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これがなくても否定できない大動脈解離|疼痛、血圧の左右差、脈拍欠損、縦隔拡大、ADD-RS

これがなくても否定できない大動脈解離

~疼痛、血圧の左右差、脈拍欠損、縦隔拡大、ADD-RS~

 

<目次>

 

 今回は、「これがなくても否定できない大動脈解離」ということでテーマ性をもった内容にしてみたいと思います。「上肢の血圧の左右差がないから大動脈解離は否定的」というような危険な橋を渡りかけたことはありませんか

 具体的にどのような内容が、どのような頻度で認められるのかというようなのを具体的に例をあげて紹介する記事にしたいと思います。

(注)一般論的な話は、教科書や二次文献等をご確認ください。

 

 

1. 疼痛(胸痛など

 大動脈解離の症状と言えば、胸痛、腹痛、腰背部痛といった疼痛があり、さらに痛みの移動があれば、それらしいと考える人が多いと思います。確かにそうですが、痛みを訴えることなく来る人がいます。

 

北米、ヨーロッパ、アジアの多施設でデータベースに登録された977名の急性大動脈解離(AAD)患者のうち、63名(6.4%)が無痛性AADであり、914名(93.6%)が有痛性AADであった。

(出典)Mayo Clin Proc. 2004 Oct;79(10):1252-7. doi: 10.4065/79.10.1252.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

大動脈解離482例のうち、447例(92.74%)の主な臨床症状は疼痛であり、35例(7.26%)は典型的な疼痛を認めなかった。

  • 無痛群におけるStanford A型の割合は、有痛群よりも有意に高かった(48.57% vs 21.03%、P=0.006)。
  • 意識障害の発生率は、無痛群が有痛群より有意に高かった(14.29% vs 3.58%、P=0.011)。
  • 低血圧の発生率は、無痛群が有痛群より4.26倍有意に高かった(P=0.01)。

(出典)J Huazhong Univ Sci Technolog Med Sci. 2014 Aug;34(4):582-585. doi: 10.1007/s11596-014-1319-8.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

AAD患者98人(男性53人、女性45人、66±12歳)のうち、16人(17%)は痛みがなく(無痛群)、82人は痛みがあった(有痛群)。

  • Stanford A型解離: 無痛群では81%、有痛群では70%であった。
  • 無痛群では、遷延性意識障害(44% vs 6%、P<0.001)、失神(25% vs 1%、P<0.001)、局所神経障害(19% vs 2%、P=0.006)を呈することが多かった。
  • 画像検査所見に有意差はなかった。
  • 無痛群で頻度の高い合併症は、脳虚血(50% vs 1%、P < 0.001)と心タンポナーデ(38% vs 13%、P = 0.01)であった。

(出典)Circ J. 2011;75(1):59-66. doi: 10.1253/circj.cj-10-0183.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

多施設における大動脈解離の患者464名のカルテの後ろ向き解析

  • 何らかの疼痛を訴えた大動脈解離の患者は95.5%であり、Stanford A型では93.8%、Stanford B型では98.3%であった。

(出典)JAMA. 2000 Feb 16;283(7):897-903. doi: 10.1001/jama.283.7.897.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 無痛性大動脈解離(painless aortic dissectionの頻度は意外と無視できないと思ってもらえれば幸いです。大動脈解離のうち約10%も無痛性であるとなれば、致命的な疾患(見逃してはいけない疾患)として否定しきってしまうのは危険です。

 無痛性大動脈解離の場合、大動脈解離を否定されがちな結果からか、有痛性と比較して診断までに時間要したり、予後悪くなりがちというような結果まで示しているものもあります。

 

 さらに無痛性大動脈解離で、注目すべきだと考えられるのは、失神意識障害が有意に多いということでしょうか。解離の際に意識が飛んだために、疼痛を感じなかったというようなことも考えられます。失神や意識障害の原因としても、大動脈解離も忘れないようにしましょう。

 

 

【補足】痛み移動

 大動脈解離と言えば、痛みの移動が特徴のひとつとして挙げられます。痛みの移動がないからといって、大動脈解離を否定することはさすがにないとは思いますが、診断にたどり着かない可能性が上がってしまうようです。

 

痛みの移動がない場合、大動脈解離の診断が見落とされることが有意に多かった(尤度比 33.16)。

(出典)Am J Emerg Med. 2012 Oct;30(8):1622-6. doi: 10.1016/j.ajem.2011.11.017.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov



【参考】疼痛以外手がかり

 無痛性大動脈解離についてチェックしてみました。胸痛や腰背部痛がない場合に、どのようにして想起するかという視点からも、疼痛以外症状身体所見等について簡単に触れておきたいと思います。

 

 疼痛以外の症状として、失神、呼吸困難、脱力も認められる。身体所見として、高血圧あるいは低血圧、脈拍欠損、大動脈弁逆流、肺水腫、および頸動脈閉塞(片麻痺、片側知覚消失)や脊髄虚血(対麻痺)による神経所見を示すことがある。腸管虚血、血尿、心筋虚血も認める。これらの臨床症状は、解離による大きな動脈の閉塞によって起こる合併症を反映している。

 さらに、動脈瘤性拡張からの解離の進行による隣接組織(例えば、上頸部交感神経節、上大静脈、気管、食道)の圧迫による臨床症状も起こりうる。そのためHorner症候群、上大静脈症候群、嗄声、嚥下困難、気道障害などをきたすことがある。A型病変では、逆行性解離により血清心膜液や心タンポナーデを合併する。

(出典)ハリソン内科学 第5版

 

 このように大動脈解離の解離部位によって様々な症状などを引き起こします。さらに大動脈弁逆流により、反跳脈、脈圧の開大、拡張期雑音の聴取、うっ血性心不全もきたしうるでしょうし、麻痺であれば、MMT低下や腱反射消失のように様々な神経所見が生じるでしょう。

 いずれにしても、疼痛以外症状合併症にも大動脈解離を想起するヒントがあります。疼痛がなくても、失神などでも見逃さないように気をつけましょう。

 

大動脈解離の患者において失神は9.4%でみられ、Standord A型とB型を比較するとA型で有意に多かった(12.7% vs. 4.1%, p = 0.002)

(出典)JAMA. 2000 Feb 16;283(7):897-903. doi: 10.1001/jama.283.7.897.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10685714/

 

 失神は大動脈解離の約10%でみられます。失神で意識が飛んで疼痛を感じなかったと考えるとつながりやすいでしょう。

 

 先ほども取り上げたこの論文では、大動脈解離について症状や身体所見、マネジメント、アウトカムについて調べてある論文です。定量な面からのゲシュタルト作りにも使いやすいと思います。




2. 血圧左右差

 血圧の左右差も大動脈解離を疑うきっかけとなります。いや、むしろ血圧の左右差がないことなんて普通にあります。国試の典型例のようなものに引っ張られすぎているのでしょうか。ということで、具体例を出してみたいと思います。

 

Stanford A型急性大動脈解離(TAAD)において、大動脈解離以外の場合と比較した際に、L-R>15 mmHg(19% vs. 8%, p=0.047)、L-R>20 mmHg(14% vs. 4%, p=0.029)であり、腕間血圧差は有意であった。

*L: 左腕の収縮期血圧、R: 右腕の収縮期血圧

(出典)J Nippon Med Sch. 2021 Nov 17;88(5):467-474.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 有意差はあったということですが、患者間の特性の違いも考慮する必要もあるでしょう。それにしても、そもそも血圧の左右差を認める割合が少ないですね。あくまで目安としても、大動脈解離の患者の20%未満です。また、当たり前ですが、大動脈解離ではない患者でも血圧の左右差を認めることもある点も要注意でしょう。

 さらに、診断において次のようなことも言われています。

 

血圧の左右差がない場合、大動脈解離の診断が見落とされることが有意に多かった(尤度比 35.76)。

(出典)Am J Emerg Med. 2012 Oct;30(8):1622-6. doi: 10.1016/j.ajem.2011.11.017.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22306397/

 

 このように、血圧の左右差がなくても大動脈解離を否定したりせず、忘れないようにしましょう。




3. 脈拍欠損

 血圧差と似ていますが、もう少し簡便な身体所見として脈拍があります。血圧差の延長のような面もあるので、こちらの脈拍消失は軽くチェックする程度にしたいと思います。

 

古典的な身体所見のひとつである脈拍欠損は、15.1%の患者でしか認められなかった。

(出典)JAMA. 2000 Feb 16;283(7):897-903. doi: 10.1001/jama.283.7.897.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 血圧低下の1つのパターンであると考えれば、血圧低下が見られる場合にある程度類似しうることも考えられる数字でしょう。




4. 縦隔拡大

 アクセシビリティの高い胸部レントゲン(胸部X線において縦隔拡大をチェックする人も多いと思います。そこでも、大動脈解離が否定できるのかということについてチェックしてみたいと思います。

 

胸部X線において、急性大動脈解離の患者のうち263名(61.6%)で縦隔拡大を認めた。Stanford A型では62.6%で認め、B型では56%で縦隔拡大を認めた。

(出典)JAMA. 2000 Feb 16;283(7):897-903. doi: 10.1001/jama.283.7.897.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10685714/

 

 ここでは、Stanford A型でも37.4%において縦隔拡大認めないということです。見逃してはいけない疾患と考えれば、否定材料には使いにくいでしょう。




5. ADD-RS(大動脈解離診断リスクスコア)

 ここで、どんな患者に大動脈解離のリスクが高いかをチェックするために、大動脈解離診断リスクスコア(Aortic Dissection Detection Risk Score: ADD-RSという臨床予測ルール(CPR)があります。何でもない人にまで造影CTをしていたらキリがないと思いますが、大動脈解離のリスクを事前に見積もって、スクリーニングするために作られたものです。

 これも、先ほどまでに取り上げた身体所見等もありますが、「0点(該当項目がない)なら大動脈解離でない」とすると、危険な橋を渡るリスクがあります。具体的にチェックしていきます。

 

ADD-RS(大動脈解離診断リスクスコア)

大動脈解離診断リスクスコア(ADD-RS)

2538名の急性大動脈解離患者のデータにおける後ろ向き研究

  • ADD-RSは、各カテゴリー(患者背景、疼痛の性状、身体所見)の該当する項目が1つ以上ある場合にそのカテゴリーを1点とし、0-3点で評価する。
  • 急性大動脈解離患者のうち、ADD-RS 0点(低リスク)が108名(4.3%)、1点(中リスク)が36.5%、2-3点(高リスク)が59.2%であった。
  • ADD-RSが0点(低リスク)の患者108名のうち、72人に胸部X線検査が行われ、そのうち35人(48.6%)に縦隔の拡大が認められた。

(出典)Circulation. 2011 May 24;123(20):2213-8. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.110.988568.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 まずは、安易にADD-RSだけを過信し、低リスク(ADD-RS 0点)だから大動脈解離を否定的であると考えてしまうと、4.3%の大動脈解離は見逃してしまうリスクがあるということです。もっと感度が高いかもしれないと誤解して考えていた人もいるのではないでしょうか。これこそ、ADD-RSについて深掘りしてみて、「低リスク(0点)でも大動脈解離の約5%見逃しうる」という事実と元々の感覚とのズレを知ることができることが収穫だと思います。

 詳しくはこの論文をチェックしていただければと思うのですが、ADD-RSが0点であった患者において胸部X線を行ったとしても、約半数でしか縦隔拡大を認めていません。臨床予測ルールを中途半端に知り、それを過信していると、そのまま見逃す可能性が高まります。

 

 この大動脈解離のスクリーニングとしての感度を補うように追証され、このADD-RSとDダイマを組み合わせた診断アルゴリズムも存在します。欧米のガイドライン等で目にしたことがあるかもしれません。

  • ADD-RS≧1点、かつDダイマー陽性(≧0.5μg/mL)のとき、急性大動脈解離の診断特性は感度100%、特異度15%であった。
  • ADD-RS≧2点、かつDダイマー陽性のとき、急性大動脈解離の診断特性は感度99%、特異度35%であった。

(出典)Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2020 Oct;9(3_suppl):S32-S39. doi: 10.1177/2048872620901831.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 これを見ると、絶対ではないにしてもDダイマによって診断特性(感度)改善されています。Dダイマ陰性であれば、除外しやすくなります。そもそもDダイマーが陰性でない場合はそれなりにあるとは思いますが…。

 

 本題に戻すと、臨床予測ルールのようなチェックリストはあくまで一辺を切り取ったものです。ADD-RSをはじめ、特定の項目だけを過信すると見逃しうるということを意識しておいてもらえればと思います。

 

**********

 胸痛をはじめとする疼痛血圧の左右差、脈拍欠損、縦隔拡大、のような大動脈解離を示唆するような項目がなかったり、ADD-RSのような臨床予測ルールで低リスクであるにもかかわらず、CTに行ったらヒヤっとしたというような経験がある人もいると思います。そんな大動脈解離見逃さない一助になれば幸いです。

 

 本日もお読みくださいまして、ありがとうございました。

 

 

【関連記事】

mk-med.hatenablog.com

 ADD-RSのように臨床予測ルールをもとに、深掘りしてみると新たな発見があることがあります。興味がある方がいらっしゃいましたら、よろしければご覧ください。

中学生におススメの本4冊+探し方|読書Log【番外編】

読書Log(<書籍紹介)【番外編】

中学生おススメ本4冊探し方

 

<目次>

 

 中学2年生おススメを聞かれる機会がありました。せっかくの機会なので、このブログをそのための紹介媒体として使いたいと思います。いつもの記事とは異なりますのでご了承ください。

 また中学生に限らず、今まで読んだことなくて興味がある方にも参考になると幸いです。

 

 

【はじめに】

 課題図書のような典型的な学校の先生が喜ぶようなものだけからおススメするとは限りませんので、予めご了承ください。ジャンルはもちろんのこと、本(活字媒体)だけでなく、本屋(図書カード)で買えそうな範囲としてマンガも入れて紹介します。

 

 私の考えでは、大人の視点(大人のキレイごとのようなエゴ?)や難易度設定で、中学生にいわゆる名著と呼ばれる本を半ば強制的にお勧めしても、嫌いになる可能性が多いにあると考えています。例えば、マルクス資本論(翻訳版)は、その良い例ではないでしょうか。表現も難しく、分かりにくいというのが正直なところだと思います。余力ができると、その分かりにくい表現を「気取っている」とか、揶揄しながら読めるようになると思います。しかし、それを勧める大人も中学生の時にすすんで読んでいたのでしょうか。そのため、池上彰さん等が分かりにくい表現を分かりやすく噛み砕いて解説している本が存在するわけです。まずは、そちらからでも良いでしょうし、むしろそちらの方が望ましい場合が多いでしょう。

 また、夏目漱石『坊ちゃん』のように、何度も読み返す味があると言われている小説にしても、難しい名著にしても、自分自身の持つ知識や経験等の背景が大いに影響しています。『坊ちゃん』であれば、個人的には大学入学ぐらいに1回目の読書でもいいような気もします。中学生までの知識や背景を意識して、あくまでも中学生が読みやすく、おすすめしやすいものを中学生におすすめの本に選んでみたいと考えています。

 中学生におススメする際のPOP広告のような部分は、私の書いた文章をもとにChatGPTに書いてもらい、引用部分にしてみます。こういう自分に書けない部分かつChatGPTが得意とするような部分こそ、遊び心も活かしてChatGPTの出番でしょう。

 

 あくまでも私のおススメする本は、私個人の独断偏見によるものです。また、私は中学生の時、評価が曖昧で昔の典型的な学校の先生が喜びそうな内容の読書感想文嫌い(今ならChatGPTに書かせていたかもしれません)でした。今でも、娯楽で読むなら読めばいいし、好奇心で突き進めばいいと思っています。また、学ぶために読んだものは活用しないと意味が薄れると思ってしまう性格であることもご留意ください。

 実際に本を手に取る人の興味はもちろんのこと、背景知識や経験等が異なります。ある人には良い本でも、その時の他の人に良い本とは限りません。興味が湧かないような場合は本が嫌いにならないようにするためにも、もっと自分自身に合う本を見つけてみてください。面白さ興味深さこそ、読書にしても学びにしても原動力だと考えています。個人的には、体感として難易度的に少なくとも内容の6割程度は理解できる本をお勧めします。そして、少しずつレベルアップしていってください。

 あくまでも、選択肢増やして興味を持ってもらえる人が増えれば良い、という意味での提示と捉えていただければ幸いです。この具体例をきっかけに、+αのように視点で新たなを探すための参考となれば幸いです。 




1. インベスターZ

 三田紀房さんによる『インベスターZ』(講談社)です。ドラゴン桜でも有名な漫画家の作品です。「最初からマンガ!?」と思われた人もいるかもしれません。マンガ、侮るなかれです。

 

インベスターZ ~投資・お金のハナシ~

 

ドラゴン桜の作者による衝撃作!マンガ界のスターが贈る最高のエンターテイメント!

 

▼ マンガで楽しく学べる!投資の世界を解き明かす秘密の教材!

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今すぐ手に取って、マンガで投資の魅力やお金の本質に迫ろう!インベスターZが君の新たな舞台となる!中学生におススメの一冊!

 

 マンガのストーリーに乗せながらも、投資の世界の話を学びのある形で作品にしています。もちろん、マンガゆえのストーリー展開もありますが、投資をする際に知らなくてはならないような単語や概念も学ぶことができます。所々、さらに学びたい人向けの書籍まで紹介されているほどです。マンガを起爆剤に学習していくきっかけにできます。投資だけでなく、生涯関わるお金の勉強にもなると思います。

 

 これこそ、教育の観点から起爆剤(内的報酬)を与えれば、あとは生徒が興味をもって学び、活用していくという素敵な流れになる可能性を秘めていると考えています。生活するのに必須と言っても良いお金ですが、なかなか学ぶ場所がありません。「貯蓄から投資へ」とか、「NISA(ニーサ: 少額投資非課税制度)」とか聞くものの、はじめに学ぼうと思って手に取った本が無味乾燥したものだと学びにくいと感じます。そのような面も補ってくれそうです。私が投資を始めたときに、初心者でも興味をもって読みがら学べるマンガがあれば良かったのに…、と感じました。個人的には、主人公の一見するとサイコパスにも見える合理的な判断が、気持ちがいいと感じる場面があります。

 そして、「投資はやってみないと分からない」とか「所詮、お金はお金」というようなメッセージ性も入っていて、全く知らない中学生にも良い内容の匙加減だと思います。

 

+α;今回の主旨で言えば、「マンガ+学習+〇〇」というような検索で、様々な学習のスタートのきっかけにも用いることができるマンガも多数あるでしょう。〇〇に学んでみたいテーマなどを入れるとよいと思います。



【補足】他のマンガの例

 他にも、魅力的なマンガが多数あります。あくまでもストーリーとして魅力的なものから、内容に背景となる知識がしっかりと詰め込まれていて学びになるものもあります。中学生におススメするということで、大人の事情を考慮すると多くはおススメしにくいと思いますので、他のマンガは補足程度にさせて頂きます。

 

 もやしもん石川雅之 (著)〕では、マンガを通して、細菌についてや、発酵食品、お酒のような細菌がかかわる食事、食中毒、感染症等について、親近感を持ちつつ学ぶことができます。「もやしもん」と岩田健太郎先生のコラボによる感染症の本もあり、それがきっかけで知りました。医学部の無味乾燥しがちな細菌・微生物学の勉強のような際にあったのならば嬉しかったと感じるものです。一方で、様々なものの「医療化」が好ましいかはさておき、医療が生活や話題の中心になるのは高齢者が多い、お酒に興味を持つのは成人が多いと考えれば、中学生全般におすすめするほどでもないという判断から『インベスターZ』に譲りました。

 

 宇宙兄弟〔小山 宙哉 (著)〕では、兄が宇宙飛行士なって、兄弟ともに宇宙飛行士になるという夢を叶える過程から、夢を叶える凄さと大変さが描かれています。宇宙飛行士という夢の設定も中学生には夢があって良いと思います。さすがに42巻もあり、コンプリートが容易ではないことや情報の密度よりもストーリー重視のため、『インベスターZ』に譲りました。しかし、宇宙兄弟のようなストーリーが魅力的なマンガは多くあると思います。

 

 今回はマンガを入門としてもおススメしましたが、入門として小説のストーリーをもとに学べる実用ノベル(実用小説)もあります。

 例えば、財務諸表(決算書)について学ぶ実用小説『会計天国 (PHP文庫) 』〔青木 寿幸 (著), 竹内 謙礼 (著) 〕というような、マンガに似たように興味を持ちながら学び始められる工夫のあるシリーズ本もあります。アマゾンでKindle unlimitedの対象です。具体例の想起から個人の趣味のテーマ・年代に偏りがちですが、参考になれば幸いです。




2. 13歳からの地政学: カイゾクとの地球儀航海

 ちょっとホットで時事的な話題から『13歳からの地政学: カイゾクとの地球儀航海』、田中 孝幸 (著) です。

 

【注目の地球儀航海!中学生必読の冒険物語!】

 

13歳からの地政学 ~カイゾクとの地球儀航海~

 

ウクライナ戦争から台湾有事まで、今話題の国際情勢が分かる!ホットなトピック満載の冒険が君を待つ!

