"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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初期研修 中断のトリセツ ~お休み90日までなら2年で研修修了可能~

初期研修中断トリセツ

お休み90日までなら2年研修修了可能~

 この記事を書いているのが6月ということで、初期研修1年目の先生は初期研修、とりわけオリエンテーション後の業務が始まって2カ月ぐらいが経った頃だと思います。慣れてきた反面、様々な物事が見えてきたり、疲れの出てくる時期ではないでしょうか。

 また、時期に関係なく、初期研修をしていると救急車のサイレンやPHSの音の幻聴が聞こえる程度のことがよくある、または研修医内でそのような話を耳にすると思います。

 

 そのような状況を超えて、何度も何度も医者に向いていないと感じたり、職場に行くことを考えたら動機や発汗、胃痛などが生じたり、体調を崩したり、何かすぐれない・寝れない・疲れが取れない・分けもなく涙が出てくるというような不調はないでしょうか。「死にたい」とか、「私なんて生きていたって」というほどなら今すぐにでも、そうでなかったとしても「何で医者になったんだっけ?」というような暗く自問するような状態など、不調の兆候があれば、とりあえず研修から離れても大丈夫だと心に留めてください。

 

 初期研修開始1, 2カ月で研修先に対してかなりの違和感を感じていたり、1年も経たないうちに修了ができるかというような不安を通り越した障害問題が出てきている人もいるのではないでしょうか。そのような状況であれば、このまま関係部署と相談しながら休職等をはさみつつ続けていくという選択肢もあります。しかし、一方で中断して異なる研修先再開するという選択肢を考えておくのもいかがでしょうか。選択肢をひとつ増やすことは、それぞれが良い結果を手にする可能性を高める手段であると思います。中断も候補にして、後悔する可能性を少しでも下げるようにするためにも、初期研修中断という選択肢についてまとめてみたいと思います。相談を受けたりして知っている範囲で恐縮ですが、初期研修の中断を考えている人の一助となれば幸いです。

(注)初期研修の中断という場合、中断後に異なる施設で再開することを前提とした表現として使っています。同施設で再開する場合は、休養のための休職という選択肢も考慮の上、ご検討ください。休職を取りつつ、その病院で研修を修了させたいと考えている場合、解雇される理由なく自主退職・中断に追い込まれそうなときは、契約上解雇する正当性を確認したり、中断後の再開の確約を確認(証拠も確保)する等の対策をしてください。

 

<目次>

 

 

【必読】90日休んでも2年で研修修了!

<ここをチェック>

  • お休み(欠勤)90日までなら2年研修修了可能
  • 診断書をもらって休む

 

 悩んでいたり、疲れたり、症状が出てしまって、2年初期研修を終えられるか焦っている人はまずこれを頭に入れておきましょう!

90日まで休めます!!

 正式には、休み(土日祝といった施設のお休みを除く)90日を超えたら、その分修了日が後ろへ伸びます。自由選択の診療科の研修を先に終えている場合は必須診療科の過不足の調節でお休み日数が90日より短くなる可能性があり調整が必要です。まだ始まってすぐの期間であればその可能性も低いでしょうし、多くの研修プログラムで後半に自由選択となっていると思います。状況に合わせてまずは1週間など、診断書等を添えてお休みして余裕を取り戻しつつ、今後のことを考えてもらえればと思います。

 そしてお休みする際の後ろ盾として心療内科等を受診して診断書もらうことが手っ取り早いと思います。体調がすぐれない日に1日お休みをして、そのまま受診をしましょう。そこで診断書をもらい、その診断書を職場へ提出しましょう。診断書を提出され、お休み等の配慮が必要であるにも関わらず働かせていたというような状態で働かせていたとなると病院側は明らかにアウトになるので対応しなければなりません。

 

休止日数が臨床研修における休止期間の上限である90日を超える場合には、90日を超えた休止日数分以上の日数の研修を行うこと。

(出典)厚生労働省臨床研修を長期にわたり休止又は中止する場合の取り扱いについて

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075407.html

 上記を含め、初期研修(初期臨床研修)の長期間のお休み(長期休止、休職)や中断を考えた際には厚労省ホームページをチェックすることをお勧め致します。

 原則、土日祝日の日直・当直のような業務はそもそも90日のカウントには入りません。いわゆる平日ローテーション先でのお休みの日数の合計です。時短勤務の場合は所定労働時間からみた割合になります。例えば、所定労働時間の半分(半日出勤)であれば0.5欠勤扱いになります。土日の日直等の代休制度や救急科ローテーション不足がある場合は当直で補う場合をはじめ、複雑になってくるはずです。お休みが上限に近づくまでにその辺りもホームページや研修事務等で確認してください。


 

 

1.中断しようする前に 〜職場の問題点解決の可能性〜

 初期研修(臨床研修)を中断することが最善とも限りません。中断して新たな場所に行くよりも、休職をはさみつつ可能な範囲で改善しつつ、今の場所で終える方法もあります。まずは整理して判断するためにも、「なぜ今の研修先に違和感を感じているのか」書き出してみることをおすすめします。ぼんやりと悩んでいると、負のスパイラルに陥ったり、同じこと(しかも暗いこと)を何度も考えてしまうことになりそうです。複雑であると思っていたことを書き出すことや話すことで整理できたこともありました。それをここでも応用して、自分が負担に感じる部分や要素を抽出できればと思います。もちろん、思い出すだけでも辛いという場合もあると思います。無理のない範囲で悩んでいることを書き出してみたりして、問題を少し距離を置いてみると、客観的に把握して解決しやすくなる人もいると思います。これからの文章をお読みください。

 また、初期研修のみならず病院という職場での問題点の整理に役立つかもしれません。初期研修医以外のお悩みの方の一助にもなれば幸いです。

 

 さて、中断を考えた理由に次のようなことが思い浮かぶかもしれません…。

 

  • 医学的な知識・技量不足
  • ハイパー/当直多さ
  • ハイポで3年目以降が不安
  • 上級医×診療科の問題
  • 価値観ハラスメント
  • 研修/教育制度形骸化
  • 自己研鑽/給料
  • 同期や研修医内での関係

※現時点で寝れない、まともに考えられないほど疲弊しているというような場合には早めに受診ののち、それに基づき勤務調節することをおすすめ致します。

 

 中断以外にも、お休み休職含む)や時短勤務(欠勤90日以内までは2年で初期研修終了可能)をはさみながら、その病院で初期研修を終えることもできます。病院の環境が悪いのであれば、中断に前向きになると思いますが、病院の研修環境(人間、研修制度、労働量等)はいかがでしょうか。仲間や環境には恵まれてるのであれば、休職をはさみつつも、そのままの病院で初期研修を終えるというのもひとつの良い手段です。これから、具体的な話へと移りますが、それぞれの点についてどういう場合により中断にむけて話を進めていくのかという際の一つの参考になれば幸いです。

 

初期研修中断のトリセツ 第1章のアウトライン



1-1. 医学的な知識・技量ついていけない

<ここをチェック>

  • 指導体制
  • バックアップ体制

 初期研修医になったばかりで何もできないことは一般的には当たり前だと思います。しかし、いつしか自分が卒業したての頃を忘れて/棚に上げてしまう人がいます。しかも、新研修医制度の是非は問いませんが、制度的な制約のもとで1-2カ月で各科を機械的にローテーションして、いろいろと慣れ始めたと思った時には次の診療科へというようなことも多いと思います。そのため、自分なりの向上心を持っていれば「気にしないで」と言いたいところですが、それだけで気にしないでいることができれば、そこまで悩んでいないでしょう。とにかく、他人との比較の代わりに過去の自分との比較だけにしましょう。

 具体的にチェックしてほしいところは、指導体制バックアップ体制です。手取り足取り教えていられるというようなことはまずないですし、さすがにそこまでだとむしろ成長へ逆効果となることもあると思いますが、いろいろとやらなければならないことに対して野放しやそれに近い状況は考えものです。他にも指導内容が人によって異なり、ダブルスタンダードで板挟みで苦しむこともあるでしょう。

 

 例えば、救急外来での当直や日直はいかがでしょうか。2年間ずっと日直・当直で救急外来に入る施設も多いと思います。人によっては研修医だけで救急外来の帰宅判断まで、ましてや救急車の症例でも1年目の途中から研修医だけ帰宅判断しなければいけないというような環境はあり得ないというような人もいるでしょう。一方で、断らない救急という名のもとでたくさん患者さんが来るために、「初期研修医だけで帰宅判断してもいい」と聞いていた制度のもと、実質的には初期研修医だけでも救急車症例でも帰宅判断して回さないと回らないというようなところもあるはずです。騒ぎがちな昨今の訴訟リスクを考えると断らない三次救急(重症例も来る)において、このような状況の研修医ほどプレッシャーを感じるかもしれません。何でも帰宅判断まですることや、そこまでのステップのなさバックアップのなさをとてもプレッシャーに感じているというようなアンビバレンスがあれば、そしてその当直回数が多ければ、より中断を考える材料になると思います。(特にSMA症候群の悲しい結末を研修医の責任だけにして終えようとしている現状の騒ぎ方を見ると、なおさらそのように感じます。2024年6月27日追記)

 症例報告ポスター発表といった学術的な部分での指導体制は、市中か大学かというだけでなく直接指導してもらう先生の慣れや先生との相性もあるでしょう。強制させられているわけでもなければ、それで中断を考えることはないと思います。中断を考えている人であれば、ひとまずその辺りはやらずに、ベースラインをクリアするようにしましょう。

 指導内容・方針が人によって異なり、ダブルスタンダードという場合は、状況と程度によると思います。担当している患者さんの上級医ごとで判断が微妙に違うだけ(一人ひとり異なり、マニュアル通りには行かないので当たり前)のレベルであるのか、担当患者さんの上級医と相談した部分に関してさらに上級医からのカンファや相談での助言レベルであるのか、と様々です。この辺りは患者さんのアウトカムにも関係するのでもちろん分かります。一方で、合理性を大きく欠き我流すぎる広域抗菌薬選びを担当患者の上級医の指導を超えてある先生がしてきて研修医板挟みになる(指導医と他の上級医の「代理戦争」の被害者になる?)ようなことがあると思います。研修医の業務内容が書面等になっていないのに加えて、上級医ごとで裁量権がバラバラで一方では裁量を超えている・一方では仕事してないと言われてしまうかもしれません。特に後者は、改善が必要であると思います。研修担当部署から形式的に定めてしまうのも柔軟性の確保のために微妙な部分もありますが、板挟みの原因となるような先生を納得させる資料ができると解決できると思います。研修医だけでは厳しいことが多いと思うので、相談してみてください。



1-2. ハイパー/当直が多い

<ここをチェック>

  • 時短勤務が可能か
  • 当直回数調節が可能か

 ハイパーや当直の多さは体力との戦いとなってくる面も大きいと思います。人によって当直(体内時計の狂い)への強さ、日頃の残業(業務時間の長さそのもの)への強さも異なってくると思います。

 体力面だけでなく、体力面以外でも影響のありそうなことでハイパーに付随しうる状況もあります。例えば、9~17時以外は自己研鑽(サービス残業であった、自己研鑽ではないはずが給料を見て自己研鑽に変わっていると気がついた(例:上の先生が認めてくれて印鑑までもらった勤務簿でも事務で勝手に残業代が削られている)というような精神面・モチベーションとの戦い1-7にて後ほどお話します。

 当直回数に関しては、病棟直救急外来当直(ER当直)でも異なりますし、先生の移動や配置によるコンサル環境、先輩ごとに想定している当直の忙しさが異なることもあって感じ方が違ったりします。さらに当直明けの帰宅時間(連続36時間勤務は厳しい等)によっても変わってきます。マッチング前にある程度分かっていたとしても、定員割れによる当直回数の増加、ハイパーさや当直回数に関する情報の曖昧さなどがあるでしょう。(詳しくは、初期研修病院選び(マッチング)|研修先チェック項目etc >【補足】当直回数・勤務体系の客観的把握 をご覧ください。)

 しかし、すでにその病院で働き始めているので、中断して次の病院に移る際に考慮することになると思います。その際には当直回数や断らない救急といった主に体力面から、当直での指導体制(救急指導医の有無や人柄、判断に困る・精神的に困ることの程度)というようなものを学生の時以上に現場の現状を把握した目で自分自身に合わせてチェックできると思います。

