医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

疫学:がん患者の発熱の原因

疫学:がん患者の発熱の原因

 

1.白血病の感染源・発熱原因

2.がん患者の発熱の原因

 

 少し前のことになりますが、急性白血病の患者さんで発熱性好中球減少症(febrile neutropenia; FN)があり、血液培養は陰性であり他にも疑わしい熱源がなく、芽球割合の変化からも原因が腫瘍熱であろうということがありました。

 『発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン(2012年)ではMASCCスコアやキノロン予防投与の有無によって、静脈注射や経口、抗菌薬の種類の差こそあれ、抗菌薬が投与されます。もちろん、好中球の数が少なく易感染状態であり、先手先手に対応していくのは納得です。一方で、そのうちどれくらいの割合でどのような感染症が原因であるかといったことが気になりました。今回はそこを深掘りしてみたいと思います。

 

1.白血病の感染源・発熱原因

 

 "Causes of fever in cancer patients (prospective study over 477 episodes)"というタイトルのorginal articleを見つけました。症例の件数的には参考程度ですが、その中で白血病の患者における感染症の原因の件数をまとめたものがありました(後で固形癌含め詳しく扱います)。

 

白血病を伴う患者における感染症の原因

原因

症例数

割合 (%)

耳鼻咽喉科領域

10

16.1%

呼吸器

11

17.7%

消化器

5

8.1%

尿路

2

3.2%

神経

4

6.5%

軟部組織

4

6.5%

敗血症

3

4.8%

一次性菌血症

11

17.7%

二次性菌血症

11

17.7%

その他

1

1.6%

合計

62

100%

(出典)Support Care Cancer. 2006 Jul;14(7):763-9. doi: 10.1007/s00520-005-0898-0. Epub 2006 Mar 10.

 

 白血球患者の発熱を伴う感染症の原因として呼吸器感染症、一次性菌血症、二次性菌血症がいずれも17.7%で最も多く、それらに次いで耳鼻咽喉科(ORL)領域の感染症多いがという結果でした。この際の白血病患者はFNの状態とFNではない状態の両者が含まれています。この文献には、他にも固形癌やリンパ腫の場合の感染源の割合もあり、さらにこの文献を読み進めて行きたいと思える内容でした。

 少し脇道に逸れますが、白血病の治療の際などに気をつけるべきFNでは、ガイドライン上の選択肢は抗菌薬投与でした。一方で白血病の診断時等(好中球が減っていない場合)はどうなのか疑問に感じました。白血病の際には易感染とは聞きますが、実際はどうなのでしょうか。

 小児の急性リンパ性白血病(ALL)ではありますが、ALL診断時の発熱のみに対して抗菌薬が必要であるのかということについて深掘りした文献も見つけました。

 

METHOD

・ALLと診断された21歳未満(診断時)

・体温(口腔)38.3℃、38℃以上にて4時間、最近の発熱、また敗血症の疑いのある発熱のみ患者

 

RESULT

・221名中126名(57%)で発熱を認め、血液培養が採取

・血液培養を採取された126名のうち、2名(1.6%)で陽性

・血液培養陽性例では、A群β溶連菌(GAS)1件と大腸菌1件

(出典)J Pediatr Hematol Oncol. 2015 Oct;37(7):498-501. doi:10.1097/MPH.0000000000000417.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 この結果を考えると、発熱のみで感染源が分からないとも考えられる発熱の場合は菌血症、敗血症の可能性は低そうです。好中球の数にもよりますが、化学療法前(診断時)なので特に好中球減少症の状態であるわけではなさそうです。このことも考慮に入れれば、当たり前ではありますが非感染性の発熱の原因(例えば、腫瘍熱、薬剤性)をしっかりと考えないといけなさそうです。



2.ガン患者の発熱の原因

 それでは先ほど紹介した担癌患者の発熱の原因というタイトルの文献から、担癌患者さんの発熱の原因について深掘りしていきたいと思います。この文献の良いところはFNの患者さんとそうでない患者さんに分けて解析している点にもあると思います。

 

METHOD and PATIENT

発熱の定義

・体温38.5℃を超える

・または38℃を超える24時間以内の2回のピーク、

好中球減少症

・好中球減少群は好中球数が500/uL未満

発熱患者の診察

・病歴

・身体診察

・胸部X線

・尿培養

・血液培養2セット

・呼吸器症状を認める場合:肺炎クラミジア、レジオネラ、肺炎球菌の血清学的検査

・疑わしい部位の培養

 

RESULT

・477 episode(371名)の前向き研究

・53名が白血病、26名がリンパ腫、292名が固形癌

・好中球減少症は24%(116 episodes)

感染症が原因:67%

・非感染症が原因:23%

・不明熱(FUO):10%

・好中球減少症の伴う感染性の原因(239/357)と好中球減少症を伴わない感染性の原因(80/115)の間に頻度の有意差はなし

 

<非感染性の原因>

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・FUOは好中球減少症群で頻度が高い〔20/115(17%)vs. 26/357(7%), p=0.0015〕

・FUO以外の原因は非好中球減少症群で頻度が高い〔92/357(26%)vs. 15/115(13%), p=0.0046〕

 

感染症の感染源>

・好中球減少症の有無による差異

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・腫瘍の種類ごとの差異

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<菌血症の病原体>

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・感染に関連する死亡率

 →好中球減少症群 4.3%(5名) vs. 非好中球減少症群 11.1%(40名) (p=0.03)

 

(出典)Support Care Cancer. 2006 Jul;14(7):763-9. doi: 10.1007/s00520-005-0898-0. Epub 2006 Mar 10.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 例えば、一次性菌血症が好中球減少症群で多いのは予想通りでしたが、意外な結果が大きく2つほどありました。1つ目は、好中球減少症の有無による感染性または非感染性の原因の頻度に有意差は認めないというのは、好中球が少ない方が感染症になりやすいような印象と異なり意外な印象を受けました。

 2つ目は、感染に関連する死亡率において好中球減少症群の方が死亡率が高いと予想していたのですが、結果は非好中球減少症群の方が死亡率が高いという結果でした。これは、好中球減少症を伴う方が治療介入等がすぐに入るから等と推測できますが、それでも好中球の数の影響よりも治療介入等によって予後が変わることに驚きは隠せませんでした(いくら好中球減少症がなくても必要であれば治療介入はすると思うので)。

 

 臨床をしている時の頻度が多そうとか少なそうとか、個人の肌感覚の怖さ(エビデンスと意外とズレている)を感じるエビデンスでした。この文献内には他にも好中球減少症群群と非好中球減少症群群の感染症全体での病原体の差異等の記載もありました。詳しくは文献をご確認ください。

 

 他にも、担癌患者の発熱の原因や病原体の疫学はエンピリックに治療をする際にも役立ちそうです。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。