ChatGPTの医療現場/事務での活用
~今すぐできそうな対話型AIの簡単な利用法と期待~
<目次>
前回は、対話型AI(チャットAI)の中でも、ChatGPTを医師を中心とした医療者向けの医療情報収集に使うという視点を主にチェックしてみました。そこから得られた要点は次のようなものでした。
- 日本語が使用可能
- 表を作成、アイデアの整理
- 文書作成のおける費用対効果の高さ
- 与えられた文章に対する返答・要約
- 専門性/解像度のそこまで高くない内容 →(一般向けとして)分かりやすくて平易な文章
医師向け、医療者向けの情報収集に関して、2023年4月の段階としては今ひとつという結果でした(今後には期待しています)。
そこで、今回はChatGPT(無料版 GPT-3.5、拡張機能なし)が、医療現場を含めてどのように使えるかということを、2023年4月(一部5月上旬)の記録としてまとめて行きたいと思います。手っ取り早く役に立つことを使ってみたい方は、特に「3.与えられた文章への対応(文書作成)」のメール返信のような場面からの利用をおススメ致します。
1.対話型情報提供/診療補助
~ 期待や可能性を込めて ~
前回は、医療者(特に医師向け)の医療情報や医学的な内容の情報収集という視点でチェックしてきました。まだ今のところ、専門的な話では、粗が目立つというのか、必要としているほどの情報の解像度がないと感じます。一方で分かりやすく平易な日本語の文章で記述してくれていると感じます。
この結果を踏まえて、今回は前々回の水腎症の原因、前回の尿路結石症のブログ記事の内容から少し離れて、医療でChatGPTの役立ちそうな場面を考えてみたいと思います。
むしろ、英語だけでなく日本語もそのまま使えることや平易な言葉からは、今のところは対非医療者向けの可能性の方が高いと感じています。Googleで検索しても似たような情報が手に入りますが、対話型であるという点や、人的資源の効率化による働き方改革にもマッチしていると考えています。
1-1. 病気のことを聞いてみる
ちょっと病気について知りたいというような場面を想定してみました。外来で説明してもらえるとも思いますが、診察時間が遅れていたりもします。そんなときでも、お家でも、病気の理解への補助にもなるのではないでしょうか。
対話形式で質問に答えてもらえるので、情報収集しに行くときよりも、「接客」対応されているようで満足度も高くなりやすいのではないでしょうか。しかも、もともとChatGPTが専門性が高くないと考えられるゆえに、専門用語を避けて平易な言葉で説明してくれる点も非医療者にはメリットではないでしょうか。
もちろん、幻覚(hallcination)のような気をつけるべき点や責任の所在をはっきりとさせておくというような問題点はありますが、可能性はあると考えています。
続いて、健康相談のようなこともしてみました。
地域の健康相談みたいなところで聞けそうな内容ですね。当たり障りのない程度の内容なら、人が言うよりもお節介で言われたように感じることもなかったり、答える側も「聞いてもやらないんでしょう」というような陰性感情とかなくて良いかもしれません。もちろん、ChatGPTを含めてチャットで言われても人の行動に変化がないかもしれませんが、それならそれで人の時間を取られることもないでしょう。
また、何らかの候補(今回で言うと健康に役立ちそうなこと)を列挙するというのにも長けていると感じます。
対話型AI(チャットAI)による対応を一律にするだけでなくて、対話型AIとの質問より先のことを聞きたい人だけ、医療者に相談するというような敷居を設けることで聞く気の高い傾向にある人をピックアップすることもできるでしょう。アウトカムはどちらが良いのか分かりませんが、労働人口も減る中ではなおさら便利かもしれません。
1-2. 受診相談してみる
こういう時に病院を受診したほうがいいのかと悩むことはありませんか。先ほどの病気について尋ねる時と同じような感じです。
まずは、「頭が痛い」と単純に尋ねてみました。「特に以下のような症状がある場合」という列挙も親切ですね。これこそ、頭痛のRed Flag “SNOOP”ほどではないにしても、頭痛のRed Flagのようなものを反映して平易に説明している部分もあって参考になる部分があると思います。問診の際の聞き方のヒントにもなりますね。
「頭痛のRed Flag "SNOOP"とは何?」というような人は、よろしければ、こちらも合わせてご確認ください。
それではもう少し条件(既往歴)を追加してみましょう。
さらに「片頭痛持ち」というような情報を加えてみました。前回の超音波検査のRadiology UltrasoundとPOCUSの違いのような専門性の高い医療の話ではないからなのか、既往歴に片頭痛があるというのも踏まえて返信してくれました。
特に返答の中で「痛みの症状がいつもと違う、または特に強い」というような文言が追加されているのは評価できます。もちろん、片頭痛でも前庭性片頭痛のようなものまで入れたらキリがなく、むしろ脳卒中の場合に受診を控えさせてしまうリスクもあるでしょう。一般論としてめまいのようなものがあるときに受診を促しているのも納得でしょう。