 当直と少し似ていますが、待機(オンコール)主治医制当番制が機能していない、ファーストコールが研修医など)があるせいで落ち着けなくて、スマホの通知に敏感で寝れなくて、眠りが浅くて困るというような状況であれば、やはり要相談であると思います。当直もあって、待機もあって、ましてや当直(ほぼ徹夜)7~8回/月に、当直でない日は待機で夜9時から深夜3時まで緊急呼び出しで、翌朝から通常勤務(場合によってはそのまま当直)というような状況が何度も重なれば、体力だけでも厳しいでしょう。待機で呼ばれなかったとしても近くにそんなにお店もなく病院から20分とかしか離れられなくて買い物すら最寄りのコンビニしか行けないというような状況になっていれば、何日に1回はフリーになるように調節とかできるとよいと感じます。実際に実質14連勤(帳簿上は日直などの代休はあってもサービス残業)の月曜日を迎えた日には、金曜日には20連勤になるというようなことが稀ではなく、ありました。疲れがたまってくると、もはや良い医療とか考えて医者になっても「医療のことを考えるだけで憂鬱」「ぼーっとする」「単細胞のよう」と感じるような辛いこともあるのではないでしょうか。

 この問題の解決に関しては、当直回数や勤務時間の調節どの程度可能であるかということになってきます。自己研鑽でよくありがちなのは、業務(17時以降のカンファレンスから一連の流れは自己研鑽扱い)が19時半に終わり、空いている電子カルテを探して20時から退院サマリーを書いていたり、救急外来の症例の病名登録の指摘分を入力していたら帰宅が21時過ぎになったとか、よくありそうな展開です。この退院サマリーを書く時間のような自己研鑽扱いがどうなのかはさておき、サマリーは普段の業務の時にコピペできそうなテンプレートを少しずつ用意しておき、業務時間内の普段作業に組み込む工夫をするというようなこともできそうです。

 時間のムダになりがちな自己研鑽として、カテーテルやESDのような内視鏡といった手技が手こずっているときに、その手技が終わるまで関係者以外も帰れないような場合があります。人が少なくて緊急時対応も兼ねて残っているなら分かりますが、外巻の外巻までというのかその診療科の上の先生からほぼ全員が残っているというような職場も自己研鑽が増えて帰る時間が遅くなるでしょう。術者の横で手伝っているわけでもなく、モニターも遠くで見えないような状況であれば、考え直す必要性があると思います。研修医が真っ先に帰りますと言えないのも分かる気がしますが、改善の余地があると思います。後述(1-5)の価値観のようなものが背景にあると思いますが、その診療科の他の先生も帰れる雰囲気大切であったり、それ以上にルール大切だと思います。ルール作りは色々と大変であったり、数カ月お世話になる程度の診療科で研修医がやるようなことでもないと思うので、診断書や事情を説明して帰宅できるようにするのが現実的な手段であると思います。

 

 さらには、追い打ちをかけてくる物理的な環境もあるでしょう。同じ時間量、仕事をしていたとしても、時間外は空調が入らない(夏は蒸し暑く窓を開ければ蚊が入ってくる、冬は寒い)医局でカルテを使ってサマリーを書いていたとか、コンビニや売店の営業時間が短く自己研鑽の時間帯の食事の調達にひと手間かかるとか、昼食時間帯を過ぎてからの昼食の調達が難しいとか、電子カルテのソフトが途中で落ちることが多くて記入中のものが消えてしまったり、再起動にムダに時間を食うとか、研修医室が上級医から丸見え(だらしない格好がしにくい、リラックスしにくい等)とか、様々なことがあると思います。空調に関してはむしろ費用対効果が悪化するような気もしますが、自己研鑽の効率が悪くなっても経理からすれば手当がつくわけではいので問題がないのかもしれませんし、空調に対する価値観の問題もあるかもしれません。コスパが良くおいしそうな職員食堂やお弁当販売は職員の満足度を上げて費用対効果も高そうに見えるのですが、昼食時間が後ろにずれ込むことの多い職種では難しいのでしょうか。離島に系列病院を持つ医療法人では、当直時に御飯(検食ではなく複数人分)が用意されているところもあり、嬉しかったことを覚えています。それとも医局人事で人が充填される病院なので関係ないのでしょうか。それはさておき、朝に買ってきたお弁当を入れておく冷蔵庫を研修医室に置けば、院内での食事問題は少しは改善するかもしれません。大きな冷蔵庫をちゃんと家電屋に買いに行って手配まで整える時間があるかは微妙ですが、小さめのネット通販で買いやすいサイズのものを病院に送れば、とりあえず対症療法的に解決だと思います。

 

 もちろん、それだけではどうにもならない面もあると思います。上記の例では電子カルテ用パソコンの慢性的な不足当直の人員配置制度ですが、そのような時は初期研修の関係部署などと相談してみましょう。例えば、時短勤務にする、残業・休日の病棟回診がないように配慮してもらう、当直回数の配慮というような問題になってきます。ここで、どれだけ柔軟に対応可能かという部分をチェックしましょう。例えば、制度的に研修医だけで必ずこれだけ救急外来の勤務枠を埋めて救外を回しているというような病院では、研修医ありきとなってきます。そのため、研修医内での調節も必要となってくるでしょう。そこで、ただ「まあまあ」となだめられて終わりではなく、どれだけ具体的に柔軟に解決に向けて進むかだと思います。病欠90日までであれば、2年で終えることもできますし、それを超える可能性があるにしても継続可能な環境が確保できるかをチェックしましょう。そして、何より3年目以降継続可能な環境選びのヒントにもなると思います。診療科保険診療以外も)だけでなく、働き方・雇用形態(大学医局、市中常勤、バイト等)まで考えてみるとよいと思います。

 産業医と面談することは、むしろお休みになった際や残業時間超過のときだと思います。産業医の先生と話したこともありますが、「残業減らそうね」じゃないけれども、形式的というのか、解決志向ではないというのかわざわざ時間を割くのが面倒というのが、私個人の感想でした(笑)。寝られない救急外来での当直回数や待機(オンコール)で呼ばれる頻度を何とかするほうが残業時間超過に向けては解決志向だと思います。断らない救急や待機のある科の人員確保、さらには方針を打ち出している上層部による現状把握も必要だと考えられます。研修医はもちろん、産業医の先生の仕事の範疇を超えています。他にも面談の進め方も産業医の先生次第だと思います。

 

 3年目以降も見据えれば、宿直許可で直明けも夜まで働くというような抜け穴があります。それも働き方改革を表面的に進めるために、1時間に5名患者対応まで寝れるわけがないは宿直許可が取れるように厚労省が言っている始末です。宿直許可であれば、宿直ではない当直業務よりもお給料安く済んだり(あくまで実働時間のみ基本給と連動した時間外手当)、時間外労働の上限のためのカウントとなる時間外労働時間に含めなくて良かったり、翌日も働いてもらうこともできたりと、病院側の肩を持つ内容になっています。制度にも目を向けてみるとよいでしょう。

 

 何より、症状などがすでに出ている場合は受診をし、診断書がある場合はその診断書をもとに話し合いをするというのが必要です。また、勤務調節による初期研修医内での関係性は後ほど1-8にてお話しします。



【補足:「断らない救急」大変】

 断らない救急で大変というのは、ハイパーで大変、当直・日直が多くて大変というのに似ている面もあると思います。集約化などで豊富な人材や施設規模であれば、そこまで無理もない可能性もありますが、人材不足の悪循環の中で過酷な労働環境・当直回数という場合も多くあると思います。何でもたくさん経験できるのと、ある程度裏表の関係でしょう。

 理想や美談はさておき「断らない救急」の場合となると、他の病院で出禁になるような患者さんを受け入れることになったり、救急要請が必要かすら怪しい症例三次救急でも受け入れるようなことが多くなったりすることがあります。トリアージ後に「救急車できたんだから早くみろ」と大声で怒鳴り散らす救急外来の常連さん、「鼻血が出た」(≠止血しても止まらない)という事で救急車で他でお断りされて「断らない」三次救急に来る患者さんなど、タクシー代を払いたくない(さらに、場合によっては医療費は全額現物給付)とか、不安であったとか、背景は推測されるものもありますが、例を挙げたらキリがないと思います。街の民度病院の立地などで患者層も変わってきますが、感情労働を含め、なんともし難い面があります。また、研修医だけで帰宅判断までしないと回らない「野戦病院」のような場所であれば、昨今の訴訟リスクにも不安を感じるかもしれません。負けなくても裁判だけでも大変です。初期研修の先生の方がこの先も長いでしょうし、なおさら不安を感じやすいのではないでしょうか。

 もちろん、街に病院が1つしかなく隣町は遠い等の状況によってもある程度、変わってくることもあるでしょう。それでも、現場にはいないものの、後日断ったことに対して合理性なく、ネチネチと言ってくる癖の強い救急の上級医やさらに上の先生がいることもあるでしょう。それこそ、断れない救急でしょうか。しかも、現場にいない上級医は司法での問題となったときの責任を取らされるわけでもなく、安全地帯から言っているような状況です。理想は分かりますし、「断れない救急」において初期研修の先生でも上達はしますが、研修医と当直医(非救急)で救急の指導医並みに患者さんを診ることを要求してくるのも疑問です。パワハラみたいなレベルであれば、録音やそれに基づく対策・相談もありでしょう。

 個人的には初療ベッド1つにつき救急車の数が年2000-2500台を超えてくると、ウォークインも含めて設備的にパンクしがちな時がある印象です。それは根本的なハード面での問題でしょう。ホットラインが3つ同時になったときや、事前管制の際のベッド確保もあります。人材面(ソフトの面)も、ファーストタッチする初期研修医1人当たりの救急車の台数が一晩5台を超えてくるとこちらも問題になってきたり、過酷で人材不足の悪循環になったりすると考えています。医師以外でも可能な業務や帰宅判断などをどこまでやるのかや、ウォークインの数次第でもありますが、寝れない等の身体的な負荷に加え、「断らない救急」だとなおさら附随しがちな感情労働だけでも減らしたいものです。

 どうしようもない患者に対しては応召義務の例外(ブラックリスト入り)もあります。研修医では何ともできないと思いますが、上級医もブラックリスト入りに関して妥当だと考えているのであれば、それを後押ししてもいいかもしれません。一切断ってはいけないのであれば、ホットラインも医師(研修医)ではなくて事務対応でも良いのではないかというようなブラックジョークさえ思いついてしまいます。

 もっと身近に考えられる対策としては、前述のハイパーの時と同じような救急外来の当直回数の調整が可能であれば、それも手段でしょう。それ以外にも、外病院での研修に近いような形で救急の必要分をクリアするというような手段でしょうか。

 断らない救急という崇高な理念も大切ですが、医療者はじめ様々な犠牲成り立っている場所もあります。研修医ではどうしようもない可能性が高いですが、フリーアクセスや安価な皆保険制度・負担割合が後押ししているかもしれませんね。

 これこそ、病院選びの時から考えておいた方が安全な項目です。中断となれば、再開先では考慮したほうがいいでしょう。

 

 

1-3. ハイポ3年目以降不安

<ここをチェック>

  • 3年目以降キャリアプラン
  • 初期研修修了の意味
  • 地域研修や選択科目(外病院)の活用

 多くはないかもしれませんが、ハイポゆえの悩みもありそうです。医学部の同期と何かの機会に研修内容を比べた際に、3年目以降のことを踏まえると不安になることもあると思います。お客様扱いで、何もしていないというようなこともある人もいると思います。定時の帰宅時間までが仕事をしていないような気がして後ろめたいというような良心かもしれません。

 他の研修病院に行った人との比較をやめましょうと言っても、簡単にやめられるものでもないのも分かります。一方で、「俺、今月の残業時間が100時間を超えた(どうせ多くは自己研鑽だけど)。救外の当直は月に9回、寝れないけどまだまだ行ける。」というような忙しい自慢のような雰囲気のあるハイパーなところも聞いたことがあります。これは両極端ですが、これよりマシかなとか、持続可能な働き方であると思ってもらえれば嬉しいです。

 また、ちょっとした対策として、地域研修先や選択研修先などの院外研修可能な枠で自分の施設(ハイポ)以外のところを選択してみましょう。教育熱心だと有名な病院、ハイパーとされる病院等を選んでみるとよいでしょう。

 例えば、1カ月というような期限付きでハイパーなところにいってみたら、ハイパーなところで2年間は厳しかったということに気がついて納得するかもしれません。また、教育熱心とは聞いていたけれど、ブランドとしての名前がかなり独り歩きしているとか、セミナーとかは動画サービスでいいかなとか、教育の中身も様々なとか、そこまで理想ではなかった感じたりするかもしれません。また、やはり院外がよいと感じても、ハイパーなところや教育熱心なところで研修したことによる自信というのか、不安解消のようなものがあるかもしれません。

 研修医になってからの視点で見ると、「良い」の基準も変わっていたり、医学生の時に良いと思っていた病院の闇(例: 自己研鑽、邪魔なセミナー・書類仕事のような教育制度、薄給に耐えられない激務等)を同期から聞いて/見て、むしろ今の所属に納得するかもしれませんし、そうでなくてもその数カ月は訓練になるでしょう。

