと思ってみたりしました。 尿路感染症泌尿器科感染症では腎盂腎炎に巡り合うことが多いと思います。一方で、急性精巣上体炎に巡り合う頻度は多くはないと思います。知っているようで知らない、急性精巣上体炎と急性陰嚢痛について今回は深堀りして疑問解決してみたいと思います。

 

 まずは、イメージにあった急性陰嚢痛について深堀りしてみたいと思います。



1.急性陰嚢痛 acute scrotal pain 

 急性陰嚢痛の主な3つの鑑別疾患は、精索捻転、精巣上体炎、精巣垂捻転である。

(出典)Aust Fam Physician. 2013 Nov;42(11):790-2. 

 

 陰嚢または陰嚢内容の腫大をきたす疾患はさまざまなものが存在するが、陰嚢内容の腫大に疼痛を伴う急性陰嚢症には精索捻転症などの緊急手術が含まれるため、その鑑別疾患は重要である。急性陰嚢症には精索捻転症、精巣付属器捻転症、ムンプス精巣炎などがある。 

(出典)「臨床泌尿器科編集委員会, 泌尿器科外来マスターバイブル, 医学書院, 2019

 

 急性陰嚢痛の鑑別疾患の中では、急性精巣上体炎は主な原因(鑑別疾患)の1つのようですね。下腹部痛や鼠径部痛でも想起を忘れないようにしたいものです。

 せっかくなので、急性精巣上体炎の一般的なゲシュタルトを作るために深掘りしてみます。



2.急性精巣上体炎 acute epididymitis

<疫学>

急性精巣上体炎も頻度の高い疾患のひとつであり、成人の急性陰嚢症では最も多い。

 

<症状>

 炎症により患側の精巣上体が腫大する。発症初期は精巣上体と精巣が区別できるが、炎症が進行すると両者が一塊となり陰嚢内の大きな腫瘤となる。触診では精巣上体の疼痛を認めるが、精管に沿って炎症が広がると下腹部や鼠径部に疼痛が放散する場合もある。多くは発熱を認め、頻尿や排尿困難、尿意切迫感などの下部尿路症状を伴うこともある。

(出典)「臨床泌尿器科編集委員会, 泌尿器科外来マスターバイブル, 医学書院, 2019

 

 下腹部痛もあっていいというのは分かるものの、やはり炎症が精管に沿って炎症が広がると下腹部や鼠径部に放散するということで、やはり急性陰嚢痛があれば想起しやすいですね。

 続いて、急性精巣上体炎の原因について調べてみたいと思います。原因は感染症感染症に大きく分かれて、起炎菌も年齢等で異なるようです。また、急性陰嚢痛をきたす主な3つについても判断する(鑑別する)ポイントについても深掘りしてみたいと思います。



急性精巣上体炎

<原因>

性的な活動のある35歳未満の男性

 

男性(>35歳)

  • Coliform bacteria (Escherichia coli)

 

子供

 

性感染症

  • 結核 Mycobacterium tuberculosis
  • Many of the above untreated

 

免疫不全状態

  • Cytomegalovirus (CMV)
  • Cryptococcus
  • 緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa
  • Klebsiella pneumoniae

 

稀な原因

 

感染症

  • サルコイドーシス Sarcoidosis
  • ベーチェット病 Behcet’s disease
  • Amiodarone(アミオダロン:抗不整脈薬)
  • 特発性
  • 結節性多発動脈炎 Polyarteritis nodosa

 

(出典)Aust Fam Physician. 2013 Nov;42(11):790-2.

 

 知っているようで知らないことが多かったような気がしました。精巣上体炎の原因に関しては、あまり深く考えたことがなかったので、非感染性疾患もあるということも勉強になりました。精巣上体炎と聞いて、非感染性の原因も忘れないことや、年齢や性交渉歴によっても起炎菌の可能性を変化させるヒントを得ることが出来ました。

 

 さらに、他の文献では精巣炎も鑑別にしてある文献もあり、それと合わせて鑑別の表にまとめてみたいと思います。



<精巣上体炎、精巣捻転、精巣垂捻転の特徴・鑑別>

 

疫学・概要

問診・症状

所見

精巣上体炎(1)

・成人の陰嚢痛の最も一般的な原因のひとつ

・非感染性の原因を診断する際には感染症を除外

・慢性では症状や所見がはっきりしないこともある

・稀に前立腺炎を合併していることがある

・潜行性発症

・発熱、悪寒

・下部尿路症状

・性交渉歴

・重労働

・自転車等への長時間の着席

・睾丸の硬結

・精巣上体の圧痛

・Prehn’s sign:陽性

・精巣挙筋反射:正常

精索捻転(1)

