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血球貪食症候群 HLH-2004 & HScore ~内科緊急症の掴みどころを探る①~

血球貪食症候群(HLH)内科緊急症掴みどころを探る①

 診断基準HLH-2004 と 臨床予測ルールHScore

 

<目次>

続編【血球貪食症候群 Secondary HLHの原因と鑑別疾患 ~内科緊急症の掴みどころを探る②~

 

 血小板減少原因を挙げて考えていた際に、血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome: HPS, HS)も候補にあがりました。もちろん、その際には赤血球も減りますが、そうはいっても血球貪食症候群特異的な症状を想起しにくく、鑑別疾患としてITPなどもですが、想起するための症状もぼんやりしているように感じます。今回は、内科救急的な病態(内科的な緊急症)である一方で掴みどころいまひとつと感じた血球貪食症候群についての掴むきっかけや原因について調べてみます。



1.血球貪食症候群とは ~国試レベル~

(※血球貪食症候群について少しでもご存じの方はへお進みください)

 血球貪食症候群のイメージについて、国試前にどの程度学んでいたのかを確認したいと思います。学生の国試対策の時には、末梢血塗抹標本や検査値以外にあまり学んだ記憶がありません。はたして…、ということで再確認です。

 

 悪性リンパ腫、ウイルス感染などが引き金となり、活性化されたマクロファージ・組織球が自己の血球貪食することで生じる汎血球減少と、マクロファージなどにより産生される種々のサイトカイン作用により、発熱、肝脾腫、DIC、高ビリルビン血症など多彩な症状を呈する病態である。

 血清フェリチン↑、LDH↑が特徴的である。

(出典)CBT・医師国家試験のためのレビューブック 内科・外科 2018-2019

 

 他にも治療の部分はステロイドをはじめとするものが書かれていますが、疾患の症状や検査結果にあたるような部分についてはこれだけでした。病態は分かるものの漠然としているのに特に変わりはなく、UpToDate等の二次文献からひも解いて行きたいと思います。



2.血球貪食症候群の特徴

 それでは、症状等が漠然としていると感じる血球貪食症候群について本格的に調べていこうと思います。血球貪食症候群ではなく、血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis: HLH)でみつけました。

 

初期症状

  • 通常、多臓器不全に関連する急性または亜急性の発熱性疾患として発症する。
  • 初期の徴候と症状は、一般的な感染症、原因不明の発熱、肝炎、または脳炎のようにみえることがある。

(出典)UpToDate>Clinical features and diagnosis of hemophagocytic lymphohistiocytosis, last updated: Sep 16, 2021.

 

 初期症状は様々で、発熱疾患様としか言いにくい、ぼんやりとしたゲシュタルトですね。UpToDateはとても便利で欲しい情報が二次文献としてまとめられており、さらに詳しく記載があります。引用されて症状や検査結果含め、369名の患者から特徴が引用されていました。引用元でさらに詳しく書いていないか、チェックしてみることにします。

 

HLH患者369名の特徴

(出典)Blood. 2017 Dec 21;130(25):2728-2738. doi: 10.1182/blood-2017-06-788349. Epub 2017 Sep 21.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 上記のうち、発熱(95%)、脾腫(89%)、2系統以上の血球減少(92%)、高トリグリセリド血症またはフィブリノゲン血症(90%)、血球貪食(82%)、フェリチン高値(94%)、sIL-2R高値(97%)が80%を超えており、多くの症例で認められそうです。もちろん、NK細胞活性やsIL-2Rのように検査をされていない症例の割合がそれなりにあるものは、Yes/Noの割合が変わる可能性はあると思いますが、概ね参考になるでしょう。

 このうち、身体診察までで分かりそうなのは発熱脾腫のみという寂しいような状況です。血球減少による症状(例:呼吸困難)や所見(例:出血所見)は見つけられるかもしれません。簡単な検査としては、血球減少、高トリグリセリド血症または低フィブリノゲン血症という項目ぐらいでしょうか。頑張って、フェリチン高値までかなと思います。フェリチンまで疑って検査されていれば、すでに血球貪食症候群を疑っていると考えられる状況もありそうです。

 もっとヒントを探してみようということで診断基準臨床予測ルール(CRPを探してみようと思います。

 


3.診断基準・臨床予測ルール

 もっと、血球貪食症候群を見つけるヒントとなりそうなものを深掘りしていきたいと思います。前からある診断基準であるHLH-2004と後発で臨床予測ルールのHScore(H-Score)について調べてみました。

 

3-1. HLH-2004(診断基準)

 診断基準であるHLH-2004についてチェックしていこうと思います。

 

HLH-2004

Clinical Presentation

  • 最も典型的な所見は、発熱、肝脾腫、血球減少である。
  • その他、一般的な所見には高トリグリセリド血症(中性脂肪高値)、凝固異常、低フィブリノゲン血症、肝障害、フェリチン高値、血清トランスアミナーゼ高値、髄液蛋白高値ならびに中等度の血球増加に伴う神経症状がある。
  • あまり一般的ではないものの、初期の臨床所見としてリンパ節腫瘍、皮疹、黄疸、浮腫がある。

(出典)Pediatr Blood Cancer. 2007 Feb;48(2):124-31. doi: 10.1002/pbc.21039.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 まずは、(1)の分子診断(遺伝子診断)で家族性(原発性)血球貪食症候群(primary HLH)である場合は、すぐに診断となります。原発性のHLHの場合は小児で見つかることが高いと考えられそうです。成人の場合は、上記の診断基準のうち(2)の5項目以上当てはまるかをチェックすることになりそうです。