 

▼ 中学生たちと一緒に楽しく学べる!カイゾクとの航海が始まる!

13歳からの冒険が、地政学の秘密を明かす!難しい話も、会話形式ならスイスイ理解できる!勉強嫌いの杏達がどんどん変わる姿に感動!

 

▼ ドキドキの疑問が解ける!王様やアフリカの謎が明らかに!

タイトルに秘められた深い意味が続々登場!王様の必要性やアフリカの貧困の理由など、興味津々の疑問にスポットを当てる!

 

▼ チョコレートからGDPまで!お金の仕組みが面白い!

意外な取っ掛かりから始まる、お金にまつわるお話!興味津々の中学生たちと一緒にGDPや経済の仕組みを理解しよう!

 

▼ 未来に役立つ地理的な視点が身につく!

国際情勢の影響を地理的に理解しよう!防衛や社会リスクについても知識を深め、未来を見据えた視野を広げるチャンス!

 

さあ、13歳からの地政学の航海へ!中学生たちが夢中になる冒険が、君を待っている!今すぐ手に取って、知識と冒険の世界に飛び込もう!中学生必見の一冊!

 

 ウクライナ戦争で、日本の防衛や台湾有事も話題に挙がりました。日本で言えば、台湾有事のように、政治的、軍事的、社会的なリスクが地理的な位置関係によって左右されることがあります。そのような視点を学ぶきっかけとなる本です。今の世界情勢だけでなく、今後も役立つでしょう。

 タイトルにも13歳からとあるように、カイゾクとの会話形式で中学生で勉強嫌いの杏達たちと一緒に学んでいくような内容です。「なぜ王様は必要とされるのか」、「なぜアフリカにお金がないのか」というような疑問をもとにしたタイトルや、チョコレートの話からGDP国内総生産)の話へ至るような取っ掛かりも工夫されていると感じます。会話から興味をもってもらいやすいと思います。

 

 

【補足】読んだ後に・その先に

 『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』は、会話形式ストーリーから具体的な話をしていて興味の持ちやすいと考えています。特に中学生向けということもあっておススメしています。一方で、地政学をはじめとする学問のフレームワーク(枠組み)という視点から俯瞰的・抽象的に見てみたいと思った場合には、枠組みの紹介が不足していると感じる面もあります。

 

 そこで、さらに地政学に興味を持った人や、すでに地政学に興味がある人向けの本の紹介になります。地政学に興味持った人、すでに興味がある人、さらには高校生・大学生以上であれば、地政学枠組み・用語を交えて学ぶことがおススメです。中国やロシアといったランドパワー(land power)、米国といったシーパワー(sea power)のような概念の整理と俯瞰・抽象化してみる視点を併せ持ってみてはいかがでしょうか。ウクライナ戦争もそのような視点でみると、ランドパワーとシーパワーの間での出来事であり、ハートランドheartland)の辺縁であるリムランドでの出来事とも捉えられるでしょう(興味を持てば、概念・用語について調べてみるだけでも理解が深まります)。台湾も共通の枠組みでとらえることができます。

 お手軽な1冊目の入門本としては、『ビジネス教養 地政学 (サクッとわかるビジネス教養)』奥山真司(監修)おススメです。最初にカンタンな概論(概念の整理)のような章があってから、各論(それぞれの話題)に進みます。もっと興味があれば、地政学のもっと詳しい入門書から、さらには学問書のようなものまで紐解いてゆけばよいと思います。地理的条件と国際政治に焦点を当てた地政学、地理的条件と経済に基づく政治的側面に焦点を当てた地経学のような違いはありますが、あまり区別なく地政学とタイトルで使われている場合もあります。自身の興味や難易度と合うものがあるか、広くチェックしてみてください。

 

 

+α;この地政学の本だけでなく、身近な問題に対する視点を提供してくれるような本に興味があれば、そのキーワードとともに探してみると多数見つかるでしょう。例えば、対話型AIのChatGPTに興味があれば、そのキーワードをもとに検索してキーワードからネット記事、さらにキーワードを定めて本などに繋がるでしょう。



 

3. アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

 夢のSF小説から『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、フィリップ・K・ディック (著) です。

 

【未来の冒険が始まる!中学生必読のSF名作!】

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? ~AIの世界への挑戦~

 

▼ ChatGPTブームにピッタリ!魅惑のSFストーリー!

AIとの壮大な冒険が君を待つ!人間の格好をしたアンドロイドAIロボットを捕まえて懸賞金ゲットのスリル満点の物語!

 

▼ 50年前に書かれたSFの名作!現代でも通用するストーリー!

驚きの事実!この物語はなんと50年近く前に書かれたもの!大ヒットした映画『ブレードランナー』の原作!AIの時代でも色褪せないSFの魅力に夢中になろう!

 

▼ 未知の世界との出会い!想像力を広げるヒントが満載!

SFが持つ魅力とは?未来の世界を見せつつ、科学技術や情勢を反映した世界を体験しよう!将来の仕事や研究にも役立つ視点が詰まっているぞ!

 

▼ 中学生にも読みやすい!夢の世界への一歩!

文章は読みやすく、中学生でも楽しめる!SFの世界に飛び込んで、未来を感じよう!夢と希望に満ちた一冊!

 

さあ、未来の冒険が始まる!アンドロイドは電気羊の夢を見るか?中学生たちにおススメのSF名作!

 

 場面として、核戦争後の放射能に汚染された世界で人間が生身のペットを飼うことは貴重・高価であり、ロボットのペットを飼っていた。主人公のリックも電気羊を飼っていました。本物の動物を飼うために、火星からやってきたロボット人間アンドロイド8を捕まえることで懸賞金を得ようとする物語です。もう少し今のChatGPTブームに合わせて内容をアレンジしたら、ChatGPTのアプリをダウンロードしたアンドロイドAI人間を捕まえたら、懸賞金でしょうか。

 この物語が何年前に書かれたものだと思いますか? なんと50年程前に書かれた物語なのです。今のAIと騒がれている時代でも通用するようなストーリーです。そして、映画ブレードランナーの原作にもなるほどです。

 

 SF小説の入口として、古典から馴染みやすいものを選んでみました。中学生向けとしては長いかもしれませんが、文章は読みやすいと思います。無理せず、気に入れば読んでもらえればと思います。

 SF(サイエンス・フィクション)の魅力は知らない世界を見せてくれつつも、書かれた当時の科学技術や情勢等を反映した世界を見せてくれることです。決して実現不可能な夢の世界の話でもなく、未来にその物語に近いものが実現するかもしれないという希望が詰まっています。仕事にしても、研究にしても、将来のことを長い視点で想像し、考える時のヒントとなる視点があると思います。

 

+αSF小説+おすすめ」というように検索すると、様々な紹介があると思います。その中で各個人が興味を持つものを選んで、読みやすさや長さも考えつつ、作り込まれたものを読んでみるとよいと思います。



 

4. ちいさな幸せ

 読書感想文も書けそうな短編恋愛小説から、『ちいさな幸福 <All Small Things>』〔角田 光代 (著) 〕です。

 

【胸キュン恋愛短編集!中学生もきっと共感♪】

 

ちいさな幸福 <All Small Things> ~愛と幸せの短編物語~

 

▼ 心に残る恋の瞬間を描いた物語!胸キュン必至!

恋人と過ごした特別な時間が、心に深く残る物語。地味で淡々とした瞬間が一番心に残るほっこりストーリー!

 

▼ 現代のSNS文化から学ぶ幸せの本質!

インスタやTikTokの華やかな世界とは違い、自分にとっての幸せとは何かを考えるきっかけになる物語!他人との比較ではなく、自分自身の幸せを見つける力を育む!

 

▼ 平凡な瞬間こそが最高の幸せ!

普通の時間にこそ幸せを感じることができると気づかせてくれるストーリー。デートや旅行の理想とは異なる、ありふれた瞬間の幸せの価値を知ることができます。

 

▼ 読みやすさも魅力!短編で心に響く感動を!

1つの短編が10ページ程度で、全体で120ページ程度の読みやすい作品。中学生にもぴったりの分量で、心に残る感動が詰まっています!

 

恋の甘酸っぱさや幸せの尊さにキュンキュンしちゃおう!中学生におススメの恋愛短編集、君の心を温かく包み込む物語が待っている!

 

 恋人と過ごした一番心に残っている時間を描いた小説です。意外と、地味な、淡々とした時間が一番心に残っていたりとほっこりとする内容の小説です。これをおススメする理由は、インスタのようなSNSTikTokのようなショート動画による切り取られた場面を見ることが多い現在において、自分にとって幸せな時間とは何か考えたり、他人と比較して自慢できるようなものでなくでも幸せで良いと自然に思えるようにするストーリーの力です。旅行でも、計画通りの理想のようなデートでもない、なんてことない普通の時間が幸せだと気がつくことがあります。この小説の中にでてくる「10円玉を拾ったような幸せ」というのは、言い得て妙です。

 そして、1つの短編が10ページ程度、それらを紡ぎ合わせて120ページ程度という読みやすさも中学生におススメしやすい理由です。

 

 例えば、ミシュランガイドに掲載されているひとり3-4万円程度の予約困難店のディナーに月に何度も行くとか、飛行機乗って月に何度もどこかに出かけるとかいうような切り取ってインスタの絵になりそうなことよりも、家で時間に追われず、相手してくれない猫や邪魔をしてくる犬を相手しながら、本を読んでいたり、作戦会議をしていたり、運動していたり、ちょっとした探検していたりする方が幸せということもあります。でも、本当にそれでいいのかと感じる時の疑問を解決してくれるようなストーリーです。

 

 

 今回は、あまりにも警鐘を鳴らすような書籍をおススメすることは避けましたが、スマホ脳』のように、スマホ中毒やSNS中毒の危険性を訴える本もあります。実用書に近い面もあるので、本を楽しむというよりも「ちいさな幸せ」を享受するための対策を考えるうえで良いかもしれません。

 

 そして、個人的に良い小説」というのは、ストーリーの楽しさだけでなく、時代状況に対するメッセージ性を兼ね備えていて、単なる恋愛等の感情面のストーリーだけでなく、ファクトベースの部分も作り込まれているものだと考えています。本の分厚さやテーマへの親近感から中学生にはおススメしにくいのですが、このような視点でみると、先月の読書ログのような百田尚樹さんの著書も「良い小説」だと思います。

 

 

+α「良い小説」を見つけるのは、先ほどの検索に加えて、タイトルはもちろんのこと、本屋の平積みの本、本の帯や裏表紙のあらすじもヒントになります。文庫本であれば、ネタバレの可能性こそありますが、巻末にある「解説」も参考になるでしょう。もちろん、純粋に娯楽としても楽しむこともお忘れなく。

 『ちいさな幸せ<All Small Things>』に関して言えば、普段手に取らない本を取るために、本屋さんのこの棚から1冊買うというような遊び心で手に取った本です。長いこととテーマ的にまだお勧めしにくいですが、売れ筋で言うと『傲慢と善良』辻村深月 (著)〕という本もこのような機会に買いました。自分の興味を広げるための本選びとして、各通路の棚ごとに「ここから1冊買う」というような自分のクセ崩し方もいかがでしょうか。BOOKOFFのような古本屋の100円, 200円コーナーや、図書館ならやりやすいでしょう。


 

5. ChatGPTおススメ

 ChatGPTにも中学生へのおすすめの本を尋ねてみました。ChatGPTの回答は以下の通りでした。

もちろんです!中学生におすすめの本は、興味を引き、読みやすいものが多いです。以下にいくつかの選択肢を挙げてみますね。

 

冒険・ファンタジー:

ハリー・ポッターシリーズ』 by J.K.ローリング: 魔法学校の冒険を描いたシリーズで、友情や成長を感じられます。

ふしぎの国のアリス』 by ルイス・キャロル: 不思議な世界での冒険が織り交ぜられた物語です。

 

ミステリー・推理:

名探偵コナンシリーズ』 by 青山剛昌: 少年探偵として事件を解決する物語で、ロジカルな推理が楽しめます。

『探偵団シリーズ』 by 金城宗幸: 中学生探偵団の活躍を描いたシリーズです。
感動・人間ドラマ:

銀河鉄道の夜』 by 宮沢賢治: 美しい詩的な言葉で描かれた作品で、人生や友情について考えさせられます。

星の王子さま』 by アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ: 想像力に富んだ寓話で、人間関係や価値観について考えさせられます。
コメディ・ユーモア:

キャプテン翼』 by 高橋陽一: サッカーをテーマにしたスポーツ漫画で、友情や努力が描かれています。

コンビニ人間』 by 村田沙耶香: 現代社会の中での一人の女性の葛藤を描いた作品です。

 

自己成長・学び:

『ひとりぼっちの〇〇生活』シリーズ by 岩崎夏海: 様々なテーマで一人ぼっちの主人公が成長していくストーリーです。

『図解 お金の教科書』 by 日本FP協会: お金や経済の基本が図解でわかりやすく説明されています。

 

これらの本は、中学生の興味や関心に合ったものを選んで読んでみると良いでしょう。読書を楽しんで、新しい世界や考え方に触れる機会として活用してみてください。

 

 私のおススメと被ることなく、提示してくれました。これこそ、おススメの本その人の価値観や状況等を映したとも言えそうです。よって、独断と偏見だと感じるのです。ChatGPTによって相対化することで気がつかせてくれます。また、似たようにGoogle等で検索すれば、様々な本の紹介ページが見つかるでしょう。

 ここで気がついてほしいことがあります。本だけでなく、例えば、進路職業のような将来に関連することなど、何か調べてみたいことがあったら、身近な大人に尋ねてみるのはもちろんのこと、ネットChatGPTのようなチャットAIに尋ねてみるのもいいでしょう。身近な人の様々な個性価値観に触れることも、ネット検索やChatGPTのような広い感覚に触れることもヒントになるでしょう。私で言うと、医者をしていると医療のことはある程度は分かっても、総合商社の仕事のことはそれほど分からないわけです。身近な人に言われたことがよく分からない、この大人は偏っている等と感じたときにも、普段からも、色々なところで調べてみることをおススメします。(2023年8月10日追記)

 

 

 

【最後に】

 いかがだったでしょうか。私の個人的な偏見興味の偏りはありますが、興味を持った本とか、+αのように自分自身で調べてみようとか感じられるものが少しでもあれば幸いです。

 あとは、知的好奇心を満たすようにアレンジした興味深い話をしてくれる人におススメの本を直接聞いてみることです。すると、あなたの前提知識状況に合うそのテーマの本を教えてくれるでしょう。普段からお世話になっている先生はもちろんのこと、中学校・高校の土曜講座課外活動に行ったときに、興味深い話をしてくれる先生が教えてくたりしました。普段は触れなかった仏教の本はそこがスタートでした。

 本には、娯楽以外にも知識を得て活用することによるメリットもあるのですが、やはり伝わりにくいものであったり、リターンまでに時間がかかるものでモチベーションにつながりにくいというようなことはあると思います。本は無理やり読んで楽しいものではないので、周りの人として本を楽しそうに読んでる姿を見せる、本やその話題に触れる機会を提供するというようなことも地道にして習慣化いくしかないと思います。

 また良い本があれば、ぜひ皆様も教えてください。あと、友達と遊んだり、体を動かすことも忘れずに。

 

 本日もお読みくださいましてありがとうございました。



【読書ログ一覧】

mk-med.hatenablog.com

医学書Log: 症例検討から学ぶ 診断推論戦略|GIMカンファレンスLiveの書籍版!?

