医学書Log(<書籍紹介)
『画像診断 Vol.43 No.13 2023』(11月号)
- 特集: これであなたも名探偵! 転移の画像所見から原発巣を当てる
<目次>
今回の医学書ログは月刊誌『画像診断』2023年11月号です。他にも良かった本もあったのですが、タイムリーさや類書が思い浮かばない特集という視点からも今月の書籍(医学雑誌)にしたいと思います。
【こんな人におススメ】
- 特集のテーマに興味がある
- 医学知識の横切りの視点に興味がある
何といっても、特集のテーマが「これであなたも名探偵! 転移の画像所見から原発巣を当てる」ということで興味深いテーマです。最初に、または偶然、見つけたものが悪性腫瘍の転移だったというようなことはないでしょうか。〇〇腫瘍の時にはこういう画像所見が見られるという縦切りの視点に加えて、このような局在・画像所見のときには〇〇が考えられるという鑑別をしていく横切りのような視点が、類書が思い浮かばない興味深いテーマでおススメに感じました。
1. 本の感想/概要
特集は大きく、頭部病変、頭頚部病変、胸部病変、上腹部病変、下腹部病変、骨軟部病変、リンパ節病変から予測する原発巣に分かれています。
例えば、頭部病変として脳転移を考えてみましょう。巷でも、大学生のときの講義ぐらいでも、脳転移のお話で「肺がんや乳癌からの転移性脳腫瘍が多い。肺がんが約3~4割、…」ぐらいの総論の疫学的なことを耳にすることはあるかもしれません。
しかし、局在各論で脈絡叢/脳室内の時や軟髄膜の時をはじめとする、各部位で疫学的に多い原発巣(頻度)というような深掘りした知識も登場します。
他にも、CT吸収値(高吸収⇆低吸収)、MRI信号(高信号⇆低信号)、石灰化、出血などの画像所見・性状による鑑別の知識も手に入ります。個人的には1番濃い章にも感じましたが、頭部の章から医学知識でお腹いっぱいで嬉しい感じの内容です。画像所見も1対1対応と言い切れるものはほとんどないにしても、組み合わせで原発巣の推定とその先の方針に役立つと思います。
他の章では、症例ごとに鑑別のポイント、経過、知っておきたい知識というような構成をベースにしていているページが多く読みやすく、知識として注目すべき部分との整理もしやすかったです。
もちろん、悪性腫瘍の既往歴をはじめとする画像以外の診療情報も大きなヒントとなるため大切ですが、特徴的な画像所見や局在と疫学的な情報の組み合わせで、さらに精度高く可能性の高い原発巣を考えて進めていくことができるのではないでしょうか。
2. あとがき
この画像診断のひと月前(2023年10月号, Vol.43 No.12)の特集は「腸炎・腹膜炎を読み解く―病態と画像所見の対比」というテーマでした。解剖や基礎に触れて『マイヤース腹部放射線診断学』を彷彿させるようなページがあったり、鑑別に役立つような内容があったりして、こちらも興味深いものでした。また、マイヤースもなかなか好き者にはおススメなような気もします(笑)。実は、これらも医学書ログにしようか悩んだもののひとつでした。
また、来月号(2023年12月号, Vol.43 No.14)の特集も「全身の血栓症・塞栓症を考える」ということで楽しみにしています。
特集の内容をはじめ、気になる方は目次などをチェックしてみてください。また、今回紹介した11月号は表紙に書かれている目次だけでは分かりにくい部分もあります。目次詳細も合わせてご覧ください。
本日もお読みくださいましてありがとうございました。