 

 そして何より、3年目以降のキャリアプラン初期研修修了の意味に目を向けて欲しいと思います。3年目以降のキャリアが臨床ではない場合は、臨床現場に触れたことが大きく今後に活きると思います。もちろん、ハイパーな現場や働き方改革で問題視されているようなされているような労働環境の現状を知った上で政策立案に関与すればより役立つと思いますが、それ以上に3年目以降のキャリアへ向けて着実に準備する時間にしてほしいと思います。

 初期研修修了の意味についてですが、日本の保険制度のために初期研修を修了しないと保険診療ができないという問題があります。自由診療という選択肢もありますが、医学部卒業後に臨床系に進む人の多くの人の必須事項のようになっています。3年目以降にバイト医をするにも必要ということになることが多くあると思います。他にも施設管理者(院長)のような場面でも必要になる人もいるでしょう。

 新初期研修制度の理念やその理念に基づいた研修をどれだけ実装できているかはさておき、とにかく初期研修を終えられるというメリットがあると思います。

 



1-4. 診療科×上級医あうか

<ここをチェック>

  • ある診療科特有の問題か
  • 問題の診療科を乗り越えられる

 これはとても難しい問題だと思います。一般企業であると退職理由の8割が上司とも言われることがあります。これだけで初期研修を中断するかはとても難しい問題である一方で、体力面以外でも厳しく感じる面は多いでしょう。その診療科ゆえのこと(忙しさ、待機、手技など)であったり、その先生の特徴や相性、診療科内での相性であったり、やっていいこととやってはいけないこと(裁量権がすごく曖昧であったり、1-8等の他の項目のことを含めると様々であると思います。

 評価が勤務時間や患者数などのしっかりとした定量的な評価だけであれば、気疲れはないと思います。一方で「頑張りが足りない」というような定性的な評価の場合は評価する側の主観に支配されてしまいますし、360度評価のようなものも本当の働きではなく、評価者の主観に支配されたものを無理やり定量化させたようにみせた定性評価である場合もあります。上級医をはじめとする人と定性的評価や主観による理由からの気疲れはないでしょうか。定性評価は評価側に有利なものがあります。定性評価の多い業界で「気にしないでください」で済めば良いのですが、なかなかうまくいかないかもしれません。

 そこで考えてほしいのはちょっと向き合いにくい上級医のいる診療科や、しんどい診療科がどれほどあるか、その病院に特有であるのか、比較的その大学や医局、病院系列の”色”であるのか、を考える必要があると思います。その病院特有の場合は、中断して他の病院に行くことで解決する可能性が上がりますが、その地域の”色”とか慣習で平均的にこの地域のこの大学の系列の病院はこういう傾向というようなのもあるでしょう。その平均値からどう逸脱しているのかもチェックです。その地域に複数の大学系列等があれば、その地域内で変わることでも変化はあると思います。

 もうひとつの視点は、その診療科を乗り越えられるかという視点です。内科は大きな病院であれば、循環器内科、呼吸器内科、…と多数あります。必修診療科での研修期間を合計でクリアできれば良いのでその病院内で調節もある程度可能です。学生時代にも大学病院で〇〇科は曲者というような噂がまわってくることもありました。そこを回避できれば、初期研修修了に向けて進むことができそうです。

 一方で救急科のような必修であるのにその中に選択肢がない診療科というような場合には、中断を考慮してもいいかもしれません。その際は、過去にその診療科で”焦げ付いてしまった人”がいないか、という部分に注目すると良いと思います。”焦げ付いてしまった人”というのは、その診療科を修了できないために病欠等で初期研修を2年で終えられていない人です。このような”焦げ付いてしまった人”というのは、初期研修先を探す際に表には出てきませんし、中断者でもないためにデータからは把握できません。しかし、”焦げ付いてしまった人”が残念ながら何年も何人もいるようであれば、その職場での配慮は少ない可能性もあり、修了することができない可能性が上がると思います。職場での配慮の程度については、後ほど(1-9)少しお話します。

 

【補足:必修診療科一覧(2020年度以降)】
  • 外科(4週以上)
  • 小児科(4週以上)
  • 産婦人科(4週以上)
  • 精神科(4週以上)
  • 地域医療(4週以上)
  • 内科(24週以上)
  • 救急科(12週以上、4週まで麻酔科に振替え可能)

※診療科ではないものの一般外来での研修(4週以上)

 上記以外にも自身のマッチした研修プログラム上の制約がある場合があります。最新の情報と自身のプログラムをチェックしてください。他にも、地域的な特徴や不足人員を補うためとも考えられるような視点から麻酔科や集中治療科を8週間ローテーションすることが前提となっている病院や、外来研修が院内で実質的にできない(地域実習で詰め込まないといけないため外来ばかり等)というような制約があるところもありますので、要注意です。どんどんと必修項目というような形式的な縛りが増えて息苦しくなって、自由さを失っているのかもしれません。

 上記の必修診療科以外に選択科目が48週あり、そこから90日までお休みしても2年で研修が終了できるというなシステムになっています。



1-5. 価値観あうか、ハラスメント?

<ここをチェック>

  • 個人の価値観?
  • 病院全体の価値観や制度か?

 これは、前述の上級医×診療科があうかという話や働き方とも被る部分もある話になります。そして、何より判断も難しいので読み飛ばして頂いても大丈夫です。

 価値観というからには、すごく曖昧な部分でもあります。同じぐらいの業務量の職場であっても感じ方も異なってきます。他にも個人ごとの背景による違いもあります。極端な例でいえば、勤務医の息子で大事に育てられて父の働き方をスタンダードだと想いながらストレートで育ってきた人と、両親は医療系以外で起業をしていて様々な分野のことに挑戦してきた人では、同じものを見ても感じるものが違うでしょう。前者であれば、「今の医師1年目は(30年前と比べて)良くなったな~」と家庭で言われてそう思っている可能性もあれば、後者では「いつの時代の働き方か」と思っているかもしれません。

 そこで気になっている〇〇先生の価値観などがあると思います。価値観が表出しやすい部分に関しては様々ですが、次のような項目があると思います。

  • 診療科への挨拶挨拶方法
  • 自己研鑽サービス残業
  • 土日の出勤・回診
  • 待機(オンコール)
  • パワハラセクハラ

 このような項目に関しては、次の1-6研修/教育制度でどの程度まで介入できるのかとの兼ね合いになってくると思います。特に、診療科への挨拶方法や自己研鑽、土日の出勤に関しては初期研修を中断する可能性がありそうな人の場合にどこまで配慮できるか、さらには診療科内での価値観の異なる上の先生の間で板挟みならないように配慮できるかというようなことだと思います。

 

 他にも価値観が入り込んでややこしいのは、暗黙のルールやただ過去からやっているしきたりだからというものもあります。業務の線引きが曖昧という良きに計らえというぐらいのものから、ファーストタッチ必須で断らない救急で忙しい研修医が救急で当直医全員のお弁当を聞いて回るとか、さらにはこの先生はお店から指定してくるから1番先にお弁当を決めないといけないとか、お弁当ルールはコロナで外部の人が届けにくるのでよろしくないとかいう、立場的にも何も言いにくくて板挟みのようなそんな複雑にする暗黙・しきたりのルールみたいなものがないでしょうか。訳もなく逸脱したルールを強制される、そういうものはなくなればいいと思っています。

 善意良識的なルール内でやることと、逸脱した暗黙・しきたりの強制ルールは違います。「私達もそういう合理的ではない苦しいことをやってきたから、新たに来た者はやるべきだ」というような古い考えによる場合は、ひとりではなく研修医一同として、さらには関係部署を巻き込んで解決に向けてやってみるのはいかがでしょうか。悪しき慣習はどこかで断ち切らないといけないと思います。合理的な解決ができない場合は、上記のお弁当の注文のようなルールはコンビニ(営業時間内)のある病院では、忙しいときにお弁当の発注をわざと忘れるぐらいの勢いで相手に期待させないようにして、無くしていくのも荒手の解決法だと思います。

 もちろん、苦しんで生活に支障の生じている研修医が解決につながるかわからないことを苦しんでまでやる必要はありません。本当の意味では「逃げ」かは分かりませんが、逃げるが勝ちです。変えられない部分(病院内のこと等)を変えようとするよりも、変えられる部分(私自身が転職等)を変えようとする方が、本当の意味で幸せになる選択かもしれません。そういうのが溜まってきた施設はいずれ沈む船になる可能性を秘めていますから、まずは自分を守りましょう。解決しようとしたものの悪しき習慣が変わらないのであれば、自分自身の勤務先を変えるか、自分自身の感受性を変えるか、というような選択肢になると思います。

 

 自己研鑽に対しても価値観ポジショントークが入っています。50代以上の先生であれば、このまま逃げ切れる年齢の可能性は高いので「(雑務でも)苦労はタダでも買って出ろというようなことを言うかもしれません。程度の差こそあれ、無給医にもつながる問題です。このぐらいの年代の先生が若手の時は奉公した後に、自身が教授にまではなれなくても、関連病院の診療部長等で報われるという世界観でしょう。後で報われると考えられるからこそ、丁稚奉公のような働き方もまだ成り立ったわけです。総合病院で50代以上であれば、開業医等にも進まなかった先生ですから、なおさらポジションはあるでしょう。あとは、医学部の一部の部活でも見てきた、「論理的におかしい/合理性のないことでも、俺も含めてみんな苦労してきたから、同じ苦労をしろ!」というような変な共通感覚やその世代等での同調圧力あることも多いでしょう。沈む船で椅子取りゲームをしているかわいそうな人とでも考えて、話を聞いているような顔して流すように考えてみましょう。(仮にそのように思っても、相手に下手にそんなことを言うと損する可能性が高いと考えられます。一部の再現性の乏しいリーダーシップ論でも登場する、人間関係の修復や真の信頼関係の構築に関心がなく、ただ自分の地位に関心があるだけかもしれません。)

 今の高齢化や医療費・介護費の問題から考えても、どこまで今の流れが持つでしょうか。もちろん、この問題も高齢者への公的医療の適応・負担率などの在り方とともに考えなければいけないとは思いますが、個人のレベルで考えてみましょう。40代以下はどうなるか分かりませんね。若手の先生「どうなるか分からない側」のポジションとして、振舞っていくことになると思います。もちろん、普段は執刀させてもらえないという環境で、夜ゆえに執刀させてもらえるというような環境であれば、後々に意味のある体験(≠雑務)タダでも買うという人もいると思います。もちろん、執刀できない環境に居座らずにとか、そのような人は技術を身に着けたら良いところにお引越しとかを考えましょう。

 また、初期研修医がいることで目に見える形での補助金や、「臨床研修病院入院診療科加算」のような診療報酬上の加算もあります。これらの報酬も踏まえれば、「初期研修医がいても稼ぎにならない」というような自己研鑽へのロジックは、ただの制度も知らない人事実に反する感想でしょう。

 やりがい搾取という視点に関しても、被雇用者側自らやりがいを感じて働くことは、企業側も雇用者を安く雇うことができたり、長期間勤めてくれたりするため、意識していることでしょう。そして、被雇用者が自らやりがいを感じるメリットもあるでしょう。しかし、雇用側から「やりがい」を無理やり/一方的に主張してきて、タダで/安価で働かせようとしてきたら要注意だと考えています。

 

 

 パワハラセクハラといったハラスメントも価値観に近いのでここで取り上げます。指導とパワハラの境界こそきわどい時もありますが、指導を受ける研修医が女性と男性で多いに違う場合には要注意です。男性研修医の場合だと雑であったり、無口で威圧的であったり、一方で女性研修医の場合にはセクハラまがいの指導であったり、医局やカンファなどの多くの人が集まるところで女性医師に対して例えば「女性だから〇〇」とか「生理だから、今日はご機嫌が…」というような主旨のことを公然で言われるようなことがあれば、まずはそれを目撃した人の証言ボイスレコーダーによる証拠等を確保しつつ、相談するとよいでしょう。例えば、Apple watchのようなスマートウォッチでパッと、自然な感じで録音できるようにしておくようにしておくと、なお良いかもしれません。古い組織が多く、院内の相談窓口では曖昧にされることもありますし、下手に自分自身のことを相談すると嫌な上司に話だけ伝わって、もっと状況は悪くなるだけというような場合もあります。

 個人的に自分自身のことを言われたなどの本気の場合は、その前に証拠は確保して、弁護士への相談をできるようにしておきましょう。そして、弁護士の指示に従って、もっと証拠を集めましょう。いろいろと証拠も固まったところで院内の窓口に弁護士経由も含めて相談すればよいと思います。