医学書Log(<書籍紹介)

『症例検討から学ぶ 診断推論戦略

  • JUGLER 代表編集者: 多胡雅毅,鋪野紀好,編者: 志水太郎,佐々木陽典,和足孝之,高橋宏端

GIMカンファレンスLive書籍版!?~

 

<目次>

 

 

 今回は診断推論(臨床推論)関連の書籍です。いつも、医学書ログを何にしようか悩むのですが、治療・薬関連は規約等で面倒なことになっても嫌なので内容が偏りがちなのはご了承ください。

 この本では、実際のカンファレンスのような対話形式で、解像度上げて思考過程を垣間見ることができます。

https://m.media-amazon.com/images/I/51FgFDjAh7L._SX349_BO1,204,203,200_.jpg

 

【こんな人におすすめ】

  • GIMカンファレンスが好き
  • 診断の思考過程に興味がある
  • 症例の中で解像度上げて学びたい

 

 GIMカンファレンス(症例検討カンファレンス)文字起こしして書籍にしたような内容です。対話形式で進みます。そのカンファレンスの過程で診断の思考を学んだり、疾患の診断に役立つ特徴や気づきを学ぶことができます。

 

 

1. 本書概要/特徴

 上記の「こんな人におすすめ」という部分の記載や編集の先生方のお名前だけで、ある程度内容が分かる、内容が想像がつく人は、そもそもこの領域の内容に興味があって、ある程度知っている人でしょう。そして既に書籍について知っている可能性も相対的に高くなります。

 そうではない人向けに本書の特徴を紹介したいと思います。まず、14症例診断学に関連するコラムが2つあります。そのうち、メインは症例を診断する過程のカンファレンスの部分になります。

 

<症例検討の主な流れ>

  1. 現病歴
  2. Review of System
  3. 既往歴、服薬歴、生活歴、家族歴
  4. 身体所見
  5. 検査結果(一般的なもの
  6. 追加検査
  7. 診断→経過

 

 この流れ自体は診断推論(臨床推論)を症例ベースで学ぶ他書でも似ているでしょう。Review of System(レビュー・オブ・システム,ROS)とは、様々な症候の有無を一覧にしたようなものです。検査結果も診断の手がかりになる部分だけの切り取りではなく、一般的な結果を全般的に見せてくれるのも、目の付け所からの練習になると思います。

 この書籍の特徴はこれより深いところにあります。現病歴等を与えられて、それだけで考えるわけではありません。さらに詳しく情報収集(問診等)をしていきます。そこが無味乾燥した教科書の記述とは異なり、「あの疾患のあの特徴はここで活きてくるのか」というようなことや、「こういう情報(症状・既往歴・身体所見など)が次への手がかりになるのか」というような視点で臨場感を持って学びやすくなります。

 

 他にも、Pivot and Clusterの使い方の参考にもなります。そういう意味では中級者ぐらいから向けでしょうか。さすがに、初歩的な腹痛の鑑別を網羅的に挙げるというようなところからではありません。現病歴を少し聞いて、そこからPivot(Most likely)と考えられるものを挙げて、鑑別疾患となるCluster(likely)を考えていくことになります。この書籍の中でも意識されています。

 Pivot and Clusterという診断手法(System 3)に関しては、この書籍の編集者でもある志水太郎先生の『診断戦略』という書籍があります。さらに、想起しやすいPivot(疾患)をもとに、具体的なPivot and Cluster〔具体例: くも膜下出血(Pivot)の鑑別疾患(Cluster)〕を挙げていく、『臨床推論の落とし穴 ミミッカーを探せ!』というような書籍もあります。その鑑別疾患ごとの特徴もまとめられています。 

 また、Pivotとなる鑑別疾患を挙げて行く際のヒントとして、Semantic Qualifier(SQ)を意識したりもします。症例報告検索の際にも役立つような概念で、上手に抽象化していきます。SQに関して、詳しくは過去の記事をご覧ください。



 

2. 具体的魅力

 ネタバレにならない程度に印象的であった具体的な魅力も挙げてみたいと思います。

 

症例1(29歳男性、主訴発熱、臀部に安静時痛があるが…)

 まずは、現病歴にも挙げられる臀部痛についても、左右差とか部位(例:正中寄り)のような情報を詳しく質問しています。これが、両側性であれば全身的な原因というように絞り込んでいくヒントになります。このような視点でどんどんと情報が研ぎ澄まされていきます。もちろん、不明熱(Fever of Unknown Origin: FUO)についても触れられています。

 やはり何といっても個人的に一番印象的であったのは、Review of System陽性項目に対する議論のところです。この症例のReview of Systemには陽性項目が多数あります。どの症状が特異的であるか、診断に役立つか、ノイズであるかというような思考過程も言語化されています。

 先日のChatGPTに関するブログ記事で国試117C67鑑別診断を考えてもらった際に、「既往歴のアトピー性皮膚炎は病気とは関係ない」と誤った解釈をしていました。この辺りの考察過程は専門性として参考になるのではないでしょうか。これゆえにChatGPTで試してみたいと考えました。後ほど、試してみたいと思います。

 

症例10 (「突然発症」と「慢性炎症」を結びつけるものは?)

 まずはこのタイトルからも惹かれるものがあります。オッカムの剃刀ヒッカムの格言の両者のせめぎ合い、使い分けのような部分を感じるからです。

 オッカムの剃刀とは、診断においては原因となる病気はひとつであるというような考え方です。ヒッカムの格言とは、診断において原因となる病気は複数あるというような考え方です。この症例では、突然発症の疾患と、慢性炎症がそれぞれ存在するのでしょうか。それとも1つの疾患で説明がつくのでしょうか。とてもワクワクして読みました。結末は書籍をご確認ください。

 他にも、突然発症ということですが、本当に突然発症であるかを確認をするための問診の仕方の参考となるような内容をはじめ、参考になることがあると思います。コラムにも、『あなたは「突然発症の病歴」をとれていますか』というようなものもあります。是非、目次で症例やコラムも確認できますのでチェックしてみてください。

 

 一部、タイトルで最終診断が分かってしまうようなネタバレ症例がありますが、それだけはちょっと思考停止(早期閉鎖しがち)でぼんやりと読んでしまいました。むしろ、そのタイトルこそ、パールなり、”Take Home Message”のようなお持ち帰りポイントで良かったのではないかと思います。



 

3. ChatGPT鑑別疾患列挙させてみた!

 先述のように、症例1Review of System(ROS)陽性項目が多数ありました。これをChatGPT(GPT-3.5、拡張機能なし、2023年5月)がどのような鑑別疾患を列挙してくるのかを興味本位で調べてみたいという実験です。候補列挙することはChatGPTが得意なことのひとつでもあると考えています。これ加えて、このような実験をする理由は先述の通りです。

 先日のブログ記事で国試117C67の鑑別診断をChatGPT考えてもらった際に、「既往歴のアトピー性皮膚炎は病気とは関係ない」と誤った解釈をしていました。症例としては感染性心内膜炎と細菌性動脈瘤、そしてその動脈瘤の破裂による脳出血という国試の臨床問題でした。アトピー性皮膚炎が関係がないとは言い切れないわけです(詳しくは下記をご覧ください)。

 この辺りの考察過程は専門性として参考になると考え、多数あるReview of Systemの陽性項目のうち、どれをChatGPTは重みづけしてくるのでしょうか。チェックしてみたいと思います。

 本症例のタイトルに当たる部分を加味して、「29歳男性で主訴発熱で、臀部に安静時痛があります。他にも、下記の症状等が陽性です。」として、それ以下にReview of Systemでの陽性項目を入力して、鑑別疾患を尋ねてみました。

 

鑑別疾患(その1)

 すると、これら3つを鑑別疾患に挙げてきました。多発性硬化症、SLE、強直性脊椎炎です。強直性脊椎炎の英語表記がカタカナ交じりになっていますね(笑) 本質的な部分ではないですが、正しくはAnkylosing spondylitisです。

 大きくズレているとも言い難いものの、最終診断とは合致しません。ネタバレを防ぐためにも、Review of Systemの陽性項目は大項目だけを挙げるにしても、全身症状、頭頚部、皮膚・爪、消化器系、内分泌系、筋・骨格系、膠原系、神経系、精神系多岐に渡って陽性です。


 細かいところでは、「この症状は以前からあった」というような判断に活かせる詳細も複数記載されています。その辺りの文言の削除によって検索結果が変わるかも試してみました。途中で鑑別疾患を5つ教えてと文言を変えてみたため、提示された鑑別疾患が5つになりました。また、鑑別疾患に対する説明がなくなってしまったので、「なぜか」も尋ねてみました。

鑑別疾患(その2)

 鑑別疾患は多少変わりました。これも最終診断がバレてしまって、読者の楽しみを半減らさないように答えれば、近からず、遠からずといった印象です。「なぜか」という文言により、ちゃんと説明してくれています。結構、参考になる面もあるのではないでしょうか。膠原病等の診断を普段から行っていない人にとっては助けにもなりそうですし、医学生の診断推論(臨床推論)を学び始めたときぐらいであれば、参考になりそうです。事前確率の問題や、この先の検査結果での人における思考の変化もあるので、ぼちぼちだと思います。

 Review of Systemの陽性項目がこの症例のように22個と多数ある場合の、特異的な症状等はどれか以前からの症状も含めた重みづけ/有意なものはどれか、というような視点までChatGPTでは説明してくれるのでしょうか。再度、尋ねてみました。

鑑別疾患(その3)

 やはり、先ほどと同じように各陽性所見から考えられることを述べるに留まっています。プロンプト(使用する状況等の設定)の制約でしょうか。それとも情報ソースの限界でしょうか。いずれにしても、数学的に最適な近似解を出すためのブラックボックスのような状況です。そういう意味でも、この書籍の中での、Review of Systemの陽性所見のうち、特異的なものや診断に役立ちそうなものを考えていく過程というのは学習として有意義なものだと感じます。

 あとは、ChatGPTは与えた情報を処理することが得意で、ChatGPT側から上手に質問して詳細情報を詰めていくことは、今のところは基本的には難しいと考えています。今回の簡単な現病歴から、さらに必要な現病歴等の詳細情報を集める(問診を取る)部分も、今のところはプロの技の見せどころでしょう。

 

<追記>

 JAMA Internal Medcineから、臨床推論におけるスタンフォード大学医学部1、2年生ChatGPTの比較が行われました。ChatGPT-4では、概ね医学生(メディカルスクール 1-2年生)を上回る成績のようです。初心者の学びにも使うことができるという示唆や人としての医師の在り方を考える示唆にもなるでしょう。

(出典)JAMA Intern Med. 2023 Jul 17;e232909. doi: 10.1001/jamainternmed.2023.2909.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 Kindleサンプルでも、症例1のReview of Systemの途中のところまで読むことができます。是非、Review of Systemの記述も読めるところまででも読んでみてください。

 

【補足】他の本との比較(近刊)

 他の本との比較です。先日、SDH診療実践を謳う書籍を読む機会がありました。健康の社会的決定要因(SDH)に関するテーマが包括的にファクトベースで丁寧に書かれています。手に取りやすい良い本でしょう。ただし、臨床に落とし込むという視点で読むと、具体的に落とし込むには、その落とし込むための部分の記載の解像度足らないというのか、キレイごと感を受けました。

***(以下、詳細)***

 例えば、貧困・生活困難のページを読みました。SDHを扱うためなのか、締めくくりの提案で読んだ内容が、「直ちに解決できないため、中腰で粘り強く患者の関わる…(中略)、「それでも診続ける」姿勢である」と書かれていました。そこでの私自身の心から勢いよく飛び出してきた感想は、「えっ、実践を謳っているんじゃないの?それで具体的にやれそうな対策は?」でした。ふわっと理想を言うのは易しそこからの実践難しといった感想でした。

 貧困の定義やデータを用いた現状の説明など、丁寧に書かれています。対策としてミクロレベルの説明も、その章の数行の例(糖尿病)に則って、その症例の糖尿病治療薬のお金のことについて触れられています。しかし、あくまで具体例はこの症例に留まっていたり患者にどう切り出すかというあたりも、解像度を上げた実践というよりは抽象的な説明留まっています。具体的には読者で考えてくれということなのかもしれません。そして、締めくくり提案まで、その色は拭えない印象を受けました。実践を謳うにしては、SDHに対して現場で介入できそうなことを具体的に考えるヒントとしては物足りなさを感じました。臨床をしながら普段の現場持続可能な形で実践者になるにはどうしたらよいのかのヒントを探していましたが、弱者の代弁者や理想的な持論を述べるアドボケートに留まりがちな印象です。対立や衝突を避け、ちょっときれいごと止まり感があります。身近な所で例えると、建前としてきれいごとを言うものの、活動や寄付・募金等をしていないような状況でしょうか。気持ちよくなるかもしれません。もちろん、そこまでの丁寧な説明まででも読む価値はあると思います。

 現場家庭医療や公衆衛生との乖離なのか分かりません。そして、医療社会学でも話題に挙がる健康至上主義のような、どこまで医師や医療が介入したり、価値観押し付けたりすべきことなのかも難しい問題です。健康や医療がその人の生活の中心とは限りません。若い人であれば、なおさらです。皆が育ちも、環境も、考え方も異なるということを忘れた表面的な思いやり」によって、多様性無視した一方的な価値観の押し付けにもしたくないと考えています。「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」というような考えもあります。医療機関というのはあくまでも様々な行政等との結節点として、「水飲み場を近くにする」ことぐらいの機会提供しやすくするような、何かできることがあるという程度からでしょうか。個人的な事情はもちろんのこと、SDHにも医療以外の公共的なサービスが必要な面が多数あります。

 何より、いくら理念しっかりしていて理想は素晴らしくても、実臨床落とし込むのが難しく苦労していると感じます。ゆえに、実臨床(現場)への落とし方こそがこ大切ではないのか、この本の監修やタイトルからは乖離しているのではないか、という疑問が生じました。特定の診療科の「専売特許」ではないですが、特に監修でプライマリ・ケアの名を用い、実践を謳ったタイトルをつけているので期待していました。しかし、臨床現場でちょっとそこから実践で使って見れそうなヒントが少なく、そこが残念でした。

 例えば、SDHへのアプローチの考え方で、「医療専門職だけで完結できるものではない。無理に自分たちでだけで対応すると、手痛い失敗をする可能性がある」や「条件が整っているなら、餅は餅屋に任せるべきだろう」というように、人々の社会的課題扱うところ任せた方が良いことが多いと、ちゃんと言及されています。そうであるにも関わらず、プライマリケア(総合診療・家庭医療)側が監修に入って、臨床で出しゃばる印象を誘うように実践を謳ってしまったのか、社会疫学の先生を軸とした本として実践を謳うことなく出せば、期待通り良い本だったと言えばよいのでしょうか。それとも、SDH診療という気持ちの良さそうな単語で夢見がちな人を釣り上げて、臨床でできそうなことという現実を突きつけるという良書でしょうか。

 SDH診療を意識することが必要な場面では、それなりの「覚悟」や、ふとした時の相手の言動等に対する陰性感情との戦いが必要な場合が多いはずです。理想だけであれば、なおさらマインドでもよいかもしれません。ブログ執筆時の思い付きなので有効かは分かりませんが、例えば、ホットコール的な電話番号やちょっとした説明やイラスト等の書かれた紙を診療明細書・領収書、処方箋等と一緒に渡すとか、自分自身の環境に適用しようと考えるヒントのようなものがあれば、実臨床に落としやすいと感じました。もちろん、公共セクターではなく、個人の診療所であればあるほど、かけられる時間費用有限であることも忘れてはならないでしょう。人を雇ったり、機器や物を買っているからには赤字では継続できません。

 

 その本と比較すると、今回のReview of Systemの陽性所見の取扱のような具体的な話に触れることは、思考過程を応用して使うという視点で有効だと思います。「特異的なものやノイズを意識しましょう」だけでは伝わらない思考過程の部分を書籍の会話形式のカンファレンスの中で解像度を上げて解説してくれています。




4. まとめ

 診断推論戦略良さ思考過程を見せてくれるところだと思います。例えば、今回取り上げたようなReview of Systemの陽性項目が多い場合の絞り込みの際の思考過程のようなものであったり、慢性炎症と突然発症を1つの疾患/複数の疾患と考えるのか、というようなところだと考えています。

 そして、ChatGPT捨てがたく、普段から診断していないような人や学生さんの補助ツールや想起のヒントとしても使えるようにも感じました。

 

 診断推論(臨床推論)興味がある方はこちらもよろしければ、ご覧ください。記事の途中で話で触れた『診断戦略』『臨床推論の落とし穴 ミミッカーを探せ!』をはじめ、自主学習用の教科書・テキスト等の紹介あります。

 

 ChatGPTについて興味を持った方はよろしければ、こちらもご覧ください。

 

 

 おかげさまで、名古屋に行ったことによるモヤモヤを発端にする先日の読書Log『夢を売る男』での掃き溜め以降、「便所の落書き的な医療への類推感想」に記載の通り、徐々にではありますが、「あの辺」と距離を置くことができました。すると、ストックの記事もいったんなくなりました。

 また、アウトプットとしても、問題演習の延長から公開を前提としない方法も多数あります。月に1記事ぐらいは維持したいと考えていますが、ブログの更新ペースを落として不定期で続けていこうと思います。

 

 本日もお読みくださいましてありがとうございました。

 

 

 今回、取り上げた書籍です。Amazonの商品説明やKindleのサンプルから目次(症例のタイトル)等もチェックすることができます。また、Kindleのサンプルで症例1Review of Systemの話の途中までも、とりあえず読むことができます。気になる方は、チェックしてみてください。

 

 

医学書ログ一覧】

Perplexity AI 英語 vs. 日本語|医学情報収集における日本語のデメリット

Perplexity AIにおける英語日本語使用比較

日本語での学情収集のデメリット【前回の補足】~



<目次>

 

 

 前回、Perplexity AIを用いて、成人における水腎症の原因尿路結石症に対する超音波検査診断特性(感度、特異度)について、英語で調べました。それを元に、従来からの調べ方と比べてみました。

 今回は、前回のPlerplexity AIの記事で英語で使うことにしようと判断した背景を紹介する内容になります。前回の記事を書く際にPerplexity AIで日本語でも調べてみて、英語の方が良いと判断した質問への回答結果になります。

 

【導入】日本語×Perplexity AI

Perplexity AI(こう見えて一応、日本語使用可能…

 このように私自身のPerplexity AIは、いつも英語のみのような表示になっています。しかし、日本語でも使用することはできます。すると、「前回の記事では、なぜPerplexity AIを英語で使用したの?」と感じる人もいらっしゃるかもしれません。

 前回、Perplexity AIを英語で使用したことには理由があります。せっかくなので、日本語で使用することをおススメしにくいと感じた部分を共有させていただければと思います。

 このような状況なので、書店やアマゾンでもChatGPTに関連する本や雑誌の特集は見かけるにもかかわらず、Perplexity AIをはじめとする他の自然言語処理に関する対話型AI(チャットAI)の話は見かけにくいのかもしれません。以下を読んでもらえれば、日本語限定であるならば、ChatGPTだけもてはやされる傾向にある理由が納得できるかもしれません。

 


1. 日本語×水腎症の原因(成人)

 それでは、実際に日本語でPerplexity AIを使っていきたいと思います。まずは、成人における水腎症の原因からチェックしていきます。

 

1-1. 日本語「All」×水腎症の原因(成人)

 日本語で成人における水腎症の原因を「All」設定で質問してみました。

水腎症の原因 Perplexity AI 日本語+All

 回答として提示してきた成人における水腎症の原因は、尿路結石、腎盂・尿管癌、膀胱癌、前立腺肥大症、尿管膀胱移行部の閉塞、後部尿道弁、…と続き、大きな違和感はありません。

 しかし、出典をチェックしてみて驚きました。

<出典一覧>

  1. https://mk-med.hatenablog.com/entry/2023/04/19/hydronephrosis_ddx
  2. https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d160303/

 1つ目の出典が私自身のブログ記事だったのです…。2つ目こそ、簡単な日本医事新報社のホームページなのですが、英語で利用したときと比べて、情報源の少なさ信憑性の問題というリスクを感じました。Google検索に比べてMicrosoftのBing検索では、検索結果として微妙に感じるホームページが多いような、検索エンジンの違いもあるかもしれません。



1-2. 日本語「Academic」×水腎症の原因(成人)

 同様に、成人における水腎症の原因を「Academic」設定で質問してみました。

水腎症の原因(成人) Perplexity AI 日本語+Academic

 なんと、返信英語になってしまいました。しかも、英語で質問した際には、5つの出典までつけてくれたのと比べると雲泥の差で、少し残念な回答です。利用できる結果がなかったので、一般的な回答をしてくれたということです。

 一般的な回答として、腎結石、腫瘍、前立腺肥大症、血塊、尿路感染症、手術等による組織損傷、先天的な異常を例として挙げています。この回答そのものには大きな問題がありません。しかし、出典もありません。

