"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

医学の趣味人"Med-Hobbyist"のブログへようこそ。医学に関連する「なぜ」・「なに」といった好奇心を大切にする場所として、体験・読書をシェアする場所として、過去の失敗談やヒヤリを棚卸する場所として、傷を舐め合う場所ではなく何かヒントを得られるような場所にしたいと思います。少しでもお役に立てば幸いです。

サルコイドーシスの名称がつけられている画像所見|Sarcoid Galaxy Signなど8サイン

サルコイドーシス名称がつけられている画像所見

Sarcoid Galaxy Signなどの8つサイン

 

<目次>

 

 先月号の『画像診断』の特集が「わかる!びまん性肺疾患」ということで興味深い特集でした。そこからふと思い出して、過去の同誌で記憶に残っている特集を今さらながら読んでみました。2019年8月号「全身性疾患に対するエキスパート達の千思万考」という特集から、サルコイドーシスなどの画像所見を確認してみようという内容です。ちょっとだけ1章で肺の画像所見でも確認を済ませたら、2章からは好奇心任せで深掘りしたいと思います。

(注)興味重視のためしっかり学ぼうという方は教科書や2次文献などをご覧ください。

 

 

1. 肺画像所見

 まずは、肺サルコイドーシス(肺病変)画像所見についてざっとチェックしてみます。胸部X線、HRCTよりも前段階の前提知識です。これが、次章のメインディッシュのサルコイドーシスの様々な部位の特徴的な画像所見につながる部分があると考えています。

 

両側肺門縦隔のリンパ節腫大と上中肺野有意に肺に形成される肉芽腫(大きさは2mm程度まで)による陰影が基本である。

(出典)ジェネラリストを目指す人のための画像診断パワフルガイド 第2版,山下康行,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2022

 

 サルコイドーシスが非乾酪性肉芽腫ということで、それがとなって所見を形成していると考えればよいのでしょうか。肺サルコイドーシスでsarcoid galaxy signなんかも、そんな粒の集簇のように見えます。

 さらに、今回のきっかけとなったものまで詳しく見ていきます。

サルコイドーシスの肺野病変は、広義間質に沿った小結節や粒状影、気管支血管周囲間質の平滑あるいは結節状の肥厚が認められることが多い。粒状影は肉芽腫の集簇に対応しているが、組織学的に肉芽腫周辺の組織反応が乏しいことを反映して、HRCTで個々の粒状影が境界明瞭な粒として認識される。肉芽の融合や線維化が進行すれば、肺構造の歪みが認められ、間質性肺炎に類似した所見を呈する。また、非典型例として、結節影、空洞影、浸潤影、すりガラス影を呈することもある。

(出典)木口貴雄,画像診断, Vol.39 No.9 2019, 962-971.

 

 肺病変の場合、やはり画像所見は「粒」が基本のようです。非典型例とされる浸潤影や結節影ですが、それによって塊状となったものが、pseudo-alveolar sarcodosisと呼ばれる所見でしょう。

 

 

 

2. 名称がつけられている画像所見

 今回の山場に入っていきたいと思います。サルコイドーシスを考える上で、罹患臓器によっては特徴的な画像所見を呈することがあるようです。

 

このような病変の性格は、その他の全身病変でもある程度維持される。肺や中枢神経でみられることのある“つぶつぶ感”は、サルコイドーシスを考える大きな根拠となる。また、罹患臓器によっては特徴的な画像を呈することもあり、数多くの所見名(サイン)が報告されている。

サルコイドーシスの名称がつけられてる画像所見

(出典)木口貴雄,画像診断,Vol.39 No.9 2019,962-971.

