"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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医学書: Jmed76 これって膠原病?コンサルト実況解説50選 ~膠原病mimics~

書籍紹介(医学書ログ)

ミミックに騙されない思考の道筋 あなたも名医! これって膠原病?コンサルト実況解説50選』(jmedmook 76)

陶山恭博、須田万勢、福井翔(編)

 

 振り返れば、2021年第4四半期で最もアツい医学書のひとつであると思います。「こんな本、待ってました!というような、3名の先生方が編集された書籍です。膠原病mimicsとして、膠原病疑いで紹介された症例から、膠原病にとらわれず感染症悪性腫瘍等まで視点を広げて書かれており、読みごたえがあります。

 

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【こんな人におすすめ】

  • 最終診断が膠原病というバイアスを排除して考えたい
  • 膠原病Pivot and Clusterを考えたい
  • 膠原病を疑う際の症状や所見の鑑別疾患を学びたい
  • 症例ベースのような形で学びたい

 

 膠原病の書籍で、膠原病ミミック(mimics, またはmimicker)として感染症悪性腫瘍にまで視点を向けて楽しく書かれている書籍は、これまでの書籍で珍しいと感じました。そして、膠原病疑いとして膠原病内科にコンサルテーションされたときを想定した症例ベースの進め方も読みやすく(進めやすく)、場面を想定しやすいと感じました。とりわけ診断分野において、症例から学べることをこれだけ抽出できるんだという驚きもあります。各コンサル症例にて、「膠原病じゃない」・「膠原病かもしれない」と疑った/気づいたポイントからはじまり、Rheumatologistとしての視点やコンサルトのお返事まであります。

 

 さらに、臨床推論を大学時代からやっていた身としては、痒いところに手が届くような症状や所見からの鑑別疾患リストPivot and Cluterを作る手助けとなるような表の記載も満載で有難い限りです。次のようなものが50症例分用意されています。症例から学べる鑑別疾患や各疾患の特徴、診断過程などが、情報の詰まったチャートになって、まとまっています。

 症例の中で学べるものの例として薬剤性ANCA関連血管炎薬剤ごとの特徴の比較や、二次性レイノー現象の原因、急性・慢性蕁麻疹の原因、全身性エリテマトーデスSLE)のmimics、肺胞出血の原因、成人スティル病のmimicsなどというように多岐にわたります。例えば、SLE増悪のmimicsとしてのビタミンB1欠乏症には驚きました。

 

 そして、この本を読む前であれば、私自身で調べてブログ記事にしていたであろう鑑別疾患や各疾患の特徴を比較したまとめ等もありました。これでブログネタが減ってしまうかもしれませんね。寂しいやら、でもよい書籍がまたひとつ世に増えたという嬉しい叫びですね笑

 膠原病や臨床推論(診断)に興味のある人にお勧めです。長い間使えそうなので、なぜ単行本ではなく雑誌なんだろうかと疑問に感じているぐらいです。

 

 そしてこれこそ、岩田健太郎先生の提唱されているジェネシャリストGenecialist)」に近いものを感じる本でした。ここで執筆に携わっている膠原病の先生のとしての飛びぬける専門性膠原病を診る上で感染症などの関連してくる部分への横の広がりのようなグラデーションを感じました。もちろん、専門性のある先生方がコンサルをしてくる先生方に向けて自身の縦の専門性を背景としつつも優しく書いているというような本でした。

 ジェネシャリストという考えは、ジェネラリストとスペシャリストを二項対立ではなく昇華させている素敵な概念だと思います。気になる方はこちらも是非読んでみてください!

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 

 今回取り上げた書籍です。アマゾンの読者レビューをはじめ、よろしければチェックしてみてください。

 

 もっと詳しくジェネシャリストについて知りたい方は書籍もありますので、よろしければ併せてお読みください。