 出典ないとなれば、ChatGPTと比較した際の特に優位性もありません。前回の記事のように英語での質問であれば、一応出典が紹介されていていました。回答こそ、いずれの場合も英語であるのに、日本語で質問することのでデメリットでもあると感じました。もちろん、日本語でダメなら英語で聞くというような判断をする人もいると思いますが、日本語で回答してくれるときから、情報源が異なることも留意すべき点だと考えています。

 

 

 

2. 尿路結石症に対する超音波検査(US)

 それでは、次に尿路結石症に対する超音波検査(US)診断特性(感度、特異度)について日本語で質問してみたいと思います。

 

2-1. 日本語「All」×尿路結石症に対するUS

 まずは、「All」設定からチェックしてみます。

尿路結石症に対するUS Perplexity AI 日本語+All

 回答結果としてとても分かりやすい表記をしてくれていると感じました。具体的に感度と特異度を見ていくと、引っ掛かったものをとりあえずすべて持ってきたような感度と特異度の範囲です。特に特異度に至っては、31%~100%ということで何でもありというような表記です。

 先日の記事で紹介したようなメタ解析での結果やフォレストプロットを見たり、その条件をチェックしたりしないと、その中でどの程度の値が多いのか、どういう条件でどのような値なのか、というような妥当性も分かりません。出典をチェックしてみたいと思います。

<出典一覧>

  1. https://tsuneeet.parallel.jp/entry/2020-10-05-160607/
  2. https://minds.jcqhc.or.jp/n/cq/D0003063
  3. https://hokuto.app/erManual/CZnN484CSW5qP4EO7ASz
  4. https://www.jsum.or.jp/journals/27595

 1つ目の出典に関しては個人のブログであり、しかも具体的な学術的なものからの感度や特異度の引用かは明確ではありませんでした。「超音波検査セミナー」という動画が参考文献のようでした。私自身のブログも含め、ブログ在り方も考えないといけないですね。

 2つ目診療ガイドラインのClinical Questionをまとめたもので、具体的に、「腎、上部尿路、膀胱近傍の5mm以上の結石では、感度、特異度ともに95%以上」、「全部位では感度78%、特異度31%」となっています。

 3つ目まとめサイトのようなものです。あくまで箇条書きで「診断はまずエコー (50~70%で結石描出)」と記載があります。参考文献は5つほど挙げられているのですが、この文言が5つのうち、どの文献から引用されたのかは具体的に書かれていません

 4つ目は、日本超音波医学会の電子ジャーナルからです。尿路結石患者の長期的観察において、X線被曝がなく安全性の高い超音波検査の価値を再検討した内容でした。しかし、結果としては、超音波検査の目的は尿路結石による尿路評価(水腎の有無や水腎の程度など)が最も多く、結石の存在や位置の確認に用いられることは少なかったとしつつも、考察で超音波検査を積極的に活用すべきとしています。Perplexity AIの回答の最初の一文目のためだけに引用された程度の出典でした。

 いずれも日本語かつ、ホームページの形態で閲覧可能なものでした。やはり、検索可能範囲の情報日本語だと少なく信憑性いまひとつのものも紛れ込みやすいという印象は拭えませんでした。また、日本語にもかかわらず、RELATEDに英語紛れ込んでいます(笑)。

 

*****

 先ほどは、条件も超音波検査ということで、POCUS(point-of-care ultrasound)かRadiology Ultrasoundかも分からないような表現がされているホームページから引用されていました。さらに検索対象を絞り、超音波検査ではなく、POCUSにしてみます。

尿路結石症とPOCUS Perplexity AI 日本語+All

 先ほどの「超音波検査」のときと比較して、もっと酷いことになりました。やはり、日本語情報源少ないのでしょうか。

 出典も先ほどの「超音波検査」のときの出典の1つ目と3つ目のみの計2つです。しかもいずれの出典にもとりわけ、POCUSと書かれているわけではありません専門的な用語になればなるほど、「All」設定では弱いのかもしれません。

 

*****

 関連(RELATED)に「POCUS検査とCT検査の比較について」とあるのでそれも念のためにチェックしてみたいと思います。

POCUSとCTの比較 Perplexity AI 日本語+All

 POCUS検査とCT検査の比較ではあるのですが、感度、特異度に関する具体的な回答ではありませんでした。

<出典一覧>

  1. https://harumi-aoi.com/column_detail?actual_object_id=34
  2. https://www.premedi.co.jp/%E3%81%8A%E5%8C%BB%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3/h00482/

 いずれの出典もチェックしてみると、クリニックやお医者さんオンラインという分かりやすく平易な文章で一般(患者)向け情報となっています。先ほどの「超音波検査の感度、特異度」について質問したときよりも、一般(患者)向けの情報となっています。

 それでは、仕切り直して「Academic」設定で質問してみたいと思います。



2-2. 日本語「Academic」×尿路結石症に対するUS

 先ほどは「All」設定で専門的になるほど、参考にならない回答となりました。尿路結石症の診断に対する超音波検査の診断特性(感度、特異度)について、次は「Academic」設定で調べてみたいと思います。まずは、超音波検査と尋ねてみます。

尿路結石症とUS Perplexity AI 日本語+Academic

 水腎症の原因の時に続き、日本語での質問にも関わらず英語で回答してきました。個人的には日本語に期待していないのですが、これはどうしようもないですかね…。回答内容もチェックしていきます。

 出典はひとつのみです。従来からの検索とは異なる文献が上位に表示されることが多いでしょうか。それはさておき、「超音波検査」とだけ聞いておけば優秀な回答のようにもみえます。

<出典一覧>

  1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20427874/

 

*****

 超音波検査(POCUS)としても、基本的な回答は変わりませんでした。超音波検査(POCUS)のときの回答も提示します。

尿路結石症とPOCUS Perplexity AI 日本語+Academic

 

 出典はひとつのみで先ほどと同じです。内容としては上手にまとめられているようにみえます。超音波検査でも、POCUS(point-of-care ultrasound)か、Radiology Ultrasoundかについては、参考文献では特に述べられていないというような文言までしっかりと書かれています。とりわけ、「超音波検査」と質問したときと比較しなければ、一見すると、ぼちぼちの回答かもしれません。

 

 しかし、わざわざ「POCUS」というキーワードを入れて検索しているにも関わらず、POCUSかRadiology Ultrasoundの、どちらか分からない参考文献を持ってきた理由に疑問が生じずにはいられませんでした。

 それを差し引いても、以前の記事で調べた際のChatGPT(GPT-3.5)の回答では、POCUSかRadiology Ultrasoundの区別はできていなかったことを考えると、こちらの方が内容の精度(専門性)として優秀とも考えられるでしょう。

 

*****

 続いて、そこで関連(RELATED)に表示されていた質問内容をクリックしてみました。POCUSによる尿路結石症の診断において、CTスキャンと比較してどの程度有効かという質問です。

尿路結石症 POCUSとCTの比較 Perplexity AI 日本語+Academic

 質問内容は解像度上がっています。そして、回答の後半あたりにおける “A systematic review and meta-analysis of studies comparing POCUS to CT scan in the diagnosis of urolithiasis found that POCUS had a pooled sensitivity of 86% and a pooled specificity of 96% compared to CT scan.” に関しては、どこから引用されたもの分かりません。何となく数字は似ていますが、先ほどの2-1のときのように幻覚のようなものの可能性もあります。

 

 また、今回新たに提示された出典(上の2つ)は、尿路結石症の超音波検査に関係する論文ではありませんでした。出典デタラメです。

<出典一覧>

  1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20461447/
  2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30879147/
  3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20427874/

 しかし、出典から検証可能という点はやはり安心感があります。

 

 

3. まとめ

 ここまでの、日本語Perplexity AIに医学的なことを質問してきた際のことをまとめて見ようと思います。すでに英語で質問で同様の質問をした際のことは、前回のブログにしてあります。それを踏まえて、そこから感じたことになります。

Perplexity AI 日本語・英語比較(医学情報収集)

 やはり、日本語・英語を問わず、出典(参考文献)を紹介してくれる対話型AI(チャットAI)としての価値はあると考えています。出典チェックやった方がよいものとして、特に次のようなときに役立つと感じています。

  • 自分なりのちょっとした仮説の根拠となりそうな出典見つける
  • 初学者として全体像を掴む

 特に英語で利用した際に役立つと感じています。英語で質問したときには、それなりに役立つ部分を見つけやすかったのですが、日本語で質問したときに不十分な回答が目立つ結果になりました。一般(患者)向け情報としては出典もあるので、ChatGPT(GPT-3.5)よりも良い面もあるかもしれません。

 医師・医療者向けの情報として考えると、やはり日本語での情報の少なさ・アクセスのしにくさがあるのかもしれません。医学論文でインパクトファクターの大きなものが英語であるのはもちろんのこと、様々な国から発信されるものが自国語もしくは英語であることを踏まえると、日本語を使うことの限界や閉塞感のようなものを感じました。

 また、今回のように日本語で質問しても英語で回答を返信されるということは他でも報告されています。返信が英語であり、しかも英語で質問した時の方が詳しい回答であることを踏まえると、英語質問したほうが良いと判断しました。そして、前回のブログ記事も英語を軸としたものにしました。

 また、最近話題の自然言語処理による対話型AI(チャットAI)だけでなく、海外の主要医学雑誌のメール配信等も使った方が最新情報も便利にチェックできます。やはり、日本語デメリット英語メリットを感じます。

 そして、また月日の経過に伴って、ソフトフェア・アプリのアップデート等でも変化していくでしょう。6月に入ってからも気がつけば、Perplexity AIの設定から「News」が消えて、「Writing」追加されていました。個人的にはブログの在り方も、今後は体験談・記録に絞るなど、さらに考えさせられました。

 

 上手に用途合わせて従来からの情報収集(例: 検索2次文献)はもちろん必須として、対話型AIでもChatGPT/Perplexity AI等の使い分けをして利用してもらえればと思います。

 

 本日もお読みくださいましてありがとうございました。




【関連記事】

 英語で今回と同じテーマでPerplexity AIに質問した際のことをまとめた記事になります。

 

 ChatGPTで日本語・英語の両方で、今回と同じテーマで質問した際のことをまとめた記事になります。

 

 

mk-med.hatenablog.com

 成人における水腎症の原因、尿路結石症に対する超音波検査の診断特性(感度、特異度)などについて、対話型AIとの比較になる従来からの記事になります。

対話型AIで探る医学情報 ②Perplexity AI編|水腎症の原因/尿路結石症の記事との比較

対話型AIで探る学情 Perplexity AI

水腎症の原因尿路結石症の記事との比較

 

<目次>

 

 以前、日本語が使えるChatGPT(GPT-3.5, 拡張機能なし)を用いて、学情収集で使えそうなことをチェックしてきました。その後、少し横道に逸れてしまい申し訳ございませんでした。今回はその続編としてのPerplexity AI版となります。

 今回も、水腎症の原因尿路結石症に対する超音波検査感度・特異度の記事との比較を前提にしながら、チェックしていきたいと思います。4月下旬時点でのスクショによる記録が古くなったと感じたため、5月下旬の結果をもとにチェックしていきたいと思います。



【導入】Perplexity AI(英語)

 やはり、ChatGPTとの大きな違いは、日本語がデフォルトでは使えないことがあることでしょうか。しかし、英語を使うことで選択肢が広がったり、引用元(参考文献)が分かるというような大きなメリットも教授することができます。

(注)日本語での利用を諦めるきっかけとなった一例も番外編で後ほど共有致します。

Perplexity AI

 Perplexity AIでは質問をする際に、「All」「Academic」、「Wolfram | Alpha」「YouTube」、「Reddit」、「New」、「Wikipedia」と項目が選べます(2023年5月下旬時点)。それでは、今回の医学情報収集という主旨で使いそうな「All」「Academic」を具体的にチェックしていきたいと思います。

(注)「All」は2023年4月には「Internet」と表記されていたり、「WolformlAlpha」や「News」が追加となっています。

https://www.perplexity.ai/




1. 水腎症の原因(成人)

 今回は、参考文献も明示してくれる対話型AIであるPerplexity AIを使ってみたいと思います。それでは、成人における水腎症の原因から調べてみます。

 

1-1. 「All」×水腎症の原因(成人)

 それでは、成人における水腎症の原因をPerplexity AIに尋ねてみます。まずはAllで検索してみます。

水腎症の原因(Perplexity AI×All)

 いかがでしょうか。ChatGPTとも回答の仕方は似ていますね。上手に箇条書きを交えて回答しています。しかも、回答内容としてもChatGPTのときのような、あきらかな幻覚(hallcination)を疑う記述はありません

 水腎症の病態も記述されたのちに、箇条書きで主な原因を挙げています。箇条書きで、腎結石、先天性の原因、血塊、術後・外傷などの組織の損傷、腫瘍、前立腺肥大、妊娠といった状態が挙げられています。それ以外の多くはない原因にも触れられています。

 そして、本当か気になれば出典をみることができます。やはり、ここでのPerplexity AIのメリットは出典があることでしょう。そして、出典を見に行くと分かるのですが、英国のNHS、Mayo ClinicやCleveland Clinicのような信憑性もそれなりにありそうなホームページから引用されています。出典もキレイにまとめられたページなので、出典を見に行くために使ってもよいかもしれません。

 

<出典一覧>

  1. https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15417-hydronephrosis 

  2. https://www.nhs.uk/conditions/hydronephrosis/causes

  3.  https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hydronephrosis/cdc-20397563

  4.  https://www.kidney.org/atoz/content/hydronephrosis

  5.  https://www.webmd.com/a-to-z-guides/what-to-know-hydronephrosis

 

 

【補足】Google検索でも大丈夫!?

 Perplexity AIからの回答を見ていて、どうせ出典を見に行くだけなら、Google検索でも大丈夫なんじゃないかと思ったので、検索してみました。

 先ほどのPerplexity AIが出典にしていた5つのサイトすべてが、Google検索の検索のトップの方に表示されていました。

Googleでの検索結果①

Googleでの検索結果②

 広告ビジネス、検索村八分のような状況も考えれば、補完になると思います。しかし、おこまでPerplexity AIに質問しなくても、これらのサイトチェックするのも一貫性のある書かれ方をしているので良いと思います。



 

1-2A. 「Academic」×水腎症の原因(成人)

 続いて、Perplexityの目玉でもあるAcademic設定で質問してみたいと思います。これこそがChatGPTでは中々扱いにくかったプロンプト設定のような部分になります。

水腎症の原因(Perplexity×Academic)

 記述の仕方は先ほどの「All」の設定の時と似ています。出典学術的なものになった点が大きな変更点です。

 内容についてチェックしていくと、閉塞(obstruction)、先天的な原因(congenital anomalies)、悪性腫瘍(malignancy)と特に違和感はありません。しかし、ここで急に箇条書きの項目として、Schönlein-Henoch syndromeが登場します。ここで出典の記載があることが威力を発揮します。

 出典をチェックしました。その文献のPDF内hydronephrosisと検索をかけると1箇所のみ検索に引っ掛かります。その部分を読んでみると、症例報告のような形で1症例で水腎症が見られたという程度の記述になります。果たして、どこまで一般化できるのかは疑問です。しかも、1956年というのは驚きです。

 箇条書きの下の部分の記述として、血尿体重減少予後不良因子というような興味深いことまで書いてあります。

 この研究をチェックしてみると、2001年から2015年の間に珍しい原因によって水腎症になった100症例から予後不良因子を探すという研究です。以前、Google ScholarPubMedでベストマッチで検索したときには上位で見かけた記憶ありません。妙にオープンアクセスの論文が多く、名も知らない・見た目から大丈夫かと不安になるジャーナル、古い論文が紛れ込む印象です

 そして、超音波検査(sonography)についても言及されています。後ほど、尿路結石症の診断特性のところで超音波検査についても調べてみたいと思います。

 今回の出典は下記の通りです。こんな論文もあったのかという視点で楽しむこともできます。

<出典一覧>

  1. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7306661/
  2. https://www.semanticscholar.org/paper/Retrocaval-ureter%3A-an-unsual-cause-of-in-an-adult-Hassan-Mohamed/246519f0b1f06e6b2a6509e4b3aaea0ce3541f4a
  3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/13363484/
  4. https://www.semanticscholar.org/paper/Sonographic-Evaluation-of-Hydronephrosis-and-the-of-Kaleem-John/9a76ab1d7798e587f1011df7ba079e775f70b06b
  5. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12008810/

 

 論文のタイトルがこのようなものからなのか、オープンアクセス可能なものが多いなのか、なぜここから引用してきたのかもっと良いものはなかったのかというような疑問もありますが、面白い文献を見つけるきっかけ、自分なりの仮説をサポートしてくれる文献を見つけるというような使い方、論文のタイトルではなかなかチェックしてみようとは思えないものを克服するような使い方が効果的かもしれません。

 初学者全体像の把握という視点では、Perplexity AIに限定すれば、まずは「Academic」よりも「All」の方が良いかもしれません。もちろん、2次文献や教科書等も忘れてはならないと思います。

 

 

1-2B.「Academic」×表作成

 せっかく、対話型AI(チャットAI)に質問しているので、ChatGPTで良かったと感じたの作成をお願いしてみることにしました。

水腎症の原因 表作成(Perplexity AI×Academic)

 基本的な回答は先ほど(1-2A)と同じです。出典も順番こそ異なりますが、同じになります。個人的には、表になることで少し見やすくなったと感じます。Schönlein-Henoch syndromeが表で1行使用しているのは、違和感で「その他」のひとつにでもすれば良かったのではないかとさえ感じます。

 使用に際して、1カ月前とはまた異なる回答をしていることからも、フィードバックをはじめ、人によっても、日時によっても、変化していくことも考えられます。

 

 

【補足】Reviewとの比較(スライド)

 以前の記事で作成したスライドです。Review articleをもとに作成したスライドとPerplexity AIの回答の比較です。

Perplexity AIとReview articleからの自作スライド比較

 普段、1回ぽっきりのような使い方であれば、対話型AIによる回答にちょっと手直しするぐらいの使い方が、事務作業省けて良いと感じています。

 ゼロベースで人が作るのは非効率かもしれません。もしくは、よほど1対多数で使うようなもの等に限定して、人がゼロベースで作るものを使わないと、時間等が有限の場面では勿体ないとも感じます。もちろん、新たなデータ作成・発見のようなものはまだ人が必要だとは思います。

 画像生成AIまで駆使して、その画像のスライドに貼り付ければ、デザインとしては綺麗になるかもしれません。istockのようなスライドの素材以上にお金もかからずに使いやすいと考えています。

 

 

 

 

2. 尿路結石症に対する超音波検査の診断特性

 尿路結石症の診断に超音波検査がどの程度有用かということを以前の記事で調べていました。それになぞって調べてみたいと思います。

 

2-1.「All」×Perplexity AI

 まずは、「All」設定設定で調べてみます。

 ChatGPTよりも出典もあるので、安心して読むことができます。「All」なのですが、論文から引用されています。

All設定 超音波検査×尿路結石(Perplexity AI)