さらに、「救急車を呼ぶべきか」という視点を付け加えてみました。
これにおいても、頭痛のRed Flagも意識されているような返答でした。やはり、受診相談の質問に対して、回答での頭痛のRed Flagのような注意すべき点の候補の列挙が上手ですね。
前述の「受診すべきか」という質問との違いは「ただし、痛みが普段と同じ程度で、重篤な症状がない場合には、受診の予約をして診察を受けることをお勧めします」という文言が入っていることです。不要な救急車利用にも配慮がされていると感じます。
有用性としてはアウトカムがどうなるか次第ですが、返答としては人が言いにくいこと(不要な救急車利用の件)でも、ChatGPTが質問者に言ってくれることはメリットかもしれません。AIゆえの公然とした公平的な返答でしょうか。もちろん、この不要な救急車利用を抑制しようとする文言があっても、結果として救急車をどれだけの人が呼ぶのか/呼ばないのかも分かりません。何度も救急車で来て器質的疾患が見つからないような人を抑制できるかは分からないまでも、電話対応で一般的な返答をした際に時々聞かされるような、「責任を取ってくれるのか!?」というようなクレームを浴びることもないでしょう。
また、24時間対応するという視点では、深夜のコール対応の代わりのようなものも人と比べて確保しやすいと考えています。働き方改革も、ただ9-17時のような働き方で患者さんに不便を強いるだけではなく、上手に技術等も組合わせて、かつ人より低コストで効率的にしていければ理想です。もちろん、社会保険料の問題がなければ、低コストを意識する必要性の度合いも異なっているかもしれません。そもそも、次のような価値観が正しいかはさておき、「直接人が寄り添うべきだ」というようなキレイごとのような価値観だけでは成り立たないと考えています。状況に合わせて白黒の中間のような妥協案や意識の変化なども合わせて行えると良いと考えています。
【エビデンス例】認知行動療法にAI
去年の段階では、AIによる慢性疼痛に対する認知行動療法のアウトカムが非劣性であることを示した論文をブログ記事(読書Log&Link『22世紀の民主主義』 医療ならば医療AI!? ~他2冊や論文を交えて~ )でも紹介しました。 カウンセリングのようなことにも可能性を感じます。
さらに、今年になって患者満足度のような視点での対話型AI(ChatGPT)と医師の回答比較をした論文もJAMA Internal Medicineでありました。
【新エビデンス例】患者質問にChatGPT
さらに、今年(2023年)に入ってからはソーシャル・メディア・フォーラムにおける患者さんからの質問に対して、医師が回答した場合とChatGPTが回答した場合を比較する論文が公開されました。
以下は、この論文の詳細と将来へのちょっとした希望になります。
横断研究
- オンラインのソーシャル・メディア・フォームへの患者からの質問195件を無作為に抽出し、医師とChatGPTの回答を比較した。情報の質、共感度を1から5点で医療専門家チームが3重に評価した結果は以下の通りであった。
結果
- 医師よりChatGPTの回答の方が良いと評価される割合が高かった。 585件(195件×3)の評価のうち78.6%(95%CI, 75.0%-81.8%)で医師の回答よりChatGPTの回答の方を良いと判断した。
- 医師の回答の方が短かった。 回答の長さの平均(IQR)において、医師の回答の方がChatGPTの回答より有意に短かった(52 [17-62] words vs. 211 [168-245] words, t = 25.4; P < 0.001)。
- ChatGPTの回答の方が質が高かった。 ChatGPTの回答は、医師の回答よりも有意に質が高いと評価された(t = 13.3; P < .001)。例えば、「良い」または「非常に良い」と評価された回答(≧4)の割合は、医師よりもChatGPTの方が高かった(ChatGPT: 78.5%, 95% CI, 72.3%-84.1%; 医師: 22.1%, 95% CI, 16.4%-28.2%;).これは、ChatGPTの「良い」または「非常に良い」の回答の割合が3.6倍高いことになる。
- ChatGPTの回答の方が共感的であった。 ChatGPTの回答は、医師の回答よりも有意に共感的と評価された(t = 18.9; P < .001)。「共感的」または「非常に共感的」(≧4)と評価された回答の割合は、医師よりもChatGPTの方が高かった(医師: 4.6%, 95% CI, 2.1%-7.7%; ChatGPT: 45.1%, 95% CI, 38.5%-51.8%; 医師: 4.6%, 95% CI, 2.1%-7.7%)。これは、ChatGPTの方が、「共感的」または「非常に共感的」な回答の割合が9.8倍高いことになる。
(出典)JAMA Intern Med. 2023 Apr 28;e231838. doi: 10.1001/jamainternmed.2023.1838.