・思春期の12-18歳に多い(65%)

・急性陰嚢痛では必ず除外すべき

・突然発症

・激しい疼痛

・悪心や嘔吐、腫脹を伴う

・外傷に伴う

・腹痛も生じうる

・非対称性の睾丸の挙上(症例の50%程度とする報告)

・Prehn’s sign:陰性

・精巣挙筋反射なし(診断;感度90%, 特異度90%)

※はっきりしない症例ではカラードップラー超音波検査(感度86-100%, 特異度95-100%)

精巣垂捻転(1)

・子供における急性陰嚢痛の最も一般的な原因

(若い青年に多い)

・緩徐発症

・中等度から重度の疼痛

・悪心や嘔吐を伴う

・精巣腹側の水腫や局所的な圧痛

・’blue dotsign

精巣炎(2)

・精巣炎のみは稀で、一般的には思春期前野の小児における流行性耳下腺炎(mumps)に伴う

・たいていは精巣上体から炎症が波及する

・突然の睾丸痛

(abrupt onset of testicular pain)

・非対称性の睾丸挙上

・Prehn’s sign:陽性

・精巣挙筋反射:異常

 

(出典1)Aust Fam Physician. 2013 Nov;42(11):790-2.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

(出典2)Am Fam Physician. 2009 Apr 1;79(7):583-7.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

 鑑別を意識すると、よりどこに注目すればいいのかも分かってくるような気がします。Prehn’s sign(プレーン徴候)精巣挙筋反射はもちろん、問診でも自転車の様な乗り物への長時間の着席や、性交渉歴のような項目も意識してみたいと思います。

 他にも急性精巣上体炎のゲシュタルト頻尿排尿困難尿意切迫感などの下部尿路症状を伴うこともあるということがしっかりと確認できたことも恥ずかしながら発見でした。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

初期研修:勇気を出して感情を共有してみたら?  本:『医師の感情-「平静の心」がゆれるとき』

初期研修 〜勇気を出して感情を共有してみたら?〜
本: 『医師の感情-「平静の心」がゆれるとき』

 

 初期研修がはじまり、早いことにそろそろ2ヶ月が経とうとしています。新緑もいつのことやら、気がつけば梅雨入りしていました。

 今回は初期研修が始まって、多かれ少なかれ「意外とみんなも同じようなことを感じているんだ」というようなことを知って、少しでも肩の荷が降りればという想いで書いた記事です。
 今のこの気持ちを少しでもブログにも書き残す意味も込めて書きました。お恥ずかしい思いもありますが、感情を赤裸々に書きます。

 

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 同じような辛い思いをしているんだと思うきっかけや、それをこの春から同じ場所で働くことになった同期と話してみるきっかけとなった本(『医師の感情』)やその本との出会いのきっかけから紹介します。

 

出会った本
『医師の感情-「平静の心」がゆれるとき』

www.amazon.co.jp

<手にとって欲しい人>

初期研修が始まった人

・病院実習が始まった人

<おすすめの理由>

同じ様な感情を持つ人がいることを理解できる

・同期内で感情を共有してみようと思える

 


出会ったきっかけ
<医師の教養 チャンネル@YouTube

www.youtube.com

 

www.youtube.com

 

 YouTubeをみるだけでも、ホッとするような瞬間があると思います。「平静の心」であるべきとは思いつつも、様々な感情が湧くことがあってよいのだというような心をなでおろすような内容です。
 しかし、本(『医師の感情』)の存在はYouTubeで知っていても、昨年の医学生のときには実際に読むにまでは至りませんでした。先生方とのご縁もあり、ひょんなことから、実際に本を手に取り読むきっかけを頂きました。5月20日の民間医局×医師の教養の企画にてパネリストの機会を頂いたからです(続編あります)。

connect.doctor-agent.com

 


 この本は医師、とりわけ若手医師の感情について体験等を振り返りながら赤裸々に書かれた本です。実際に初期研修がはじまると、次のような場面が生々しく想像できませんか?