出典一覧

  1. https://bmcmedimaging.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2342-4-2
  2. https://bjui-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/bju.13605
  3. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6942918/
  4. https://www.dovepress.com/the-role-of-ultrasonography-in-detecting-urinary-tract-calculi-compare-peer-reviewed-fulltext-article-RRU

 

 PubMedGoogle Scholar等で調べた時の検索結果の表示のされ方とは異なる論文ラインナップです。最初の一文目の「尿路結石症に対する超音波検査の感度、特異度は研究によって様々である」という言葉に集約されていますが、参考になる研究をチェックすることができます。3つ目の論文のようにSystematic Reviewとメタ解析のものもあります。

 

 もう少し、条件を厳しくして質問してみます。以前のブログ記事のSystematic Reviewならびにメタ解析の論文の条件に近づけてみます。超音波検査をPOCUS(point-of-care ultrasound)に、尿路結石を腎結石に絞ってみました。

All設定 POCUS×腎結石 (Perplexity AI)

 なかなか健闘しているように見えます。先ほど、もしくはこれぐらいの内容になると、チェックしたいと思う研究が出てくるのではないでしょうか。

<出典一覧>

  1. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/acem.13388
  2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29427476/
  3. https://www.cureus.com/articles/145495-point-of-care-ultrasound-pocus-literature-primer-key-papers-on-renal-and-biliary-pocus?authors-tab=true#!/

 

 まず、突っ込みどころとしては出典1出典2同じ論文(DOI: 10.1111/acem.13388)でした(笑)。まあ、ネット上のページとして異なるので、別にカウントしたという事なんですかね…。

 しかも、出典1(出典2)は、以前ブログでも紹介したSystematic Reviewとメタ解析の研究です。論文内容をそれなりに覚えていたので、次の文章の部分にすぐに違和感を感じました。数字違うと感じたわけです。Perplexity AIでは、“the pooled results for sensitivity and specificity of point-of-care ultrasound for nephrolithiasis were 65.1% and 75.0%, respectively”と誤って表現されています。しかし、論文中で正しくは、“The pooled results for sensitivity and specificity were 70.2% (95% confidence interval [CI] = 67.1%-73.2%) and 75.4% (95% CI = 72.5%-78.2%), respectively”です。これも、意味というより文字列として処理した結果の幻覚(hallcination)のひとつでしょうか。

 チェックしていくと、このように誤った部分も次々と見つかってくるでしょう。そういう視点では、Google検索、PubMed検索等と同じく、文献探し使うといったところでしょうか。そして、まずはアブストラク自分自身で読んだり、その論文内で今回で言うとsensitivityをはじめとするキーワード検索チェックすることも必要だと思います。



2-2.「Academic」×Perplexity AI

 引き続き、尿路結石症に対する超音波検査の診断特性(感度・特異度)についてAcademicで尋ねてみました。

Academic×Perplexity AI

 まさか、特異的な情報は無いと言っています。そして、出典もRCTはおろか、観察研究でもありません。もちろん、このような結論となった研究があったのは記憶してるので、出典が他にあったんじゃないか(孫引きしていけばたどり着く)というようにも考えられますが、今回の回答は実用的ではありません

 出典もCommentaryのようなものです。これは、以前のブログの記事で用いたSystematic Reviewでも腎結石(nephrolithiasis)であったように、検索の条件不足なんでしょうか。尿路結石を腎結石に変えて、質問してみましたが、回答は先ほどと同じでした。

 さらに、POCUSではなく、超音波(ultrasonography)としてチェックしてみましたが、相変わらず同じ回答でした。対象となっている論文の問題でしょうか。分かりません。諦めることにします。

 

 まさかの「All」設定の方が掴みどころのある回答でした。




 

3. 番外編: ChatPDFを使ってみる

 最後の「Academic」設定にて、尿路結石症の超音波検査について調べた結果がまさかの結果でした。それを補完できるものを考えました。

 論文のPDFが確保できれば、大丈夫というものを紹介します。論文のPDFを対話型AI(チャットAI)に与えると、AIがそのPDFに基づいて返答してくれる便利なアプリを試してみたいと思います。

 

ChatPDF

https://www.chatpdf.com/

 日本語には対応していません。英語ならではの自然言語処理による対話型AIになります。そういう意味では、やはり英語大切ということでしょうか。

 

3-1. 尿路結石症に対する超音波検査

 それでは、先ほどのPerplexity AIでも誤った内容を生成していた文章のもとになった論文を用いてみようと思います(以前の尿路結石の記事でも紹介した論文です)。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 ChatPDFでは、POCUSの感度、特異度についてどのように回答してくれるのか楽しみです。

ChatPDF(尿路結石症に対するPOCUS)

 主な結果について尋ねてみました。1つ目の感度、特異度の回答間違っています。ChatPDFによる回答は、Radiology Ultrasoundにおける感度・特異度として、論文内でPOCUSとの対比用に他から引用されていた文章をもとに生成されたものです。

 ChatPDFでは誤って、“1) POCUS is a highly accurate diagnostic tool for nephrolithiasis in the emergency department, with a pooled sensitivity of 0.91 (95% CI, 0.85-0.95) and specificity of 0.96 (95% CI, 0.93-0.98)”と書かれています。正しくは、先述の通り、“The pooled results for sensitivity and specificity were 70.2% (95% confidence interval [CI] = 67.1%-73.2%) and 75.4% (95% CI = 72.5%-78.2%), respectively”になります。

 自然言語処理においては、誤った回答でも、文字列として整合性が取れていると判断されるのでしょう。

 

 

3-2. 他でも使ってみる

 粗探しをすれば、たくさんダメな点は見つかるでしょう。論文を読む気がしないときお供のような使い方もできます。次のNEJMの論文をもとに実験してみました。

5歳未満へのCOVID-19ワクチン

 メリットは、あくまで対話形式で聞けるぐらいでしょうか。わざわざPDFをChatPDFに移す手間を考えたら、NEJM上でアブストラク読めばいいような気もします。最近では、アブストラクトだけでなくRESEARCH SUMMARYのような視覚的なイメージを上手に使った見やすいものも増えています。

 気になる方は、とりあえず使ってみて下さい。



 

4. まとめ

 Perplexity AIは、一般的内容全体像の把握出典巡りのような視点や、自分なりのちょっとした仮説に合致するような論文探しのような視点で役立ちそうです。

 

 そして対話型AI(チャットAI)全体としては、ぼんやりと間違ってる情報も入っているけど、ゼロよりはいいかもという程度の情報と捉えればいいかもしれません。使用する言語によっても大きく異なりそうです。英語であれば、ChatGPTよりもPerplexity AIの方が出典があることから情報検索としてはまだ使える機会が多くなりそうです。

 日本こそ、母国語で医学を学ぶ環境に恵まれているので、逆説的に英語への壁はあるかもしれません。アジア等の非英語圏医学生・医師と会うと、彼らは英語で医学を学んできているので、医学を学び始めた時の大変さこそありますが、その後の伸びしろとしての羨ましさも感じます。英語であれば、対話型AIでもChatGPTやPerplexity AIだけでなく、他にもGlass AIをはじめ、多数あります。

 やはり、学情へのアクセス・アップデートという意味での英語の必要性は感じます。対話型AIは使わなくても、Evedence Alertsのようなメールサービス(新たな論文の一覧を各自の設定したレベル・頻度・内容に応じて送信)や、主要な医学誌のメールサービスの利用のような英語での便利サービスもあります。

 

 今回の対話型AIの一連の記事の環境では、ChatGPTでも無料版(ChatGPT 3.5)になります。有料版(ChatGPT 4)であればマシな可能性はあります。またプロンプトの制限なのかわかりませんが、医療専用にはなり切れていないように感じます。医療情報収集用として課金するなら、UpToDateDynaMedのような医療情報の2次情報媒体に課金したほうがいいと考えています。もちろん、先日の記事のような事務的な補助であれば、ChatGPT日本語も使えるので日本の現場では使える場面もあるでしょう。

 

 対話型AIに期待しすぎずに使えるところで使ってみて効率化する、補うというような視点でとりあえず、少しでも触れてみてはいかがでしょうか。使ってみてダメそうなら、ダメでも良いと思いますし、たまに使えそうな時があるというような判断でも良いと思います(笑)。

 

 まずは日本語で使えそうなChatGPTから使ってみたいという人は、よろしければこちらもご覧ください。

mk-med.hatenablog.com



 

【関連記事】

 対話型AIとの比較用の元となったブログ記事はこちらになります。

mk-med.hatenablog.com

読書Log:『夢を売る男』百田尚樹 (著)|便所の落書きのような医療への類推・感想+関連3冊

読書ログ(<書籍紹介

夢を売る男百田尚樹(著)

~便所の落書きのような医療への類推感想+関連3冊

 

<目次>

 

 今回の読書ログは、今月名古屋に行ってきたことを発端にするものです。後述しますが、そこでの自分自身のモヤモヤするような感情を自覚しました。私自身を落ち着かせるために、やっぱり改めて読んでよかったという本です。

 もはや「医療への便所の落書き的類推」は、モヤモヤを言語化した掃き溜めのようなものです。それでも読んでみたいという人にのみ読んでいただければという勢いで書いてみることにしました。そうではない人は、「医療への便所の落書き的類推」以外をお読みください。

 

https://m.media-amazon.com/images/I/41+1ISRHT3L.jpg

 

【こんな人おすすめ】

  • 早く目に見える成果ようなものが欲しい人
  • 見せてもらいたいと思う人

 

 この小説を読んで、どう感じるかも自由です。手っ取り早く目に見える成果ようなものが欲しい、夢を見たいという人は、ぜひ読んでみて、それでも夢を見たいのであれば、突き進んでください。また、長いスパン夢を叶えたい人は「その他の本」で紹介している『海賊と呼ばれた男』、地域活性のような夢に興味がある方は『限界集落株式会社』についてもご覧ください。

 

 

1. 本書特徴

 自費出版をはじめ、お金を払ってでも小説やエッセイを出版したいというと、それを上手に扱うことでお客にして夢を売る編集部長のお話です。もちろん、過去に流行った小説家の懐事情や小説誌をはじめとする、今は売れていなくても別の仕事に就かない小説家の出版社への「コジキ」話というような話をはじめ、出版業界を興味深く描写しています。

 あらすじだけを聞くと、出版業界や作家に興味のない人は興味を持たないかもしれません。しかし、この状況が様々な所に類推できるということをまじまじと感じます。

 

  • お金を払ってでも小説を出版したいという人のコンプレックスや、自尊心優越感
  • そのような人に夢を売ることで成り立つビジネス

 

 お金を払ってでも小説やエッセイを出版しようとする人は意外と近くにいそうな人物です。スティーブ・ジョブズになりたいと言っているものの行動等が伴っていない若者、教育熱心ではないママ友と揉めながらも幼稚園レベルでちょっとだけ成功した教育ママなどが登場します。自費出版で詐欺までする会社も登場しますが、それでも夢を(見ることを)買いたい人がいるというのも事実です。しかも、10-20年のような長期間で能力スキルを学んで進んでいくのとは異なり、書籍化という形ですぐ目に見える結果のようなものを欲しがっています。

 自分の自己主張権威を付けたように見せかけるために、お金を払ってまで書籍化します。それにより、コンプレックスに蓋をして、自尊心優越感を満たしており、暴走する承認欲求のようなものを感じます。しかも、優秀な作品に送られる新人賞(無料で出版社が出版)のようなものに落選しても、それでもお金を払って書籍にしたい人がいるのです。出版社の不況も相まって、ちょうどよいビジネスとなっています。

 これを読むと、こじらせてまで何かを自己主張して承認してもらいたいと夢見るような人になると、夢を見るにはお金や代償が必要で、それを食い物にする人が寄ってくるということを感じます。一部のミスコンや芸能を志す人相手のところでは、実質がスクールビジネスであって、コンプレックスや承認欲求を埋めることを餌にされたりするようなものもあります。もちろん、営利企業ですのである程度の運営会社の利益は必要でしょうが…。他にも、テレビの天才クイズ番組ではないですが、似たようなものに楽しみを超えた何かを求めるのにも似ているような気がします。

 文章として読みやすく、お金を払ってでも出版したいと言っている人の状況がまじまじと想像できたり、両者の視点がしっかりと書かれているのもこの小説の良さでしょう。小説を書籍化したい人の気持ちだけでなく、編集部長側の視点も良さを引き立てていますし、共感できます。



 

2. 内容類推

 登場人物は、小説やエッセイを書籍化したいと考えている登場人物です。この書籍の発売は2013年(文庫本になる前)ですが、出版当時から10年後の現在当てはめてみれば、SNS自分の名前を売りたいと思っている一部の人でしょうか。中にはマーケティングにつなたい人もいるかもしれません。意識が高く自然と成果で目立つ人というよりも、意識が高いで現実に蓋をしてアピールを頑張っている人でしょうか。

 内集団バイアスの中での格付けのようなものを過剰に気にしていたり、自尊心過剰もしくは優越感に浸りたい人と言うこともできそうです。承認欲求はゼロにはできませんし、適度であれば上達にも役立ちます。どうしてもお金を払ってでも書籍化したいという人のように、自尊心や卓越感を求め、承認欲求暴走しているという状態です。すぐに達成したかのように見える「成果」を欲しすぎているのかもしれません。

 夢を見るにはお金が必要というのは、インスタ(Instagramで実際の稼ぎ等に見合わずインスタ映えを狙ってブランド品を買ったり、高級レストラン・高級ホテル等に行ったりするのと似ているかもしれません。表出している部分をマネしても、表出している部分を生み出しているコアが大きく異なるとでもいえばよいのでしょうか。ショート動画でも似たように視聴数を伸ばすために過剰にお金や労力を割いて頑張っているものもあります。

 医療でいえば、ハゲタカジャーナルへの投稿、存在意義の分からない学会・研究会の設立、限定的で小さな部門(例:学生の少ない学会で学生部門で努力賞のようにくれるもの)での表彰などへの執拗などでしょうか。一見するとすごいですが、「何、その学会?会員数何人?」というような所での肩書きや表彰もあったりします。学生・若手のうちこそ、内部事情を知らずに踊らされていたり、期待値だけで表彰してもらえることも多いですが、10-20年先まで継続した結果や継続年数関係なく驚愕するものとは異なることが多いと感じます。

 他にも、お金というのを夢見て、一部の不動産勧誘にまんまと乗せられて収益性のないワンルームマンションを買ったり、これをするだけで儲かるというような情報商材を買ったりするのに似ているかもしれません。大きな資本知識スキル時間というような優位性なく、簡単に誰でも稼げると考えているのでしょうか。そして、本当に儲かるものを赤の他人に惜しみなく教えるでしょうか。また夢が叶うことを夢見て、一部の実態や妥当性の伴わない耳障りの良いオンラインサロン自己啓発集団に入ったりすることも似ている側面があるでしょう。学生のうちぐらいはそれで失敗して糧にしていくという視点も分かりますが、地道なステップ飛ばして目に見える結果のようなものにあこがれすぎなのかもしれません。

 このように現在にも類推してみると、「夢」を見て、過剰に優越感に浸ったり、承認欲求を満たしたいという現代人のいびつな欲望を抉り出す作品です。



【医療への便所の落書き的類推】

 『夢を見る男』をある程度身近なところで類推してみたいと思います。話に興味があり、気分を害さない方だけお付き合いいただければ幸いです。

 医学・医療の領域において夢を見る側で類推すると、SNSやブログの次は(一般的な)論文の投稿ではなく、ハゲタカジャーナルへの投稿とも言えそうです。先日、名古屋に行ったことに結びつけると、SNSやブログの次は学会でやることかは疑問でも学会へ…。逆に夢を売る側であれば、問答無用ですが、治療見込みのなくなってしまったガン患者さん等、藁にもすがる患者さんの状況に付け込んで夢を売る医療のフリをしたエモーショナルなものでしょうか。

 今回の名古屋(私は豊田には行っていません)の話で言えば、学会であれば本来は褒められるべきことなんですが、「これは学会でやることか」というような意見を拝見したり、「総合診療、家庭医療プログラムの専攻医に意識高いの集団が…」(意識が高いのではなく、キラキラ意識高い系)というような意見を拝見したりするように、私自身もモヤモヤを感じずにはいられなかったのです。

 科学的根拠を深掘りし、予防医学診療との接点を探るようなものであれば、学会でも分かります。座禅体験のようなものも新世代民間医療起業展示会のようなものや同好会のような企画であれば、別に気になりませんが、学術集会・学術大会なのです。例えば、最近のブームで言えば、サウナが健康に良いと言われるからと学会でサウナ体験とか、アートが大切と言われるから学会で画家体験とか、違いますよね(今回の流れなら、やりかねないですが…)。

 医師から権利移譲のようなものとセットにしてプライマリ・ヘルス・ケアPHCというような名前にすれば、ある程度は大丈夫なようにも感じます。もちろん、社会学の概念で言うところの「医療化」のような医療の行き過ぎに疑問を持つこともあります。しかし、そのような次元ではなく、一部において、まちづくり/寄り添い/思いやり/自己啓発/芸術等は、ガイドライン等の臨床アップデートや成熟させるべくプログラムからの現実逃避自分探しのように感じます。純粋な遊び心とも違うもののフェスのように気分を盛り上げて群れつつ、医療に心地よくお膳立てして外に見える形で発信して承認欲求自己顕示欲を満たしているのかもしれないと感じるような部分があったからです。内的評価ではなく、見栄やすい外的評価に目標等を依存しすぎているのでしょうか。

 ごく一部の本当にすごい人のような神様に、すぐになりたいというようなシンデレラストーリーのようなからかもしれません。宗教でもないので、一部の神様とそこに妄信する上記のような人を集めるプログラム以上に、多くの人にとっては一定の質を担保した身近で合理的な研修システムとなることが個人的には大切であると考えています。そして、伸びしろ側として、すごい先生のところがあってもいいでしょう。

 医学アートとサイエンスという人もいますが、サイエンスの部分がしっかりしているからこそ、アートの意味があると考えています。三国志「騒ぐ+無能」という組合せがよろしくないのに類推して考えると、現実逃避+お膳立てという組合せのダブルパンチの組み合わせが相乗的に良くないと感じます。単なる自腹の仲良しクラブ同窓会懇親会ならそれでもいいかもしれないですが、学術集会というからには…ということです。このようなことが個人的なモヤモヤの原因です。

 「こういう医療者になりたい」という想いもあるかもしれません。もちろん、そういう個人的な考えを排した診察はできません。しかし、一側面からの単なる善には、危険も潜んでいる可能性があると考えています。「地獄への道は善意で舗装されていた」ということわざを思い出します。保険診療でやっていく以上、全体の中での一定の合理性平均的な話の中でやっていく必要性が生じる部分もあるでしょう。もちろん、個としてその人にどう向き合うかはありますが、医療(特に公共性の高い保険診療)の中では、学会のエビデンスガイドラインのような話を土台とした後に来るものでしょう。

 働き方改革とともに、医師1本以外の生き方も必要となってくる部分もあります。医療以外も別に好きにやればいいと思います。診療科固有の問題として、地域に入ることが多いゆえに医師という職業とその他が相対的に分離しにくい面があるのかもしれません。もちろん、誰しも職業も含めた生き様等に悩むことがあり、職業も重複する部分があります。しかし、その悩みを医療に持ち込み、自分自身の満たされないものを埋めることによって対価を得ているわけではなく、あくまでプロフェッショナルとして働き、医療行為(機能)への対価を得ているのです。このような混同共依存には気をつけたいものです。もちろん、稼ぎたければ、上手にそういう機能を提供すればいいでしょう。