少しこの界隈を騒がせた論文なので、すでにご存じの方も多いと思います。「こういう時に受診した方がいいの?」というような質問もありました。
単語数、質、共感度合いでChatGPTはスコアを引き離しています。定量化されていても、360度評価のような無理な定量化なので参考にしつつも、やや主観的な指標というところは留意点でしょうか。患者満足度に近い面があります。
情報の質といいつつも、患者さんに伝わる表現のような面もあると考えています。前回でもChatGPTがややぼんやりした言葉を使う傾向がありましたが、専門用語を回避してくれることによるメリットもあるように感じます。患者さん相手には、ChatGPTのような、患者さんに分かりやすい平易な言葉の言い回しを参考にするということも大切でしょう。特にGPT-3になってから、流暢になったことも影響していると思います。文章の長さがChatGPTの方が明らかに長く、これこそ対話型AIの利点である文書作成の手間がかからないことではないでしょうか。
返答における単語数が医師の方が有意に少ないことも、「何を当たり前のことを」とかいうような陰性感情に近いものだけでなく、人の時間を使うということの影響もあるかもしれません。保険診療であれば、診察時間を長く取るというような形で医師等の人的資源を多く割くことは現行の制度では難しいと感じます。赤字では病院も潰れてしまいますし、特殊な環境を除いて持続可能でもありません。時間制の相談料のようなものであれば、人でも成り立ちますが、そうでないならChatGPTは可能性を秘めているとも考えられます。
この研究ではアウトカムは不明です。アウトカムも問題ないなら、なおさら人的資源の有効活用や働き方改革への対応としても有効となってくるでしょう。「初期投資も不要、自己研鑽で医師がいつでも対応するから大丈夫」というような考えがあれば、人による対応のままでもいいのかもしれませんが、ChatGPTは労働問題も難なくクリアできます。
人においても、専門性に加えて共感もあるに越してことはないですが、今現在としてはChatGPTのような一般的なチャットAIとの共存・有効活用という視点から、人は専門性の発揮できる部分(エッジ)でのアウトカムに影響ある部分、または機械化されていない手技へのシフトで良いのではないでしょうか。あとはガイドラインより先の治療や新しい治療のようなものはChatGPTには無理、もしくは少なくともタイムラグがある部分でしょう。例えば、まだまだ症例数もなくガイドラインというほどのものもない小児がんの治療や希少ガンの治療のようにそれぞれの分野であるはずです。
そう考えると、プライマリ・ケア領域での医師の強みは手技のようなところ(水道修理などをしてくれるお家の便利屋さんみたいなイメージ)や、患者さんの診療情報におけるノイズのようなものの判断になるのでしょうか。例えば、訴えの症状が多い場合に取捨選択や重みづけは人の方がまだ得意かもしれません。
あとは医師として、AIによる幻覚のチェックのような医学的に間違ってはならない部分をチェックしつつ、エモーショナルな部分は医師でなくても大丈夫だと考えています。もちろん、高級ホテルがあるように自由診療寄りでそのような視点も選択肢にはなるでしょう。
今回の状況を踏まえると、インフォームドコンセントほどの状況というよりも、ネット質問のようなものに近いので、異なる状況での結果も興味深く、待ち遠しく感じます。とりあえず、こういう感じで頭が痛いから受診した方が良いのとか、患者さんが言語化できている問題が前提であり、それほど専門性の高い用語を使う状況ではないとも言えるでしょう。
元からお互いの顔が見えない状況なので、その辺りも状況によって単語数のような指標以外にも評価に影響の与えるものがあり、評価が異なってくるでしょう。今後、人の意識(特に患者さん側)に変化があり、人の顔を見ないでも良い、人の顔を見ない方が良いというような考えが広まれば、満足度のようなものも変わってくるでしょう。人が物理的に寄り添うことは、出産の「お腹を痛めて産んだ子だから」というような、アウトカムではなく意識の問題になってくる可能性も秘めていますね。医師としても、アウトカムではなく、あくまで個人の価値観として人と人が直接と「寄り添う」ことが大切というような主張しているにすぎないという時代が来るかもしれませんね。
患者満足度のようなものには、今回のような患者さん(一般人)の指標が参考になりますが、専門家としてアウトカムを大切にする視点も必要です。アウトカムに関しての論文や、異なる状況での論文も新たに出てくることが待ち遠しいですね。ちょっと将来に対する期待も含めた内容でした。
【補足】鑑別診断に使える!?