 

 「このような病変」というのは、先述のサルコイドーシスの肺野病変についての話を示しています。それにしても、肺のsarcoidosis galaxy sign, 筋のdark star sign, three stripes sign, 頭頚部のpanda sign, リンパ節のpotato-like lymphadenopathy, Garland triad, lambda sign, 骨のlacy lytic lesion, 中枢神経のappearance of tongues of fireと画像所見(サイン)が8つもあります。調べていた際に別名を見つけたものは加筆してあります。 

 一度は画像見てみたくなるのではないでしょうか。肺における“つぶつぶ感”をはじめとする画像を見てみたいものです。また、それ以外の筋、リンパ節、骨における画像も見てみたいものです。この出典にはすべての画像が掲載されているわけではないので、検索していきたいと思います。

 

 

2-1. Sarcoid Galaxy Sign(肺, CT)

 まずは、肺病変sarcoid garaxy signです。日本から提唱された画像所見(サイン)であるということで、その経緯から見てみたいと思います。

  • 2002年に中津らによってgalaxy signとして提唱された。59名の患者のうち16名(29%)で組織学的にサルコイドーシスであると証明されたgalaxy signを認めた。
  • Galaxy signの定義は、①比較的境界明瞭な小結節からなる辺縁不整の結節を認め、②結節内に低吸収領域を認める。

(出典)AJR Am J Roentgenol. 2002 Jun;178(6):1389-93. doi: 10.2214/ajr.178.6.1781389.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12034602/

 

 Galaxy signは、これこそやや高吸収の境界不整な結節内に、さらに高吸収で境界明瞭な小結節を認めるといったところでしょうか。さらに、深掘りすると次のような日本における単施設でのコホート研究が見つかりました。

  • サルコイドーシスの患者では23.1%(n=15)でgalaxy signを認め、肺結核患者(1.9%, n=2)と比べ有意に多かった。
  • Galaxy Signの肺サルコイドーシスの診断に対する感度、特異度はそれぞれ23.1%、98.1%であった。

(出典)Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2016 Oct 7;33(3):247-252.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27758990/

 

 サルコイドーシスをもとに命名された画像所見ですが、この結果から言うと結核でも認められるようです。ただし、有意差はもちろんのこと、肺結核では稀な所見になります。

 肺サルコイドーシスでも決して多く認められる画像所見ではなく、感度は23.1%と控えめです。 特異度が高いという点だけでも、サルコイドーシスを疑っている際に見つけることができれば、診断に役に立ちそうな所見とも言えそうです。

 実際のCT画像出典でチェックしてみてください。

 

 

2-2. Dark Star Sign & Three Stripe Sign(筋, MRI

 続いて、dark star signとthree stripe signです。筋病変ということで筋サルコイドーシスのときに、MRIで認められる可能性がある所見です。

 

Three stripe signは、結節型筋サルコイドーシスに特異的な徴候であり、(1) 横断面(軸位断面)像では“dark star” signという信号強度が低下した星形の中心構造、(2) 冠状面像または矢状面像では信号強度が低下した内側の縞(線維組織)と信号強度が上昇した外側の縞(上皮細胞を含む活動性の炎症性肉芽腫)が特徴である。

(出典)BMJ Case Rep. 2014 Jun 10;2014:bcr2014204691. doi: 10.1136/bcr-2014-204691.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24916984/

 

 こちらも画像出典を参照願います。脂肪抑制T2強調画像で撮影されています。

 筋サルコイドーシスに伴う線維組織が低信号となってdark star signとしてみられ、上皮細胞を含む活動性の炎症性肉芽腫が高信号となってthree stripe signとしてみられるようです。

 

サルコイドーシスにおける縦隔リンパ節、肺、筋肉の病変の頻度は、それぞれ85%、20%、20-75%である。しかし、疼痛、結節性腫脹、筋力低下などの症候性筋病変の頻度は0.5%未満である。

(出典)BMJ Case Rep. 2014 Jun 10;2014:bcr2014204691. doi: 10.1136/bcr-2014-204691.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24916984/

 

 このようにも書かれていて、サルコイドーシスの中でも症候性の筋病変を認める頻度が稀であることから、さらに結節型といったような分類まで考えると、これらの画像所見は稀だと考えられます。ぜひとも、見てみたいものです。