 医療以外夢ややりたいことがあるなら、それはそれでその方向で活動したり、成果を出せばいいわけです。しかし、なぜ学会に…とか、医師として特に何かを活かしているわけでもないのに医師×〇〇と〇〇の方で医師を名乗ったり、医療と結びつけてアピールしてくるのかと疑問に感じるわけです。学会であれば、優先事項として最先端のアカデミックなことをやる場所です。それが無理でも、その学術的・臨床的なことのアップデートの場所でしょう。コアコンピタンスのようなとなる価値がどこにあるのでしょうか。BPSモデルのように心理・社会的な部分抜きで患者さんは存在しませんし、個人ごとのdisease⇆illnessの違いが存在するでしょう。しかし、医師としての強み生物学的な部分に多くあると考えています。他科でも人を診ているので"専売"でもありませんが、「人を診る」ことが専門としてもバランスが大切さであると考えています。臓器別でも必要な技術(BPSモデル、PCCM、…)をあたかも専売特許のように考え、独善的にも「皆から慕われる理想の医者像は家庭医のみ」というでも見ているのでしょうか。また、患者背景を知り、慮ることは大切ですが、その人のすべてを知ることはできないことも忘れてはならないでしょう。仕事や家庭の状況で生活が乱れて服薬状況(アドヒアランス)が悪くなるというような理解はできても、親族が持つ恨みのようなマイナスの感情からプラスの感情まで全部を理解できるわけでもないでしょうし、あまり「患者さんの背景まで理解している」と出しゃばらないべきだと感じています。書店で見かける各著者の考える顧客を満足させるための営業術接客術の延長ようなものなのでしょうか。

 また、ポリファーマシーは医療の観点ですが、老老世帯までいくと、医療介入後のアウトカムとして老老世帯でも帰れるように、通院できるように、というような配慮が入ってきますが、老老世帯のようなものまで生活や福祉ではなく医療(医師)としてどこまで扱うか、重要視するかは考えたほうが良いと思います。

 

 ちなみに、患者が医師(physician)に求めるものは最上位として専門的知識(50%)であるのに対して、共感(4%)や親しみやすさ(3%)は最下位の方という報告もあります(doi: 10.1186/1472-6963-4-26)。共感や親しみやすさもあるに越したことはないと思いますが、優先順位があるのではないでしょうか。

 自然科学の皮を被った人文学的アローチを中に紛れ込ませることで軸となる価値を置いてきぼりにして何でもしやすいのかもしれませんが、人文学的な側面との境界をある程度意識しつつ、医師として根拠となるエビデンスづくりや自然科学がまずは大切だと考えています。医師としての軸となるものでなければ多職種連携、医療以外の自然や宗教などであれば、それらを中心として、医療は橋渡しに留めるべきでしょう。

 健康の社会的決定要因(SDH)へのアプローチでさえ、無理に医療職だけで対応すると手痛い失敗をする、条件が整っていれば、人の社会的課題を扱う人や組織に任せた方が良いことが多いと近藤尚己先生の著作でも言われています。それでも医師がその種の専門職に連携せずに、色々と医師が社会的なことまで身体的・精神的リソースを使って尽くすというような「教義」のみであるとすれば、実は根本的な部分に多様性はないのでしょうか。日本の診療報酬が今のままであれば分かりませんが、軸となる価値見失うと、市場の原理の末にアメリカのようにFamily Medicineの給料低く成績下位が多い傾向の集団というような類似するような状況になってしまうのでしょうか。

 医師が遊びはもちろんのこと、医療以外も含めて街に出ていくことは賛成です。しかし、不要に医者というのでなくて、としてでもいいはずです。そして中途半端に医療に結び付けて真面目ぶる必要もなく、医療・医療に関わる人や学会とは別に、本気で遊ぶところは遊べばよいし、遊び心も生かせばよいと思います。例えば、ふとカウンターのお店に入れば、個人商店のようなところに入れば、お店の人やお隣のお客さんと話すことがあるでしょう。なんでも医療と結びつけなくてもコミュニケーションできます。むじろ、医療お膳立てしないとコミュニケーションできないことを隠すような、どこでも医療の延長で縛るコミュニケーションの正当化こそ、残念に感じます。

 さらに、不用意に医師や医療と結びつけることで、医師という権威を使って人を貶めたというような事態にならないかさえ心配です。ステマ広告のように企業ブースが企業ブースと分かりにくいのもあるかもしれませんが、診療科の独自性アピールのようなものという考えであれば、違和感を感じずにはいられませんでした。 学会の演題の論文化はどうでしょうか。世界的には演題のうち論文化されるものは37.3%という報告もあります(doi: 10.1002/14651858)。一方、日本のプライマリ・ケアの学会の演題の論文化率は3.8%という報告があります(doi: 10.1136/bmjopen-2018-021585)。世界と言っても母国語が英語であるかの有無、学会のアカデミックさ等、様々な条件の違いもあるでしょう。また内容全般の違いもあるでしょう。それにしても、論文化率10分の1は何でしょうか。若者の発表の練習場所等になるかもしれませんが、乱立した学会や地方会等で質の問題(例: 新たに発表する価値のない焼き増し)が話になることがあります。とりあえず学会で気持ちよくなれればよいのでしょうか。原因には、学会の内容、目的、質、人の集団的特徴、指導医・教育体制、専門性、専門外、アカデミックさ等、何があるんでしょうか。

 このような状況が、意識高いのような他から高く認められる物事はないけれども、まるで他から認められているかのようにアピールしたい状況だと見えて、モヤモヤとしたものを感じてしまいます。個人的には自費出版したい人と重なって見えてきてしまうのです。そもそも、このような状況に至るまでのところ(学生向け家庭医療セミナーや勧誘、医療というより自己啓発自分探しような企画、SDH診療の理想と現実の乖離専門医制度や研修システム等)の問題も関係しているかもしれません。

 そして、出版社の乱立と赤字部門のせいで、稼ぎ頭の自費出版をやめられない状況と、他の類似学会(すべてが存在する意義は?)や多数のセミナーと似たようなメンバーの、同じような企画(セミナー等を含む)の寄せ集めな感じや、地方の大きな会場が重なって見えてしまいました。合理的説明難しかった事柄が、コロナでやっとのことで簡素化(ネット化)できたにもかかわらず、「直接つながる」ということで大きく過去のように戻し、どなたでもブース等をどうぞとまでいうのはさすがに妄想ですかね…。イノベーションのジレンマのようなものも感じます。根底は従来のものであっても、人の目を引かせるような見せ方は今風で上手なので、例えるなら、令和の高性能FAXみたいな感じでしょうか。

 もちろん、運営側のメンバー、ターゲット焦点見せ方によって印象は異なってくるでしょう。内容としても宗教マインドフルネスコーチング、街づくり芸術等とプライマリケア・医療比重を含む)で大きく変わってくるでしょう。来年は全く違う印象かもしれません。

 

 類推と言いつつも、便所の落書きのような類推と感想です。どこの学会かということは言うつもりはありません。

 モヤモヤするのは、期待して近づいた身としての怒り悲しみのようなものが混ざったような結果でしょう。個人的に肝心な部分は、名古屋に行ったことでモヤモヤが増したこと、そしてこういうのとある程度距離を置いておいた方がモヤモヤ少ないということです。Facebookでもボスとボスに同調する人の露骨なヨイショを見るのが裸の王様集団を見ているみたいで嫌だからFacebookから離れている若い人や、逆にTwitterで若い人の批判的意見を見たくなくてミュートにしている年配の偉い人もいると聞きます。嫌なもの見たくないのは、お互い様というところでしょうか。もちろん、分断まで行くほどまったく目に入れないのも、お互いに問題だとも感じていて、適度な距離というのでしょうか。

 どちらも価値観的な側面もあります。患者さんに対してでも、医師同士であっても、薬の予後や孤独のリスクというような、事実啓発や相手の求めに応じることは良いとは思います。しかし、自分自身の価値観守りすぎ価値観押し付け、公共性等の必要な部分での明らかな偏り・優先順位の無視といったような部分はいかがなものかと考えています。

 そういう人たちを変えようとするのはなおさら大変であることも予想されますし、そして他人を変えようとしてモヤモヤして支障があるぐらいであれば、自分を変えるほうが易し、と感じます。学会としては10年以上、専門医が新たにできて5年ということで、システムをはじめとする成熟度今後の方向性判断する節目にもなると考えています。そういう意味でも、状況を類推できる小説を読むことで三者的な視点となり、ある程度の距離保つことができると思って、『夢を売る男』を読み直しました。

 少し距離を置きはじめた2022年の途中からは、モヤモヤは減ってわざわざブログを書くことも減りました。近づくと、恥ずかしながら自己主張したくなる私自身がいるようです。このように突発的記事増えてしまいました。エスカレートすると自費出版に対してのコメントがブーメランにもなる可能性もあり、距離を保とうという考えが湧いてくる訳です。そして、そのエネルギー他の目標達成に向けたほうが生産的です。

 「置かれた場所で咲きなさい」というような考えから、モヤモヤをその環境の中で解決しようとする人もいるかもしれませんが、やはり環境大切だと考えています。今からでも変更できるなら、まだ環境を選べるなら、例えば、まだ学生や初期研修医であれば3年目以降の希望診療科変更から、というように考えられるのではないでしょうか。名古屋の学会のような集団「色」違和感を感じて距離を取りたいのであれば、専門医機構だけで専門医を取るというような距離の取り方もあるでしょう(これもこれで制度の成熟度として疑問のところも…)。

 

 距離を保つという視点に加え、嫌なモヤモヤにも接する機会を残しておくという意味では、1本全振りのような状況ではなく、他に参加しつつ、軸を持ちつつ、「まあ、これに参加するか」というような感覚になると、余裕をもって見ることができるのかもしれません。理念には共感であれば、考えられる選択肢としては、例えば、ダブルボードでしょうか。そうすれば、岩田健太郎先生の提唱されている「ジェネシャリスト」にもなれますね。しかも、BPSモデルや患者中心の医療(PCCM)のようなものは、どこの診療科の専門というわけでもなく、どの診療科に行っても使う補助的な技術であると考えています。

 専門というのは自ら哲学のような御託並べる以上に、いないと困る」(機能)だと感じることもあります。患者さん側や雇用者側で差異こそありますが、そういうものに由来するニーズでしょう。「いないと困る」ほどでもないとしたら、「1人で何でも診ます」(例: 医師は1人の確保のみでOK、患者さんも医師は1人で済むので便利?)のような役立つ医療における機能ではダメなのでしょうか。

 他にも、複数の慢性疾患、誤嚥性肺炎や尿路感染、さらには背景には精神疾患や知的障害のようなケースがあります。それに対して演繹的には解決しにくく複雑な問題というのであれば、それに対するインセンティブを考えても良いと感じます。本当に必要とされる複雑な問題の解決であれば、必要な技術のはずです。もう学会もできてからの時期を踏まえると、学会等の上の先生方は働きかけて結果を示していても良い時期なのではないでしょうか。公共サービス(保険診療としては、パスを当てはめてそれなりに他科の誰でもできるほうが重要であると暗に示唆しているのでしょうか。この考え自体は嫌いではありませんが、上の先生が言葉のあやや思想・哲学だけでは状況の改善は望みにくく、若手個人としては離れること最適解でしょうか。

 また、基本診療領域のダブルボードだけでなく、総合医育成プログラムも選択肢に入ります。総合医は総合診療専門医(1階建て部分)ではなく独立した資格で、誰でも取得することができます。御託よりも機能に焦点を当てているようにも感じます。まずは内科でも外科でも好きな診療科に行って、ジェネラルな資格は後で考えればいいともなるでしょう。そもそも、資格としての価値があるのか分かりませんが、総合診療専門医の資格の絶対性を下げているように感じます。

 総合診療専門医の話に戻します。もちろん、専門医資格として維持するほどの魅力はないと考えるのであれば、年1回の総会に顔を出す程度というような感じでしょうか。例えば、総合診療専門医(基本領域専門医、"1階部分")では、"2階建て部分"のサブスぺとして透析専門医消化器内視鏡専門医集中治療専門医等にはなれない(申請条件を満たしていない)という資格として弱さがあります。総合診療専門医は資格としては不要というような判断をする人もいるでしょう。他にも、総合診療専門医の3回目(15年目)の更新には、多様な地域という名で1年間へき地勤務望ましいと、今月になってしれっと専門医機構によって追加されました。専門医取得までとは異なり、子育て世帯をはじめ、専門医更新自体難しくなる人もいるでしょう。そもそも学会ではなく、専門医機構に乗っ取られている状況は、外部との戦いをして勝ち取れないほど、内部を構成する学会同士の争いに必死で結束できなかったのではないかと勘繰りたくなるような医療系ポータルサイトの記事があります。分かりやすく例えるなら、内部でお山を必死に取り合っていたら、外部からお山が削られていったような感じでしょうか。いずれにしても、専門医機構手綱を握られていて勝手に変更されうるのは他の専門領域よりリスクでしょう。そして、機構とダブルなのも複雑にしている要因でしょう。

 良い先生もいらっしゃたり、理念共感できるところがあるにもかかわらず、研修システムのバラバラさ、不安定さ(例: 地方の指導医が1人の病院→指導の質の確保、異動による突如のプログラム終了のリスク)に加え、そういうところでも資格としての総合診療専門医難しさを感じます。

 資格そのものではないという意見もあると思います。しかし、そうすると議論が振り出しであったり、そうすれば、資格選びリターンというような意見も出てくるでしょう。目標=職業・肩書きのようなものであれば、それだけで選ぶ理由になりますが、目標を達成する手段のひとつであれば、広い選択肢から合理的に選ぶことにもなるでしょう。

 また、資格そのものではないとなると、「やりがい」「感動ストーリー」のような視点もあるでしょう。確かに何でも従事してみると、自然とやりがいを感じたり、感動することがあったります。しかし、主観的であったり、やりがいを感じないことや感動とは逆の感情のこともあります。そこまで診療科に特異的なものでもなく、後々感じるかもしれないものを前面にするのは危険だと感じます。同調圧力で「やりがい」や「感動」を感じないときの苦しさバーンアウトの原因にもなるのではないでしょうか。また「やりがい」以外に魅力がなく、その「やりがい」も感じない人からすれば、やりがい搾取でしょう。やはり、客観的な業務内容や待遇、獲得できる技能・経験等を見て、興味を持ったり納得して働いてみればよいと考えています。そこから自らやりがいを感じる人がいれば、他人に押し付けることなく伸びしろとしてさらに活躍すればいいと考えています。

 世間的にもどうでしょうか。「消化器内視鏡専門医が大腸がんをESDで切除する」というのと、「総合診療医が大腸がんをESDで切除する」というのは、仮にどちらの先生もできるとしても消化器内視鏡専門医にやってもらおうと思う患者さんが圧倒的に多いのではないでしょうか。一方で、「消化器内視鏡専門医の先生が在宅医療にやってくる」というのと、「総合診療・家庭医の先生が在宅医療にやってくる」というのは患者さんからすれば、どちらでも良いと感じる人も多いのではないでしょうか。世間からの専門性の高さという認識もどうでしょうか。厚労省からしたら、総合診療の主なメリット医療費抑制僻地での医師確保かもしれません。残る専門性は、他の診療科で抜け落ちやすいBioとPsycho、さらにはSocialに跨る覚悟のいるケースでしょうか。それでも、SDH診療のように医療機関でやれることが限られていたり、社会的課題を扱うところと連携すべきというジレンマもあると思います。

 そのような場合、総合診療・家庭医療マインドというような解釈もあると思います。今後の変化や自然の摂理を見守りたいと思います。




 

3. 魅力的で関連しそうな

百田尚樹さんの著書

 せっかくの読書ログなので、先述の「医療への落書き的類推」はさておき、『夢を売る男』の作者である百田尚樹さんの著書の魅力についても触れておきたいと思います。百田尚樹さんの著書といえば、最近で言うとは『橋下徹の研究』でも話題になりました。10年以上に渡って毎年100万部以上、累計2200万部以上売り上げている凄腕の著者です。既存のマスメディアでは、著書の良さの割に話題にならない(されない?)と感じています。

 まずは何といっても読みやすいことです。そして、ジャンルも様々にもかかわらず、感情面だけに焦点を当てた小説とは異なって、科学小説の科学的な部分のように、場面・状況等も作り込まれていると感じることが多く、臨場感想像力を高める学びにもなります。そして、そのストーリーには社会へのメッセージも添えられています。その本の中から、今回の医療への類推や読者層にも関連しそうな2冊を紹介しようと思います。

 

  • 『海賊と呼ばれた男』(上・下)

 『海賊と呼ばれた男』(上・下)では、日本の石油大手の出光興産がモデルとなっている話です。石油を武器に敗戦後の立て直しと世界との新たな戦いを描きつつ、自分の官庁や組織座席争い既得権益にしか興味がない人たちや外資と、長いスパンでの日本の国益(国全体の利益をかけて戦うものがたりです。その中で登場する国岡商店(出光興産がモデル)は定年もない、敗戦の不況でも誰一人解雇しない、一丸となった家族のような会社像を描いています。今の都合よい部分が残った日本的な会社像と異なる、ひとつの世界観です。読者層に関連しそうな内容に結びつけると、医局でしょうか。この国岡商店の世界観であれば、長時間労働でもここまで一丸となったものであり、ちゃんとリターンや保障もあります。それはそれで令和であっても受け入れられる人が増えるだろうとも感じる世界観です。

 私自身、法律等に違反すること(例: サービス残業)をブラック企業だと考える一方で、コントール可能な長時間労働はブラックとは考えていません。宝くじのような他人任せ、かつすぐ成果のようなものが手に入る物事ではなく、しっかりとした長いスパンでの目標があると、人・状況によって、人生のどこかで目標達成のためにそれなりにガッツが必要な時もあるでしょう。そういう視点でも、この世界観も参考になると思います。

 

  • 『モンスター』

 やはり、ブログの主な読者に焦点を当てると、医学生や若手の医師でしょうか。そういう視点で興味を持ちそうな本を取り上げるとすれば、『モンスター』(幻冬舎文庫)です。ブスと言われ続けた地方出身の女性が、名前も変わり、東京で美容整形をして元の影を残さずに地元に戻る物語です。そこで描かれる憎しみや狂いなどの入り混じった人生復讐劇を通じて、美容外科にお世話になる人の心理美容外科による物理的変化だけでなく心の変化など、ただ顔や体が原因ではないではない、幸せに対するメッセージ性もあると思います。想像力が豊かになる内容だと思います。

 

 

その他の著者

 まちづくりについても医療への落書き的な類推・感想でキーワード程度に触れました。「まちづくり」という言葉は定義から曖昧です。関連しそうな中でも町おこしについて触れた小説を紹介します。特に上手くいっている地域・ご時世で上手にやるのでもなければ、街じまいやスモールシティー化に向けた準備でもなく、過疎化高齢化の進んでいる地域で本気お金を稼げるようにして(働き口を増やして)を集めたいと思っている人に、想像力を豊かにするためにおススメです。