先ほど、受診相談のような内容を紹介しました。ChatGPTは、アイデアだしやブレストも含めて、候補の列挙が得意であると感じています。それなら、現病歴や既往歴のような情報から鑑別診断(診断推論、臨床推論)ができるのかを調べてみました。利用しやすさの観点から国試の問題を症例として選びました。
ちょっと普通の人のように尋ねてみました。鑑別疾患として確かに考えられるというような候補もあります。可能性は感じられます。
しかし、「既往歴にアトピー性皮膚炎があることは、この病気とは関連がありません」という少し残念な回答です。普通の脳卒中なら関係ないと言ってもいいと思いますが、この問題は細菌性脳動脈瘤破裂なのです。そこまではChatGPTでは導くことができなかったようです。前回の記事と同じく、これ以上の専門性は現時点(GPT-3.5)では難しいのかもしれません。しかし、具体的な専門的な話ではないような部分から学習の効率化に使えるようになっていくでしょう。
国試はノイズのない問題文が意識されていて、必要な情報のみが入っている傾向にあります。そのノイズの判断こそがプロの仕事のひとつなのかもしれません。この医師国家試験問題について詳しくは下記をご覧ください。
聞き方を変えて、鑑別疾患を尋ねてみました。
かなり具体的なPivot and Clusterのように行くわけではありませんが、参考になる部分はあります。ChatGPTでこのレベルですから、あくまで平均としてUbieのような診断に特化した診断AIが勝るだろうと言われるのも納得です。脳症のことをエンセファロパシーとカタカナで書かれるのは少し違和感ですが、意味としては理解可能でしょう。
あとは、AIが候補に挙げる鑑別疾患の枠組みの大きさ・広さといった先の細やかさ、患者の訴えのうちノイズとするか/重要視するか、「オッカムの剃刀」(原因疾患は1つ)や「ヒッカムの格言」(原因疾患は複数)とするような判断のような部分が今のところの専門家の見せどころかもしれません。
ChatGPTのOpenAIのサーバーにあるデータは2019年9月までのものになります。アップデートしていく必要性があります。もちろん、ChatGPTにフィードバックをしていくことで、統計的なネットワークのバックプロパゲーション(最適な近似解を出すように、誤差を数学的に減らすアルゴリズムの調節)によって出力が調節されて、ほどよい回答が出てくるようになってくる可能性もあるでしょう。
一方で、あくまでも数学的に正しいものだけのものを出力するので、文章としては読めても内容としてはおかしいという幻覚(hallucination)も生じるわけです。そのチェックからアップデート・フィードバック要員としての役割になるかもしれません。
<追記>
医学書ログにて『診断推論戦略』の書籍の魅力とともに、ChatGPTの鑑別の列挙の仕方との比較をしました。もっと、上級者向けの症例での臨床推論(診断推論)について、チャットAIの回答をご覧になってみたい方は、下記もご覧ください。
2.非医療者の認識の確認
ChatGPTのアイデアだしやブレスト(ブレインストーミング)のような使い方です。ChatGPTが正解を出してくれるとは限りませんが、アイデア出しやブレストとして、可能性のあるものを列挙してもらうと考えれば、使える部分もあるでしょう。
ChatGPTを使う理由は、いろいろと専門家をしていると世間の認識とは異なることがあるからです。もちろん、医師として医学としてのアウトカムを大切にするようなことは忘れてはいけないと思いますが、例として患者満足度のような指標もあります。あくまで良識の範囲内であって、治療法も残されていない人の感情を利用して、効果があると言えないものを医療として高額に売りつけるようなエモーショナルな医療をしようと言っている訳ではありません。
アンケートを取るほどの余裕がなかったり、コストをかけられない場合でも、大きな視点の欠如を補える可能性もあると考えています。ぬるいコンサルタントやぬるい第三者委員会のようなものであれば、ChatGPTである程度置き換えできる可能性もあります。これこそ、2019年までのネットの世界からの情報と使ったことによるフィードバックや覚えたことを拾ってきてくれることでしょう。
