"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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読書Log: マンガでわかる Dr.Kの株式投資戦術|医師の資産運用への想い・個人的雑記

読書ログ(書籍紹介)+α

『マンガでわかる Dr.K株式投資戦術 −忙しい医師でもできるエビデンスに基づく投資−』

Dr. K(著)

+医師の資産運用をはじめとする個人的な想い・雑記

 

<目次>

 

 今回は、タイトルから受け入れられない人もいそうな書籍です。以前、読書ログにした『医学生・若手医師のための 誰も教えてくれなかったおカネの話』の著者でもあるDr.Kの書籍になります。

 書店で見つけて手に取ってみたところ、最初(第1話)の漫画の設定に共感を覚えました。そして、アマゾンでの評価以上に初心者には読みやすく、医学生・若手医師のための誰も教えてくれなったおカネの話』よりもテーマもまとまっていると思い、読書ログとしつつ、これを契機に個人的な雑記にしました。

 

 

 

1.おススメの人

 医師もしくは医学生のうち、以下のような人におススメであると思います。

【こんな人におススメ】

  • 現在/この先の働き方疑問を感じている人
  • 株に興味がある初心者
  • 何か漠然と投資に興味がある人
  • 株式投資か不動産投資か悩んでいる人
  • 年齢・収入形態的に中長期投資が可能な人



2.購入のきっかけ

 購入のきっかけはひとことでいえば、主人公の最初の設定・状況に共感して吸い込まれたことです。主人公の設定は医師の石野鑑三、39歳男性、〇×大学病院小児科勤務/〇×大学医学部講師(外勤込みで年収800万円)です。そして、当直明けはきついと言いながら、無精髭を連想させるイラストで始まります。昼は医学部講師の仕事、夕方は入院患者の診察で、いつ寝るんだろうとつぶやいています(よくある連続36時間勤務でしょうか)。夜間の呼び出しや、主な収入源の休みの日のバイトまたは外勤も含めて、家族には仕事だから仕方ないと言われつつ呆れられ、主人公の人生の楽しみは減っていくという状況で始まります。

 迫りつつある2024年、医師の働き方改革で残業時間を制限されたら主な収入源である休日のバイトも厳しくなってくる場合もあると思います。日本式の「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というようにサービス残業がさらに増えて時間外手当も減るのか、バイト抜き(収入半減)で生活を維持していく方向になるのか、その辺りも含めると不安要素であると思います。もちろん、専門職のダンピングのような構造や、便利(労働年齢の主な人を除く)や安いというような医療のあり方、高齢者の増加などの問題もあると思いますが、現状維持であるならば、単なる働き方だけでなくキャリアをいったん考え直す時でもあるように感じます。

 さらには、書籍内のマンガの最初に「株をやっているというだけで教授ドヤられる」というコマも登場します。仕事・職場のことだけに励めと上の世代に言われたことがある人もいると思いますし、当たり前で違和感がない人もいると思います。

 このような本を買っているのを知られたら嫌だなとか、後ろ指を指されるかもしれないという感情もありました。しかし、取り巻く環境の変化を含め、ブログ記事にしてもまあいいかというか、そろそろいいかという感じです。最初(第1話)の漫画の設定に共感を覚えて吸い込まれるような感覚がかなり勝ったことから、購入に至りました。そして、様々な人がこのような書籍を読んで選択肢を見て、今までの働き方を含めて自分で納得する方を選んだ方が後悔が少ないと思い、読書ログにしました。



3.書籍のターゲット

  • 少しは時間的/精神的余裕がある医師
  • 臨床医としての将来不安に感じている医師
  • 個別株を考えているが買ったことがない初心者
  • 中長期投資を考えている人

 おそらく、書籍の主な設定は30歳前後~40歳ぐらいの勤務医であり、株式投資をしたことがない人初心者であると思います。そして、その設定から感じられるのは、今の50代や60代の医師とは違い、医師だけでは将来が安泰ではないというような不安もあるように感じる設定です。

 日中だけでなく、当直・オンコールなどの仕事があることを前提に、画面(コクピット)に張り付くようなデイトレード、話題になって飛びついて失敗する短期的な人気銘柄のようなものではなく、中長期投資をおすすめしています。失敗した塩漬け株にならなければ、時間が味方をしてくれる(マクロな視点と長い時間の大きな流れで株価が上がる)という視点も入っていると思います。