 

 

2-3. Panda Sign(頭頚部, Gaシンチ)

 名前からは動物のパンダをイメージするのですが、実際にはどのようにみえるのでしょうか。気になるパンダサイン(panda signをチェックしてみたいと思います。

 

耳下腺と涙腺の同時浸潤は、Gaシンチグラフィでこれらの腺に両側性に集積し、正常な鼻咽頭への集積と合わせて、この所見はパンダ徴候と呼ばれる。

(出典)Radiographics. 2004 Jan-Feb;24(1):87-104. doi: 10.1148/rg.241035076.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14730039/

 

 Gaシンチを見ると、パンダの顔と似ていると言えば似ていますが、まあそんなものかというような感じです。この出典にはGaシンチだけでなく、その耳下腺や涙腺のMRI T2WIまで載っていて分かりやすかったです。出典Figure 19を是非、チェックしてみてください。載っていないものもありますが、panda sign以外にも総説として様々な画像が挙げられていますので、おススメです。

 

 

2-4. Potato-like Lymphadenopathy(縦隔, CT)

 ここからはリンパ節の画像所見を深掘りしていきます。1つ目はpotato-like lymphadenopathyです。ポテト様ということはあのジャガイモのポテトでしょうか。調べてみたもののそこまで検索でヒットしませんでしたが、比較的新しいものからチェックしておきたいと思います。

 

サルコイドーシスの縦隔・肺門リンパ節腫大の特徴としては中縦隔・肺門(右気管傍、大動脈傍、気管分岐下、両側肺門)に多いが前縦隔リンパ節腫大は稀とされる。CTでは腫大リンパ節は境界明瞭、辺縁平滑で “potato-like”と称される累々とした腫大で一般的に造影後期では淡く均一に造営されることが多い。

(出典)山口医学 第64巻 第3号 205頁~211頁,2015年

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ymj/64/3/64_205/_pdf

 

 あくまでもリンパ節腫大における個々リンパ節CT上での特徴ということでしょうか。新しい文献も少なく、1950年代から1970-80年代までの文献が多く、新しいものはそこまでありません。あまり使われていない表現かもしれないと感じました。

 次のGarland Triadを調べている時に見つけました。

 

サルコイドーシスでは、重度の肺門リンパ節腫脹がしばしば観察される。リンパ節の形は不規則で、大きな塊状のジャガイモに似ている。したがって、この画像所見の名前はpotato nodeである。この徴候は、1947年に書かれたGarlandの論文で言及されている。

(出典)Yudin, A. (2023). Potato Nodes, Sarcoid-Type Adenopathy, 1-2-3 Pattern, Pawnbroker’s Sign, and Cluster of Black Pearls Sign. In: Metaphorical Signs in Computed Tomography of Chest and Abdomen. Springer, Cham.

https://doi.org/10.1007/978-3-031-24494-0_26

 

 Potato-like lymphadenopathyだけではなく、potato node(nodes)という表現もあるようです。しかし、potato+sarcoidosisと検索すればよいと気がつきました。しかし、それでもPubMedで検索ヒットはなく、よく分からない結果となりました。

 

 とりあえず、境界明瞭で辺縁平滑な腫大リンパ節が、じゃがいものような画像所見だという視点で見てみると、イメージが湧きやすいかもしれません。よろしければ、いずれも出典画像も確認してみてください。

 

 

2-5. Garland Triad(胸部Xp)

 続けてリンパ節の所見であるGarland Triad (1-2-3 Sign, Pawnbroker’s Sign) を見ていきたいと思います。先程と同じ文献ですが、調べていてこのような文章を見つけました。

 

古典的なサルコイド型リンパ節腫脹(1-2-3 sign または Garland's triad)も1947年のGarlandの論文に記載されており、これは右傍気管リンパ節、右肺門リンパ節、左肺門リンパ節の腫大の組み合わせである。この組み合わせはpawnbroker’s sign (質屋サイン) とも呼ばれている。バーから吊り下げられた3つの球体は、ルネサンス期のフィレンツェで有力な商人であったメディチ家のシンボルに由来する高利貸しのシンボルである。