もちろん、ChatGPTのようなAIのいうことだけを聞くのがユートピアなのか、ディストピアなのか、フィードバックや元データで自分自身に気持ちの良い/都合の良い情報だけを表示するようになってしまわないのか、新しい概念等は生まれるのかというような問題はあるでしょう。しかし、医療現場でも、医学的な面以外にも「何かできることはないか」、「この視点さえ欠如している」というようなことをチェックすることができると考えています。
2-1. 病院での患者満足度
病院での患者満足度を上げるにはどうしたらよいのかを聞いてみました。
医療サービスの充実における「医療技術の進歩や、検査や治療方法の改善などにより、より安全で質の高い医療サービスを提供する」という部分は、専門家としても必要な部分でしょう。コミュニケーション、環境、スタッフの教育とトレーニングということで比較的当たり前かもしれません。
環境の項目で、総合病院でも待合室が薄暗い病院や、待合室が快適とは程遠い病院もあるので参考になるかもしれません。もちろん、病院の建て替えの話すら吹き飛ぶような、資金難でそれどころではないような病院もあるとは思いますが…。スタッフの教育というのか、コミュニケーションというのか、受付も含めて「ブスっとした対応」されたら嫌ですしね。
色々と、ここからキーワードをゲットしてチェックしていくきっかけにもなりそうです。
2-2. 都心のクリニック
次は少しコンサルタントに聞きそうな内容にしてみました。あくまで「成功する」としています。
都心で地域のニーズと言えば、駅や地域によって異なるだけでなく、例えば新宿駅のような駅であれば、駅周辺でもどこかで大きく異なりそうですよね。診療科のニーズも異なれば、診療時間のニーズも異なってくると考えられます。当たり前と言えば、当たり前で、そこから具体的に自分自身が開業しようと考えているクリニックの場所や診療科などの組合せで具体的なことを考えていくことになることになると思います。
意外と向こう見ずに開業などをする医師もいそうな予感がするので、ChatGPTに聞くだけでも視点の欠如(もしくは甘い見込み?)に気がつくきっかけになりそうです。
保険診療であれば、都心でも郊外でも診療報酬は同じなので新宿で高いテナント代を考えるなら、中央線や京王線で郊外へ向けて15分や30分ぐらい行った先を考えるようなこともあるでしょう。しかし、どうしても都心ということであれば、新宿駅周辺のような場所であればテナント代も高いので自由診療も考えたりすることになるでしょう。他にも、患者中心のサービスの患者中心のサービスや待合室の快適さ、マーケティングを組合わせれば、会員制クリニックが誕生しそうですね。もう少し詳しく聞いてみましょう。
さらに具体的な項目を教えてくれました。オンライン予約は近年開業したクリニックでは一般的なような気もしますが、便利ですよね。ネットの使えない高齢者の一部からはクレームが来るかもしれませんが、ないのに比べたらマシですし、電話でも自動音声案内で予約できるようなシステムと組み合わせれば何とかなります。どれほどの効果があるのかは患者の年齢層と割合次第ですが、結構必須のシステムではないでしょうか。
待合室の快適性の向上が具体的な項目として挙がりました。待ち時間がない方が快適ですが、どうしても少しは待ち時間ができるので要チェック項目ですね。「飲料水やお茶などを提供する」とあります。不安の解消につながるかは分かりませんが、内容によってはラウンジのようで会員制クリニックのヒントにもなります。
患者教育の充実は当たり前の反面、健康志向の人向けな気もします。健康に興味のある人向けになるでしょうし、人による対応であればコストもかかるので、都心の高い家賃と合わせて会員制になるあたりも合理性がある気もします。
意外と小さなクリニックで意見箱のようなものはないですよね。罵詈雑言もあると思いますので、すべてに対して返信をする必要性はないと思いますが、意見を聞くだけならタダなのでよいかもしれません。会員制であれば、なおさら満足度向上につながるでしょう。
余談ですが、ChatGPTはヨイショ、ヨイショと持ち上げてこないのが好意的です。下手な医療コンサルタントのように「あの設備も、この設備も」というように開業資金だけで火の車というようなリスクも少なくなる面もあるような気がします(笑)ぬるいコンサルタントや会議のような話であれば、ChatGPTで何とかなるかもしれません。
このような感じで次々と質問していけば、参考になる部分もあると思います。検索だと質問者の都合の良いページに行きがちな面がありますが、ChatGPTが案外フラットに書いてくれるのはメリットだと考えています。
2-3. プライマリケア/地域医療での患者ニーズ