<本の中には次のようなシーンがあります>

・共感が大切と学生時代に学んだけど…。

医学生が医学の理想、そして共感することの重要性、医師ー患者関係の価値について何を教わってこようが、あるいは何を純粋に信じていようが、いったん病棟に足を踏み入れてしまえば、それらはすべて水面下に沈んでしまうのだ。最も理想主義的な医学生ですらすべての新しい入院患者を新たな負担とみなすようになり、患者のあらゆる要求は仕事をこなすうえでの障害物と見なし、無駄話をすればそれだけ睡眠時間が減る、と考えるようになる」

 本当に、日本でいう医学生の時の方が初期研修の時と比べて時間もあり、締め切り時間も少し意味合いが違ったように感じます。特に朝の回診の時に感じがちな感情の人もいるのではないでしょうか?夕方の時にせめてゆっくりとお話を聞きたいと自分の心に留めておきたいものです。

 

・下品で失礼なジョークへの複雑な想い

「こっそりと裏側で内輪のジョークを聞かされたことで、自分はいまやチームの一員なのだ部外者ではなく内部の人間なのだ、と感じていた」
確かに、チームの一員ではなく何もできない見学生や医学生とは異なり、やっと居場所があるという安心感のようなものと、こんなことを言っていいのかというジレンマを感じる人も多いと思います。初心を忘れずにいたい反面、一員にもなりたいもので考えさせられます。

 

・フリーズする瞬間:恐れ

「本物の生きた人間を前にして、私は一つたりとも思い出すことができなかった」
コードブルーの時のフレーズより。もちろん、この場では、恐怖によって何も行動できなくなってしまっている状況で、「○○(判断し、介入)をすることで害があったらどうしよう」と震えあがってしまった状況描写で、だれしも講習会でACLS等を学んでも実際に患者さんを目の前にすると恐怖があるということも共感できればと思いました。

 また、恐れの感情を自覚し、徐々にそれをちょうどいい加減に調節する術をどのように獲得していくかも大切な課題であると思いました。

 

急性ストレス反応

「頭の中のどこかで、自分が崖から後ろ向きに落ちていくのがわかりました」、「もうこれ以上何か決断することなんてできそうもない、ということだけでした」。「よく……わからないんです」と泣き始める場面。
 この後の仲間との会話で「早く病院から帰ってとにかく休め」といわれる場面です。仲間の大切さや、仲間に「あなた、今回がはじめてだったのね」と、みんな悩まされている、急性ストレス反応を経験しているということも分かります。同期ともっとこういう感情に対して、オープンに共有していき仲間で支え合っていくことの大切さを感じました。
 コロナで一緒に食事をしたり、飲みに行ったりすることが難しい中ですが、上手に信頼関係を築いていく工夫もしてみようと思いました。

 

・恥
 「過失から生じる恥の気持ちは、医師の成長にもつながらなければ、治療の質の改善プログラムにプラスに働くこともない。それどころか、現実には正反対の効果をもたらす」

 ずっとうなだれた状態にならないように、環境づくりの難しさを感じさせる話しがありました。もちろん、情報を後悔し過失を認めていく姿勢は大切であるが、その公開後にどのように医師を支えていくのかという環境の整備の難しさを考えさせられました。

 

 他にも、燃え尽き症候群の話(具体的な現実のストーリー)、研修そのものがトラウマになりうるぐらいの経験の話、心が折れたように3ヶ月間研修を離脱したストーリーをはじめ、赤裸々にリアルに記述されています。

 この本を読んでみると、とりわけ前半は初期研修生活のはじめに読むととても共感できたり、自分だけが悩んでいるわけではないということを知れたり、研修先の同期ともっと赤裸々にそういう感情等について話してみようというきっかけになると思います。

 

 この度は、研修が始まって1~2カ月というタイミングでのすてきなご縁をありがとうございました。ぜひ、同じような状況の人は手に取ってみてください。

 

 

P.S.
 研修生活が始まって1カ月ちょっとの間の様々な感情だけでなく違和感等を自分の日記として記録してきました。それを今後見直したときに、どのような感情になるのか、また違和感に対してどのような判断を下しているのかはじめ、とても気になるものです。そして日々、精進して参りたいと思います。

壊死性筋膜炎 ~LRINEC Score~

壊死性筋膜炎?