(出典)Yudin, A. (2023). Potato Nodes, Sarcoid-Type Adenopathy, 1-2-3 Pattern, Pawnbroker’s Sign, and Cluster of Black Pearls Sign. In: Metaphorical Signs in Computed Tomography of Chest and Abdomen. Springer, Cham.

https://doi.org/10.1007/978-3-031-24494-0_26

 

 胸部レントゲンでリンパ節腫大が3つでTriadとなるというのはイメージできます。両側肺門部で左右方向の辺を作って、右傍気管リンパ節(右下部気管傍リンパ節(4R)であればキレイに三角形になりそう?)を頂点として完成です。

 しかし、pawnbroker’s signというのが想像できません。これこそ、その地域や時代の背景知識の欠如でしょう。質屋(高利貸し)のシンボルとは不名誉なような気もしますが、それだけ身近だったのでしょうか。そこでネットで検索をしたら、質屋のpawnbroker symbolを見つけました(下記リンクの図)。胸部レントゲン写真も掲載されています。よければ、画像下記のRadiopaediaも見てみてください。今回のブログのような切り口ではないですが、興味深いページです。

radiopaedia.org

 

 

2-6. Lambda Sign(Gaシンチ, PET)

 リンパ節の画像所見としてはラストのlambda signです。ラムダ(λ)サインという名前の由来も気になります。

 

サルコイドーシスでは、Gaシンチグラフィおいて傍気管ならびに両側肺門部における特徴的な取り込みパターンが "lambda sign"として報告されている。

(出典)AJR Am J Roentgenol. 2008 Mar;190(3 Suppl):S1-6. doi: 10.2214/AJR.07.7001.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18287458/

 

 結局のところは先ほどのGarland Trial (1-2-3 sign)似ていますね。Garland Triadはリンパ節腫大でしたが、lambda sign(ラムダサイン)は同じような場所のガリウム(Ga)集積です。総説なのでタイトルの通りで、画像所見についていろいろと書いてあります。

 

 他にもFDG PETやPET/CTでのlambda signの報告もあります。下記のPET/CTの方がカラフルに見えるのですが、Gaシンチの方が形は見やすいと感じる人もいるかもしれません。

(参考)Clin Case Rep. 2019 Jan; 7(1): 236–237. doi: 10.1002/ccr3.1937

 

 考えれば当たり前なのですが、lambda signサルコイドーシス以外でも認めることがあるようです。下記は結核の症例報告からの引用ですが、シンチにしても、PETにしても、集積しているだけであり、原因は非特異的です。偶然でもλの形になればいいわけです。このような結核をはじめとする感染症だけでなく、悪性リンパ腫をはじめとする悪性腫瘍とサルコイドーシスも鑑別を要す時もあってしかるべきですね。

 メッセージとして敢えて訳さずにそのままですが、このメッセージの主旨は大切かなと感じました。

The current gold standard for the diagnosis of sarcoidosis remains tissue histological examination. However, other methods can aid the diagnostic process, such as gallium 67 (67Ga) scintigraphy. The characteristic panda and lambda signs may be indicative of the disease, although rarely they can be found in different clinical situations.

