『その症状は こう読み解く! 臨床に役立つ神経解剖のツボ』
ワレン バージャー, ジョン バージャー(著)
上田剛士(監訳), 丸山尊(訳)
<目次>
神経診察、神経症候学的な視点における局在診断の勉強をする際に、「原則は学んだけど…」というような人も多いと思います。それを豊富な症例で解決に導いてくれる医学書です。
【こんな人におススメ】
- 神経解剖学を臨床に活かしたい
- 局在診断の原則を使ってみたい
- 神経解剖学の勉強のモチベーションに
この書籍のおすすめポイントは、神経局在診断の練習ができる症例編があることです。25症例もあり、それに基づいておすすめしています。
この本の特徴
大きくPart 1の概論編、Part 2の症例編に分かれています。
Part 1(概論編)は、他の神経解剖学の教科書に似ています。基礎医学の神経解剖の教科書として『リープマン 神経解剖学』や『カラー図解 神経解剖学講義ノート』などをお使いの方はそちらをイメージしていただければと思います。Part 1のChapter 6が局在診断入門でそこでの原則をPart 2に活かすことになります。
Part 2(症例編)がこの本のポイントだと思います。Part 1とセットになっていることでPart 1が活きてくるとも言えます。局在診断の症例が25症例もあり、解説もしっかりしています。症例も具体的な病歴から筋力評価、神経学的所見まで挙げられており、そこから神経局在診断をする練習ドリル(ドリルというほどあっさりではなく、1症例あたり数ページはあるので演習問題集とも言うべき!?)のようなものです。「診察のポイント」として局在診断の思考過程を整理することもでき、解説もしっかりしています。図が多いことも神経領域では理解を助ける良い点だと思います。
書籍表紙の帯にも「神経嫌い(neurophobia)に効きます」というようなことが書かれていますが、やはりPart 1を無味乾燥としてただ読むのではなく、Part 2を解きながら神経症候学を活かす形で学べるのが、醍醐味ともいえるでしょう。
この本の感想+α
神経解剖学の教科書のような部分だけでなく、局在診断の症例集(練習問題)のようなものまでセットなので、症例集を解いている時に前半のPart 1(概要編)に戻るような使用にも適しています。「神経解剖学+局在診断の解説付き練習ドリル」でしょう。もちろん、症例帖なので原則に基づいています。現実は脳幹の神経核の位置なども個人差がありもっと複雑ですが、まずは原則からでもいかがでしょうか。
せっかくなので、基礎医学を学ぶときからこのような臨床ま で意識できる本に出会えると、基礎医学を学ぶ意義を感じやすかったかもしれません。USMLE Step 1のような視点の良さに近いと思います。
他にも、私自身の勉強スタイルとして分厚い教科書をただただ読むことは苦手です。アウトプットしてみたり、ゲームのように問題集を使ってみたりすることもあり、ドリルのようなものはとても嬉しく感じます。抗菌薬では『これでわかる! 抗菌薬選択トレーニング -感受性検査を読み解けば処方が変わる』, 藤田直久(編)という本にもお世話になりました。抗菌薬の本は選択肢形式でしたので、神経解剖のツボではそれほどのクイズ感はないですが、解きながら/間違えながら学ぶのにいかがでしょうか。今回の神経解剖・局在診断も、抗菌薬も、症例ベースで原則から考えることで理解が深まる/実際に使いやすくなると思います。
本日もお読みくださり、ありがとうございました。
演習・練習ドリルのような形で学びを深められる書籍です。読者レビューをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。
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