 そして、生活に必要なお金以外からはじめることや医者での収入がぼちぼちあることを前提にしている面もあり、儲け(もちろん損もする)をある程度意識した個別株式投資になっていると思います。収入が安定していれば比較的リスクはあるものの賭けに、収入が不安定であればインデックス投資のような安定寄りの投資になったりすると思います。いずれにしても、いつでも取引できるわけではない、ずっと株価の上下が気になるような人にはレバレッジのかかったものは、ペイアウトのリスク(長期的には儲かるものでも短期的な下落で損をして終わる)、精神面、働き方・生活スタイルから、投資が本業もしくは、時間的に優先的に使える状況でない限りはお勧めしにくいのが、個人的な見解です。

 

 そして、さらにターゲットは経済にも興味を持ち、時間を割くことができる人でしょうか。あまり個別株式のファンダメンタル分析をする(決算等を調べ、企業価値を分析する)気もなければ塩漬けのリスクがあります。そういう意味でも少し時間的な・精神的な余裕のある人ということになります。そうでない人は、つみたてNISAによる投資信託優先だと個人的には考えています。

 個別株を買うことは、経験になる面やファンダメンタルズを意識して勉強になる面もありますが、投資信託よりもボラティリティ(変動幅)が大きくリスクがあります。もちろん、株の場合はゼロになる場合もあります。遊び半分であったとはいえ「潰れないだろう」という憶測のもと、日本航空の株をゼロにした経験もあります(笑)。中長期的に日本のことを考えると、私の立場はあまり日本の個別株派(日本以外の市場が主の日本企業等や一部の業種を除く)ではありませんが…。

 

 貯金や長期的な(放置のような)投資に近いならNISAの範囲で税金がかからないメリットを活かしたり、手数料(運用管理費用、信託財産留保額、購入時手数料等)を抑えた投資信託インデックスファンド、アクティブファンド)、iDeCoぐらいでいいはずです。特に、つみたてNISA(積立NISA)やiDeCoは株式市場にお金を流入させるためという意図だけではなく、破綻したような年金制度を補助する老後資金のためのなし崩し的な政策だと感じますが、税制上の優遇があるため、やるなら使わない手はないと思います。個別株を非課税枠で扱う場合は一般NISA(2024年より新NISA)になります。もちろん、NISAの範囲内だけではFIREのような生活は無理ですが、個別株を選んだ場合でも税制の優遇処置のうち難なく使えるものは使っておきましょう。iDeCoは自分のお金なのに60歳まで下せなかったり、転勤時の手間・勤務先への報告や積立限度額が雇用次第です。5年以上の海外赴任の予定はなく、個別株までは買いたくない長期運用希望の人は、まずはつみたてNISAが始めやすいと思います。時間(20年というような長さ)と税優遇がダブルで味方をしてくれると思います。そもそも、つみたてNISAの枠の範囲内程度の金額(年40万円)の投資信託も持っていない人で投資について何も知らないのであれば、個人的にはつみたてNISA×投資信託(主にインデックスファンド)選びから始めた方がいいような気がします。

 

 そして、一部の一発大当てのような物語は話題になりやすく、夢見る人も多いでしょう。しかし、コツコツと節約をしながらインデックスファンドをやってきたというような成功例はクローズアップされにくいものの、後者のような方法で成功している人が多いと思いますので、インデックスというほどでなくても、個別株でもコツコツとリスク分散情報収集からリスクを減らしながら稼いでいくことは忘れないで欲しいと思います。

 

 しっかり投資していくためには、貯金する場合と同じですが、そもそも「収入ー支出」増やしつつ投資に回す金額を確保していく必要性があると思います。そういう意味でも平均年収の人よりは年収的に投資用のお金を確保しやすく、損するリスクが投資信託よりも高くても良いという意味でも医師向けなのかもしれません。もちろん、ストレスフルな仕事や「医師」というステータスから浪費癖のある人もいるとは思いますので固定費を下げることや年収に見合わない生活という部分も見直してみる良いと思います。

 あくまで医師として労働者として働きながら、副収入があってよかったよねという生活を目指したい人向けのひとつの手段であると思います。それ以上を目指す場合は、そもそも労働者(金融業のような一部を除く)ではなく経営者、起業家等になることを考えた方が合理的であると思います。

 

 