(出典)Monaldi Arch Chest Dis. 2020 Apr 27;90(2). doi: 10.4081/monaldi.2020.1247.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32340431/

 

 

2-7. Lacy Lytic Lesion(骨)

 次は骨サルコイドーシス(骨病変)でみられる画像所見です。Lacy lytic lesonということで直訳すればレース状(lacy)の溶解(lytic)病変ということです。「lacy lytic lesion」という固有名詞というほどでもないかもしれません。骨病変ということでチェックしてみます。

 

骨サルコイドーシスの古典的な病像は、1903年にKreibichによって初めて報告されたもので、手の指骨に生じるレース状の溶解像(lacy lytic appearance)である。

(出典)Curr Rheumatol Rep. 2019 Feb 14;21(3):7. doi: 10.1007/s11926-019-0806-0.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30762131/

 

 命名というのか、特徴を表現しただけなのか、表現に困りますが、100年以上前に命名されているんですね。骨サルコイドーシスのなかでもlarge bone sarcoidosisとsmall bone sarcoidosisがあり、手指の骨はsmall bone sarcoidosisになります。

 骨サルコイドーシスは比較的まれであり、その中でもlarge bone sarcoidosisの方が一般的のようです。診断の手がかりにはなりにくいかもしれません。軽く触れておきますが、総説なので気になる方は是非読んでみてください。バーキットリンパ腫の病理組織を彷彿させるようなMRIでの“starry sky”appearanceをはじめ、画像も多数あります。

 

骨サルコイドーシスは比較的まれな病型であり、0.5~34%のサルコイドーシス患者にみられる。このような大きなばらつきは、無症候性の病徴や、単純X線写真やCT検査でも病変が検出されないことに起因している。一般に、骨病変は疾患の後期に発症するが、ごくまれに骨サルコイドーシスが疾患の初発症状となることがあり、その場合の診断は非常に困難である。

 

<Small Bone Sarcoidosis>

  • 手足のsmall bone sarcoidosisは患者の約5~7%にみられ、主に片側性または両側性で、第2指と第3指の指節骨に非対称的にみられる。サルコイドーシスによる指炎(sarcoido dactylitis)ならびに骨病変は非常に特徴的で、Perthes-Jüngling病として知られている。
  • 古典的な嚢胞状、レース状(lacy)、蜂の巣状の骨溶解のパターンは、皮質破壊および皮質外膨張を伴うことがあり、その結果、軟部組織の浮腫およびソーセージ指を生じる。
  • MRIによる追加検査は必要ないが、サルコイド病変はT1強調画像では低信号、T2強調画像では中程度から高信号であり、ガドリニウムでの造影剤投与後の増強は様々である。皮質外病変は、骨膜反応に類似した皮質に平行な細い垂直線を可視化できるMRIで最もよく示される。

 

<Large Bone Sarcoidosis>

・骨盤と脊椎を中心とする多巣性の軸骨格病変は、骨サルコイドーシスで最も一般的である。これらの病変の50%は無症状である。

X線写真では、large bone sarcoidosisは潜伏性か、限局性の溶解像であることが多い。硬化性病変や混合病変はまれである。Small boneの病変とは異なり、通常、皮質破壊や皮質外への膨張はみられない。

(出典)Curr Rheumatol Rep. 2019 Feb 14;21(3):7. doi: 10.1007/s11926-019-0806-0.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30762131/

 

 

2-8. Appearance of Tongues of Fire(中枢神経, MRI

 最後の画像所見です。中枢神経系の画像所見ということですが、appearance of tongues of fire (tongues of fire sign) という名称からは想像がつきません。まさか、舌のイラストにでも似ていて、そこから火でも吹くのでしょうか。

 論文では検索してもこれといって見つけられず、Radiopaediaというホームページからになりました。

かなり顕著な変化は他の撮影シーケンスではわからないことがあるため、主なシークエンスは造影剤を用いたT1強調画像である。特に脳底部とWillis輪の周囲に限局性または汎発性の軟髄膜増強効果(leptomeningeal enhancement)を認めることがある。貫通血管に沿って(血管周囲腔を経由して)脳内に達することがあり、これをtongues of fire signと呼ぶこともある。

(出典)https://radiopaedia.org/articles/neurosarcoidosis

 

 このページのtongues of fire signの出典を確認すると、「Kornienko VN, Pronin IN. Diagnostic Neuroradiology. Springer Verlag. (2008) ISBN:3540756523.」でした。購入して全編を読めたわけではないのでそこまではっきりとしたことは言えませんが、Google Booksでtongues of fireと検索すると、その単語が存在することは確認できました。