一部の専門家の考えている利用者(一般の人)のニーズは、利用者と認識が解離することもあります。そのようなことがないかを確認することも兼ねて、ChatGPTに尋ねてみました。
地域医療で患者さんが求めるものと、プライマリケアで患者さんが求めるものを尋ねたところ、返答が似ていました。このまま、プライマリケアで患者さんが求めるものも紹介します。
患者満足度を上げるという視点では、専門家よりも患者さん(一般人)の視点の方が参考になることもあります。
アクセシビリティに関しては開業医レベルでは何ともできない面もあるかもしれませんが、開業する場所に意識を向けることもできます。公立病院であれば、公共交通機関等との連携も含めて意識する必要性もあるでしょう。
コスト効果的な地域医療サービスというのも、街という単位でも医療・介護での財政負担を少なくすることはもちろん、患者さんの負担も少なくする必要もあるでしょう。診療報酬は全国一律ですが、急性期病院での治療後の退院先は、自宅なのか、サービス付き高齢者住宅(サ高住)なのかとか、サ高住に行く場合であれば、患者さんの金銭的な負担も意識してベストバランスなところへ紹介できれば、それはメリットでしょう。
地域のニーズに関しても、近年住宅開発が進んだような地域では子育て世帯も多いでしょうし、全国どこでも一律に「高齢者」だけではないことも注意を促してくれそうな面があります。
総合的な医療サービスやコミュニケーションと信頼関係に関しては、総合診療の中でも家庭医療や地域医療の領域では何度も聞いているかもしれませんね。医学生や医師をメインターゲットとする地域医療やプライマリケア勉強会で、5つの項目のうちの1つでしかないコミュニケーションと信頼関係に焦点を当て「思いやり/寄り添う医療」を前面にすることは、医師の専門性を発揮できる場所として選んだとしては優先順位が異なる気がしますし、視点が狭いのか、意図的に避けているのか分かりませんが、視点が欠如している可能性もあると感じます。
医学生の議論であれば、先生でなくともChatGPTが補助に入って、そのような視点も示す必要があるかもしれませんね。
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利用者のニーズを考える際には、下手に医師・医療者だけで考えるよりも、少なくとも手軽なChatGPTぐらいの意見、ちょっとしたGoogleの検索結果はチェックしてみたほうが良いと感じました。いかがでしたでしょうか。
アップデートという意味では、ChatGPTに特に新たなことを与えたりしている場合はそれによりアップデートされている(学習している)可能性もある反面、新たなことを与えていない場合はネットで検索することも忘れない方が良い面もあるでしょう。
さらに、様々な分野に広くにまたがる内容についての回答のようなものもChatGPTが得意になっていくかと思います。山に例えれば、最後の山の頂上のような部分まで到達できなくても、可能な高さが底上げされていけば、山のすそ野の方からChatGPTに置き換えられ、多くの分野にまたがる内容は各分野に対して8割なり9割の回答ができるChatGPTの方が優位になっていくと考えています。このように書いていてジェネラリストの将来に不安も感じますが、それこそ方向転換や生成AIとの共存、ChatGPTのようなチャットAIにできないことを見つけることになるでしょう。そして、新たな研究結果なり、発見なりをして、生成AIに与える側になるような視点も必要かもしれません
3.与えられた文章への対応(文書作成)
医療とは直接的には関係ありませんが、特に医療現場で役立ちそうなことを紹介します。何といっても、ChatGPTは直接与えた文章に対しての、返信、要約、校正などの手間を省いてくれます。
3-1. メールの返信
秘書さんや事務員的な使い方も少しできると考えています。例えば、メールの返信です。これは医療に限った話ではないですが、メールが多数届く人もいると思います。先日の出版社からのメールもChatGPTを元にした返信をさせてもらいました。個人的には5-10分かかるメールでの返信もChatGPTに書かせて、少し手を入れるだけで返信でき、半分ぐらいの時間で返信できます。
返信のメールを書くのが面倒に感じたことはないでしょうか。特にビジネスライクなメールほど面倒に感じるのではないでしょうか。お断りの連絡でもChatGPTがすらすらと書いてくれます。多くの人にとって秘書さんがいるわけではないと思いますので、このような事務的な時間や労力の削減になります。