~LRINEC Score~

 

 蜂窩織炎の疑い」と聞いて、「壊死性筋膜炎の可能性は?」とふと思いました。皮膚所見をそんな上手に取れるわけでもなく、重症で致死率の高いとされる壊死性筋膜炎と、蜂窩織炎などの軟部組織感染症を区別する良いものはないのかというところでLRINEC Scoreに出会いました。
 LRINEC Scoreは壊死性筋膜炎に対する臨床予測ルール(Clinical Prediction Rule: CPR)のひとつで、虫垂炎のAlvarado Scoreや肺塞栓のWells Criteriaの辺りが有名かと思います。今回は、LRINEC Scoreや、壊死性筋膜炎ついて深掘りしてみました。



1.壊死性筋膜炎らしさ

 

 まずは、壊死性筋膜炎蜂窩織炎を区別する際の簡単なチェックポイントから挙げてみたいと思います。

 

<壊死性筋膜炎らしさ>

・バイタルサイン;ショック

 →見た目と不釣り合いな頻呼吸、頻脈、血圧低下

視診と触診のギャップ発赤の範囲を超えた皮膚の圧痛

・循環不全による紫斑・壊死

 →紫斑上での痛覚の脱失

 

肝不全をはじめとする免疫低下はリスク

黄色ブドウ球菌、A群β溶連菌、嫌気性菌に加え、ビブリオ・バルニフィカス(キーワード:魚、海)

 

 確かに有用な問診項目や身体診察となりそうです。次は、MRI?造影CT?かと思いきや、採血でも壊死性筋膜炎が疑わしいときに蜂窩織炎と鑑別するための臨床予測ルール(CPR)をこのときに調べていて見つけました。



2.LRINEC Score

 

 LRINEC Scoreの際、採血で必要な項目は、血清CRP、白血球数、ヘモグロビン値、血清Na、血清Cre、血糖値(血清グルコースという一般的な項目です。それでは、さらに深掘りしていきます。

<LRINEC* Score>

項目

スコア

血清CRP (mg/dL)

<15

0

≧15

4

白血球数 (/µL)

<15,000

0

15,000-25,000

1

>25,000

2

ヘモグロビン値 (g/dL)

>13.5

0

11-13.5

1

<11

2

血清ナトリウム (mmol/L)

≧135

0

<135

2

血清クレアチニン (mg/dL)

※141 µmol/Lを換算

≦1.6

0

>1.6

2

血清グルコース (mg/dL)

≦180

0

>180

1

*LRINEC: Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis

 

 LRINEC Score 6点以上をカットオフ値とすると、陽性的中率は92%(95% CI, 84.3-96.0)、陰性的中率は96.0%(95% CI, 92.6-97.9)であった。また、8点以上をカットオフとした場合の陽性的中率は93.4%(95% CI, 85.5-97.2)であった。

 

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 LRINEC Score≦5点の群では、壊死性筋膜炎である可能性は50%未満、6-7点の群では50-75%、8点以上の群では75%を超えていた。

 

 LRINEC Score 6点以上の患者では、壊死性筋膜炎がないかを注意深く評価すべきである。

 

 他にも、この文献内では血液検査のうち、ESR、年齢、血清Cl、血清K、Urea、性別、血小板数も壊死性筋膜炎群とコントロール群(蜂窩織炎または膿瘍で入院)と比べられていたが、有意差はなかった。また、コントロール群との患者の比較では、合併症の有無(糖尿病、末梢血管性疾患)、体温(>38.0℃)、低血圧、多臓器不全、死亡率も両群で比較されていた。例えば、壊死性筋膜炎群とコントロール群の死亡率もそれぞれ21.3%と1.3%、糖尿病の合併の割合はそれぞれ70.8%と51.6%、低血圧となる割合はそれぞれ18.0%と2.7%であった。

(出典)Crit Care Med. 2004 Jul;32(7):1535-41. doi: 10.1097/01.ccm.0000129486.35458.7d.

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 まずは、有意差のなかった検査項目について、有意差とまではいかなくても少しぐらいは参考にできる部分もありそうです。また、壊死性筋膜炎群コントロール死亡率もそれぞれ、21.3%1.3%と大きく異なったり、糖尿病の合併の割合も70.8%51.6%であったりと、ショックのヒントにもなりうる低血圧もそれぞれ18.0%2.7%というように経過のヒントや患者背景というようなことが推測でき、結構興味深かったです。

 

 LRINEC Score 6点以上は壊死性筋膜炎の可能性が高いということが分かり、さらに詳しくその辺りが分かりました。出典にはROC曲線はじめ詳しくあります。詳しくは出典もご覧ください。