 パワハラに近いものとして、「前に回ってきた研修医の〇〇先生は使えなくて」とか「ローテーション前の電話がかかってきたときに、挨拶は電話だけでいいと小生が言ったら、本当に電話だけで直接挨拶に来なかった」とかいうような愚痴を、文脈もなくその診療科のオリエンテーション等で公然と聞いた時には覚悟した方がいいかもしれません。もちろん、研修医でできることは少ない場合が多いと思いますが、その人に「あなたが研修医ぐらいの卒業年数のときはどうでしたか?」と心の中で言いいつつ抑え、度が過ぎている場合は証拠を集めておきましょう

 皆の前で若手の女医さんを罵倒して泣かせてパワハラ疑惑で委員会にかけられたとか、かけられなかったとか、専攻医の先生が病気療養でしばらくお休みをしたときにカンファで上級医の先生が皆の前でその先生がお休みしていることをいじっている/聞いている側が気分が悪くなるようなことを言っているとか、様々な話があります。明日は我が身かな不安になる人もいると思います。結構きわどいものも多いと思いますので、取り合えず後で使えるかもしれない証拠をとっておき、相談してみましょう。

 

 指導体制バックアップ体制勤務形態救急外来における初期研修医の働き方、というような部分がその地域大学系列、その医療法人・医局で「当たり前」として、価値観を形成している場合もあります。単純に都会だから大丈夫とか、地方はアウトではないと思います。都会であってもお殿様のような大学があり(むしろある程度以上都会で人がいるから?)、そこが閉鎖的であったり、権威的であっても人が足りるような環境の場合は、一定の価値観に偏る可能性は上がるかもしれません。「生きた化石」ともいわれるカブトエビのように意外な場所にも残っているかもしれません。また、〇〇先生は良いとか人を意識しすぎるとその先生が異動になってしまうリスクもあります。価値観だけではないですが、その系列の平均値も意識しておいた方が中断後の再開先を探すときのヒントになると思います。今後のことや地域枠等の諸所の事情により、この系列・地域からは出ていく気はない/出ていけない場合で、そこが平均値以上であれば中断よりも休職の方がよいかもしれません。



【補足:価値観知るきっかけ】

 価値観は各個人の自由でもある部分もあるので、それがあくまで個人としての見解か、その病院や診療科の価値観を反映したものであるかを考えてみて欲しいと思います。そのために、価値観を反映した発言、どのような状況・立場での発言であるかをチェックしてもらいたいと思います。

 

 分かりやすい具体例を挙げながら考えてみたいと思います。

<若手のA先生と残業時間帯にNsステーションにて雑談中>

研修医:A先生、お疲れ様です。

A先生:休日なのにお疲れ様。普段、休日は何してるの?

研修医:あまり外出もできないご時世なのでNetflixとかよく見てますね。もちろん、お金もないですけど。もっと貰えたら遊びに行きたいです。私たちの残業代ってどうなってるんですかね?

A先生:残業代のこととか、僕に聞くな(笑) 僕もちゃんと貰えてるのか分からないなー。

 

B先生(診療科長)のカンファレンス後の学会等の話>

B先生:17時になったのでここから先は学生さんと研修医は自由とします。

一部の学生や研修医:ありがとうございました。失礼致します。

(30分後)

B先生:(残念そうに解散直後に)僕らの時は残って当たり前だったけど。もう少し多くの研修医や学生に残ってほしかったな~。

 

C先生(教育プログラム長)の初期研修オリエンテーション

C先生:これから、初期研修医の心得を紹介します。その1、毎日患者さんのところへいくべし。その2、給料のことは聞くな。その3、女は女であることを意識すべし。その4、…

研修医(複数):…

 

D先生ら(病院長クラス)との研修医(複数)など多数での意見交換の場>

D先生:次の新しい研修医はどんな人を採用したい?

研修医(複数):一緒に働いてもいいと思える人です。具体的には…(以下略)。

D先生:そういえば、この前見学に来た学生さん達と研修時間について話したけど、最近の学生はQOLとか大事にするよね。長時間でもいいと言っていた学生さんもいたけど、「働きに見合った給料があれば、問題ない」と言ってた。正直、ここの病院にはQOLとか、働きに見合った給料とか言っている人は合わない。こういう人は当院のマッチングでは禁忌肢。そういう人はそういう病院を探せば…(以下略)

E先生:そうですね。D先生のおっしゃる通りだと思います。

研修医:確かに当院の当直回数(多い)や、ERを回すことを考えると、QOLと言っている人は合わない気もしますね…(その通りで何も言えず、この病院の方針についての憶測が確信に変わる)。働きに見合った給料ということに関しては、その学生さんがどういう意味で言っていたのか分かりませんが…。では、D先生のおっしゃる当院に合わない人を除いた中で、私たちが一緒に働きたいと感じる部分を評価して…(以下略)

 

 いかがでしょうか。やはりは文脈状況です。

 まずは分かりやすいA先生とC先生の比較をしてみます。A先生は比較的クローズドな状況で「給料のことを聞くな」という言葉を僕も残業代について不思議に感じている点はあるけれども、何といっていいのか分からないというような意味で使っています。C先生は、ほぼ初対面で大勢に向けてということから文字通りに近い可能性や、その人の立場や前後の心得の内容からは、残業代が出てないとか給料のことは文句言うなと聞こえる可能性は上がります。さすがにC先生は分かりやすく、昭和のブラック企業の社内研修でしょうか。そして、このような価値観を前面に出した人が上の立場に立ち、上のポジションからこのような発言ができるという組織の人事の選び方や文化に注目して見切りをつけた方がいいかもしれません。もちろん、教育インセンティブがつかないゆえの結果である場合もありますが、この問題は初期研修だけでなく悲しくも多くの教育の場面で言えることでしょう。

 B先生は、自分の価値観社会の今の流れを分けて考えている分別のある人と考えられる可能性が高いです。B先生のころの慣習と異なるというのは理にかなった理由であるかは問わずに懐かしく感じるものがあると思います。B先生が表でしっかりと配慮をしつつ現在の流れや理想に向けて進みつつ、外部との会話なのか、匿名に近いSNSなのか、害が生じない程度に距離を取ったところで、その先生なりの価値観から生じる違和感をこぼしてしまう分にはお互い様と考えて行けばよいような気がします。

 C先生ほど明らかであれば、むしろ分かりやすくて有難いぐらいかもしれません。給料の話以外にも表で「女は〇〇」とか雑すぎる括り観念の話で内容次第ではありますが、嫌な印象を受けやすく感じます。ちゃんとボイスレコーダーなり写真なり証拠を取っておきましょう。表向き綺麗ごとばかりで実は腹黒いというような状況も要注意でしょう。

 D先生の例は、病院の上層部の考えとして、マッチングにつながる部分で初期研修における労働時間について質問したときにQOLとか「長時間は大丈夫、働きに見合った給料」とか言った医学生採用したくない断言口調でいうような、労働者の歯車論的な意見(同じ労働時間でも福利厚生や労働環境等を改善する気がないと取れたり、自己研鑽しましょうと聞こえる考え)への全体合意があるような施設はそういう価値観でしょう。オーナー経営者であればまだしも、雇われの身であればオウム返しになりそうな自己矛盾を感じます。歯車発言を少なくはない職員の前でしてしまうあたりの管理能力の問題もあるでしょう。D先生もそう言わされている立場かもしれませんが、そういう施設で自己研鑽や働き方等の解決への道筋は難しいかもしれません。

 状況が異なり、D先生個人的に話をしたときに「まあ、本当のところ残念ながらQOLって言ってる医学生はこの病院には合わないよ…。何とかできないものかなとは思うけれども…」というように譲歩しつつも言われたのであれば、D先生の優しさと現実の厳しさのギャップを感じます。そうであれば、可能な範囲で解決策を歩み寄れるかもしれません。もちろん、QOLが研修医全員にとっての正解ではありませんし、バリバリ働いて稼ぎたいとか、初期研修の2年はプライベートはさておき成長したいという人もいます。そこではなく、労働環境に対する意識や自己研鑽に対する意識、被雇用者への病院全体の姿勢(価値観)の問題ともいうべきでしょうか。

 

 相手の価値観を自分だけで誤って思い込んでしまうことがないように信頼できる人意見を交換してみましょう。そして共感できるところは共感してみてください。〇〇はあり得ないと思うし嫌な思いをしているけど、閉鎖的な場所で今後も続けていくから我慢せざるを得ないというような人もいれば、〇〇はあり得ないと思うし嫌な思いをしているから私は他の職場を探すというような人もいるはずです。「〇〇はあり得ないと思うし嫌な思いをしている」という部分がある程度共通認識であれば、その先どのような選択肢を考えて選ぶかは法を破らないような範囲でその人の自由であると思います。

 私自身への戒めでもありますが、どうしても人は自分の視点でみて自分のやってきたことを正当化しやすく、自分のモノサシを他人に当てはめて評価しそうになります。一定以上の時間や労力をかけてきたものごとには損切りがしにくいサンクコスト効果による影響でしょうか。対策として、はじめのうちにチェックポイントを決めておくのもいいかもしれません。

 そして、今後の自分自身や、自分自身が指導する側になる時のためにも、フレッシュな時に感じた違和感や感情などメモして残しておくことをおススメします。時が経って見直してみると、違和感を感じていたことが根拠はないもののしきたりとして当たり前のように染まってしまったことに気がついて改めることや、フレッシュな人を理解することもできるようになるでしょう。



1-6. 研修/教育制度機能しているか

<ここチェック>

  • 研修制度形骸化していないか
  • 研修担当部署制度がどの程度介入できるか

 研修制度形骸化とは、制度とは言えども書類のハンコたくさん必要で機能していないとか、ハンコをもらうためのあざとさ合戦とか、評価シートはあるものの評価機構からの審査を通るため形だけあって手間を取らせているだけというな状況です。メンタルチェックの面談があるものの形式的であったり、初めて会うレベル先生と数カ月に一回程度の面談しかなく面談相手が毎回変わるとか、苦手に感じている先生との面談であったり、形だけやっているような状態です。他にも研修担当者が研修医の相談にのるとは言っているものの9-16時対応であったり、さらに医局・研修医室から遠い場所にあったりというような、実質的に使える窓口ではないというような場合もあります。お役所仕事とでも言えばよいのでしょうか。明文化されていても、形骸化というようなパターンです。面談評価者が変われば、定性的な評価に基づく点数化であり、その点数では実質的には定量してちゃんと評価できていないというのも問題でしょう。

 他にもEPOC(経験症例症例のレポート)の承認における過程でも、1症例当たり経験した項目1つを基本とするというようなレポート大好きのような形式的な研修センターも要注意でしょう。レポートをたくさん書けば勉強になるというような形式的な思考で「教育」だと思っているような施設は、教育における双方のコストを考えておらず、良くないでしょう。特に自己研鑽としてレポート作成の時間にどれだけ時間が取られるかという点からも要注意であり、過労気味のときには要相談でしょう。

 次に、どの程度研修制度(ルール)や部署が介入できるかという点です。具体例を用いながら説明したいと思います。例えば、大きな病院のある診療科がローテーションの前のご挨拶は電話でアポをとって、直接お伺いするというローカルルールがあったとします。直接会うというのはお互いに擦り合わせが必要で大変な面もあります。しかも、その先生がお忙しい先生であるにもかかわらず、その先生の空いている時間を上手に見つけてお伺いというので苦労しているというような現状があったとします。直接ご挨拶にいくメリットも分かるには分かるのですが、それに伴う不利益が多すぎないかという部分です。特に大きな病院であるにも関わらず、このような状況であれば障壁になりやすいでしょう。

 行き過ぎて、院外研修中の時は有休を使ってご挨拶に行くとか、早めに終わる当直明けの帰宅時間後に何度か電話をしてやっとその先生のところへ伺うというのが常態化していたとします。そこへ教育担当部署から指導が入るというような改善が具体的にできるのかという部分が大切になってくると思います。教育担当の先生や事務に相談に行っても、しかも複数名が相談に行っても、「まあまあ」となだめられるだけでは改善は期待しにくいでしょう。1-2カ月で診療科を点々とするただでさえシームレスさのない初期研修(しかも専攻医へのシームレスさも今ひとつ)の制度であることをプログラム製作・管理者側も意識しつつバックアップしてもらえる環境があればいいなと思う限りです。中断して他の施設に行く際は、小さな病院の方が明文化はされていない反面、顔が見える範囲であったり、内科等も細分化されておらず、シームレスである可能性は高いでしょう。