 他にも、不動産投資よりも株式投資をおススメする理由として、勤務する病院の業務規程にひっかかりうることを挙げています。これは、この漫画のストーリーのように大学病院勤務で働く場所を自由に選べるわけでもない側面もあると思うので納得です。

 

 この書籍では、多くの医師が「マス層」か「アッパーマス層」(非富裕層)であるということを解説しています。医師が非富裕層かつリスクを抑えつつある程度リターンを狙うと考えると株式債券為替、リート、さらには不動産やファンドといったオルタナティブになると個人的に思います。そういう意味でもターゲットが絞れていると思います。超富裕層であれば、UBSやクレディ・スイスのようなプライベートバンクが視野に入るでしょう。

 そして、今の働き方とどのようにバランスを取っていくことができるのか、この先の働き方・暮らし方をどうしたいのかというような視点から、株式、不動産、それ以外、何もやらないなど、決めてみると良いと思います。投資は、誰かに判断を求めたりせず、自分の判断でやる人のみがやるべきだと個人的に感じます。

 

 

(補足)不動産投資もぼんやりと考えている方へ

 不動産投資もぼんやりと選択肢である人は、情報を探してみるとよいでしょう。探してみたところ、アマゾンプライム会員であれば無料で読むことができる、次のようなKindleの電子書籍もありました(当時)。

  • [新版]まずはアパート一棟、買いなさい! 資金300万円から家賃年収1000万円を生み出す極意, 石原博光(著)

 もちろん、『[新版]まずはアパート一棟、買いなさい! 資金300万円から家賃年収1000万円を生み出す極意』では、利回りの良い中古アパート(1棟)稼ぐための手段という視点も含めて書かれています。

 表面利回りとの乖離に関しても注意点が書かれていました。この書籍以外にも、都心のぼちぼちの利回り中古物件(表面利回り5-10%近いもの)を資産という側面を強めて買うというような視点で書かれた本もありますが、一つの良い参考になると思います。ざっくり学ぶだけでも、営業マンが言っていることがおかしいと気がつけると思います。

 よく院内PHSにかかってくる(しかも場合によっては内線転送、さらには院内の〇〇課の●×とか嘘をつく、外線でも厚生局とか嘘をつく)うっとおしい、「節税」という言葉を餌にした不動産投資勧誘まであります。そのため、不動産投資というキーワードそのものには興味のある人も多いと思います。

 投資と言えば、儲けたり、資産を保全する目的で行うわけです。例えば、資産の保全という視点から不動産が経営も考えずに節税になるのは路線価で相続税が計算されるからであり、そうでなければ下手な不動産を買っても赤字です。とりわけ、相続が何年先かも分からない若いうちに不動産を買っても相続目的ではなく、ちゃんと修繕・管理(依頼含む)をやって経営していく必要があります。わざわざ勧誘の電話をしてくるようなところは、どうせ単身用マンションの1室(ワンルーム、1Kなど)、サブリース契約で「家賃保証」とか言いつつ、不動産(賃貸業)を知らない人を相手にしたもの(情弱ビジネス)が多いと思いますので要注意です。本当にいい物件は、公開した当日には興味ある人からの問い合わせ、買い付けがありますし、その前に表で売買されない物件もあります。院内に電話勧誘してくるような業者と仲良くするなら、信用金庫と…。不動産の話がメインではないのでこの程度にしておきます。

 サブリース契約とか「家賃保証」の実態など、聞いたこともない人は何も知らないものだという初心で、ゼロベースで学んでみて、どちらが向いているかなどを判断することをおススメします。そうすると、院内PHS等に電話がかかってくる勧誘は節税というお得に聞こえるキーワードをもとに「ただ高値で売りたい」というようなことがおそらく分かるでしょう。

 

 個人的には株とは異なり元本が少なく、銀行でお金を借りることでレバレッジが効くというメリットはあります。しかし、マクロな視点で20-30年先の日本のその場所がどうなっているのかは疑問であり、場所選びから真剣に考える必要があります。

 



4.学べること

 この書籍はゼロベースで学んでみようという人向けだと思いますが、例えば次のような具体的なことが学べる/成長できると思います。下記のようなキーワードが何か分からないというような人で、医師であれば共感しやすいマンガもセットで読み進めやすいと思います。

 