 また、他にもこのLRINEC Scoreに症状や身体診察等も盛り込んだmodified LRINEC Scoreを提案しているものも一部にあるようです。

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(出典)Ann R Coll Surg Engl. 2017 May;99(5):341-346. doi: 10.1308/rcsann.2017.0053.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 検査項目として赤血球数フィブリノゲンが増えていますね。他にもクレアチニン値も微妙に違います。確かにこれなら、modified LRINEC Scoreと言えそうです。一方で、疼痛や発熱、頻脈、急性腎障害の兆候という項目は、LRINECのLのLaboratoryではないので、臨床予測ルールとしては改名は必要かもしれませんね(笑)

 

 冗談はさておき、疼痛の程度発熱頻脈急性腎障害の徴候(←おそらくショックより)というのは、検査の前に問診や身体診察でチェックする項目として参考になると思います。修正版(modified)に関して、この文献では詳しく感度等について研究していたわけではないですが、臨床予測ルールとして症状や身体所見等も入れるということに関しては他の会陰小予測ルールでも見られることなので、むしろ自然な流れかもしれません。

 

 本日もお付き合いくださり、ありがとうございました。

Purple Urine Bag Syndrome (PUBS) 紫色蓄尿バッグ症候群

Purple Urine Bag Syndrome(PUBS)

 

 

 尿バルーンが留置されている患者さんにて紫色の尿蓄尿バッグにみられる、その名の通りPurple Urine Bag Syndrome(紫色蓄尿バッグ症候群)をご存知でしょうか?

 現在、泌尿器科をローテンションしているのですが、2週間目にして2回目のPurple Urine Bag Syndromeに巡り合いました。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/instance/6905158/bin/2317-6385-eins-18-eRC5063-gf02.jpg
(出典)Einstein (Sao Paulo). 2019 Sep 23;18:eRC5063.

 

 このような色が蓄尿バッグに見られます。私が見たものは、2回とも上の写真のように紫というよりも青と表現したくなる程度の紫色でした。このPurple Urine Bag Syndromeについて、「施設入所の便秘の人に多い!?」というような噂を聞いたり、「そんなにめずらしくない?」という感情を抱いたので、深掘りで調べてみたいと思います。

 

Purple Urine Bag Syndrome; PUBS
紫色蓄尿バッグ症候群

 

<概念>
・尿路感染症において尿が紫色になることが全体的な特徴

 

<病態>
トリプトファンに関する代謝によって生じるインジルビンとインディゴによる
1.トリプトファンインドール(腸内細菌による)
2.インドール→インドキシル硫酸(肝臓での硫酸抱合による)
3.インドキシル硫酸→インジルビン、インディゴ(細菌性ホスファターゼとスルファターによる)

 

<疫学>
・入院患者における有病率: 8.3~42.1%
(ここ数年で増加傾向)

 

PUBSの予測因子に関する研究
→case reportsからarticleまでの246名のPUBS患者の解析

<患者像>
・年齢: 29~99歳(中間値 78.9±12.3歳)
男性 29.3%, 女性 70.7%
・アルカリ尿: 91.3%
・患者背景など:便秘 90.1%, 認知症 42.8%, 寝たきり状態 76.1%, 施設入所 37.8%, 3カ月以上のカテーテル留置経験 45.9%, 再発性尿路感染症 14.3%, 両側腎摘出 1.6%, 膀胱瘻造設術 0.8%, 透析中(CKDの記載のある36名のうち16名), 敗血症性ショックによる死亡(1.2%)

 

尿路感染症の記載のある患者(n=112)のうち
・発熱を認める: 13.4%
・病原菌の同定: 82.1%. (69.6%は1種類の細菌のみ, 30.4%は2種類以上)

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起炎菌の割合


<根底にある病因等と考えられるもの>
~The susceptible patient: The ABCDEFGH rule~

A: Alkaline urine pH

B: Bedridden-situation

C: Constipation

D: Dementia

E: End-Stage Renal Disease

F: Female gender

G: Growth of bacteria (MUTI)

H: Hygiene - long term catheterization


・アルカリ尿:インドキシル→インディゴ/インジルビンへの変換の過程で重要
・寝たきり状態
・便秘:腸管の最近の異常増殖によるトリプトファンからインドールへの変換↑
認知症
・末期腎不全:CKDによるインディカン上昇といういくつかの報告
・女性:腸管のグラム陰性桿菌が尿道へ進入・増殖しやすい
・細菌増殖(MUTI)
・長期間の尿カテーテル留置

 

 PUBSはたいていは尿路感染症と対応し、高価な培養検査も必要なく簡単に見分けることができる良性の病態である。そして、根底にある重大な併存疾患を示唆することもありうるということも大切である。

 