 他にも日直や遠方での病院説明会による代休制度があったとします。代休は申請性で期限があった際に〇〇科は代休は使えないというような実質的に機能していない制度です。そこで、事務は形式的に「代休を使ってください」とだけ言って、本人の意志で代休を使わずに自己研鑽をしたとみなすようになっているとします。その際に、〇〇科に代休制度を受け入れないと雇用上マズい介入できるような教育研修部署があるかということになります。特に、日直や当直で14~20連勤のようになることが頻発している場合や、日直は救急外来代休はローテション中の〇〇科というような場合は診療科も跨ぐ代休制度であり、日直の業務も大変であると予想されるため、しっかりと橋渡しする必要があるでしょう。

 

 どの程度の不利益や今日の働き方改革との齟齬があれば、その診療科に改善要望をしてくれるのかという線引きをして、それなりに早期に改善されるのかという部分を考えてみることをお勧めします。その状況が「小生もしてきたから何とかなる/小生も乗り越えてきたから乗り越えるべき」(確かに、当直込みで7連勤を終えて次の週に入るとか、当直月に7-8回とかあったなー笑)というよりも、自分自身の子どものために言えるかというような視点で考えてみたら、分かりやすいかもしれないと感じました。

 

 そして、日本のこの世界のそういう先生や組織に、理にかなっていることであっても教育担当の先生が何かものを申すのは肩身が狭いかもしれません。私自身も英語を使っている時と日本語を使っている時の違いを体験したり、留学生が英語を使っている時と母国語を使っている時でモノの申しやすさ(Noと言えるか)が異なるということを直接聞いたりしました。もちろん、母国語以外を使うことで忖度できるほどに言葉を理解できない面もありそうですが、合理性という視点からある程度以上は強制できないようなシステムは必要だと思います。そのような何とも言い難い部分を克服して日本の現場を改善するためにも、ローテーション切り替え時の制度(システム)として介入できるかも含めて検討すべきであると思います。しかし、現時点で中断を悩んでいる人が、そのできるか分からないシステムが完成するのを待つのも少し違うと思います。関係部署と何とかなるか相談次第であると思いますが、そもそもそれを解決するのにかかる労力リターン釣り合わないかもしれません。

 

 中には院内では何ともできない制度も存在することもあります。その病院の制度変更だけでは難しい場合の例を考えてみます。〇〇病院の研修プログラムで院外で研修する期間があるとします。その院外の研修先を変える・増やすにも双方の病院でのOKが出ても、最終的な権限は△△大学の系列である〇〇病院にはなく、△△大学にお伺いを立てるというような場合もあるようです。これは、院外研修先が厳しすぎて挫折したあげく、研修に必要な診療科の選択肢がそこしかなく修了できない場合には、中断を考えるきっかけになると思います。そのような際には、△△大学系列の病院での研修再開の際もその診療科の研修先の選択肢は要チェックであると思います。



1-7. 自己研鑽/給料

<チェック項目>

 

 自己研鑽に関して、将来に向けた業務を伴わない成長のための自己投資ではなく、サービス残業を正当化するための言い訳のように使われている自己研鑽について扱っていきます。残業はそもそも時間外労働扱いになっていないというような場合から、時間外労働で申請しているのに事務に提出後に削られているというような場合もあるでしょう。本当にお金が足りないというのは、説明会や病院見学の際に嘘をつかれたポジショントークで盛られた)というような研修病院選びの際のミス、ちょっと浪費癖や生活費(固定費)とセットになってくると思います。また、眼がギラギラとしているときはやりがい搾取やそれによるバーンアウトにも気をつけましょう。すでに中断を考えているということは自己研鑽(サービス残業)に違和感を感じたり、気がついている場合が多いと思います。部活(?)や課外活動、ボランティアでもなく就労ですので(就労であると考える人には)、サービス残業の有無や程度は結構大事な指標になってくると思います。この小セクションでは主に自己研鑽に目を向けていこうと思います。

 どの段階までの、どの程度のサービス残業扱いまで自分自身が許せるか雇用契約上、本当はアウトです)だと思います。上級医の先生等との取り決めで自己研鑽と業務の境目が許せないのか、上級医の先生まで認めてくれたはずの残業時間が事務で消されていることが許せないのか、の大きく2つです。カンファレンスの時間が自己研鑽は分かるものの術野に入っていたオペまで自己研鑽であったとか、引継時間までに来た患者さんを診療し終えるまで勤務しないといけないものの引継時間以降は自己研鑽であるとか、オペの時間外労働は勤務簿上では上級医も認めてくれたものの勤務簿を事務に提出した後に削られている(同じ印鑑を事務が持っている会社は要注意)など、どこが嫌なのかを探りましょう。そして、その嫌な部分まで自己研鑽で病院に滞在しないように工夫をできるかを考えるといいと思います。といっても、ここが難しいですが…。

 当直待機の扱いもどこまで許せるかだと思います。回数もありますが、働き方改革表面的にクリアするために様々な変化があると思います。従来の当直「待機」という扱いにして当直費はもらえず実働時間のみの時間外へ経費削減しているだけであったとか、待機制度に変わって今の住居のままでは帰れずに病院に泊まっているというようなことも個人的な事情と相まっていまひとつな状況というのもあり得ます。宿直扱いであるのに寝れる時間がわずかしかない、逆もしかりで宿直扱いなので実働時間のみ時間外がつく制度で微妙であったり、その辺りのことでどこまで許せるかも3年目以降を含めて要チェックでしょう。

 本当に宿日直許可をいつから受けているのか怪しい施設、宿日直の時間帯の実働分の残業代がつかない施設(本当はアウト)など、本当はアウトな施設も存在しています。残業時間が増えることは2024年の働き方改革の敵となりつつあります。その視点では、たくさん稼げなくて困っている人は基本給等に加えて、「残業時間以外の形で手当てが出る」というのもヒントになりそうです。

 カンファレンスが夕方以降にあるところは、カンファレンスが自己研鑽のところも多いのかもしれません。カンファレンスの時間もその診療科の上部層の考えや価値観を反映するものであると思っています。昔大学で実習していた時にお昼過ぎから長いカンファレンスをするようにしていた診療科もあり、そこで「昔は忙しくて無理だと思い込んでいたけど、勤務時間内にカンファをすることで医局に人が増えると考えて勤務時間内にするように努力している」と言っていた診療科があったり、従来からのように夕方から始まるような診療科もあったりと、様々であったことを思い出しました。カンファレンスの時間は今中断を考えている研修医の問題ではないですが、その診療科の姿勢も反映されているでしょう。

 他にも普段の通常勤務日の定時以降自己研鑽以上に、平日の有給代休日といった勤務簿上はお休みの際の"通常勤務"といった自己研鑽が嫌な人もいるでしょう。ほとんど寝れないにもかかわらず、当直明けは帰れないのはもちろんのこと、追い打ちをかけるように直明けはサービス残業(自己研鑽)扱いで深夜のコンビニバイトの方が給料が良いなんてこともあると思います。代休日が実質的にナシとなると、平日にしかいけない窓口や機関もあるのでそこの負担を大きく感じてしまうかもしれません。家族がいる場合は休日の出勤の方が気になるかもしれません。特に嫌だと感じるほうから避けられないか、交換可能な業務であれば誰かと交換してみたりしつつ、最終的にはそれなりに解決できるかを探ってみましょう。

 他にも固定残業代という形で、例えば月に40時間分の時間外を固定でもらいつつも青天井に残業をしているというような場合もあるかもしれません。そうなれば、もはや寝る以外は病院のような働き方を求められる場合もあるでしょうから、診断書なりを提出して調節してもらいましょう。固定残業代がベースあり、それを超えると超えた分の残業代が支払われるようなところであれば、いい病院でしょう。一方で固定残業代分を超えてもその残業代のままであれば、固定分以上の残業時間になるかどうかを考えたり、残業代の支払われ方の実態を調査して3年目の場所を選ぶとよいと思います。

 

 待機(オンコール)も、悲しいことに個人的な活動に影響はある人が多いものの特に手当のない場合が基本かと思います。今後のために待機の多さ・連続期間の長さもどこまでなら受け入れられるかもチェックしておきましょう。さらには病院によって待機時の病院への来院時間までの規定時間等が30分であったり、もっと長かったり、短かったりすることがあるので、それも拘束度合に影響を及ぼすのでチェックしておくとよいでしょう。

 待機(呼ばれたことによる実働分の時間外ではなく、待機そのもの)に対する手当がある病院であれば、比較的待遇に対しては良い病院である可能性も上がると思います。一方で待機での実働分に対する時間外すら支払われないのであれば、むしろブラックでしょう。

 

 研修/教育制度のところでも触れましたが、EPOCのようなレポート作成や学会等での症例報告のような自己研鑽も負担に感じることがあると思います。EPOCこそ終わらせないといけないですが、1症例1項目のような形式的で書けば書くだけ勉強になると言わんばかりの堅物の考えに対しては研修センターに相談してみましょう。症例報告をローテーション先で誘われた時は、余力がない時や興味が湧かないときは上手に断るようにしましょう。特に、そこの診療部長等のお偉い先生が「趣味」でやっているような、質が分からないような、演題が集まらないような存在意義に疑問が湧くような学会での症例発表や研究会に誘われた時にはなおさら注意しましょう。余力がないことを上手に伝えつつ、可能であれば研修センターにフォローしてもらいましょう。

 他にも研修医内での自己研鑽がある場合もあります。初期研修医向けの部分だけでなく医局全体の掃除やごみ捨てをするという取り決め、形式的な会議への参加、医学生向けの説明会(院内、レジナビなど)でのプレゼンやスタッフというようなものです。研修医内でやらない人が得をするという雰囲気も難ありですが、それ以前に「小学校の〇〇委員じゃあるまいし…」というような自己研鑽に関しては教育担当部署へ具体的なお願いをして解決できる方法を探ってほしいものです。医局の清掃員を雇う余裕もあまりなく、清掃員を多く雇うぐらいなら、研修医に自己研鑽でやらせた方がマシという考えかもしれません。望んでいない自己研鑽の説明会スタッフであるなら、医学生の人への負の連鎖止めるために、自己研鑽なりの対応でもいいのかと思います。うしろめたさがあるにも関わらず、プラスの方向で宣伝・勧誘をするのは悪の手先のような感じがする人もいるかもしれません。しかし、実際には説明会では病院事務や研修担当の先生からの監視もあり、公正(監視や訂正)の入ったパワポによる全体説明、さらにはポジショントークや良く話を盛らなければいけないこともあった人もいると思います。しんどい場合には体力だけでも温存しておくのもひとつの手であると思います。

 お休み中なのにも関わらず、研修医内での仕事があるとか、仕事に関する連絡(お休みのうちにも返信が必要)が来るとか、リフレッシュにもならない配慮のない場合も中断して他の施設へ行く基準になると思います。研修医内でも個人的な私用の連絡はLINE、研修や業務に関することはMicrosoft TeamsやSlackというように連絡手段適するものに分けて対策するような環境が構築できればと思います。こういう時に新たな連絡手段等の導入障壁となる古い考えがあれば、中断とは言わなくとも3年目以降もこういう施設であると意識したほうが良いと思います。

 

 他にも、2024年 医師の働き方改革問題への対応のための表面的な解決策として、実質的な労働時間は変化がないものの時間外手当の付く仕事が減っている(隠れ残業というような場合もあるかもしれません。他にも、宿日直許可とセットでお給料の貰える時間が睡眠阻害時間のみに限定されて、一定時間以上の労働でないと時間外手当が貰えないなどの弊害がある場合もあるでしょう。宿日直許可については「軽度または短時間の業務」、「応急患者の診察や入院、患者の死亡、出産等に体操することが稀」などの条件があるはずでずが、断らない救急や救急車1万台/年などであるのに、明らかに制度の抜け穴のように使われている不思議な施設もあります。このような施設で戦っても宿日直許可を取り消してもらうのは至難の業でしょうから、合わないようであれば、自分自身を守る/その施設から去ることをおすすめします。

 2024年問題もAV新法と同じく、業界内部の事情に合わせずに医者という枠に当てはめて一律に上限を設けてしまうことで制限を課してしまう危険性があります。もっと、バイトで稼ぎたい人もいるはずなので労働時間(まだ1960時間なら分かるものの)だけではなくて、業界の体質というべき自己研鑽(サービス残業を取り締まったり、労働時間の融通が利きにくい部分を改善ほしいものです。これに抗う方法は中断を考える人向けの解決策ではないと思うので、むしろ臨床も含めて今後も頑張っていく人(他へ移らない人)長期的な視点でメスを入れてほしいと思います。失われた30年により日本で医学部受験が人気となったかもしれませんが、魅力が減れば(医療系以外にも実態が広まれば)、時代の流れとともに情報系など他に人気が移るような気がして、働く手の視点からも持続可能な医療から遠ざかっていく気がします。もしかすると、医学部人気の最後の世代とか言われてしまうかもしれないですし、だからこそ化けの皮が剥がれる時だからこそ問題になっているのかもしれません。シルバーデモクラシーとか世間で言われていますが、このまま失われた40-50年になれば「手に職を」をということで日本に残る場合の職業としては優位性を保てる可能性もありますので、今後のキャリアを含めてそれぞれ考えてみてください。

