医学書ログ(書籍紹介)
『臨床医のための 進化するアウトプット 学術論文からオンライン勉強会、SNSまで』
- 総合診療 2021年5月号
- 大浦 誠 (編集), 長野広之 (編集), 森川 暢 (編集), 吉田常恭 (編集)
<目次>
巡り合えて良かったと思う書籍の紹介です。普通の医学書を紹介するというより、周辺をテーマにしたものや興味深いものを紹介できればと思います。
1.書籍紹介
今回は、有益な・興味深い情報を発信(アウトプット)されている憧れの先生方4名による雑誌『総合診療』の2021年5月号の特集です。「臨床医のための進化するアウトプット」ということで、タイトルから惹かれました。
あくまでも内容に興味を持ったという事で、総合診療という診療科としてのアイデンティティというのか、独自性・専門性というのかは分かりません。その点はご了承ください。
【こんな人におススメ】
- アウトプットに興味がある
- 学んだことを自分のものにしたい →研鑽して、普段に活かしたい
- 発信してその先のご縁を楽しみたい
一言でいうならば、興味深いものが出ました!!
ブログをやっていたり、勉強会等の運営をやっていたり、Youtubeを臨床推論の勉強会の補足(事前学習、事後復習用)がてら少し動画をUPしてみたりとしてきた私にとってはとてもワクワクする内容でした。
(素人でもひとまずはじめてみることができますという例としてお考え下さい)
何がこの本の魅力かというと、いろいろな先生方がアウトプットの魅力を教えてくださるだけでなく、アウトプットの方法はブログだけでもなければ、SNSだけでもなく、勉強会だけでもなく、様々な方法があることを教えて下さるところです! Twitterなら140文字だから始めてみようとか、letterに挑戦してみようとか、様々なアウトプットがあることを知り、何かひとつでもやれることがあれば、このゴールデンウィークのちょっとした空いた時間に始めるきっかけにもいいと思います。
【アウトプットの具体例とおススメ】
例えば、YouTubeでのアウトプットの記事を書かれている平島修先生は、フィジカルクラブ(身体診察)のYouTubチャンネルを無料で公開しています。医療者に動画をみてもらい、医療を良くしていきたいというのも伝わってくる網羅性も高く自己学習にもってこいの動画です。
「さすがにここまでは…」と感じる人も多いと思いますが、徐々にブログ等でアウトプットしたり、論文に挑戦する前にLetterを書いてみたりとstep upしていく方法もいいと思います。この書籍の中で挙げられているものとして
などがあります。
この特集でも紹介されており、内容がとても楽しくよく拝見させていただいているもののひとつとして、吉田常恭先生ブログも最終的にこのレベルを目指すという道しるべのひとつになりそうです。
他にもこのような総合内科的な視点から興味深い文献を紹介してくださったりするブログもあります。エビデンスとなる論文はもちろん、クリニカルピクチャーなど、多岐に渡ります。
また、家庭医療をEBM(Evidence-Based Medicine)の視点も含めとても参考にさせて頂いているブログになります。この分野では珍しく・素晴らしくエビデンスやデータまで示しながら説明して(深堀りして)くださる広い視点もあり、素敵です。マルチモビディティ(マルモ)等に興味がある人も是非ご覧ください。
(注)マルチモビディティという言葉は日本の総合診療・家庭医療界隈でよく使われていますが、海外ではあまり好まれて使用されていない印象で、Multiple Long Term Conditions (MLTC) やMultiple Chronic Conditions(MCC)等と呼ばれているものです。
2.今、なぜアウトプット!?
初期研修を始めて、1カ月ぐらいで感じたことは耳学問や業務を覚えたり、実際に動けるように訓練することが中心で、そのときの耳学問や手技等に対して文献を見る機会や教科書を見る機会・時間を意識して取らないと、なかなか研修生活でちゃんと書籍や文献から学ぶことが少なくなると感じていました。そういう意味でも、教科書や文献での体験を加速させる意味で文字媒体(内部での音声含む)でのアウトプットが良いというようにも感じています。
例えば、肺炎の抗菌薬治療ひとつとっても自分で調べた上で、耳学問でオーベンの言うことに従って処方していきます。しかし、例えば岩田健太郎先生の抗菌薬の本で体系的に学んで理解した上で抗菌薬の処方について考えてみたいと思ったりします。
- 抗菌薬の本の例→『抗菌薬の考え方,使い方 ver.4 魔弾よ、ふたたび…』, 岩田 健太郎(著)
さらに、抗菌薬治療の期間についての経験則だけでなくエビデンスも探してみたいと思うものです。
「アウトプット」ということで、アウトプットする際には本を読んだり、文献をチェックしたりという自身の学びの機会にもなると思い、紹介させていただきました。今、文献や書籍にあたる機会が少ないという同期はじめ、ぜひ皆様もアウトプットを通じて「文字媒体」に触れる機会にでもなればと思う次第です。
一方で、音声媒体でのアウトプットにも注目しています。私自身の知識では米国内科学会のPodcastのような識者のような会話ができるわけではありませんが、本の感想や考え、意見交換、データ以外の部分を主とする体験談などはPodcastのような音声媒体がとても扱いやすいように感じます。
気になる方は、手に取ってみてアウトプットに挑戦してみてください。そして、アウトプットする内容や自身の得意とする、時間がかからない方法を選んでみてください。
本日もお読みくださり、ありがとうございました。
今回取り上げた書籍です。アマゾンの読者レビューをはじめ、よろしければチェックしてみてください。
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