 医業は良くも悪くも参入障壁の中の世界です。その世界のに出れば、そこにはもっと競争があることはざらです。維持困難な村で、産業もなく農業も農協の助成金程度のジリ貧状態の中、それを抜け出して営農組織を作り、法人化していくストーリーです。そこでは、アメリカ型経営や現場主義的な経営のどちらだけでもうまくいかない苦悩や、田舎なり大変さ、愛着・慣習等による足かせ、田舎にもある利権、腹を括らずに田舎へ逃げてきただけの使い物にならない人地方の人材というような問題点から、組織として稼ぐこと、稼ぎ続けることの大変さを痛感する内容です。それこそ、生産性アップに加えて、長時間労働・従事が必要な時の話もあります。ビジネス以外にも、住宅事情や出会いの場所など、若い外の人に新たに来てもらうための問題点もあります。

 世間でいう主観的な「ブラック企業」のような面もあるかもしれません。私は法律等に違反していなければブラックとは考えていませんし、むしろ、本人の意志によってコントロールできるのであれば、一律的な時間制限には反対です。人より抜きん出ようと考えている人こそ、人生のどこかで必要な時もあると思います。それでも、何とか解決していくからこそ、物語として展開も含めて感動ストーリーになっています。

 そしてそのような部分が、人(特に若い人)を惹きつけるビジネスと、慈善事業や箱物行政、さらには兼業農家(農家は赤字・趣味)との違いを感じる内容になっています。医師で稼いだお金をばら撒くだけではない、継続可能人も集めることが可能なビジネスについて考えるきっかけにもなると思います。

 また、続編『脱・限界集落株式会社もあります。続編では、巨大モール新規建設による商店街一掃による戦いから、「ふれあい」「絆」「地域の力」という抽象的なきれいごとだけでなく、ビジネス部分としての合理的な分析の必要性もストーリーに描かれています。

 この本の出版は2011年、『夢を売る男』の出版は2013年です。約10年経過して、ようやくこの業界にも遅ればせながら似たような風が吹いているということでしょうか。もちろん、産業構造を意識したり、アップデートしたり、必要なことは別途学んだり、スキルを身に着けたり、行動したりすることが必要です。

 

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 気になるものがあれば、是非手に取ってみてください。あくまでストーリーなので、一般化とは異なりますが、想像力視野広がったり、自分自身に必要なものを見つけたりするヒントにはなるでしょう。便所の落書きのような類推・感想のように私ももう少し具体的な距離の取り方のプランも考えてみたいと思います。そうしたら、モヤモヤ減って、ブログの更新頻度も減るかもしれません。記事があと2つ(分割して3つ)は残っているので、そこまではとりあえずこのままで継続していこうと思います。

 本日もお読みくださいましてありがとうございました。

 

 

 

 今回の読書ログのきっかけとなった『夢を売る男』ですが、読者レビューをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。この3冊とも新刊ではないので古本の値段こなれているかと思います。

 

 

【読書ログ一覧】

 最近の読書Logでは、医療ネタと組み合わせることも多くなっていますが、よろしければどうぞ。

mk-med.hatenablog.com

 

ChatGPTの医療現場/事務での活用|今すぐできそうな対話型AIの簡単な利用法と期待

ChatGPT医療現場事務での活用

~今すぐできそうな対話型AIの簡単な利用法と期待~

 

<目次>

 

 

 前回は、対話型AI(チャットAI)の中でも、ChatGPTを医師を中心とした医療者向けの医療情報収集に使うという視点を主にチェックしてみました。そこから得られた要点は次のようなものでした。

 

  • 日本語が使用可能
  • 表を作成、アイデア整理
  • 文書作成のおける費用対効果の高さ
  • 与えられた文章に対する返答・要約
  • 専門性/解像度のそこまで高くない内容 →(一般向けとして)分かりやすくて平易な文章

 

 医師向け、医療者向けの情報収集に関して、2023年4月の段階としては今ひとつという結果でした(今後には期待しています)。

 そこで、今回はChatGPT(無料版 GPT-3.5、拡張機能なしが、医療現場を含めてどのように使えるかということを、2023年4月(一部5月上旬)の記録としてまとめて行きたいと思います。手っ取り早く役に立つことを使ってみたい方は、特に「3.与えられた文章への対応(文書作成)」メール返信のような場面からの利用をおススメ致します。

 

 

1.対話型情報提供/診療補助

~ 期待や可能性込めて ~

 

 前回は、医療者(特に医師向け)の医療情報や医学的な内容の情報収集という視点でチェックしてきました。まだ今のところ、専門的な話では、粗が目立つというのか、必要としているほどの情報の解像度がないと感じます。一方で分かりやすく平易な日本語文章で記述してくれていると感じます。

 この結果を踏まえて、今回は前々回の水腎症の原因、前回の尿路結石症のブログ記事の内容から少し離れて、医療でChatGPTの役立ちそうな場面を考えてみたいと思います。

 むしろ、英語だけでなく日本語もそのまま使えることや平易な言葉からは、今のところは非医療者向けの可能性の方が高いと感じています。Googleで検索しても似たような情報が手に入りますが、対話型であるという点や、人的資源の効率化による働き方改革にもマッチしていると考えています。

 

 

1-1. 病気のことを聞いてみる

 ちょっと病気について知りたいというような場面を想定してみました。外来で説明してもらえるとも思いますが、診察時間が遅れていたりもします。そんなときでも、お家でも、病気の理解への補助にもなるのではないでしょうか。

糖尿病の説明 ChatGPT

 対話形式質問に答えてもらえるので、情報収集しに行くときよりも、「接客」対応されているようで満足度も高くなりやすいのではないでしょうか。しかも、もともとChatGPTが専門性が高くないと考えられるゆえに、専門用語を避けて平易な言葉で説明してくれる点も非医療者にはメリットではないでしょうか。

 もちろん、幻覚(hallcination)のような気をつけるべき点や責任の所在をはっきりとさせておくというような問題点はありますが、可能性はあると考えています。

 

 続いて、健康相談のようなこともしてみました。

血圧が高いときの健康相談

 地域の健康相談みたいなところで聞けそうな内容ですね。当たり障りのない程度の内容なら、人が言うよりもお節介で言われたように感じることもなかったり、答える側も「聞いてもやらないんでしょう」というような陰性感情とかなくて良いかもしれません。もちろん、ChatGPTを含めてチャットで言われても人の行動変化がないかもしれませんが、それならそれで人の時間を取られることもないでしょう。

 また、何らかの候補(今回で言うと健康に役立ちそうなこと)を列挙するというのにも長けていると感じます。

 対話型AI(チャットAI)による対応を一律にするだけでなくて、対話型AIとの質問より先のことを聞きたい人だけ、医療者に相談するというような敷居を設けることで聞く気の高い傾向にある人をピックアップすることもできるでしょう。アウトカムはどちらが良いのか分かりませんが、労働人口も減る中ではなおさら便利かもしれません。



 

1-2. 受診相談してみる

 こういう時に病院を受診したほうがいいのか悩むことはありませんか。先ほどの病気について尋ねる時と同じような感じです。

受診相談(頭痛)

 まずは、「頭が痛い」と単純に尋ねてみました。「特に以下のような症状がある場合」という列挙親切ですね。これこそ、頭痛Red Flag “SNOOP”ほどではないにしても、頭痛のRed Flagのようなものを反映して平易に説明している部分もあって参考になる部分があると思います。問診の際の聞き方のヒントにもなりますね。

 「頭痛のRed Flag "SNOOP"とは何?」というような人は、よろしければ、こちらも合わせてご確認ください。

mk-med.hatenablog.com

 

 それではもう少し条件(既往歴)追加してみましょう。

受診相談(頭痛+片頭痛の既往)

 さらに片頭痛持ち」というような情報を加えてみました。前回の超音波検査のRadiology UltrasoundとPOCUSの違いのような専門性の高い医療の話ではないからなのか、既往歴に片頭痛があるというのも踏まえて返信してくれました。

 特に返答の中で「痛みの症状がいつもと違う、または特に強い」というような文言が追加されているのは評価できます。もちろん、片頭痛でも前庭性片頭痛のようなものまで入れたらキリがなく、むしろ脳卒中の場合に受診を控えさせてしまうリスクもあるでしょう。一般論としてめまいのようなものがあるときに受診を促しているのも納得でしょう。

 

 さらに、「救急車を呼ぶべきか」という視点を付け加えてみました。

受診相談(頭痛+片頭痛の既往+救急車の是非)

 これにおいても、頭痛Red Flagも意識されているような返答でした。やはり、受診相談の質問に対して、回答での頭痛のRed Flagのような注意すべき点の候補の列挙が上手ですね。

 前述の「受診すべきか」という質問との違い「ただし、痛みが普段と同じ程度で、重篤な症状がない場合には、受診の予約をして診察を受けることをお勧めします」という文言が入っていることです。不要な救急車利用にも配慮がされていると感じます。

 有用性としてはアウトカムがどうなるか次第ですが、返答としては人が言いにくいこと(不要な救急車利用の件)でも、ChatGPTが質問者に言ってくれることはメリットかもしれません。AIゆえの公然とした公平的な返答でしょうか。もちろん、この不要な救急車利用を抑制しようとする文言があっても、結果として救急車をどれだけの人が呼ぶのか/呼ばないのかも分かりません。何度も救急車で来て器質的疾患が見つからないような人を抑制できるかは分からないまでも、電話対応で一般的な返答をした際に時々聞かされるような、「責任を取ってくれるのか!?」というようなクレームを浴びることもないでしょう。

 また、24時間対応するという視点では、深夜のコール対応の代わりのようなものも人と比べて確保しやすいと考えています。働き方改革も、ただ9-17時のような働き方で患者さんに不便を強いるだけではなく、上手に技術等組合わせて、かつ人より低コストで効率的にしていければ理想です。もちろん、社会保険料の問題がなければ、低コストを意識する必要性の度合いも異なっているかもしれません。そもそも、次のような価値観が正しいかはさておき、「直接人が寄り添うべきだ」というようなキレイごとのような価値観だけでは成り立たないと考えています。状況に合わせて白黒の中間のような妥協案や意識の変化なども合わせて行えると良いと考えています。



エビデンス例】認知行動療法にAI

 去年の段階では、AIによる慢性疼痛に対する認知行動療法のアウトカム非劣性であることを示した論文をブログ記事(読書Log&Link『22世紀の民主主義』 医療ならば医療AI!? ~他2冊や論文を交えて~ )でも紹介しました。 カウンセリングのようなことにも可能性を感じます。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 さらに、今年になって患者満足度のような視点での対話型AI(ChatGPT)と医師の回答比較をした論文もJAMA Internal Medicineでありました。

 

 

【新エビデンス例】患者質問にChatGPT

 さらに、今年(2023年)に入ってからはソーシャル・メディア・フォーラムにおける患者さんからの質問に対して、医師が回答した場合とChatGPTが回答した場合を比較する論文が公開されました。

 以下は、この論文の詳細と将来へのちょっとした希望になります。

 

横断研究

  • オンラインのソーシャル・メディア・フォームへの患者からの質問195件を無作為に抽出し、医師とChatGPTの回答を比較した。情報の質、共感度を1から5点で医療専門家チームが3重に評価した結果は以下の通りであった。

 

結果

  1. 医師よりChatGPTの回答の方が良いと評価される割合が高かった。 585件(195件×3)の評価のうち78.6%(95%CI, 75.0%-81.8%)で医師の回答よりChatGPTの回答の方を良いと判断した。
  1. 医師の回答の方が短かった。 回答の長さの平均(IQR)において、医師の回答の方がChatGPTの回答より有意に短かった(52 [17-62] words vs. 211 [168-245] words, t = 25.4; P < 0.001)。
  1. ChatGPTの回答の方が質が高かった。 ChatGPTの回答は、医師の回答よりも有意に質が高いと評価された(t = 13.3; P < .001)。例えば、「良い」または「非常に良い」と評価された回答(≧4)の割合は、医師よりもChatGPTの方が高かった(ChatGPT: 78.5%, 95% CI, 72.3%-84.1%; 医師: 22.1%, 95% CI, 16.4%-28.2%;).これは、ChatGPTの「良い」または「非常に良い」の回答の割合が3.6倍高いことになる。
  1. ChatGPTの回答の方が共感的であった。 ChatGPTの回答は、医師の回答よりも有意に共感的と評価された(t = 18.9; P < .001)。「共感的」または「非常に共感的」(≧4)と評価された回答の割合は、医師よりもChatGPTの方が高かった(医師: 4.6%, 95% CI, 2.1%-7.7%; ChatGPT: 45.1%, 95% CI, 38.5%-51.8%; 医師: 4.6%, 95% CI, 2.1%-7.7%)。これは、ChatGPTの方が、「共感的」または「非常に共感的」な回答の割合が9.8倍高いことになる。

(出典)JAMA Intern Med. 2023 Apr 28;e231838. doi: 10.1001/jamainternmed.2023.1838.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 少しこの界隈を騒がせた論文なので、すでにご存じの方も多いと思います。「こういう時に受診した方がいいの?」というような質問もありました。

 単語数共感度合いChatGPTはスコアを引き離しています。定量化されていても、360度評価のような無理な定量化なので参考にしつつも、やや主観的な指標というところは留意点でしょうか。患者満足度に近い面があります。

 情報の質といいつつも、患者さんに伝わる表現のような面もあると考えています。前回でもChatGPTがややぼんやりした言葉を使う傾向がありましたが、専門用語を回避してくれることによるメリットもあるように感じます。患者さん相手には、ChatGPTのような、患者さんに分かりやすい平易な言葉言い回しを参考にするということも大切でしょう。特にGPT-3になってから、流暢になったことも影響していると思います。文章の長さがChatGPTの方が明らかに長く、これこそ対話型AIの利点である文書作成の手間がかからないことではないでしょうか。

 返答における単語数医師の方が有意に少ないことも、「何を当たり前のことを」とかいうような陰性感情に近いものだけでなく、人の時間を使うということの影響もあるかもしれません。保険診療であれば、診察時間を長く取るというような形で医師等の人的資源を多く割くことは現行の制度では難しいと感じます。赤字では病院も潰れてしまいますし、特殊な環境を除いて持続可能でもありません。時間制の相談料のようなものであれば、人でも成り立ちますが、そうでないならChatGPTは可能性を秘めているとも考えられます。

 

 この研究ではアウトカム不明です。アウトカムも問題ないなら、なおさら人的資源の有効活用働き方改革への対応としても有効となってくるでしょう。「初期投資も不要、自己研鑽で医師がいつでも対応するから大丈夫」というような考えがあれば、人による対応のままでもいいのかもしれませんが、ChatGPT労働問題も難なくクリアできます。

 

 人においても、専門性に加えて共感もあるに越してことはないですが、今現在としてはChatGPTのような一般的なチャットAIとの共存有効活用という視点から、人は専門性の発揮できる部分(エッジ)でのアウトカムに影響ある部分、または機械化されていない手技へのシフトで良いのではないでしょうか。あとはガイドラインより先の治療新しい治療のようなものはChatGPTには無理、もしくは少なくともタイムラグがある部分でしょう。例えば、まだまだ症例数もなくガイドラインというほどのものもない小児がんの治療や希少ガンの治療のようにそれぞれの分野であるはずです。

 そう考えると、プライマリ・ケア領域での医師の強みは手技のようなところ(水道修理などをしてくれるお家の便利屋さんみたいなイメージ)や、患者さんの診療情報におけるノイズのようなものの判断になるのでしょうか。例えば、訴えの症状が多い場合に取捨選択重みづけは人の方がまだ得意かもしれません。

 あとは医師として、AIによる幻覚のチェックのような医学的に間違ってはならない部分をチェックしつつ、エモーショナルな部分は医師でなくても大丈夫だと考えています。もちろん、高級ホテルがあるように自由診療寄りでそのような視点も選択肢にはなるでしょう。



 今回の状況を踏まえると、インフォームドコンセントほどの状況というよりも、ネット質問のようなものに近いので、異なる状況での結果興味深く待ち遠しく感じます。とりあえず、こういう感じで頭が痛いから受診した方が良いのとか、患者さん言語化できている問題が前提であり、それほど専門性の高い用語を使う状況ではないとも言えるでしょう。

 元からお互いの顔が見えない状況なので、その辺りも状況によって単語数のような指標以外にも評価に影響の与えるものがあり、評価が異なってくるでしょう。今後、人の意識(特に患者さん側)に変化があり、人の顔を見ないでも良い、人の顔を見ない方が良いというような考えが広まれば、満足度のようなものも変わってくるでしょう。人が物理的に寄り添うことは、出産の「お腹を痛めて産んだ子だから」というような、アウトカムではなく意識の問題になってくる可能性も秘めていますね。医師としても、アウトカムではなくあくまで個人の価値観として人と人が直接と「寄り添う」ことが大切というような主張しているにすぎないという時代が来るかもしれませんね。

 

 患者満足度のようなものには、今回のような患者さん(一般人)の指標が参考になりますが、専門家としてアウトカム大切にする視点必要です。アウトカムに関しての論文や、異なる状況での論文も新たに出てくることが待ち遠しいですね。ちょっと将来に対する期待も含めた内容でした。



 

【補足】鑑別診断に使える!?

