"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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Bartter症候群/Gitelman症候群の特徴

Bartter症候群/Gitelman症候群特徴

偽性Bartter症候群を含めた鑑別ポイント~

 

<目次>

 

 

 いつになってもしっかりと覚えられないBartter症候群Gitelman症候群あたりの鑑別や違いです。今回は、ひょんなことからBaker嚢胞について知りたい部分の記述がUpToDateで見つからなくてPubMedを検索していた際にこれから紹介する文献を見つけました。偶然にも見つけた際には「なんだ、この文献は!?検査値の有意差を調べているのか」と驚きました。主に周産期ではなく成人に目を向けて、この文献を紹介していく記事です。

 

1.概要:Bartter症候群/偽性Bartter症候群/Gittleman症候群

 国試対策中なら国試対策本、普段でも教科書やUpToDateなどの二次文献で多くのことは事足りると思います。

 大枠の概念だけを掴むという意味で国試のものを使います。ハリソン内科学などにもぜひ目を通してみてください。それではレビューブックでBartter症候群、偽性Bartter症候群、Gitelman症候群を比較してみます。

 

3疾患の比較

 

Bartter症候群

偽性Bartter症候群

Gitelman症候群

INTRO

ヘンレ係蹄上行脚でのNa、Clの再吸収障害のため、傍糸球体装置(JGA)の過形成とRAA系↑を示し、二次性アルドステロン症をきたした状態であるが、アンジオテンシンIIに対する昇圧反応は低下し、血圧正常を示す。

慢性下痢、嘔吐、下剤・利尿薬(特にループ利尿薬)の頻用により起こるBartter症候群類似の病態をいう

・遠位尿細管のNa+/Cl-の共輸送体遺伝子の異常に起因する

・Bartter症候群類似の症状を示すが、低Mg血症・低Ca尿症をきたす点と、成人発症が多い点で異なる

症状

低K血症による筋症状(脱力感、筋力低下、四肢麻痺)、多飲・多尿などをきたす

若年女性が、やせる目的でフロセミドなどの利尿薬を大量に使用し、低K血症による症状、脱力をきたす

思春期や成人期に低K血症による筋力低下、低Mg血症によるテタニーを初発症状として発症する

検査/

診断

・二次性アルドステロン症を反映し、レニン↑、アルドステロン↑、K↓

代謝性アルカローシスを示すが、血圧・Naは正常である

脱水により、レニン↑、アルドステロン↑をきたす

血圧は軽度↓~→、RAA系↑、低K血症、低Mg血症、著明な低Ca尿症がみられる

治療

スピロノラクトン(抗アルドステロン薬)の投与、

K製剤によるK補充(低K、代謝性アルカローシスの改善)

利尿薬を中止

KとMgを補充し、K保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレン)を投与

(出典)レビューブック内科・外科 2018-2019

 

 疾患ごとの概念的な部分をつかむことができたと思います。実際にはどんな時にこれらの疾患を疑うのかという部分も気になりましたので、調べてみました。

 

<Bartter症候群やGitelman症候群症候群を疑うとき>

  • 説明のつかない低K血症、代謝性アルカローシスならびに血圧の正常・低下を認めたとき

 

<診断時:初期の評価>

  • Bartter症候群ならびにGitelman症候群は一般的(Common)ではない
  • 説明のつかない低K血症、代謝性アルカローシスならびに血圧の正常・低下を認めたとしても、他の疾患の除外が極めて重要

 

(出典)UpToDate>Bartter and Gitelman syndromes in adults: Diagnosis and management, last updated: Nov 23, 2021.