  • 多くの医師の立ち位置は「マス層」
  • マネーリテラシー
  • 投資の目的の明確化
  • ネット証券、約定ごとプラン
  • チャート: ローソク足、陽線、同事線、陰線
  • 銘柄選び: PER、PBRなど
  • 買い時は技術、売り時は芸術
  • 騰落レシオ、RSI
  • 含み損、含み益
  • 確認すべき情報: 決算短信
  • 塩漬け株、恩株

 

 まずは、マネーリテラシー富裕層の定義の確認から始まります。受験業界やメディアのせいもあるのか、一般的な医師が富裕層であると勘違いしている人もいます。しかし、多くはマス層であり、人によっては少し上のアッパーマス層ということも把握しておきましょう。過去に「パートナーと結婚したものの、医者は裕福と勘違いしているパートナーの消費額ゆえに貯金額が増えない…」とか、「学生時代に想像していた給料と違い、研修医の給料がカツカツでストレス発散にお金を使ったらお財布が自転車操業状態のループに嵌っていて長期的な視点は難しい」とか、同情する場面もありました。認識のズレは怖いものです。個人的には、投資用のお金(余ったお金)を用意するために少なくとも最初は生活のレベルも下げる必要がある人もいるとも感じます。

 他にも、書籍内に書かれている「診療中は患者は診ても株価は見るな」という当たり前のことはもちろんですが、「なぜこの会社の株を買おうと思ったのか」という投資の前提を意識しておくという部分も、株を買うきっかけや含み損が出た際の判断ミスを防ぐ参考にもなると思います。

 ネット証券の口座開設の部分は、実際に損得以外にも、少額でゲームセンターのようなノリで娯楽として始めてみるというような方にもおススメかと思います。ネットで簡単に取引ができなかった昔(余裕で10年・15年以上前)、とある証券で口座開設をしたことを懐かしく思う反面、便利になったと思わずにはいられません。また証券マンの「この株買いませんか」(お薦めだけでなく引き受け株も絡むので儲かるかは別)もなく自由に選びやすいと思います。それだけ、昔よりも場所や時間、選択の制約もなくなっていると思います。そして、ネット証券のおかげで手数料などのコストを抑えることもできている点がどのような投資の際にも有効であると思います。

 この先は本の内容とは異なりますが、具体的にSBI証券楽天証券などの選択肢を検討してみながら、ハイブリット預金/マネーブリッジ、積立NISA/一般NISAの申込み、クレカ積立などの自分自身にあったお得な制度もチェックしてみるといいと個人的に思います。特定口座(源泉徴収の有無)のような手間(確定申告の有無)も含めて、証券口座開設で損をしないためにもチェックしてみましょう。楽天証券をはじめとする楽天経済圏は最近でも改訂があるため、メリットがなくなっていないか最新の情報をチェックしてみてください。

 そして株を買うまで、株を買った後も興味を持ってその会社や業界、経済事情を追っていく必要があります。塩漬け株(今売ると損する状態で売れず、長期保有状態の株)となることを防ぐためにも、投資先の会社・業界などへの興味の維持や決算の確認も必要でしょう。いろいろと忙しくて、かつ含み損もあり、塩漬け株になってしまったという人も多いような気もします。

 株(会社)を具体的に探していくような時に気になる部分(例:会社四季報の読み方、決算書の読み方)というようなところまでの記載はありません。この本を読み、興味を持ったら、情報を検索してみたり、1,000円台の書籍を書店で見てみてもよいと思います。なぜ、読書するのかと同じく、1000円台のお金で情報をある程度書籍にまとめてくれている手間賃としても書籍は一定価値があると思います。

 例えば、3カ月に一度発行される会社四季報(以下、四季報)があります。その四季報でのキーワードを切り口にした『世界一楽しい! 会社四季報の読み方 小説のようにハマり、10倍儲かる!』というような四季報に興味を持つための入口としての書籍から、『得する株をさがせ! 会社四季報公式ガイドブック』というような公式ガイドブックまであります。四季報そのものを見たことがない人は書店でどのようなものを見てみると雰囲気は分かるかもしれませんが、普段から持ち歩くのは…という人が多いと思います。もちろん、オンライン版四季報をサブスクする方法もありますが、SBI証券の国内株式銘柄別のページにて会社四季報(最新版のみ)を見ることができるので、私自身は紙の会社四季報で全体をざーっと見たいとき以外にネットでちょこちょこチェックしています。まずはネット証券の無料のものでちょこちょこと気軽に覗いてみるのもいいかもしれません。