(出典)Einstein (Sao Paulo). 2019 Sep 23;18:eRC5063. doi: 10.31744/einstein_journal/2020RC5063. eCollection 2020.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 イメージの「施設入所の便秘の人」は概ね正解であったような気もします。施設入所と少し異なりますが、印象として自宅で生活している人に比べて施設入所の人の方が寝たきりの人が多いというようなことからでしょうか。
 そして発熱がなくて、特に治療が必要な状態ではなかったので、概ね臨床像も一致しました。一方で、CKDの末期腎不全のような重大な併存疾患の可能性もありうるということも忘れずに注意していきたいと思います。

 また、蓄尿バッグをよく目にする診療科を回っていれば、有病率からすればそこまで珍しくないかもしれませんね。

 

 よければ、出典のDiscussionのところに~The susceptible patient: The ABCDEFGH rule~の理由をはじめ、詳しく書いてあるので、読んでみてください。
 

 そして、いつか次のCase Reportにあるようなこれぐらい紫のPurple Urine Bag Syndromeにも巡り合ってみたいと思います。

https://casereports.bmj.com/content/casereports/2018/bcr-2018-226395/F1.medium.gif

(出典)BMJ Case Rep. 2018 Jul 18;2018:bcr2018226395. doi: 10.1136/bcr-2018-226395.

 

 本日もお読みくださり、誠にありがとうございました。

腎盂腎炎の臨床像

腎盂腎炎の臨床象

 

 腎盂腎炎の症状で、体動時にお腹も腰も響くように痛くて、深呼吸でも痛いということを聞く機会がありました。炎症が波及するとこのような状況になることがあるんだと感じました。

 それをきっかけに、今回は腎盂腎炎について深掘りしていきます。

 多くの人にとって腎盂腎炎は高齢者の感染症としてよく耳にする尿路感染症のひとつかと思います。しかし、実際には腎盂腎炎であると決めてかかればそう見える」けど、無症候性細菌尿の可能性もあるので、「ちゃんと診断できているのか分からない」ということもあったかと思います。

 

 では実際に腎盂腎炎の患者像から把握して、実際の患者さんはどこがよくある臨床像で、どこがよくある臨床像に合わないのかを考えていきましょう。

 

患者へのアプローチ
 尿路感染症が疑われるとき、対処すべき最も需要な問題は、無症候性細菌尿、単純性膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎、または複雑性尿路感染症としての臨床症候群の特徴を理解することである。

 

腎盂腎炎pyelonephritis
・軽度の腎盂腎炎は、下背または肋骨脊柱角の疼痛の有無にかかわらない微熱を呈する。
・重度の腎盂腎炎は、高熱、悪寒、悪心、嘔吐、側腹部痛や腰部痛を認める。
・症状は通常、急性発症であり、膀胱炎の症状はみられない場合がある。
・発熱は、膀胱炎と腎盂腎炎を区別する主要な特徴である。
腎盂腎炎の発熱は概して高く急上昇するパターンを呈し、72時間を超える治療で解熱する
・菌血症は、腎盂腎炎の20~30%の症例で発現する。
・糖尿病患者では、急性腎乳頭壊死を伴って乳頭を脱落し、尿管を閉塞すると、閉塞性尿路疾患を呈することがある。
・両側性乳頭壊死のまれな症例においては、血清クレアチニン値の急激な上昇が最初の兆候となることがある。
・実質内膿瘍を形成していることもある。抗菌薬治療を行っているにも関わらず、稽留熱や菌血症を呈するときはその可能性を疑わなければならない。

 

気腫性腎盂腎炎emphysemayous pyelonephritis
・特に重度の型で腎臓および腎周囲組織でのガス産生を伴い、ほぼ例外なく糖尿病患者にみられる。
黄色肉芽腫性腎盂腎炎xanthogranulomatous pyelonephritis
・慢性尿路通過障害(しばしばサンゴ状結石による)に慢性感染症を伴い、化膿性炎症を起こして腎組織が破壊される。
・病理組織では、脂質を含んだマクロファージの浸潤により、残存する腎組織はしばしば黄色を呈する。

 

(出典)ハリソン内科学 第5版

 

 このハリソンの記述で特に「さすがはハリソン」と感じるのは、膀胱炎の症状はみられない場合があるという部分です。膀胱炎症状はあっても、なくても良いということができます。ということは、患者さんに問診して、排尿時痛や頻尿、残尿感というような膀胱炎症状がないからといって、腎盂腎炎を鑑別疾患の中で可能性がないわけではないので、発熱の原因探しは続けないといけないと感じました。

 そこで重症度も込みで考えるのが、軽度の腎盂腎炎では下背または肋骨脊柱角の疼痛の有無にかかわらない微熱を呈するが、重度の腎盂腎炎は、高熱、悪寒、悪心、嘔吐、側腹部痛や腰部痛を認めるという部分は、確かに炎症の強さで説明付きそうで納得です。
 過去には、季肋部の圧痛やCVA叩打痛といった身体所見までめぐりあうこともありました。


では、他の本ではどうでしょうか?

