<目次>
9月9日に、多くはないものの日本各地の様々な建物が金色にライトアップされるということがありました。「ゴールドリボン」という小児がんの啓発によるものです。これをきっかけに小児がんについて調べてみたいと思います。
1.ゴールドリボンとは
今月は「ゴールドリボン 世界小児がん啓発月間」ということで、9月9日などには全国のお城やタワーなどの様々な施設が金色にライトアップされるということがありました。
「ゴールドリボン」とは何のことかご存じでない人も多くいるかと思います。一方でピンクリボンなら乳がんで知っているけど、という人も多いと思います。小児がんの啓発カラーがゴールド(金色)であり、それにちなむものです。
小児がんの支援団体はたくさんありますが、今回(今月)は小児がん啓発月間であり、ゴールドリボンということから、ゴールドリボンにちなむ団体を紹介させていただきます。
『認定NPO法人 ゴールドリボン・ネットワーク』
こちらでは、小児がんの患者さんへのニット帽やマスクのプレゼント、交通費等補助制度、奨学金制度(給付型)、イベント等を行っています。もちろん、ここだけではないですが、ホームページの「応援する」というボタンからクレジットカードで簡単に寄付することができました。寄付をすると「ゴールドリボン」のピンバッジもいただけるようで到着が楽しみです。
今回はこのゴールドリボンの啓発月間ということで、小児がんについて調べてみたいと思います。
2.小児がん:日本の疫学 ~急性リンパ性白血病まで~
UpToDateではアメリカでの罹患率などの疫学となってしまうので、日本の疫学を探しました。小児からAYA世代(adult young adulthood世代)の0歳から39歳までに診断された人の疫学になります。(今回は小児がんということで14歳までを中心に扱います)
日本における0~14歳の悪性腫瘍の粗罹患率(100万人年あたり)
- 男性:120.2
- 女性:105.1
- 男女:112.8
0~14歳における悪性腫瘍の種類最も多いのが白血病(38.1%)、次いで中枢神経腫瘍(16.1%)、リンパ腫(9.2%)、胚細胞性腫瘍ならびに性腺腫瘍(7.6%)、神経芽細胞腫(7.4%)であった。
(出典)Jpn J Clin Oncol. 2017 Aug 1;47(8):762-771. doi: 10.1093/jjco/hyx070.
小児がんにおいて白血病が最も多いようです。とりわけ、急性リンパ性白血病(ALL)が内訳としても多いです。今回はこの中でも多い白血病の罹患率について年齢ごとの変化を深掘りします。(中枢神経腫瘍、リンパ腫、胚細胞性腫瘍、骨肉腫などの他の腫瘍も出典の文献に記載があるので気になる方はご覧ください)
- リンパ性白血病の罹患率は小児の血液腫瘍でもっとも高く、年齢が上がることに罹患率が低下する。
- 急性骨髄性白血病の罹患率は、0~4歳群にて高く、5~9歳群にてやや低く、その後は年齢の上昇とともに増加する。
- ホジキンリンパ腫の罹患率は20歳代ならびに30歳代にて高い。
- 非ホジキンリンパ腫の罹患率は年齢共に増加し、30歳代では血液腫瘍にて最も高い。
(出典)Jpn J Clin Oncol. 2017 Aug 1;47(8):762-771. doi: 10.1093/jjco/hyx070.
小児がんには様々な腫瘍があり、年齢により好発のものとそうでないものがあることが具体的に分かりました。では、小児がんに気がつくにはどうしたらいいのかについて考えてみたいと思います。
3.小児がんの症状や所見 ~急性リンパ性白血病まで~
小児がんに気がつくためにはどのような症状があるかを調べてみました。
警告症状
小児がんを疑う症状には次のようなものがある。詳細な病歴聴取が第一歩となり、主訴が大切である。
- 説明のつかない顔色不良、元気のなさ
- 異常なしこり、腫瘤、腫脹
- 説明のつかない発熱、症状の持続
- 容易に生じるあざや出血
- 長期的または継続的な身体の痛み
- 跛行
- 頻繁な頭痛(とりわけ朝に生じやすく嘔吐を伴う)
- 突然の聴力または視力変化
(出典)UpToDate > Overview of the presenting signs and symptoms of childhood cancer, last updated: Jun 09, 2021.
例えば、貧血による顔色不良や元気のなさ、血小板減少による易出血性によってあざや出血(例:点状出血)は白血病でも見られますね。今回は、疫学的にも多い急性リンパ性白血病(ALL)の臨床所見について深掘りしてみます。急性リンパ性白血病の症状や所見のあたりのゲシュタルトづくりが出来れば思います。
受診時の最も一般的な小児のALLの臨床所見
・肝腫大(64%)、脾腫大(61%)
→臓器腫大は食欲不振、体重減少、腹部膨満、または腹痛として現れる・リンパ節腫脹(約50%)
・発熱(≧50%):感染または腫瘍熱
・血液学的異常
>出血(約50%):点状出血や紫斑、診断時の血小板数<100,000/microL(約75%)
>貧血(≧50%):蒼白、倦怠感
>白血球数:正常または増加(WBC<10,000/microLが約50%、>50,000/microLが20%)
・筋骨格系の痛み(43%)
一般的ではないALLの臨床所見
・頭痛(<5%)
→白血病が中枢神経に浸潤した場合は頭痛、嘔吐、傾眠、項部硬直、稀に脳神経異常を伴う・精巣腫大(<1%):左右差に注意
※白血病の再発の際には男児で最大10%に達する・縦隔内腫瘤による上大静脈症候群(SVCS)、気管の圧迫
→疼痛、嚥下障害、呼吸困難、頸部・顔面・上肢腫脹
(出典)UpToDate >Overview of the clinical presentation and diagnosis of acute lymphoblastic leukemia/lymphoma in children, last updated: Apr 13, 2021.
ALLの際に、稀ながらも精巣腫大も生じうるというのは大発見でした。ALLの浸潤・転移によるものだそうです。ALLと分かった際には身体所見としても確認を忘れないようにしたいですね。
この先として小児科の疾患の深掘りか、プライマリケアでの白血病の手がかりや全体像などが気になります。
本日もお読みくださり、ありがとうございました。