 他にも、決算書の読み方も大きな書店で複数の種類のものが平積みにされています。例えば、『見るだけで「儲かるビジネスモデル」までわかる 決算書の比較図鑑』のように、イメージしやすい図・グラフが入っているものも読みやすくて良いと思います。

 経済・経営などに興味を持つきっかけや医師で狭くなりがちな視野を広くすることのひとつにも役立つと思います。医師としてバイオ株には注意という点も共感です。知っているがゆえに世間の反応と乖離する状況が生じうるとも言えます。

 具体的な話は書籍の中に書かれていますので、気になる方は手に取ってみてほしいと思います。

 

 もちろん、この本は医師の●×ということでターゲットを絞っていますが、何か共感があり吸い込まれるように読んでしまったとか、医師向けであることで環境的なヒントがあるというようなことが特になければ、わざわざ医師をターゲットにした書籍に絞る必要性はなく、もっと幅広い選択肢から良いものを選んでみてください。

 

(補足)書籍選び ~情弱ビジネスやポジショントーク注意~

 医師をターゲットにした書籍も他にもありました。著者がワンルーム新築などを手掛ける会社の経営者ということで情弱ビジネス」の勧誘というような構図さえ感じる下記の書籍もありました。途中まではNISAやiDeCoといった節税の必要性を読みやすい文章で説明しています。節税の全体像として読むには良いと思います。しかし、途中から不動産投資を勧めるという流れになります。話の流れが、院内PHSにかかってくる勧誘と似たようなパターンとでもいえばいいのでしょうか。不動産投資の話の部分になるとワンルームマンション新築の良さを語るものの、知らなければならないような契約方法(サブリース契約や賃貸借契約)、不動産投資の様々な選択肢(中古、新築、一室など)、管理といったような不動産投資を始めるなら知らなければならないような具体的な選択肢の話は詳しくありません。いわゆる新築ワンルームという選択肢のみを詳しく聞かせるポジショントークに感じる部分があります。不動産を勧めるにも関わらず不動産の具体的に役立ちそうな内容は少なく、「不動産は知らずとも簡単に儲かる」という誤解の中で気持ちよくなれる宣伝本に近いと個人的には感じました。

  • 手間をかけずに資産を増やす! 医師のための投資術, 北尾 龍典(著)

 著者立場を確認して本や情報と接するという当たり前の視点があれば、問題ないかもしれません。また、アマゾンの評価もアテにならないこともあります。このようなこともあるため、医師向け以外まで目を向けて目的・段階にあったものを、立ち読みやKindleのサンプル、信頼できる人の推薦含めて、探してみるとよいと思います。さすがに出版当時10%であった軽減税率をはじめとして古すぎる気がしますが、15年以上前に読んだ株のざっくり本『初心者でも今日から始められる「株」の本山本有花(著)(2005年6月10日)では、ローソク線の読み方などのチャートの見方や指し値・成り行きの説明、税金などを分かりやすくまとめられており、文庫本で良いものもありました。

 

 学ぶことによって、挑戦したときに成功まではできなくても、失敗すると分かる場所での失敗のリスク減らすことはできると思います。これに加えて、失敗に対する恐怖を抑えつつ数を打てれば、何が成功するか分からない未来に向けて強いでしょう。株式投資で成功する、不動産投資で成功するというのは人それぞれであると思いますが、甘い言葉にのせられないようになるとでも言えるでしょう。

 そして成功できた際には、このお金をもとに赤字でも自分の理想とする医療をやってみるとか、医局などに縛られない・クビになっても大丈夫な働き方の自由を手に入れるとか、コミュニティにも出ていく時間を作るとか、知らない世界を見に行くとか様々な手段になると思います。例えば、収入源がひとつしかなければ、クビにならないためにもポジショントークになってしまったり、気がつけば既存のものを否応なく法護する側になってしまったり、自由に意見を言うことすら難しくなる面もありでしょう。他にも働き方の自由を1人だけでなく皆が手に入れれば、雇用の流動性も出てきて、自由に働き方を選べる人を雇うために、会社の待遇等も上がり、待遇等が上げられないようなジリ貧な会社が継続不可能となるきっかけとなるような気がします。大企業に勤めたら将来安泰というのが幻想となりつつある終身雇用制度、退職金問題、老後2000万円問題の解決策のひとつにもなる可能性も秘めていそうです。