 先ほど、受診相談のような内容を紹介しました。ChatGPTは、イデアだしブレストも含めて、候補の列挙が得意であると感じています。それなら、現病歴や既往歴のような情報から鑑別診断(診断推論、臨床推論)ができるのかを調べてみました。利用しやすさの観点から国試の問題を症例として選びました。

鑑別診断(考えられる病気は?) 117C67

 ちょっと普通の人のように尋ねてみました。鑑別疾患として確かに考えられるというような候補もあります。可能性は感じられます。

 しかし、「既往歴にアトピー性皮膚炎があることは、この病気とは関連がありません」という少し残念な回答です。普通の脳卒中なら関係ないと言ってもいいと思いますが、この問題は細菌性脳動脈瘤破裂なのです。そこまではChatGPTでは導くことができなかったようです。前回の記事と同じく、これ以上の専門性は現時点(GPT-3.5)では難しいのかもしれません。しかし、具体的な専門的な話ではないような部分から学習の効率化に使えるようになっていくでしょう。

 国試はノイズのない問題文が意識されていて、必要な情報のみが入っている傾向にあります。そのノイズの判断こそがプロの仕事のひとつなのかもしれません。この医師国家試験問題について詳しくは下記をご覧ください。

mk-med.hatenablog.com

 

 

 聞き方を変えて、鑑別疾患を尋ねてみました。

鑑別診断を列挙 117C67

 かなり具体的なPivot and Clusterのように行くわけではありませんが、参考になる部分はあります。ChatGPTでこのレベルですから、あくまで平均としてUbieのような診断に特化した診断AIが勝るだろうと言われるのも納得です。脳症のことをエンセファロパシーとカタカナで書かれるのは少し違和感ですが、意味としては理解可能でしょう。

 あとは、AIが候補に挙げる鑑別疾患枠組み大きさ・広さといった先の細やかさ、患者の訴えのうちノイズとするか/重要視するかオッカムの剃刀(原因疾患は1つ)や「ヒッカムの格言」(原因疾患は複数)とするような判断のような部分が今のところ専門家の見せどころかもしれません。

 ChatGPTのOpenAIのサーバーにあるデータは2019年9月までのものになります。アップデートしていく必要性があります。もちろん、ChatGPTにフィードバックをしていくことで、統計的なネットワークのバックプロパゲーション(最適な近似解を出すように、誤差を数学的に減らすアルゴリズムの調節)によって出力が調節されて、ほどよい回答が出てくるようになってくる可能性もあるでしょう。

 一方で、あくまでも数学的に正しいものだけのものを出力するので、文章としては読めても内容としてはおかしいという幻覚(hallucination)も生じるわけです。そのチェックからアップデート・フィードバック要員としての役割になるかもしれません。

 

<追記>

 医学書ログにて『診断推論戦略』の書籍の魅力とともに、ChatGPTの鑑別の列挙の仕方との比較をしました。もっと、上級者向けの症例での臨床推論(診断推論)について、チャットAIの回答をご覧になってみたい方は、下記もご覧ください。



 

2.非医療者の認識の確認

 ChatGPTのイデアだしブレスト(ブレインストーミングのような使い方です。ChatGPTが正解を出してくれるとは限りませんが、アイデア出しやブレストとして、可能性のあるもの列挙してもらうと考えれば、使える部分もあるでしょう。

 ChatGPTを使う理由は、いろいろと専門家をしていると世間の認識とは異なることがあるからです。もちろん、医師として医学としてアウトカム大切にするようなことは忘れてはいけないと思いますが、例として患者満足度のような指標もあります。あくまで良識の範囲内であって、治療法も残されていない人の感情を利用して、効果があると言えないものを医療として高額に売りつけるようなエモーショナルな医療をしようと言っている訳ではありません。

 

 アンケートを取るほどの余裕がなかったりコストをかけられない場合でも、大きな視点の欠如補える可能性もあると考えています。ぬるいコンサルタントやぬるい第三者委員会のようなものであれば、ChatGPTである程度置き換えできる可能性もあります。これこそ、2019年までのネットの世界からの情報と使ったことによるフィードバックや覚えたことを拾ってきてくれることでしょう。

 もちろん、ChatGPTのようなAIのいうことだけを聞くのがユートピアなのか、ディストピアなのか、フィードバックや元データで自分自身に気持ちの良い/都合の良い情報だけを表示するようになってしまわないのか、新しい概念等は生まれるのかというような問題はあるでしょう。しかし、医療現場でも、医学的な面以外にも「何かできることはないか」、「この視点さえ欠如している」というようなことをチェックすることができると考えています。

 

 

2-1. 病院での患者満足度

 病院での患者満足度を上げるにはどうしたらよいのかを聞いてみました。

病院の患者満足度向上

 医療サービスの充実における「医療技術の進歩や、検査や治療方法の改善などにより、より安全で質の高い医療サービスを提供する」という部分は、専門家としても必要な部分でしょう。コミュニケーション、環境、スタッフの教育とトレーニングということで比較的当たり前かもしれません。

 環境の項目で、総合病院でも待合室が薄暗い病院や、待合室が快適とは程遠い病院もあるので参考になるかもしれません。もちろん、病院の建て替えの話すら吹き飛ぶような、資金難それどころではないような病院もあるとは思いますが…。スタッフの教育というのか、コミュニケーションというのか、受付も含めて「ブスっとした対応」されたら嫌ですしね。

 色々と、ここからキーワードゲットしてチェックしていくきっかけにもなりそうです。



2-2. 都心のクリニック

 次は少しコンサルタントに聞きそうな内容にしてみました。あくまで「成功する」としています。

都心のクリニックでの成功

 都心で地域のニーズと言えば、駅や地域によって異なるだけでなく、例えば新宿駅のような駅であれば、駅周辺でもどこかで大きく異なりそうですよね。診療科のニーズも異なれば、診療時間のニーズも異なってくると考えられます。当たり前と言えば、当たり前で、そこから具体的に自分自身が開業しようと考えているクリニックの場所や診療科などの組合せで具体的なことを考えていくことになることになると思います。

 意外と向こう見ずに開業などをする医師もいそうな予感がするので、ChatGPTに聞くだけでも視点の欠如(もしくは甘い見込み?)に気がつくきっかけになりそうです。

 保険診療であれば、都心でも郊外でも診療報酬は同じなので新宿で高いテナント代を考えるなら、中央線や京王線で郊外へ向けて15分や30分ぐらい行った先を考えるようなこともあるでしょう。しかし、どうしても都心ということであれば、新宿駅周辺のような場所であればテナント代高いので自由診療も考えたりすることになるでしょう。他にも、患者中心のサービスの患者中心のサービスや待合室の快適さ、マーケティングを組合わせれば、会員制クリニックが誕生しそうですね。もう少し詳しく聞いてみましょう。

 

都心のクリニックのサービス向上(具体的に)

 さらに具体的な項目を教えてくれました。オンライン予約は近年開業したクリニックでは一般的なような気もしますが、便利ですよね。ネットの使えない高齢者の一部からはクレームが来るかもしれませんが、ないのに比べたらマシですし、電話でも自動音声案内で予約できるようなシステムと組み合わせれば何とかなります。どれほどの効果があるのかは患者の年齢層と割合次第ですが、結構必須のシステムではないでしょうか。

 待合室の快適性の向上が具体的な項目として挙がりました。待ち時間がない方が快適ですが、どうしても少しは待ち時間ができるので要チェック項目ですね。「飲料水やお茶などを提供する」とあります。不安の解消につながるかは分かりませんが、内容によってはラウンジのようで会員制クリニックのヒントにもなります。

 患者教育の充実は当たり前の反面、健康志向の人向けな気もします。健康に興味のある人向けになるでしょうし、人による対応であればコストもかかるので、都心の高い家賃と合わせて会員制になるあたりも合理性がある気もします。

 意外と小さなクリニックで意見箱のようなものはないですよね。罵詈雑言もあると思いますので、すべてに対して返信をする必要性はないと思いますが、意見を聞くだけならタダなのでよいかもしれません。会員制であれば、なおさら満足度向上につながるでしょう。

 

 余談ですが、ChatGPTはヨイショ、ヨイショと持ち上げてこないのが好意的です。下手な医療コンサルタントのように「あの設備も、この設備も」というように開業資金だけで火の車というようなリスクも少なくなる面もあるような気がします(笑)ぬるいコンサルタントや会議のような話であれば、ChatGPTで何とかなるかもしれません。

 

 このような感じで次々と質問していけば、参考になる部分もあると思います。検索だと質問者の都合の良いページに行きがちな面がありますが、ChatGPTが案外フラットに書いてくれるのはメリットだと考えています。

 



2-3. プライマリケア/地域医療での患者ニーズ

 一部の専門家の考えている利用者(一般の人)のニーズは、利用者と認識が解離することもあります。そのようなことがないかを確認することも兼ねて、ChatGPTに尋ねてみました。

地域医療で患者さんが求めるもの ChatGPT

 地域医療で患者さんが求めるものと、プライマリケアで患者さんが求めるものを尋ねたところ、返答が似ていました。このまま、プライマリケアで患者さんが求めるものも紹介します。

プライマリケアで患者さんが求めるもの ChatGPT

 患者満足度上げるという視点では、専門家よりも患者さん(一般人)の視点の方が参考になることもあります。

 アクセシビリティに関しては開業医レベルでは何ともできない面もあるかもしれませんが、開業する場所に意識を向けることもできます。公立病院であれば、公共交通機関等との連携も含めて意識する必要性もあるでしょう。

 コスト効果的な地域医療サービスというのも、街という単位でも医療・介護での財政負担少なくすることはもちろん、患者さんの負担少なくする必要もあるでしょう。診療報酬は全国一律ですが、急性期病院での治療後の退院先は、自宅なのか、サービス付き高齢者住宅(サ高住)なのかとか、サ高住に行く場合であれば、患者さんの金銭的な負担も意識してベストバランスなところへ紹介できれば、それはメリットでしょう。

 地域のニーズに関しても、近年住宅開発が進んだような地域では子育て世帯も多いでしょうし、全国どこでも一律に「高齢者」だけではないことも注意を促してくれそうな面があります。

 

 総合的な医療サービスコミュニケーションと信頼関係に関しては、総合診療の中でも家庭医療や地域医療の領域では何度も聞いているかもしれませんね。医学生や医師をメインターゲットとする地域医療やプライマリケア勉強会で、5つの項目のうちの1つでしかないコミュニケーション信頼関係に焦点を当て「思いやり/寄り添う医療」前面にすることは、医師専門性を発揮できる場所として選んだとしては優先順位が異なる気がしますし、視点が狭いのか、意図的に避けているのか分かりませんが、視点が欠如している可能性もあると感じます。

 医学生の議論であれば、先生でなくともChatGPTが補助に入って、そのような視点も示す必要があるかもしれませんね。

 

**********

 利用者のニーズを考える際には、下手に医師・医療者だけで考えるよりも、少なくとも手軽なChatGPTぐらいの意見、ちょっとしたGoogleの検索結果はチェックしてみたほうが良いと感じました。いかがでしたでしょうか。

 アップデートという意味では、ChatGPTに特に新たなことを与えたりしている場合はそれによりアップデートされている(学習している)可能性もある反面、新たなことを与えていない場合はネットで検索することも忘れない方が良い面もあるでしょう。

 さらに、様々な分野に広くにまたがる内容についての回答のようなものもChatGPTが得意になっていくかと思います。山に例えれば、最後の山の頂上のような部分まで到達できなくても、可能な高さ底上げされていけば、山のすそ野の方からChatGPTに置き換えられ、多くの分野にまたがる内容は各分野に対して8割なり9割の回答ができるChatGPTの方が優位になっていくと考えています。このように書いていてジェネラリストの将来に不安も感じますが、それこそ方向転換や生成AIとの共存、ChatGPTのようなチャットAIにできないことを見つけることになるでしょう。そして、新たな研究結果なり、発見なりをして、生成AI与える側になるような視点も必要かもしれません

 

 

 

3.与えられた文章への対応(文書作成)

 医療とは直接的には関係ありませんが、特に医療現場で役立ちそうなことを紹介します。何といっても、ChatGPTは直接与えた文章に対しての、返信、要約、校正などの手間省いてくれます。

 

3-1. メールの返信

 秘書さん事務員的な使い方も少しできると考えています。例えば、メールの返信です。これは医療に限った話ではないですが、メールが多数届く人もいると思います。先日の出版社からのメールもChatGPTを元にした返信をさせてもらいました。個人的には5-10分かかるメールでの返信もChatGPTに書かせて、少し手を入れるだけで返信でき、半分ぐらいの時間で返信できます。

メールの返信(お断り) ChatGPT

 返信のメールを書くのが面倒に感じたことはないでしょうか。特にビジネスライクなメールほど面倒に感じるのではないでしょうか。お断りの連絡でもChatGPTすらすらと書いてくれます。多くの人にとって秘書さんがいるわけではないと思いますので、このような事務的な時間労力削減になります。

 これは出版社へのお断りのメールです。私は、お断りのメールを書く時に特に気を使う性格で返信に時間がかかる傾向にあったのですが、ChatGPTがすらすらと悩みもせずに書いてくれます。これをもとに手直しすることで時間の短縮になります。

 GmailもAIがメールを書いてくれる「Help me write」というものを近日中に公開するようですのでそちらでも良くなる日もくるかもしれませんが、どのAIを使ったとしても時間の節約になるでしょう。



3-2. 校正/添削/要約

 校正は一部英語のままであった論文の引用も直してくれました。校正は想像の範囲だと思いますので、添削のようなこともさせてみました。

ChatGPTによる書き直し(添削)

 先ほどのJAMAのChatGPTの論文の引用部分を例に書き直してもらいました。使用する場面少し限られますが、何か文章を書いている人には参考になる場面があるでしょう。校正は言わずもがなですが、一度凝り固まった文章書き方修正したり、文章量調節したりするときにも役立つと思います。前回の記事を踏まえても、患者さん向けの平易な文章の作成得意なので、患者さん向け文書作成補助にも使えるでしょう。

 そのまま共有することを躊躇するような長さ等の文章の要約にも使えます。これこそ、議事録のようなものから、ブルジットジョブのように形式的に必要とされているどうでもよい書類作成としては最強かもしれません。

 将来的にはカルテ上にChatGPTと類似のシステムが稼働して、病歴要約なんかも簡単に作れるようになると便利ですね。現在のところ、Open AI(米国の会社)のサーバーに患者データを預けることに抵抗が強いかもしれません。それこそ、類似の日本医療向け版のようなものができると達成しやすいかもしれません。



3-3. キャッチコピー/タイトルの作成

 少し場面は限られますが、セミナー等のタイトルキャッチコピーを考える際のヒントになるでしょう。先ほどの与えられた文章に対する文章作成ですが、普段から使うかは微妙なので別枠にしました。患者さんへの説明資料啓発用のキャッチコピーにも使えるかもしれません。

キャッチコピー/タイトルの作成

 エビデンスの例で用いた引用部分ぐらいの長さであれば、ChatGPTで対応できました。ちなみにブログ記事丸ごとまでいくと、長すぎてエラーになってしまいました(笑)

 それはさておき、その先としてプレゼン準備、文章の分類ラベリングといった整理にも活かせるでしょう。




4.その他

 個人的な趣味で恐縮ですが、使える可能性があるものも紹介しておきます。

 

4-1. プログラミング

 これは医療の中でも、プログラミング等のコードを自分で書くことのある人向けで、限定的です。白黒はっきりしやすい内容だからChatGPTが得意なのかもしれませんが、かなりメリットがあります。あとは、ChatGPTの提示したものもとにいじっていくことになります。

ホームページのヘッドのCSSの書き方

 現在のブログのヘッドを自分で書いたのですが、今となっては「これがあれば便利だったな」と感じました。私のような趣味ではなく、ITエンジニアプログラマーを考えているような人には、コードを書くだけではなく全体設計や管理など、進路を考える必要も出てきたでしょう。趣味でやる分には強力な補助ツールになります。

 

 他にも医療現場で使えるかは分かりませんが、ChatGPT役立ちそうな場面は多数あります。例えば、途上国支援のNPOのLINEのチャットでは、とりあえず英語にするという自動翻訳にChatGPTを利用し始めました。ChatGPTを裏で動かす便利ページのようなものもあったりと、様々です。

 

 

4-2. 様々な特集や書籍も

 あまりにも、猫にも杓子にもというぐらいChatGPTのことが話題になっています。日本語でまともに使えるような印象のする唯一に近いような対話型AIだからでしょうか。

 少し前にデジタル化のことをとりあえず「DX」と言っていたのにも似たバズワードになっています。バズワードとなると、期待過剰になりがちです。しっかりとしたもの・役立つものであれば、いったん下火になった後に2-3年や5年の間を経て、世の中を変えてくれるでしょう。スマホの普及、Web3の今後への期待のようなものでしょう。

 そういう意味では、この週末の名古屋も、専門医誕生から5年(学会としても13年と10年を超えている)節目で、成熟度合から今後の発展方向性を含めて判断することができるかもしれないと考えると、期待不安の混じった節目ですかね。

 話を戻すと、いち早くChatGPTのような自然言語処理やその周辺のことを学んで、その技術特性限界を知ることで数年後以降のチャンスを手にしやすくなると考えています(自然言語処理もChatGPTも以前からありましたが、スマホのようにiPhoneが出て勢いづいたように、新たなスタートと考えています)。ChatGPTについて学びつつ、個人レベルでも応用して使用できることも多いので、医療に限らず利用できそうなところから使用してみてはいかがでしょうか。

 そのようなこともあってか、単行本や雑誌の特集など、様々なものを見かけます。偶然、目に留まって手に取った(ANAの搭乗時の無料で読める雑誌・新聞のeライブラリーにあり、ダウンロードした)週刊東洋経済の2023年4月22日号でも「ChatGPT 仕事術革命」として特集されていました。そこでは、例えば、音声から清書原稿の作成のように使える可能性のありそうな項目の示唆もありました。私自身は恥ずかしながら、お金を払ってまで読んだかは怪しいですが、Kindle unlimitedの対象でもあります。気になる方はチェックしてみてください。

 


『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(著)

 もう少し腰を据えて、ChatGPTでも用いられている自然言語処理について、理解を深めたり、人の読解力について考えさせられます。Twitterに限らず、日常の様々な場面で感じますが、大半の人の読解力低さをデータで指摘し、チャットAIの読解力との比較をしています。AIにできることから、AIと共存しながら、AIに取って代わられない強みについて考えるきっかけにしてみたいというような人におススメです。5年ぐらい前の本ですが、やっとチャットAIが身近になり、現実味を帯びてきて内容も理解しやすくなった人も増えたのではないかと感じる内容です。読みやすい文章で書かれていて、良い本でした。

 短期的には、先程の週刊東洋経済の特集のような、ChatGPTを使いこなす人はしばらくは重宝されると思いますが、長期的にはこちらの本でも考えられているAIに取って代わられない強みという視点が大切になってくると思います。

 

 

 

5.まとめ

 医療ど真ん中とは言い難いですが、医療現場でも使える事務的なこともあるのではないのでしょうか。簡単にまとめておきます。

すぐにできそうなChatGPTの医療現場/事務での活用(まとめ)

 やはり、今のところのChatGPT(GPT-3.5)日本語が違和感なく使用可能で、良くも悪くも高度に専門的ではなく平易な文章が得意であり、これを活かした文書作成が身近で使いやすい便利機能として個人的には一番だと考えています。JAMAの論文にもあったような、患者への対話型説明のようなものにも広く使われることにも期待しています。もちろん、ChatGPTのビジネスモデルとしての弱点によっては数年後に似たような異なるシステムになっているかもしれません。

 また、Google検索のかわりのような一般的な(非専門的な)リサーチの機能も担ってくれます。検索との違いによるメリット・デメリットはありますが、明らかな視点の欠如防ぎやすいと考えています。

 

 何より、OpenAIのChatGPT使ったことすらない人は、是非使ってみてください。会員登録をすれば、容易に使うことができます。まずは説明書を読むよりも、可能な範囲から使ってみることが大切だと考えています。

openai.com

 

 実際に使ってみて、それでも使うべきか使わないべきかという話ができたらと思っています。ChatGPTを使ったことないから、思い込みでとりあえず自分の価値観を主張するのではなく、ファクト・データを蓄積し、問題点を対策しながら有効活用していければと考えています。

 そして、時間経過・AIの進歩、ChatGPT等の各サービスの状況とともに役割利用方法も徐々にアップデートしていければと思います。

 

 本日もお読みくださいましてありがとうございました。

 

 

 

【関連記事】

 前回のChatGPTによる医師・医療者向けの情報収集としてChatGPTが使えるかを調べてみた記事(兼、記録)はこちらになります。

 

 臨床推論(診断推論)における思考過程解像度を上げて書かれている書籍です。ChatGPTとの比較も個人的にしてみることで、この本の強みも感じました。ChatGPTの鑑別疾患の列挙の仕方や比較が気になる方も、よろしければご覧ください。

mk-med.hatenablog.com