これは出版社へのお断りのメールです。私は、お断りのメールを書く時に特に気を使う性格で返信に時間がかかる傾向にあったのですが、ChatGPTがすらすらと悩みもせずに書いてくれます。これをもとに手直しすることで時間の短縮になります。
GmailもAIがメールを書いてくれる「Help me write」というものを近日中に公開するようですのでそちらでも良くなる日もくるかもしれませんが、どのAIを使ったとしても時間の節約になるでしょう。
3-2. 校正/添削/要約
校正は一部英語のままであった論文の引用も直してくれました。校正は想像の範囲だと思いますので、添削のようなこともさせてみました。
先ほどのJAMAのChatGPTの論文の引用部分を例に書き直してもらいました。使用する場面は少し限られますが、何か文章を書いている人には参考になる場面があるでしょう。校正は言わずもがなですが、一度凝り固まった文章の書き方を修正したり、文章量を調節したりするときにも役立つと思います。前回の記事を踏まえても、患者さん向けの平易な文章の作成も得意なので、患者さん向けの文書作成の補助にも使えるでしょう。
そのまま共有することを躊躇するような長さ等の文章の要約にも使えます。これこそ、議事録のようなものから、ブルジットジョブのように形式的に必要とされているどうでもよい書類作成としては最強かもしれません。
将来的にはカルテ上にChatGPTと類似のシステムが稼働して、病歴要約なんかも簡単に作れるようになると便利ですね。現在のところ、Open AI(米国の会社)のサーバーに患者データを預けることに抵抗が強いかもしれません。それこそ、類似の日本医療向け版のようなものができると達成しやすいかもしれません。
3-3. キャッチコピー/タイトルの作成
少し場面は限られますが、セミナー等のタイトルやキャッチコピーを考える際のヒントになるでしょう。先ほどの与えられた文章に対する文章作成ですが、普段から使うかは微妙なので別枠にしました。患者さんへの説明資料や啓発用のキャッチコピーにも使えるかもしれません。
エビデンスの例で用いた引用部分ぐらいの長さであれば、ChatGPTで対応できました。ちなみにブログ記事丸ごとまでいくと、長すぎてエラーになってしまいました(笑)
それはさておき、その先としてプレゼンの準備、文章の分類やラベリングといった整理にも活かせるでしょう。
4.その他
個人的な趣味で恐縮ですが、使える可能性があるものも紹介しておきます。
4-1. プログラミング
これは医療の中でも、プログラミング等のコードを自分で書くことのある人向けで、限定的です。白黒はっきりしやすい内容だからChatGPTが得意なのかもしれませんが、かなりメリットがあります。あとは、ChatGPTの提示したものをもとにいじっていくことになります。
現在のブログのヘッドを自分で書いたのですが、今となっては「これがあれば便利だったな」と感じました。私のような趣味ではなく、ITエンジニアやプログラマーを考えているような人には、コードを書くだけではなく全体設計や管理など、進路を考える必要も出てきたでしょう。趣味でやる分には強力な補助ツールになります。
他にも医療現場で使えるかは分かりませんが、ChatGPTが役立ちそうな場面は多数あります。例えば、途上国支援のNPOのLINEのチャットでは、とりあえず英語にするという自動翻訳にChatGPTを利用し始めました。ChatGPTを裏で動かす便利ページのようなものもあったりと、様々です。
4-2. 様々な特集や書籍も
あまりにも、猫にも杓子にもというぐらいChatGPTのことが話題になっています。日本語でまともに使えるような印象のする唯一に近いような対話型AIだからでしょうか。
少し前にデジタル化のことをとりあえず「DX」と言っていたのにも似たバズワードになっています。バズワードとなると、期待が過剰になりがちです。しっかりとしたもの・役立つものであれば、いったん下火になった後に2-3年や5年の間を経て、世の中を変えてくれるでしょう。スマホの普及、Web3の今後への期待のようなものでしょう。
そういう意味では、この週末の名古屋も、専門医誕生から5年(学会としても13年と10年を超えている)節目で、成熟度合から今後の発展や方向性を含めて判断することができるかもしれないと考えると、期待と不安の混じった節目ですかね。