 他にも、FIREとまではいかなくても、サイドFIREのように好きなことを好きなように仕事にできる可能性を秘めています。例えば、投資のリターンによる余裕を活かして教育に肩入れするとか、そもそも将来のために大切であるのに教育者にインセンティブが働きにくく、教育にお金をかけない政府の現状を打破する活動をしてみるとか、手段にできる可能性も秘めています。漠然と政治や日本経済、所属する組織の社内政治に期待して指をくわえて待つだけなら、少しでも自分自身で抜け出そうとか、抜け出せるように働きかけるように具体的にやってみる方ががあるのではないしょうか。浪費をするぐらいなら、自己投資資産投資に回してみてはいかがでしょうか。

 もちろん、FIREを達成できる余裕ができても仕事を辞める必要もなく、もっと好きなことをするアクセルになると思います。

 

 

5.ゼロベースで学ぶ・考える

 株式投資のことに関してキーワードをはじめ、まったく知らない人にとってはゼロベースで学ぶことになると思います。医学のことはおそらく多くの人が大学でゼロベースから学んだはずです。病院で先生と呼ばれて(?)、受験戦争の名残で(?)、大学時代からの閉鎖的な空間で(?)、医療以外のことも知っているという勘違いに少しでも陥らないようにする戒めとして、ゼロベースで学んでみることも楽しいと思います。もちろん、営業マンが電話をしてくるような「不動産投資」に騙されないためにも、話を持ちかけられて気になるようであれば、ざっくり学んでみることでおかしな点に気がつき、ひっかからないようにするための対策になると思います。

 投資のプロに任せるという人でも、信頼できるプロを選ぶために学んでおくことは大切だと思います。新型コロナウイルス感染症が問題になったときに露呈したように、日本で医師免許を持った人(医療のプロ)であっても、Covid-19について信頼できる情報を流してくださる岩田健太郎先生のような信頼できるプロの先生と、そうでない先生がいたように、どの分野でもお任せするプロを自分自身で選ぶためにもある程度学んでおくことは必要であると思います。

 

 別に株式投資をしなくても、様々な会社のこと、決算、世界の流れを知っていることはマネジメントにも活かせると思います。他にも活かせる部分も出てくるでしょう。これは株に限らず、プログラミングしかり、農業しかり、建築しかり、街づくりしかり、MBAしかり、何にでも言えることだと思います。さすがに、プログラミングでPythonを学ぶ書籍やスマート農業の書籍をきっかけもなく紹介するのははばかられそうですが、気になる方はキーワードから検索してみたり、大きな本屋の様々なコーナーを見てみてください。活字媒体の方が情報収集の効率は早いですが、活字が苦手であったり、映像化が必要な部分では動画を探してみる手もあります。

 

 もちろん、株で損をすることもありますし、株や投資を始めることを勧誘するわけではありません。しかし、知らない世界がたくさんあり、それを知ることに興味を持つひとつのテーマとしていかがでしょうか。そして、株価が上がるというのは世間の人の心を惹きつけるものを掴むという視点をもつ練習にもなり、それだけでも医療に活かせそうです。

 もっと手段的なことの例を挙げると、フェルミ推定もそのようなものだと思います。初期研修のマッチングでフェルミ推定が必要なこともなく、医学部でも学ばない人が多いと思います。しかし、就職活動では試験対策として知っている人も多いともいます。そして、何かプランを立てる時に調べて数字が出てこないときの推定に役立ちます。

 他にも、投資の収益によって、自分の理想とする医師としての働き方や働く場所を赤字でも作ってみたいなど、使い方も様々であると思います。今回は株式投資でしたが、そもそもこのような書籍が発売されるようになった背景には、どうなるか分からない働き方改革、高齢化、医療制度、失われた30年、政策、技術革新、日本的な社会、人々の意識の変化など、様々なものごとがあると感じています。自分自身の生活というミクロな視点と社会全体というマクロな視点の間の様々なところから見ていくのも楽しいかもしれません。

 

 日本の20~34歳の死亡原因の約4割が自殺です。このような生きにくさの理由のひとつに他の生き方を知らないというのもあるような気がします。大学生→新卒入社→…(医学部→初期研修→後期研修→…)というレールから外れてしまった際にレールから外れた生き方をしている人が身近にいないし、つながりがないところにいたことによる不安がありそうです。