 

 稀な病気ということで、説明のつかない低K血症代謝性アルカローシスならびに血圧 正常・低下を認めたときに調べながらでもいいのではないかと思ってしまいました。

 そもそも、Bartter症候群(BS)といっても、BS1, 2, 3, 4a, 4b, 5と種類があるので、それをまとめて疾患像というのも難しい部分があると思います。BSの種類ごとの発症年齢、低K血症の程度、Ca排泄の程度などの表もUpToDateの”Bartter and Gitelman syndromes in children: Clinical manifestations, diagnosis, and management”のTableにありました。

 

 ぜひ、アクセス可能な文献を見てみてください。



2.検査値を比較・有意差は?

 それでは、今回の話題の核心の文献を見ていきましょう。Bartter症候群とGitelman症候群の間だけでなく、Bartter症候群Type 3Gitelman症候群に加え、偽性Bartter症候群/偽性Gitelman症候群の3群にわけて、検査値などを比較したものです。

 

<Bartter症候群・Gitelman症候群・偽性BS/GSの検査値等の比較>

f:id:mk-med:20211223012957j:plain

(出典)Genet Med. 2016 Feb;18(2):180-8. doi: 10.1038/gim.2015.56. Epub 2015 Apr 16.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

有意差を認めた項目

  • 診断時の年齢
  • 血液pH
  • 血清Mg
  • 血清Cr値
  • eGFR
  • 尿中Ca/Cr比
  • 血漿レニン活性
  • 血漿アルドステロン

 

 診断時の年齢は、事前確率を考えるうえでヒントになりそうです。ちなみに、研究対象の患者は日本の大学病院ということで、かなり現場に近い可能性は高そうですね。

 血液pHBartter症候群でややアルカローシスによっています。Bartter症候群で記載のあった代謝性アルカローシスとして、偽性Bartter症候群やGitelman症候群と、Bartter症候群を区別するヒントになりそうです。

 血清Mg低値もGitelman症候群で際立っているとも言えそうですが、そうでないときもありそな差といった印象でした。有意差はあっても、実際に判断するのは難しそうな値に感じ、コンピューター解析用かなという印象です。

 尿中Ca/Cr比は、Gitelman症候群著明な低Ca血症を反映していそうです。尿中Ca/Cr比が低下いるということで3疾患からGitelman症候群を鑑別するのに有効だと感じます。一方で、血清Cr値やeGFRは有意差を認めて、あまり検査値も離れていないため、実際に判断するのは難しそうです。

 血漿レニン活性血漿アルドステロン値Bartter症候群高値ですね。3疾患からBartter症候群を鑑別するのに役立ちそうです。先ほどの疾患の概念的な部分の確認で、Bartter症候群は二次性アルドステロン症という記載もあり、それを反映していそうです。一方で、偽性Bartter症候群は脱水でレニン↑、アルドステロン↑でしたが、そこまで上がらずGitelman症候群と似た程度しか上がらないようですね。

 

 RCPCのような概念で説明できるかの逆算はできそうですが、一部の検査値だけで診断に迫るというのは怖い印象です。また、検査の順番という部分からもUpToDateの『説明のつかない低K血症代謝性アルカローシスを見かけたときに疑い、さらに検査をしていき、レニン活性やアルドステロン値にたどり着くというのが、理にかなっていると思います。もちろん、他の疾患・病態の影響も考えないといけないのはいうまでもありません。結果としては興味深いですし、検査値の定量的な解析にAIなんかが導入された際には役立ちそうと夢を膨らませています。

 検査値も大切ですが、偽性BS/GSに関しては利尿薬の使用など、他にも診断の手掛かり(事前確率を変える手掛かり)となるものもありそうです。

 

 また周産期であれば、Free ArticleでBS1, 2, 3, GSを比較したような文献もありました。”Differential diagnosis of perinatal Bartter, Bartter and Gitelman syndromes”というタイトルの文献です。

Differential diagnosis of perinatal Bartter, Bartter and Gitelman syndromes

 

 また、小児であればUpToDateもBartter症候群やGitelman症候群の別ページもありました。成人に移行していく過程・成人発症のケースもある遺伝性疾患や、小児科として習った疾患の成人診断例のあたりの症例が奥深いとも感じました。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。