医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

誤嚥性肺炎!? ~化学性肺臓炎との比較~

誤嚥性肺炎!?
誤嚥性肺炎 vs. 化学性肺臓炎~

 

 誤嚥性肺炎というとどのようなイメージでしょうか!?


 一般的な誤嚥性肺炎のイメージは食事の際や飲水の際に、むせてゴホゴホとしていて、食事や飲み物が気管支に入っていってしまうことで肺炎になるというようなところでしょうか。正解とも大きく間違いとも言えない回答だと思います。
 
 例えば、誤嚥性肺炎の患者さんを診察した際に「誤嚥のエピソード」がない(自覚がない、飲食中にむせるというようなことがない)ということをお尋ねした際に、患者さんが「むせてないのに、私は誤嚥性肺炎!?」と不思議に思われているような印象を受けたことがあります。また、患者さんだけでなく、周りとの話しのつながりにくさを受けました。

 

 誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)化学性肺臓炎(aspiration pneumonitis)という2つの病態・概念があるのでその2つを混同せずに分けて考えることが必要かと思って、しっかり説明できるように調べなおしてみました。

 誤嚥性肺炎と化学性肺臓炎を比較する前に、まずは誤嚥性肺炎の疫学的なことを調べてみて、その重要性誤嚥性肺炎がみられる場面を考えてみたいと思います。

 

誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)
<疫学>

誤嚥性肺炎と化学性肺臓炎区別した研究は少ない
・いくつかの研究では、市中肺炎の5~15%を占める
・神経障害による嚥下障害の患者における死因で最も一般的
 →30万~60万人/年に影響(@USA)
・薬物乱用(drug overdose)で入院している患者の約10%に発症
全身麻酔の合併症として約3000人に1人
全身麻酔の合併症で死に至るものの10~30%)

(出典)N Engl J Med. 2001 Mar 1;344(9):665-71. doi: 10.1056/NEJM200103013440908.

  

 誤嚥性肺炎は市中肺炎のひとつであり、嚥下障害があると生じやすいという程度の認識だけでなく、術後の経過観察中に合併しうることや、drug overdoseの患者さんでも生じうるということは心に留めておきたいと思います。(←これに関しては、これから説明する誤嚥性肺炎と化学性肺臓炎の区別がしっかりされていないから可能性も‥)

 

 では、誤嚥性肺炎と化学性肺臓炎それぞれの特徴と違いについて深堀りしていきます!

 

誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)
・Haemophilus influenzaeやStreptococcus pneumoniae等が鼻咽頭や口腔咽頭で増殖
 →中咽頭にてコロニーを形成した分泌物を吸入することで発症
・口腔ケアがいまひとつの高齢者では、潜在的な気道の病原体であるEnterobacteriaceae, Pseudomonas aeruginosa, Staphylococcus aureusの口腔咽頭でのコロニー形成の頻度が高まる。
・基本的に誤嚥のエピソードはない
 →診断:誤嚥のリスクと胸部画像
・コロニーを吸引→抗菌薬治療が望ましい


化学性肺臓炎(aspiration pneumonitis)
歴史的にはMendelson’s syndromeともいわれる
・薬物乱用(Drug overdose)、発作、脳血管障害、麻酔等による意識障害
 →胃内容物が逆流したものを吸引:急性肺障害
・胃内容物のため、pHが2.5以下、0.3 ml/体重(kg)以上の吸入があると急性肺障害に進展しやすい。
誤嚥から1~2時間後:酸による障害
誤嚥から4~6時間後:炎症
・多くの場合は咳嗽を認める、もしくはwheezeを聴取する程度だが、動脈血の酸素化が悪いだけの人や、一方で呼吸困難、肺水腫、低血圧、低酸素血症を伴う重症ARDSにまで進行する人もいる。

・原則、胃酸のためpHが高くなければ誤嚥したものに菌はなく、抗菌薬治療は不要
(pneumonitisが48時間以上続く場合は抗菌薬投与)


化学性肺臓炎と誤嚥性肺炎の特徴の比較

f:id:mk-med:20210504150413j:plain
(出典)N Engl J Med. 2001 Mar 1;344(9):665-71. doi: 10.1056/NEJM200103013440908.

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 


 両者の違いはいかがだったでしょうか!?

 化学性肺臓炎は感染症ではないというあたりが治療に対して抗菌薬を用いるかという判断をはっきりとさせる気がします。化学性肺臓炎を知らなければ、「誤嚥性肺炎」らしければ抗菌薬というような流れになるかと思います。
 もちろん、化学性肺臓炎でも抗菌薬が必要な場面はありますが、抗菌薬治療へ直結ではないということは評価し考えるワンクッションが入りそうです。

 また、誤嚥性肺炎であれば、喀痰培養した際に口腔内常在菌等がいろいろとみられても、口腔から不顕性に流れ込んでいったともいえそうですね。どのような細菌が培養されてくるか、それ以前にグラム染色でも評価してみたいものです。

 

 化学性肺臓炎の概念や病態を理解していることが、誤嚥性肺炎もしっかり理解する入口になるかと思います。

 この出典には、もっと詳しく誤嚥性肺炎と化学性肺臓炎について治療まで書いてあり読みやすい文章なので、ぜひ読んでみてください。20年程前の文献なので治療については現在の最新のエビデンスと異なる場合もありそうですが、考え方までは応用できそうです。

 

 誤嚥性肺炎とは言っても、市中肺炎(CAP)として治療するようで診療ガイドブックのようなものでは市中肺炎に関する記載の中に次のような記載があります。

 

 高齢者の市中肺炎(CAP)の中には誤嚥性肺炎が含まれていることもあるので、ムセなどの症状があれば入院時に嚥下評価を行うことが望ましい。

 

エンピリック治療(起炎菌が判明すればde-escalationする)

▶細菌性肺炎(Streptococcus pneumonia, Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalis, Klebsiella pneumoniae, Staphylococcus aureusなど)を考える場合

・外来治療:サワシリン(250 mg)6錠分3~8錠分4

・入院治療でCAPを強く疑う:ビクシリン1~2g 1日4回点滴

(第二選択:レスピラトリーキノロン

・入院治療でエンピリックに治療:ユナシン-S 1.5g~3g 1日4回点滴 または ロセフィン 1~2g 1日1回点滴など

 

(出典)ポケット呼吸器診療2021

 

 非定型肺炎ではない細菌性肺炎を考える場合は、上記のようです。サワシリンは一般名 アモキシシリン、ビクシリンは一般名 アンピシリン、ユナシンは一般名 アンピシリン・スルバクタム(βラクタマーゼ阻害剤配合抗菌薬)、ロセフィンはセフトリアキソンです。

 

 治療を考え始めたら、今度は耳学問だけではない体系的な抗菌薬の勉強がしたくなってきますよね!これらの抗菌薬の例は誤嚥性肺炎だけではないので、誤嚥性肺炎と化学性肺臓炎を紹介したNEJMの文献内での考え方もやはり必要かとも思います。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。