 

女性の急性腎盂腎炎

<病因・病態>
・再発する膀胱炎が特殊な宿主にみられたのと対照的に、特殊な細菌(特に病原性の高い大腸菌など)により生じる。
・言い換えれば誰でも罹患しうる疾患である。
・頻度ははるかに少ないが、男性(特に同性愛者、相手の女性の膣に病原性の強い大腸菌がいる男性)も罹患する。

<起炎菌>
大腸菌が多い。その他Klebsiella pneumoniae, Staphylococcus saprophyticusなど。
・入院症例、膀胱カテーテル使用例ではより耐性のグラム陰性桿菌、緑膿菌などが問題になる。

<臨床像>
・膀胱炎様症状(頻尿、排尿時痛)に加え上部尿路の局所症状(側腹部痛など)、さらに全身症状(発熱など)。ただし膀胱炎症状のみのこともあり、臨床像は病変の局在に関して非常に不確実である。また側腹部痛などの局所症状は腎梗塞、尿路結石、動脈解離などでも生じ非特異的である。
・男性では、膀胱炎症状+発熱のときは急性前立腺炎を考慮する。また急性前立腺炎は膀胱炎症状がはっきりせず、悪寒戦慄発熱を伴う原因臓器不明の全身性炎症疾患として提示されることも多い。
・時に悪心・嘔吐、腹痛など消化器症状が表面に出ることがある。胆管胆嚢疾患や虫垂炎と混同されることがある。
・逆に高齢者や糖尿病、アルコール依存症の症例などでは、重症の腎盂腎炎にもかかわらず極めて表面上元気で問題がないようにみえることが少なくない。高齢者や糖尿病症例では臨床的な印象に注意が必要である。無症状にもかかわらず菌血症を呈することに驚かされることがある。膀胱カテーテル存在したではさらにそういう症例が多くなる。

※短期間治療が失敗し再発した「膀胱炎」も実際は上部尿路感染症である可能性が高い。

 

(出典)レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版

 


 ハリソン内科学に似ているところもあり、症状のあるなしだけでなく、その頻度まで意識した記述がいいですね。


 さらに意識したいのは、やはり高齢者や糖尿病患者の場合のこと。表面上元気でも重症ということは、体動困難の原因として救急車で運ばれてきたときにはかなり重症ということもできるかなと思います。あとは、腹痛のような症状に惑わされるものもあること、男性では前立腺炎の方が可能性が高そうというあたりも、勉強になりました。

 

 まだまだ、論文まで読まなくても学ぶことがたくさんあります。もちろん、PubMedで”pyelonephritis”と検索してreview article等を探してみましたが、教科書の威力も確認できました。もう少し特異的な狭い範囲のことを調べるにはpubmedgoogle scholarでの検索が有効になってくる反面、教科書の方がイメージが掴みやすいのも良いと感じました。もっと、症状の生じる定量的な割合とかも調べてみるのもアリだと思います。

 

 ぜひ、これらの教科書の続きも読んでみてください。治療や対比されている疾患(例;他の尿路感染症)なども学ぶきっかけになると思います。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。

気管支喘息 ~教科書を読んでみよう♪~

気管支喘息
~知っているつもりでも教科書を読んでみよう♪~

 

 様々な書籍を書かれていた恩師の先生から、学生の時代に「自分が担当となった患者さんの疾患について、ハリソン内科学等の正書を読むとよい」と直接教わったことがあります。
 全体像を把握するための側面もありますが、Commonな疾患で知っているつもりのものでも意外と知らないことが多いことに気がつきます。恥ずかしながら、知っているつもりで教科書を読んだ際の「へえ~」といった発見を紹介する記事です。

(喘息のことを網羅的にすべて紹介するわけではありません)

 