 2024年働き方改革の問題への解決方法として、自己研鑽を促す方向での実労働時間は変わらないものの時間外手当がつかないというような「赤信号みんなで渡れば恐くない」というような日本式のサービス残業推進の場合は、3年目以降残るかの判断にも利用したり、しんどい時に定時で帰ることができるように診断書を提出することや中断を考慮する材料にすると良いと思います。特に立場的に強く、被雇用者に自己研鑽にさせやすいところほど、自己研鑽を悪用しやすい危険があると思います。今後働く場所を調べる際に意識してみてください。また、システムではなく、自己研鑽という個人の持ち出しのような方法で対処療法的にこなしていても、根本的な解決は難しいでしょう。

 

 荒手の解決策として労働基準監督署(労基)駆け込むという方法や、弁護士相談する方法もあります。

 労基であれば、なんらかの勤務時間の改ざんの証拠手当未払いの証拠(例:勤務時間を抹消されている勤務簿のコピーや給与明細、自己研鑽を示すような資料や発言の録音)を手に入れてから駆け込んでください。違法性が確認できないと、動いてくれません。もし労基へ駆け込むことを考えている場合、狭い世界の中での反乱扱いのようなものなので、初期研修修了証をもらってその病院を去る時労基へ行く方が無難な気もします。労基に駆け込もうとすると、意外と近く(初期研修医内等)から、もし何かあったら風評被害を受けそうという考えや社畜のような考えで良い顔されないような場合もあります。ひとりか、1人がつらくても信頼できる人とだけで証拠集めをおすすめします。また、あなた自身でなくとも他の誰かが労基に駆け込んだときにあなた自身の時間外労働の未払い分(過去3年分まで請求可能)をもらうためにも、せめて提出前の勤務簿のコピーぐらいは残しておきましょう。

 サービス残業については、院内相談するとパワハラセクハラ同じく曖昧にされる、立場的なもので蓋をされる場合もあります。労基も証拠が不十分であったり、違法性がないと動いてくれません。本気の場合は、事前に弁護士相談をして必要な証拠事前に集めてから、院内では相談しましょう。研修医ではないですが、弁護士経由で相談/内容証明を送るようなことをすると、よろしくないことは知っているので示談でケロっと解決することもあるようです。ただし、「この地区・医局で残れると思うな」というような脅しもセットでついてくるような地方もあるようですので、その辺りは自身の立ち位置や、こっそり相談する同期などの状況も踏まえて上手に振舞ってください。嫌な上司はもちろんのこと、この地区に残る同期でも、こっそり相談したらになってしまう場合もあります。

 労基へ駆け込むにしても、弁護士経由でサービス残業代を取り戻すにしても、初期研修を終える時が個人的には良いと思います。いずれにしても、これらのアクションをした場合には、その後に居心地は悪くなると思います。

 

 他の病院との比較というのは、中断をした場合のことを加味したものです。いわゆるこの業界が全体として決してホワイトではないことを前提にした比較でもあります。今いる病院は基本給がちょっと高めでサービス残業が多いという場合は、基本給が低く残業代が出るところと同じぐらいのお給料でしょう。そのようなお給料を客観的に把握して、中断→他の施設での研修再開時お給料はどうなるのか、生活できるかを少し考えてみましょう。

 もちろん、サービス残業が違法であると病院は知りつつ、病院のマッチングの宣伝としては基本給が高く、マッチングの宣伝上有利になるように「偽っていた」という部分に嫌な感情を抱くかもしれません。しかし、その部分への解決策は労基へ駆け込むという難しいものや、多数で転職(離職)して回らなくして長期的にマクロな視点での解決策に留まる程度になるかもしれません。日本特有かもしれませんが、その辺りが正直者が損をしてブラック企業が残りやすい悲しい風土なのかもしれません。

 ブラック企業では、学習性無力感に陥って転職せずに働き続けるということがあります。学習性無力感とは、長期間にわたる回避困難なストレスな環境に置かれた人がその状況から逃れようとする努力すらしなくなるという現象です。この現象の科学的な根拠は分かりませんが、悩んでいる本人にとってはストレスフルであると思いますし、回避行動を起こすことができずに3年目以降そのまま継続していく前に気がつくことができたと前向きに考えてもらえればと思います。もちろん、自己研鑽に加え有給や代休が取れない診療科が多くて見学に行けなかったというような理由もあると思います。

 2年間(2年より多くかかっても初期研修を終えるまで)はこのままいって、診療科と同じく3年目を選択する際のヒントにもなると思います。働き方・雇用形態(大学医局、市中常勤、非常勤、バイトの可否・条件等)に加えて、独立することや、雇用の実態なども考えてみるとよいと思います。また、自己投資も大切ですが、医局員や勤務医をしていく場合をはじめとした給料の決まり方(能力給ではない部分)や、お給料(サービス残業含む)以外アドバンテージ(学位?名誉職?、研究環境?、所属することによるブランディングとそれによる利益?、持続可能な働き方?)のようなものと自分自身の考えを少し意識しておくとよいと思います。建前はさておき、あからさまなサービス残業ではないにしても、「医は仁術なり」というような言葉を表面的に使うことでキレイごとのようにフタをして、身体や家庭などの大切なことを大きく犠牲とするような一線を越えたやりがい搾取(ダンピングにも気をつけましょう。

 学習性無力感という考えでいけば、一部の病院にとって初期研修というものは、厚労省からの助成金をもらいつつ耐えられる範囲からこの業界に飼い慣らすための制度のひとつかもしれないと感じてしまったこともあります。しっかりと教育体制を整えて良い臨床医を育てたいと思っている一部の病院や人もいれば、一方で染まってしまい違和感なく「私の経験したしんどいことを若手もやるべき」という維持する側の価値観の人もいるでしょうから、施設の価値観と会わない場合には転職をしていくか、価値観は目をつぶって給料や勤務日数(例:サービス残業多くてもこの金額で勤務日は5日間)をみて、転職することを考えましょう。

 

【補足:自己研鑽時間外労働認めたら赤字?】

 ちなみに、病院ごとの経営状況(収益、財務諸表等)を複数調べたことがあります。外の病院に勤める人から自己研鑽がひどいと話(相談?)を聞いたときに調べてみました。仮に全職員のサービス残業を1時間/日でも認めれば(給与が1割でも増えれば)、すぐに赤字になるような病院も多数ありました(笑)。それだけ全体的に改善しようにも改善できる余力もない、一方で補助金等で公的にジリ貧で保たれている、保険制度で余力を与えられないようにコントロールされている業態なのかもしれません。詳しくは下記ページをご覧ください。

https://mk-med.hatenablog.com/entry/2022/06/15/203000

(注)急性期病院(400床~)の収益構造を適当な比(正確な数字ではなく)で収益100億円/年 程度にしております。収益100億円/年の病院とは、本来であれば病床数300床後半から400床程度の病院になります。



1-8. 同期研修医内での関係悩んでいる

<ここをチェック>

  • 理解しあえる友人解決できるか
  • 研修医内のシステムの問題(シワ寄せ)か

 これは初期研修に限った話ではありませんが、どこの職場でも人間関係厄介なものにもなりうるものです。セクハラやモラハラのような状況がなければ、仲良くできる人と仲良くやって、それ以外は同僚や初期研修医というくくりで業務に支障がない程度に割り切ればよいと思います。もちろん、寂しいと感じる人もいると思います。

 厄介だと思うことは、セクハラようなハラスメントはしている側が認識していない場合もあることです。もちろん、一部の共学の高校出身の男性や男子校出身者などが中高校生の時に女子生徒に嫌がられるということを経験せずに育ったりしたことで、もしかすると卑猥な言葉と認識すらしていない可能性もあります。

 他にも、多様性がなく一様な集団にずっといた、背景の似たような人ばかりの環境で歩んできて当たり前だと思い込んで気がついていないがゆえの他の地域・業種(再受験)から来た研修医への悪口、もしくはその環境を正当化したい場合のモラハラのような状況になる場合もあります。その場合は、直接言えなくても仲の良い人を経由してでも伝えてみる事からだと思います。もちろん、中にはそれでもやめないこじらせたような人もいたり、そもそも悪意を持ってやっているような人もいることもあります。そのような場合はもっと職場のセクハラを扱うような部署に相談してみるのもありだと思います。そして、一度注意をしてもらったという証拠を残しておくこともむやむやにされずに今後役立つかもしれません。

 他の例としても、初期研修医内で自己研鑽を美化して、強要するような人との軋轢がある場合も、同期内で誰かを介してでも良いので話してみるのも考慮しましょう。例えば、「俺は有給の日も仕事にきてオペに入ってる。あいつなんてもっとできないんだから、呑気に有給をお休みだと思ってて大丈夫なの?あいつと一緒に当直したくないわ。」と言うよう人がいたとします。中には、休みの人のSNSまでこっそりチェック(SNSを監視)している強者もいるようです。休みは休みと割り切って、そういう人は無視したり、プライバシー設定を変更しましょう。また、そのような人に違和感を感じたり、他人に強要するようなことではないという仲間が多ければ「言わせておけ」というぐらい流して考えるようにすればよいと思います。あまりにもマイナス方向で逸脱した考えは流すようにトレーニングすると良いと思います。

 これこそ、言葉で言うのは簡単ですが、割り切ることは難しい問題でもあると思います。特に疲れている時や落ち込んでいる時ほど、割り切ることが難しそうです。

 

 他にも研修病院の中では研修医内で決めないといけない仕事があるところもあるでしょう。例えば、当直や日直の予定を研修医内で決める病院や、事務の人が最終的に組むところなど様々でしょう。研修医内で決めるシステムでなければ、1-3のときのような事務との相談になってくると思いますが、研修医内で決めるシステムから関係性がこじれてくるような場合もあります。例えば、土日は常に予定が…とあざとく立ち振る舞うような研修医から、診断書が出ていても当直に戻ってこいというような圧力、お金がないから当直にたくさん入りたいというような人までいると思います。そこで当直回数がしんどくなってきていているというような場合に研修医内その担当の研修医相談してみましょう。研修医内で話し合いになったときに、何でも平等原理主義のような人とお金に困って月8回でも当直を減らせないというような人がバトルにならなければ、何とかなる気がします(笑)本来、人材の大きな配置や確保(診断書提出や退職に伴うようなもの)といったマネジメントは研修医ではなく上の責任なのですが…。

 他にも休日にレジナビのような説明会に行く人を決める際も何とか調節がつくと思います。もちろん、説明会スタッフとして行くのに代休がないとか、自己研鑽とか、当直が多いのに前後の当直との考慮がない、実質2週間以上の連続勤務になるとか、制度上の問題複数あって行きたい人がいないどころか、行きたくない人がばかりというような場合は研修医内の問題というよりも、制度や病院の問題でしょう。1-6の制度の問題や、1-7のようなブラック企業の話のくだりと同じような解決策になってくると思います。

 また、初期研修医が2~3名のような少数しかいない病院でのシワ寄せもあるでしょう。特に初期研修医の仕事を著しくやらない権利意識の強いだけの「どうしようもない人」被害にあっている場合です。それも組織全体で調和を図るのか、初期研修医内で調和を図る(穴埋めする)のか、元から初期研修医ありき、というような病院の方針でも変わってくるでしょう。それなりに働いているのに、その「どうしようもない人」の分までサマリーの書類仕事をしている、当直に入っているとか、となると中断して他に変わりたくなるかもしれません。物理的な仕事量が多いはもちろん、感情面での負担や給料は「なのに同じ」というもどかしい思いをするかもしれません。もちろん、「どうしようもない人」というのは本人だけ、悩みもなくずる賢くふるまっているような人のことで、事情のある人ではありません。初期研修医内だけではその人の分を吸収しきれないとして相談するのが良いのでしょうか。

 

 自己研鑽やお世辞にも良いとは考えにくい慣習・価値観の残っている病院ほど、それを理由にした研修医内での方向性の不一致で関係がギグシャクしうることがあります。説明会病院見学に来てくれた医学生にどれだけポジショントークをするか、しないかというのも関係性が崩れる原因となる可能性があります。事実を伝えると後輩が来なくなるという立場と、事実を伝えて負の連鎖を断ち切らせようという立場で衝突する可能性があるからです。研修制度の問題や病院の問題、そこから派生する利害関係で研修医内の人間関係がギスギスしてしまうのは、もったいない気がします。



