"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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急性単関節炎|①鑑別疾患と原因ごとの頻度

急性単関節炎

~①鑑別疾患原因ごとの頻度

 

 

<目次>

 

 今回も興味本位のテーマです。例えば、感染性心内膜炎(IE)のようなときに「発熱+関節痛」に遭遇したら、「化膿性関節炎?それとも結晶性関節炎(偽痛風痛風)?」のような悩みが生じたことはないでしょうか。

 もちろん教科書やガイドライン、二次文献でチェックして欲しいのですが、化膿性関節炎と痛風の所見にはこんな尤度比スコアリングがあるということを紹介する好奇心優先の記事になります。今回は痛風と化膿性関節炎に注目するまでの部分が中心となります。

(注)申し訳ございませんが、今回は導入部分になります。時間の都合で2回に分けての配信になります。

 

 

 

1.急性単関節炎鑑別

 関節痛をみたら、発熱+関節痛のように症状を組合わせたり、関節か⇆関節以外かの部位の特定をしたり、さらには関節炎でも急性⇆慢性単関節炎⇆多関節炎(多発性関節炎)で分類したりして少しずつ候補を絞っていくと思います。

 急性単関節炎の原因が痛風と化膿性関節炎だけということはありませんが、早期閉鎖・忘れ防止のために、まずは急性単関節炎鑑別疾患についておさらいしておきたいと思います。

 

鑑別診断

  • 単一の関節炎で最も頻度の高い鑑別診断は痛風や偽痛風などの結晶性関節炎である。

急性単関節炎の鑑別診断

(出典)青木眞, レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版, 医学書院, 2020, 951-952.

 

 急性単関節炎の原因の中でも、梅毒(Charcot関節)ライム病のような一部の感染症ハイドロキシアパタイトミルウォーキー肩症候群)のような一部の結晶関連、凝固障害色素性柔毛結節性滑膜炎のような関節血症、腫瘍のあたりは想起できなかった人もいるのではないでしょうか。

 膠原病関連の関節リウマチ、SLE、脊椎関節症では慢性関節炎初期の段階を見ている可能性もあります。そうであれば、様々な症状や所見が経過とともに揃ったり、慢性多関節炎になったりする可能性もあるでしょう。

 今回は関節炎を主軸に進めていますが、関節炎ではなかったとしたら蜂窩織炎のようなものも鑑別に入れる必要が出てくるでしょう。

 さらに細菌性であれば、成人で最も多い黄色ブドウ球菌、その次に多いレンサ球菌というようなことを考えたり、淋菌性などの様々な起炎菌を考えることにもなるでしょう。詳しくは、『レジデントのための感染症診療マニュアル』でも、他の感染症の本でも、二次文献でも、手に取りやすいものでぜひ全体像をチェックしてみてください。

 

 

 

2.急性単関節炎原因ごとの割合

 さらに急性単関節炎の原因ごとの割合(頻度)も気になります。定量なものも具体的に調べて探してみました。

 

 単関節炎の原因は、多くの患者で不明であった(16%〜36%)。最も多かった診断は痛風(15%〜27%)と敗血症性関節炎(8%〜27%)で、次いで変形性関節症(5%〜17%)、関節リウマチ(11%〜16%)であった(下記の表)。研究間の原因のばらつきは、使用した診断基準や研究した集団の違いに関連している。

 

表. 急性単関節炎の原因と割合

(出典)CMAJ. 2009 Jan 6;180(1):59-65. doi: 10.1503/cmaj.080183.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 敗血症性関節炎は、敗血症から血行性に細菌が侵入したとして化膿性関節炎(感染性関節炎)のひとつとカウントしてよいでしょう。

 意外な結果(割合)であった疾患もあったのではないでしょうか。個人的には痛風が少ないと感じました。Parkerらの研究では近医のGeneral Practitioner(GP)から紹介された患者129名、Freedらの研究では大学病院の救急外来の患者59名、Shmerlingらの研究では少なくとも1つの関節の腫脹と疼痛のある連続する患者100名、Jengらの研究では敗血症性関節炎が疑われた患者59名というように、条件・状況異なります。いろいろと自身の環境によって事前確率は異なってくるでしょう。

 原因不明の割合も16%-36%とそれなりにありますが、痛風、結晶誘発性、敗血症性、変形性関節症、関節リウマチ、外傷、反応性関節炎、Reiter症候群、SLE、その他、乾癬、軟部組織の問題、偽痛風、特発性関節血症、結核、無菌性壊死、骨膜性軟骨腫症ということで、先ほどの鑑別疾患よりは候補が絞られています。

 

 乾癬性関節炎のようにそれぞれの鑑別診断(原因)の特徴がありますので気になる方はそれぞれの鑑別診断について調べてみてください。

 

 やはり、ここでは頻度多いとされる痛風(尿酸ナトリウム)や偽痛風ピロリン酸ナトリウム沈着症、CPPD症)と、内科エマージェンシーでもある化膿性関節炎(感染性関節炎)の鑑別について深掘りしてみたいと思います。

 

 

 

3.化膿性関節炎結晶性関節炎

 化膿性関節炎を考える時に「もしかして…、嫌だな」と感じるのは、膝関節のような大関節の時でしょうか。すると、偽痛風の方が鑑別に挙がりやすいのでしょうか。痛風なら母趾MTP関節のような末端部分が典型的と考える人も多いでしょう。

 しかし、以前の痛風についての記事を書いた際に、UpToDateでは痛風は下肢に多く、最も多いのは第1中足趾節関節または膝関節である」という主旨の記載もあり、大関節も無視できないでしょう。興味のある方は詳しくは下記をご覧ください。

mk-med.hatenablog.com

 

 痛風や偽痛風のような疾患ごとの特徴は、教科書等で確認しやすそうです。

 そのため、特に2章目の総説で頻度的にも多くて気になった痛風と化膿性関節炎について、調べていました。そこで偶然見つけた興味深いもの深掘りしてみたいと思います。痛風化膿性関節炎についての患者背景・症候・所見などの尤度比などについて深掘りしてみたいと思います。

 

 急性単関節炎や化膿性関節炎(感染性関節炎)の基本的・全体的なことをはじめ、様々なことを確認してみたい等の興味がありましたら、青木眞先生の名著『レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版』や、途中で引用したものをはじめとする総説、UpToDate等の二次文献もぜひ目を通してみてください。

 

 本日もお読みくださいましてありがとうございました。

 

 

 
 続編の痛風化膿性関節炎についての深掘りはこちらになります。