 今回もその気づきと、「やっぱりハリソン内科学等の教科書を読むことによる発見」を伝えたいと思い、ブログの記事にしました。ハリソン内科学Goldman-Cecil Medicineといった正書を持っており、何かあるごとに読んでいる人には無縁の記事、そしてしっかりとこれまでに勉強されている人には既知のことかと思いますが、興味のある方は是非お読みください。

 

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代表的な内科学書:ハリソン内科学とGoldman-Cecil Medicine(電子版)

 

 喘息と聞けば、大概のことは既に知っていて、喘息の病態のリモデリングのお話や病態や治療の話(例:ステロイド、SABA、吸入ステロイド(ICS)、LABA等)は既に知っていると思います。今回は、そこではなく例えば、職業性喘息や難治性喘息などのその他喘息についても紹介したいと思います。

 

気管支喘息

有病率
・世界的に最も頻度が高い慢性疾患の1つ
・現在では世界で約3億人が罹患
・喘息の有病率は先進国では過去30年間で増加したが、最近は横ばいとみられ、成人で約10~12%、小児で15%程度
・すべての年齢層でみられるが、ピークは3歳
・小児の患者数は男児が女児の2倍
・成人に近づくと男女差はなくなる

感染
・ウイルス感染、特にライノウイルス感染は頻度が高い喘息の増悪因子

食生活
・観察的研究により、ビタミンCおよびA、マグネシウム、セレン、ω3多価不飽和脂肪酸などの抗酸化物質が少ない食事や、ナトリウムやω6多価不飽和脂肪酸を多く含む食事が喘息発症リスクを高める

 

職業性暴露
・職業性喘息(occupational asthma)の頻度はかなり高く、若年成人の約10%近くが罹患している可能性
・300種以上もの感作物質が同定
トルエンジイソシアネート、無水トリメリット酸などの化学物質は、アトピーの有無とは関係なく感作を生じることがある
・実験従事者では小動物アレルゲン、パン職人では小麦粉の真菌アミラーゼというように、職場でアレルゲンに対する感作が生じることがる。
・自覚症状が週末や休暇中に改善する場合には職業性喘息の可能性が疑われる

 

肥満
・肥満(BMI>30kg/m2)を有する個体群で発症頻度がより高く、コントロールがしばしば困難

 

喘息の増悪因子
→ウイルス感染、薬物(β遮断薬、ACE阻害薬、アスピリンアスピリン喘息))、運動(特に小児)
→生理学的要因;冷気吸入、過換気、暑い気候や気候の変化、一部では臭気や香水など
→食物と食事;食物に対するアレルギー反応が喘息症状の悪化につながることを示すエビデンスはほとんどない
→食品保存料のmetabisulfiteは胃内で二酸化硫黄ガスを放出して喘息を悪化させることがある

 

臨床像
・喘息の特徴的な症状に、喘鳴、呼吸困難、咳嗽があり、これらは自然に、また治療により変動する
・患者は肺を空気で満たすことができないと訴えることがある
・しばしば粘着性で喀出しにくい粘液産生の亢進を訴える
・喘息発作では、前駆症状として顎下の掻痒感、肩甲骨間の不快感、逃げられない恐怖感などを自覚することがある

 

<その他の喘息>
難治性喘息
一部の患者(全喘息患者の約5~10%)は最大限の吸入療法によってもコントロールが難しく、経口ステロイド薬による維持療法が必要な場合がある。


ステロイド抵抗性喘息


ブリットル型喘息
・適切な治療を続けているにも関わらず、一部の患者は無秩序な肺機能の変動をきたす


アスピリン喘息
・喘息患者の一部(1~5%)は、アスピリンやその他のCOX阻害薬で悪化する

(出典)ハリソン内科学 第5版 

 

 上記以外にも、『ハリソン内科学』を読むまで知らなかったこともありました。やはり、教科書(正書)を機会があるごとにしっかりと読んでみることの重要性を認識しました。このクラスの教科書を何もなく、最初から最後まで通読するのは厳しいと思いますが、機会があるごとにその疾患について教科書から深めていくのがとても良いと思いました。

 

 他にも、感染症なら「マンデル」(Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases)とか、膠原病なら「ケリー」(Kelley and Firestein's Textbook of Rheumatology)とかを主に電子書籍で使っています。これらの洋書は、家に紙の書籍を置いておき、無料で電子版(inking)の付いてくるので普段は電子版を場所を選ばずに使うことができるのもメリットです。

※セシル内科学(洋書)も電子版付きで、セシルと同じアプリ内(inking)で使っています。

 

 ぜひ皆様も教科書も読んで新たな発見をしてくだされば幸いです。

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。