1-9. 他悩みあるけれど…

 長い具体例にお話にお付き合いくださり、ありがとうございました。病棟での話や救急外来での話、看護師さんとの話など、先ほどまでに挙げただけではカバーしきれない部分ももちろんあると思いますが、よく聞くと思われる部分を中心にお話させていただきました。一部だけでも参考になればと幸いです。そして、どれもひとつだけが原因というのは少なく何かをきっかけに負の連鎖に落ち込んでしまったというようなことや、何かが最後のトドメとなったというような方も多いと思います。落ち込んでいたり、疲れている時には正常な判断ができない場合もあります。症状等がある際には、受診してお休みをもらうようにして、休んだ後に中断するかを判断してもらえればと思います。

 特に、根本的な原因となっているものだけでも解決できれば、根本的な原因(上流)から色々と改善されるかもしれません。改善できる見込みや改善までに要する期間、そのまま病欠や休職、時短勤務を取り入れながら修了できる見込みを考慮して、中断に踏み切るかを考えてもらえればと思います。

 またお休みすることに関して、他の人にそんな罪悪感ともいえるような感情は抱かなくていいと思います。中には権利者意識だけが強くあって義務を果たしていないような人もいますが、そのような人は中断について悩むことなく、感情もなくやってのけていることでしょう。

 また、「私が辞めたら、他の研修医に迷惑が…」というような意識を持つ責任感や心の優しさを持つ人もいるでしょう。しかし、コロナ禍で露呈したように多くの組織の場合は代替可能であり、まわってゆくということです。家族や信頼できる人との代替不可能な絆を優先していきましょう。もちろん職場の半分が辞めれば、いくら代替可能であったにしても根本的に回らないと思います。施設単位のマクロなコントロールは会社であれば経営者やマネジメントする側の仕事です。むしろ、市場の原理で淘汰される、もしくは改善されるべきでしょう。バイトがどんどん辞めていく居酒屋で辞めようかと思ったらバイト代が上がっていって人も増えて何とかなったという経験もあれば、残りの人も辞めていって私も辞めたというような経験もあると思います。それと同じように捉えておきましょう。

 

 残念ながら、悩みや疲労から色々と手につかなくなってきた時、症状が出てしまった時、起きれなくなってきた時、働けなくなくなってきてしまった時、受診した時、というような際に中断という選択肢をより具体的に考慮する段階になってくると思います。

 まずは簡単に解決できないかという望みとともに研修担当部署との相談も必要だと思います。上記のような悩み、とりわけコンプライアンス的にまずいことを相談しても「まあまあ」となだめられるだけだったら、ましてや口外するなというような勢いであれば、中断を決意する人も増えると思います。相談するときも、最後は押し問答のようになるような状態が続いても、相談される側にも言いにくい事情やポジショントークもあり、煙たがられるかもしれません。とりわけ、コンプライアンス的にまずいもののこの業界の慣習となっているような部分に関しては、相談された側も反応に困る場合もあるでしょう。その際は無理にその相手を責めたりせずに、その人のポジショントークであると考えて、重くは受け止めないようにして少しでも気楽にするとよいと思います。短期的/近視眼的には「まあまあ」という方がいいかもしれませんが、長期的にはジリ貧茹でガエルになる可能性も秘めている組織・業種である可能性が高いので、転職を意識したほうが良いと感じます。

 

 色々な要素書き出して中断が良いのか、休職が良いのかを考えてみてください。異なる候補の病院と比べて、相対的に今の施設の方がよい研修を終えられそうであれば休職しながらゆっくりでも今の病院で初期研修を終える方が良いと思います。一方で、相対的に今の施設が悪いのであれば、中断して他の施設へ行った方が良いと思います。辛いとは思いますが、少しずつ準備をして前に進めてもらえれば幸いです。

 

 いったん休職で進めていったとしても、時短勤務や当直への配慮の必要性などから数カ月に1度のペースで受診して診断書をもらっている場合もあると思います。そのまま初期研修を終えられそうであれば、まずは初期研修を修了させられればよいと思います。一方で、受診を続けている環境であれば、その職場や働き方は自分に合っていない可能性が高いと思います。

 医学的に学んだりして乗り越えないといけない苦労・恐怖や不安はあると思いますが、一方で研修先の環境のせいで不要な苦労・恐怖や不安に悩まされていませんか。もちろん、初期研修先を変える不安もあると思います。しかし、可能な範囲で改善を試みてもダメな職場で働き続けることは「DV彼氏と結婚を考えて、ずっと一緒にいる」ようなものではないでしょうか。数年単位でみれば、転勤等も含めて環境の変化は当たり前であると考えれば、次に行っても良いと思います。

 医者そのものが向いていない場合もあるかもしれないと思いますが、その原因となっている要素に関して、職場に問題があり相対的に周りの病院等と比べて平均点以下(あなたの希望は完全理想論ではなく実現性が高い)とか、ここが苦手というような問題点があれば、その問題点は変えられる部分(異動、転職)を変えてみた方が良いと思います。

 

 3年目以降の働く場所・環境を意識して、より良いところで働いてもらえればと思います。また、とりあえず前に進むということで休職後に復職して、また休職しそうな場合は中断を再度考えたりすればよいと思います。そして、初期研修を修了しなくてよい明確な理由がなければ、時間はかかったとしても、研修病院が途中で変わったとしても、何とか初期研修を終えて職業や生活の選択肢を広げてほしいと思っています。

 

 初期研修の現状把握に役立ちそうなものも紹介いたします。下記の厚労省の資料もよろしければ、参考にご覧ください。

【PDF形式のスライド】

厚労省ホームページ】

臨床研修を長期にわたり休止又は中止する場合の取り扱いについて

 

 先述のホームページですが、研修医のご相談に応じる窓口厚生局ある旨の記載もあります。周りから具体的に厚生局での相談について聞いたことはありませんが、中断や休職の際の相談先になると思います。

 上記のホームページにてお休みが90日以内であれば、2年で研修を終えられるという主旨の記述の詳細もよろしければご確認ください。数週間休んだら終えられないというような制度ではありませんので、ご安心ください。

 他にもPDF資料には初期研修を中断する人は1.2%であり、中断した人の約8割程度研修を再開できているという資料もあります。一般企業の新卒1年目の離職率は約12-13%、2年以内の離職率が約20%であることをふまえると、初期研修の離職率はとても低いことが分かるかと思います。一方で、それだけ我慢をしている人が多いのかもしれませんし、中断まで至らずにお休みをはさみながら修了している人が多いのかもしれません。入試大学生活・部活等で選択がかかっているのかもしれません。いずれにしても医療業界の外からすれば「辞める人もいるよね」程度であると知っておけば、majorityから外れる恐怖は和らぐかもしれません。

 もちろん、これまでに挙げた具体例は様々な聞いたりした話を集めたもので、それらがすべて当てはまるような病院は多くはないと信じています。良い研修病院も多くあると思いますが、過去に医療者としての経験もない場合や多職種での交流のある人には違和感など様々なことを感じることが多い界隈だと思います。お読みくださっている皆様の状況に当てはめて考えていただければ幸いです。


 

2.初期研修中断向けて

 初期研修を中断したいと思っても、世間の目やこの業界の慣習もあり、中断まで至る人は数十人に1人もいないと思います。世間の目はほどほどに、まずは自分を大切にして欲しいと思います。ここでは、具体的な中断に向けた情報提供を、聞いたりして知っている範囲でも何か紹介できればと思います。

初期研修中断のトリセツ 第2, 3章のアウトライン

 

 

2-1. 研修中断証もらう

 何といっても臨床研修中断証を貰いましょう。次に研修を再開する際に用います。臨床研修中断証とは、中断までの必修診療科を含む研修内容や「経験すべき症候」や「経験すべき疾患」、CPC症例のような修了要項のうち経験済みのものを証明するものです。これがないと何も研修していないのと同じになってしまいます。

(注)労基に行きたいというような人は退職が決まり、中断証をもらったに駆け込むことをお勧めします。残業代請求の時効まで2年(→新しくは3年)あるため、それまででもよいかもしれません。

 

 

2-2. 研修中断日、退職日決める

 研修中断日を最終勤務日にできれば、初期研修のお休みの日は短くすることができます。特に大きなメリットはないかもしれませんが、お休みの日としてのカウントは短くなります。

 退職日は各自の思惑もあると思います。すでにお休みしているので有給休暇(有給)を消化しているかもしれませんが、有給は消化してから、雀の涙ながらでも出るなら賞与(ボーナス)もらってから辞職願を出すというようなことも考慮してみてください。退職前に使い切る/賞与への影響を少なくするという意味ではお休みする際も有給から使うことをおすすめします。受診中であれば、健康保険かけ替えの準備も間に合う程度の日取りで進めることをお勧めいたします。中断後にお金が必要なことや、基本的に継続年数もなく期間職員扱いのため退職金も出ないため、ちょっと考慮しておくと少しはマシかもしれません。

 

 

2-3. 年金健康保険かけ替え

 退職に伴い、厚生年金保健康保険のかけ替えになります。退職後、健康保険の任意継続健康保険や国民健康保険への変更といった選択肢があります。特に、心療内科等で受診を継続している場合には保険の切れ目のないようにご注意ください。

 国民健康保険で家族と同一世帯に戻る場合も含め、世帯年収等で異なってきますので、家族へ予め相談してみてください。もっと、簡単な一律の制度になればいいのにとか、長い間勤め人をしない人にとっては厚生年金とかいらないと思いますが、こればかりはかけ替えするしかないと思います。

退職後の健康保険について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会

 

 

2-4. 引っ越し先/準備

 実家暮らしで実家から通勤している人は心配しなくてもよいと思いますが、寮や家賃補助の賃貸に住んでいる場合は考える必要があります。寮の場合退去となるでしょうから、実家に戻るなり、他の賃貸を借りるなりして、引っ越すことが必要になってきます。家賃補助の場合は家賃補助がなくなった場合に実家に戻るか、住み続ける場合は他の賃貸と比べて病院勤務に関連する事項以外でのメリットを考える必要があります。補助がなければ病院近くの家賃の割高なところには住んでいないかもしれません。

 引っ越しをするとなれば、洗濯機や冷蔵庫のような大型の白物家電は費用も掛かります。引っ越し業者に頼むにしても複数の業者に見積もり取らせて安く済ませるような工夫はした方が良いと思います。ハイエースのようなワンボックスカーを借りて誰かと引っ越して引っ越し費用を抑える、大型の白物家電を下取りして身軽に引っ越しをするというような方法もありだと思います。ちなみに過去10年の間に5回ほど引っ越しをしていますが、業者で運ぶ場合は繫盛期(3月末)を避けたり、繫盛期の場合は車を借りてちょっと誰かの手を借りて引っ越ししたこともあります。普段から物を増やさないようにして、物が少なければ、車で引っ越しをする方がお得です。特に研修中断で両親などのバックアップもなく、他の投資収入や家族の収入もない場合で、貯金を切り崩さないといけない人は中断に伴うしんどい時期かもしれませんが、節約も必要になってくると思います。他にも、白物家電のような大きなものは毎回近くのリサイクルショップで安いもの買い、引っ越しごとに処分するようにして、段ボール10箱等で宅配便で引っ越しをすると繫盛期の引っ越し料金を回避することもできます。

 いずれにしても、今後、急性期病院に勤め医局関連病院点々とするようなキャリアになりそうな人は今後の引っ越しも含めて意識してみるのもよいかもしれません。そのキャリアの働き方の是非はさておき、給料の割に退職金もなく引っ越し費用馬鹿にならないという場合もあると思います。

 実家に帰る際でも、処分する家電は早めに複数に見積もりをとって上手に売却するか、足元をみられない余裕をもって引っ越し前・引っ越し後に売却しましょう。過去に単身セットで大手家電量販店で3万円程度で売っているハイアール(Haier)製の冷蔵庫を1年弱使って下取り査定してもらったところ、千円という恐ろしい値段となりました(笑)。忙しくて料理はほとんどしないので冷蔵庫に入れるものも少なく、あまり使っていなかったので残念でしたが、まだ白物家電が揃えられていない人は参考までに。

 さすがに水道・ガス・電気の解約は大丈夫だと思いますが、引き払う場所に住民票をおいている場合は、転居に伴う住民票の移動や、郵便物の転送の手続き(郵便局への転居届)が必要になってきます。引き払う場所で自動車も登録している場合、車検証の住所変更手続き(新たな場所での車庫証明)もお忘れなく。

 

 

2-5. 信頼できる人相談しておく

 研修中断が選択肢に入ってきたら、家族パートナー、以前からの親友等と相談しておきましょう。研修医内にそこまで信頼できる人がいるかは分かりません。カバートアグレッションとまではいかなくても職場の下手な人と話せば、噂だけ広まるだけで不利益だけかもしれませんので人を選びつつ、信頼できる人であれば、相談内容に関して妥当性の高い解決案を親身に考えてくれるかもしれません。