 最近、従来からある組織の若手部会や若手向けの企画のようなところでも、多様性やキャリアの話もあります。従来のやり方で成り立ってきた組織であり、そこから枠を広げていくので当たり前でもありますが、まだまだ枠の中のものが多いと感じます。「子育て」(+従来からの枠の中でのキャリアの両立)というようなキャッチフレーズが売りの場合は、子育てだけでは多様性は感じません。むしろ、子育ての障害にもなりうるものが専門医制度ということを、女性が増えることによってようやくクローズアップされ始めたと逆説的に言っているかのように私は感じる時があります。キャリアについても、既存の組織の提示するような枠を超えて(はみ出して)、キャリアの多様性という視点でもこのような選択肢もあることを頭の片隅だけにでも入れておいてはいかがでしょうか。

 他にも、社会的処方という言葉をご存じでしょうか。最近では新型コロナウイルスワクチン否定派のシンポジウム登壇が話題(【識者の眼】「反ワクチンの自由と責務」岩田健太郎|Web医事新報|日本医事新報社)となった学会をはじめとするプライマリケア領域では社会的処方とかいう言葉が使われています。そもそも、そこまで医者の仕事かというような疑問がある方もいるでしょう。医者の仕事か、専門性、言葉選びの問題はさておき、上記の漫画のような働き方をしてきた医師が退職したときに、仕事以外にこれといったものもなく社会とのつながりのない人、すなわち社会的処方を必要とする人が完成しやすいような矛盾点も感じます。そうならないためにも多様な生き方、それに伴う多様な人とのつながりが必要であると思います。

 

 もちろん、このような風潮は時代と共にまた変わっていくと思います。しかし、違法か合法かのような比較的客観的なものごとと比べると、うまい方法とか、ずるい方法とか、賢い方法、ましてや好き・嫌いというのは主観的な物事の捉え方だと感じます。例えば、残業や働き方に対する考えも主観的なもの(本来、サービス残業雇用契約上アウトなのはさておき日本の価値観としての考え方)であり、経済への期待感や人々の生活などによって考えは徐々に変化しています。解決するための選択肢が増えるのであれば、主観的な部分(感情)は何にせよ、少し横において考えてみるのはどうでしょうか。

 何より新たなものは、はじめは「人から理解されない」というものです。そして、興味を持たれないだけならまだしも、嫌われる可能性もあります。そういう意味でも、新たなスタンダードになるかは分かりませんが、選択肢に残しておく可能性は捨て切れないと思います。

 

 そして、理想の人生のゴール(仕事を含む多様なゴール)があるとしたら、そのゴールを達成するためにゴールから逆算したプロセスの一部として、手段の具体化の選択肢のひとつにもいかがでしょうか。

 

 このブログ記事が削除されていた際には、何かあったのかなとお察しください。本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 

 

【追記】当たり前のことですが…

 芸人でもあり、米国株のインデックスVTIをお勧めされていた厚切りジェイソンさんのTwitter上で、米国株下落に対して誹謗中傷が集まることがありました。それに対して、誹謗中傷は関係ないとしつつも、SNSが嫌になっただけということでしたが、Twitterの投稿を削除するに至るという悲しいことが起こりました。フォローしていたわけではないのでどのような口調でお勧めされていたのかは分かりません。書籍では特に納得できるようなお話の書き方であったことから推測するに、様々な意味で有料サロン等とは異なる有り難い無料情報だったのではないかと推測します。もちろん、インデックスファンドは主に3-4年というスパンではなく、長期すなわち10-20年以上のスパンであることや、投資分に対して金銭・精神的余裕がない人には合わない面があると思います。しかし、それ以上に情報の吟味、そしてVTIに投資をするということを自身で判断しているはずです。

 それと同じく、個別株式だけでなくオルタナティブを含め、あくまで投資は自己判断でお願い致します。お勧めされても、お勧めされたように感じても、調べたりした上で最終的な判断各個人でお願い致します。

 

 

 本日、取り上げた書籍です。アマゾンでの読者レビューをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。

 

 

ポジショントークに注意の例の本

 

 

【関連記事】

多くの医師の場合、まずは投資信託(つみたてNISA含む)でインデックスファンドを買ってみることぐらいから始めた方が始めやすいかもしれません。つみたてNISAのような長期投資における投資信託の選び方について、よろしければこちらをご覧ください。

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