 

On MRI without contrast enhancement, one mayonly suspent thickening of basal meninges and detect areas of signal change in surrounding brain tissue as hyperintense areas on T2-weighted and FLAIR images. After intravenous administration of contrast medium, prominent and homogenous enhancement of basel meninges is seen, which may involve sellar and suprasellar regions, and optic chiasms. CE may expand deeply into the adjacent brain tissue, having an appearance of tongues of fire, which is explained by dis-…

(出典)Kornienko VN, Pronin IN. Diagnostic Neuroradiology. Springer Verlag. (2008) ISBN:3540756523.

 

 検索結果はこの1件のみでした。969ページからです。検索ヒットした単語のある文章全てを見ることはできませんでしたが、文章の流れからは、コントラスト増強法(contrast enhancement: CE)によって軟髄膜だけでなく脳組織近傍まで深く拡大して増強されると、それが “tongues of fire”のような画像になるということでしょうか。

 

 先程のRadiopaediaの記述と合わせると、増強効果が脳を貫通する血管周囲から脳内に広がり、軟髄膜周囲だけでないというように考えられます。この状況をもとに画像を手探りで探してみたいと思います。

Figure 18 造影MRI T1強調画像(体軸断面)で、脳室周囲と貫通動脈に沿ってガドリニウム投与後の非典型的多巣性の増強を示す。

(出典)Semin Respir Crit Care Med. 2007 Feb;28(1):102-20. doi: 10.1055/s-2007-970336.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17330195/

 

 サルコイドーシス全般の画像を取り扱う総説で見つけたもので、図説を引用しました。貫通する動脈だけでなく、もう少し脳内に増強効果があると分かりやすいのかもしれませんが、脳室を舌のようにとらえて、貫通動脈の増強が火のようであるということなんでしょうか。分からずなので、そうなのかもしれないと考えておくことにしました。よろしければ、画像は出典のFigure 18をご覧ください。

 

 神経サルコイドーシスMRIにおける画像所見の総説も見つけました。Appearance of tongues of fireではなく、軟髄膜の増強効果のような一般的な画像所見をはじめ、いろいろと気になる人は下記のfree articleの総説も含めてチェックしてみてください。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

(参考)J Clin Imaging Sci. 2011;1:15. doi: 10.4103/2156-7514.76693. Epub 2011 Feb 11.

 

 

 

3. 最後に

 趣味にお付き合いいただき、ありがとうございました。サルコイドーシスの診断基準としては組織診断群だけでなく臨床診断群もあります。やはり、“tissue is issue”という言葉もあり、先述の結核の症例の通りゴールドスタンダードは組織だと感じます。一方で、臨床診断群の特徴的所見に含まれる画像所見も含めて、サルコイドーシスの想起のきっかけ診断の一助にでもなれば幸いです。

 

 今回も興味の赴くままの内容ですが、画像所見はもちろんのこと、clinical presentations などについて教科書や二次文献をはじめ様々なものに目を通してもらえたらと思います。また、今回のきっかけとなった月刊誌 画像診断のように興味深いものもあります。そちらもよろしければ、気になるタイトルのときにでも手に取ってみてください。

 本日もお読みくださいましてありがとうございました。

 

 

 びまん性肺疾患ということでテーマから惹かれました。間質性肺炎、特発性肺線維症だけでなく、びまん性肺疾患の鑑別疾患(感染症、非感染症)も扱っています。

 

 「全身性疾患に対するエキスパート達の千思万考」ということで全身性疾患を特集しています。サルコイドーシスをはじめとする肉芽腫性疾患、痛風アミロイドーシスをはじめとする沈着病抗酸菌梅毒をはじめとする全身性の感染症悪性リンパ腫などを扱っています。表紙からも取り扱う内容をチェックできます。

 いずれも気になる方はよろしければチェックしてみてください。