 他にも突然、研修中断が決まったら家族等が困るかもしれません。健康保険のこと、実家やパートナーのもとへ引っ越しする、引っ越しはしないなど大まかな方向性や部屋の確保はしておきましょう。突然でも何とかなるとは思いますが、いざ辞めても安心して生活できる先があるというのは良い判断をしやすいと思います。

 他にも、引っ越し先だけでなく辞める際のお手伝いをお願いできることも強みかもしれません。退職代行サービスではないですが、研修医室の机の片づけや引っ越しに伴う手続きもしんどい時にはお願いしたり、手伝ってもらったりしましょう。

 

 

2-6. お金貯めておく

 特に退路を保ちながら戦うということのひとつになるでしょうか。退路としてお金を貯めつつ、どうしようもないときには中断も選択肢に入れつつも、戦いとして初期研修を乗り切る/成長するといった感じです。

 これも2-4とのつながりで家族やパートナー次第ではありますが、普段からある程度貯金などをしておくことをおすすめします(読んでいる方が偶然にも学生であれば、学生の稼ぎのいいバイトの方がお金が貯まりやすいかもしれません)。家族が中断中のお金も払ってくれるような環境であれば、とりあえず安心でしょう。しかし、初期研修の期間雇用・継続年数では退職金もなく、休職手当もないため、そこまで裕福な家庭ではない場合は少し注意が必要です。

 もちろん、普段のストレスによって消費額が高くなってしまうことは理解できます。しかし、ストレスが溜まりアウトレットで15万円使ってお金が綱渡りとか、そういった華やかな買い物なしではやっていけないとか、そうすると来月のクレジットカードの引き落としがあるから休めないとか、転職しづらいとか聞いたことがあります。消耗を重ねていく自転車操業状態になってしまいます。

 他にも収入に見合わない家賃の話も聞いたことがありました。手取りの3割までと古くから言われますが、手取りに見合わないデザイナーズマンションの一室を借りてお金がカツカツで当直をたくさんにしないとお金が回らず、ゆっくりできるいい部屋を借りたのに帰れないというかわいそうな話も聞いたことがあります。

 家計を見直しておきましょう。特に高価な資産性のないものの個人ローンでの購入を控えるというのも良いと思います。高価なものを買っていない人でもメスを入れやすい部分でいうと固定費です。特に大きな固定費から見直すと抜本的に改善されます。見直しやすい固定費としては携帯電話代電気・ガス代家賃、簡単に整理できるサブスクでしょうか。特に金額の大きな部分や、電気・ガス代(燃料高騰時は注意)のようにまとめてお得なところで契約すると内容・質は変わらずにお得に生活することができます。あとは、研修医で1人暮らしであれば固定回線は引かずに楽天モバイルDocomo 5Gギガホプレミアムで無制限で使えるものに絞ることもありでしょう。

 その先でいうと、月額分も使用していないフィットネスジムゲーム課金ムダな保険もあると思います。Ubar Eatsをはじめとするフードデリバリーも家計を地味に圧迫しますが、これは肉体的な疲労や時間節約とも密接にかかわっています。それ以上に普段の生活費とは別枠にしていそうな財布のひもが甘くなる部分にも注目です。例えば、5000円とかの中途半端な外食を、誰と行って話したいからとか、ここは他と違っておいしいとか、目的を明確にして判断すると中途半端に無駄な外食は削れてよいと思います。働き方やお給料・時間外手当の有無といった側面からも判断して可能な範囲で節約してみてください。中断に限った話ではないですが、金銭的にも余裕があることで辞められない状況に追い込まれることを防ぎ身動きが取りやすくなるように感じます。今の大学病院等の専攻医のときにも参考になると思います。

 初期研修1年目で2カ月程度の勤務日数であればそこまで問題になりませんが、住民税のことも頭に入れてお金を残しておきましょう。所得税に年金に社会保険料に、たくさん天引きされていますが、2年目以降(天引きでも)やいったん中断して他で再開するにしても大変な思いをするかもしれません。

 

 

2-7. 次の再開先意識しておく

 中断した後のことになります。もちろん、保険医になることを辞めたり、臨床医以外の道もあります。しかし、保険医を取っておこうと思う人も多いはずです。

 再開に際して、「研修医の求めに応じて、臨床研修の再開の支援を行うことを含め、適切な進路指導を行うこと」とは厚労省の先述のページには記載されていますが、現実的にはそれぐらい親身な病院を中断することは稀で、再開先は自分自身で探すことになると思います。ネットで検索すれば中断者を個別で受け入れている施設がありますし、そこまで大々的にホームページで公示していなくても出身の大学病院や定員割れしている病院などに問い合わせてみるのも手段であると思います。定員の空きのあるのが、1年目、2年目でも異なってくる部分もあるでしょう。通常のマッチングとは別枠といったようなことを聞いたような記憶もあります。いずれにしても、中断理由は配慮されると思います。もちろん、1年目であればタイミングを待って合わせてマッチング登録からという方法も選択肢になってくるとは思いますが…。

 地方、お給料、ブランドなど、譲れる部分があれば、定員割れする可能性のある病院で比較的容易に再開できる場合もあります。地方で良い場所を見つけられば、都心よりも高いお給料でゆったりと研修再開できるかもしれません。これこそ、地方にいる/行った友人・先輩・後輩等に聞いてみるのも良いでしょう。研修病院の真実を聞きやすいと思います。

 また、友人・先輩・後輩等を頼るというような手段もあります。東京に残っている友人の病院の場合はフルマッチしているので可能性としては低いと思いますが、事務や先生に中断者の受け入れをしているかを聞いてもらいましょう。表で募集をしてなくても、受け入れ可能な場合もあります。その際は仲介してくれる人と病院の先生方の信頼関係等も影響してくるかもしれませんので、頼む人が選べる場合には選んだ方がいいかもしれません(特に中小病院の場合)。

 

 何より、学生の時にはイメージが湧きにくかった初期研修の実態をもとに学生の時以上に養われた視点から自分自身に合うところを見つけましょう。

 ここがという具体的な再開先の紹介ができないことが申し訳ないですが、中断に至った理由を見直しながら、ゆっくり考えてみてください。とりあえずは自分の体を大切にしてほしいと思います。



 

3.最後に ~自分なりの歩みを~

 まずは余裕を持てるようにして、少しでも気持ちが前向き解決志向になる・アクションを起こす一助になれば幸いです。そして今後、もっと長期的な専攻医の道に進むことを選んだときも、今回のことを活かして選んでみてください。

 「変えられないものは受け入れて、変えられるものを変えていく」という視点で、医局等の縛りがなければ、その病院での働き方は変えられないかもしれないけれど、働く病院は自分で変えられるかもしれない。今の働き方は無理であると受け入れて働き方を変えるために転職する。そう考えてみてはいかがでしょうか。

 不安恐怖があるから学ぶことができる面もあるので、鈍感で強すぎて学ばずにいつも同じ失敗を繰り返すよりも次のものを探して進んでいきましょう。そして、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた一部の人のように、その状況から逃れようとする努力すらしなくなり長期的に体を壊していく前に、そのストレスを回避してください。

 初期研修2年という枠に縛られながら、それを外れるとレッテル貼りをさせるような日本らしいシステムだと感じます。卒業までに各自でUSMLEに合格するように好きな時にクリアできるようになればいいのと同じように、初期研修ももっと多くの人が2年でも、2年3ヶ月でもというように、研修を自由にグラデーションをもって終えられるシステムがあればいいのにと思ったります。

 とりあえず興味のあるところを覗いてみて、入ってみて求めていたことと違うということは大いにあるので、はじめからキャリアプランを決めすぎずに、Transitional Yearとか、休学とか、編入とか、MBAの社会人大学院などを挟みながらやりたいと思ったときにやりたいことをやれるように方向転換していくというようなのが良いと感じます。人は何かを体験・習得することで変わっていきます。ずーっと今の価値観のまま、未来を見ていく必要はないでしょう。新たなことを吸収して、また方向転換だと思います。

 他にも、初期研修の際に結婚をしていて子供を育てている家庭は少ないと思いますが、いずれ結婚したい、子供を育てたいと思っている人にも、その分の時間的な余裕はのびしろにしやすい環境や、自分の希望・意志で転職や継続、調節できる環境を整えたほうが良いと思います。雇用条件には書かれていないものの出産は半ば順番待ち強制転勤(自主退職扱い)で関連病院を転々とするというようなこともあるかもしれません。もちろん、そうすることで子育て等に必要な金銭的メリットや技術的なメリット等を教授できるのであれば、天秤にかけて判断することになると思います。

 初期研修・3年目以降(主に専攻医)にしても、時間的余裕金銭的余裕もない、例えば外科系のような技術的な伝授のメリットもないようなところであれば、なぜそこにいるのかを明確にした方が良いと思います。例えば、地方の中心都市にあるみなし公務員でバイトの制限も多く、形式的な働き方改革を進めている基本給の低い薄給の内科などでしょうか。そういう場所に残る理由は、定員数や病床数の大きさからの「皆と同じ」という安心感かもしれませんし、他にも近くに住む家族の介護や出産、家庭の環境、家業との兼ね合いかもしれません。そうでなければ、考え直す必要が本来はあるのかもしれません。

 初期研修3年目以降考えるヒントになると思います。保険診療の診療科の中での病棟の有無やメジャー科・マイナー科という枠組みだけでなく、自由診療産業医、官庁・企業など様々な選択肢があるでしょう。もちろん、家族など人との関係で診療科選びぐらいの枠の広さで考えることも多いと思いますが、まだまだ方向転換も可能です。そう思った時が一番若いのも事実です。

 他にも、FIREなどから資産運用・お金の稼ぎ方を学んで、仕事は「自分の命を切り売りするのを極力やめる」ぐらいで良いようにするなど、仕事お金の問題をある程度切り離すように試みるという選択肢もあるでしょう。10年、20年後といった長期も見据えてゆっくりでも変えていきましょう。医師以外の収入源も考えている場合、副業規定みなし公務員のリスクについても考えておきましょう。

 上記のような方向転換多様な働き方を受け入れる器が初期研修→専門医制度の流れにはあまりないと感じます。一度枠から外れた人をレッテル貼りするような多様性認められない人はちょっと脇において、自分がどうしていきたいかゆっくり各自のペースで考えてもらえればと思います。1度、このシステムから出る(世間的なレールから外れる)と戻ってこれなくなるんじゃないかという不安を少しでも減らして、自分なりに歩みを進めていくきっかけとなれば幸いです。

 そして、我慢して望まない選択してしまった場合でも、その不満を解消するために自分と異なる選択をした人を攻撃することをやめて、自らも変えていきましょう。今いるところでやり続けていくと決断した人の幸せも、違う場所に行くと決断した人の幸せも認め合い、尊重できるようになると良いと願っています。

 そして、よくあるレールから外れる・外れないに関係なく、それぞれが自分なりの幸せな状態になってやりましょう。それこそが、初期研修等でハラスメントをはじめとする嫌なことをしてきた人への最高の仕返しでしょう!

 初期研修中断にしても休職にしても、そのまま継続にしてもより良い初期研修となることを願っています。



 本日もお読みくださいましてありがとうございました。

 

 

【関連記事】

 自己研鑽の話題の際に、自己研鑽の一部を時間外労働として認めた場合に病院が赤字に転落するのではないかというお話の部分の補足記事です。数字(財務諸表)の深堀りを兼ねた番外編になります。

mk-med.hatenablog.com

 

 1-2でお話をした当直・日直回数の客観的な把握方法については下記のページ > 7.【追記】反省点含む >【補足】 当直回数・勤務形態の客観的把握 をご覧ください。また、現在マッチング中、研修先を考え始めたという人もよろしければご覧ください。

(注)今ご覧頂いている「初期研修 中断のトリセツ」も初期研修先の病院選びの際の参考になれば幸いです。

mk-med.hatenablog.com

 

 このブログ記事の作成に際し、記事執筆・作成の要望をくれた後輩だけでなく、具体的な相談や話(ブログ記事のための話でなかったとしても)、タイトルに関してのアドバイスをはじめとする周りの友人・知人の皆様に御礼申し上げます。また学会シーズン等の諸所の事情により、直近の具体的な記事作成のお願いから完成までに1カ月ほどかかってしまい申し訳ございませんでした。今後とも何卒よろしくお願い致します。

 また、1人でも多くの人の目に触れることで研修がより良いものとなることを願っており、有料媒体へ移行する予定はございません。そのため、このページをハブのようにして他の方のページのリンクを掲載する等も考えております。また、当ページへのリンクも良識の範囲内でご自由に掲載していただけると幸いです。

  

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