話を戻すと、いち早くChatGPTのような自然言語処理やその周辺のことを学んで、その技術の特性と限界を知ることで数年後以降のチャンスを手にしやすくなると考えています(自然言語処理もChatGPTも以前からありましたが、スマホのようにiPhoneが出て勢いづいたように、新たなスタートと考えています)。ChatGPTについて学びつつ、個人レベルでも応用して使用できることも多いので、医療に限らず利用できそうなところから使用してみてはいかがでしょうか。
そのようなこともあってか、単行本や雑誌の特集など、様々なものを見かけます。偶然、目に留まって手に取った(ANAの搭乗時の無料で読める雑誌・新聞のeライブラリーにあり、ダウンロードした)週刊東洋経済の2023年4月22日号でも「ChatGPT 仕事術革命」として特集されていました。そこでは、例えば、音声から清書原稿の作成のように使える可能性のありそうな項目の示唆もありました。私自身は恥ずかしながら、お金を払ってまで読んだかは怪しいですが、Kindle unlimitedの対象でもあります。気になる方はチェックしてみてください。
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』、新井紀子(著)
もう少し腰を据えて、ChatGPTでも用いられている自然言語処理について、理解を深めたり、人の読解力について考えさせられます。Twitterに限らず、日常の様々な場面で感じますが、大半の人の読解力の低さをデータで指摘し、チャットAIの読解力との比較をしています。AIにできることから、AIと共存しながら、AIに取って代わられない強みについて考えるきっかけにしてみたいというような人におススメです。5年ぐらい前の本ですが、やっとチャットAIが身近になり、現実味を帯びてきて内容も理解しやすくなった人も増えたのではないかと感じる内容です。読みやすい文章で書かれていて、良い本でした。
短期的には、先程の週刊東洋経済の特集のような、ChatGPTを使いこなす人はしばらくは重宝されると思いますが、長期的にはこちらの本でも考えられているAIに取って代わられない強みという視点が大切になってくると思います。
5.まとめ
医療のど真ん中とは言い難いですが、医療現場でも使える事務的なこともあるのではないのでしょうか。簡単にまとめておきます。
やはり、今のところのChatGPT(GPT-3.5)は日本語が違和感なく使用可能で、良くも悪くも高度に専門的ではなく平易な文章が得意であり、これを活かした文書作成が身近で使いやすい便利機能として個人的には一番だと考えています。JAMAの論文にもあったような、患者への対話型説明のようなものにも広く使われることにも期待しています。もちろん、ChatGPTのビジネスモデルとしての弱点によっては数年後に似たような異なるシステムになっているかもしれません。
また、Google検索のかわりのような一般的な(非専門的な)リサーチの機能も担ってくれます。検索との違いによるメリット・デメリットはありますが、明らかな視点の欠如を防ぎやすいと考えています。
何より、OpenAIのChatGPTを使ったことすらない人は、是非使ってみてください。会員登録をすれば、容易に使うことができます。まずは説明書を読むよりも、可能な範囲から使ってみることが大切だと考えています。
実際に使ってみて、それでも使うべきか、使わないべきかという話ができたらと思っています。ChatGPTを使ったことないから、思い込みでとりあえず自分の価値観を主張するのではなく、ファクト・データを蓄積し、問題点を対策しながら有効活用していければと考えています。
そして、時間経過・AIの進歩、ChatGPT等の各サービスの状況とともに役割や利用方法も徐々にアップデートしていければと思います。
本日もお読みくださいましてありがとうございました。
【関連記事】
前回のChatGPTによる医師・医療者向けの情報収集としてChatGPTが使えるかを調べてみた記事(兼、記録)はこちらになります。
図解生成AIの"napkin AI"を使ってみた記事になります。生成AIの中でもパワーポイントでイラストを使ったりする際に役立つと思います。
臨床推論(診断推論)における思考過程の解像度を上げて書かれている書籍です。ChatGPTとの比較も個人的にしてみることで、この本の強みも感じました。ChatGPTの鑑別疾患の列挙の仕方や比較が気になる方も、よろしければご覧ください。