 一方で成人や原発性であると遺伝子検査でいうことができない場合、臨床症状所見等をチェックとなります。ここにヒントがないかを確かめてみます。診断基準には、発熱、脾腫、血球減少〔貧血、血小板減少、好中球減少(2系統以上)〕、高トリグリセリド血症、低フィブリノゲン血症、血球貪食像(骨髄or脾臓orリンパ節)、悪性腫瘍の除外、NK細胞の活性低下・活性消失、フェリチン≧500μg/L、可溶性CD25(sIL-2R)≧2,400 U/mLという項目があります。

 このうち、一般的な検査までで分かるかというところに焦点を当てて診たいと思います。検査のアクセシビリティやプラクティスによると思いますが、救急外来でも(A)Initial diagnositc Criteriaの部分フェリチンまでは比較的検査まで可能で検査されている可能性がありそうです。そして、検査手前の部分は、発熱、脾腫、貧血の所見(眼球結膜蒼白や皮膚蒼白)、血小板減少や凝固異常による出血の所見ぐらいになってくると思います。

 sIR-2RもT細胞が活性化すれば上がる指標として、リンパ腫でも免疫反応でもありといったように診断にまではたどり着かない程度の特異的な検査であり、NK細胞の活性や遺伝子検査は救急外来や一般的な外来の状況ではいくらなんでも考えにくいと感じました。ましてや、遺伝子検査をするのは今後のためにprimary HLHであることをチェックする目的になると思います。やはり、ヒントはそれ以外の組合せだと感じました。

 黄疸などの初期症状に関しては、もう少し細かく症状の見られる割合などを定量的に知りたいものです。今回の血球貪食症候群疑うためのチェックポイントとしてはむしろ、黄疸などの症状の方が気になります。

 また、HScoreを調べてみて分かったのですが、HLH-2004には分子診断の項目があり、年齢の項目がないことからもやや小児寄りかもしれません。では、他に血球貪食症候群であることに気がつくためのヒントがないかを探すためにHScoreもチェックしてみたいと思います。

 

 

3-2. HScore(臨床予測ルール)

 次に後発のHScoreについて調べてみます。HLH-2004のうち、検査へのアクセシビリティが悪く原発性(primary HLH)を示す遺伝子検査以外の項目と比較しながらチェックしていきたいと思います。

 

  • 血球貪食症候群(HLH)の可能性は、HScore≦90で1%未満、HScore≧250で99%を超える。
  • HLHであった患者のHScore中間値は230 (IQR 203–257)、HLHでなかった患者のHScore中間値は125 (IQR 91–150)であった。

(出典)Arthritis Rheumatol. 2014 Sep;66(9):2613-20. doi: 10.1002/art.38690.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 HScoreは項目ごとのスコアリングが複雑ですが、項目そのものは似ていると感じました。NK細胞活性のような検査しにくいものやsIL-2Rのようなある程度何かを疑っていないとオーダーしないような項目がスコアリングされておらず、一般的な検査までといった印象です。ASTも炎症で何らかの組織が破壊されれば上昇するものでもあり、一般的な検査であるものの特異的ではないですね。免疫抑制状態というのが、検査以外で分かる項目の追加でしょうか。これこそ、血液疾患の難しさとでも言えばいいのでしょうか。

 発熱、肝脾腫、血球減少とその経過がヒントになればと思う程度で、血球貪食症候群を疑う大きなヒントは増えませんでした。HScoreの点数の推移とHLHである確率についての流れを追ってみたい人は上記の出典元を見てみてください。



3-3. HLH-2004 vs. HScore

 せっかく項目まで比較をしたので、診断基準HLH-2004臨床予測ルールの側面の強いと感じたHScoreの診断特性を比較してみたいと思います。

 

後ろ向きコホート研究

HLH-2004

  • 5項目以上の場合:感度91.0%、特異度92.8%、陽性適中率89.6%、陰性的中率93.6%、C-statstic 91.8%

HScore

  • 169点以上の場合:感度96.1%、特異度71.2%、陽性的中率69.5%、陰性的中率96.3%、C-statstic 83.6%
  • 200点以上の場合:感度88.2%、特異度87.4%、陽性的中率82.7%、陰性的中率91.5%、C-statistic 87.8%

(出典)Eur J Haematol. 2022 Apr 18. doi: 10.1111/ejh.13779. Online ahead of print.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 あれれ…、予想外の結果でHLH-2004の方が感度特異度高いという結果になってしまいました。点数を複雑にしている分、HScoreの方が良い面があると思ったのですが、予想外でした。対象患者は18歳以上の後ろ向きコホートであり、成人の血球貪食症候群に当てはめてみたいという視点でもHLH-2004が期待を上回りました。患者に認められたチェック項目の身体所見・検査所見の割合や詳しい方法、結果のROC曲線などは出典をご覧ください。

 HScoreが169点以上と比較して、200点以上のほうがスクリーニング(引っかける)という意味を除けば、バランスはまだ良さそうで、HLH-2004に対抗できそうです。

 

 往生際が悪いのかもしれませんが、予想に反したのでもうひとつ見てみようと思います。今度は小児73名と成人74名の後ろ向き研究です。

 

  • HLH-2004診断基準のうち、sCD-25(sIL-2R)とNK細胞活性は除外した6項目を使用

(出典)Am J Clin Pathol. 2016 Jun;145(6):862-70. doi: 10.1093/ajcp/aqw076.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 今回はHScoreの方が成績がよさそうです。2つを比較してみて気がついた点は、HLH-2004の遺伝子検査以外の診断で用いる項目であるsIL-2RとNK細胞活性を除外しているという点です。HScoreが臨床予測ルールという側面で考えれば、sIL-2Rは一般的な検査よりはいくらかは特異的であり、ましてやNK細胞活性はより特異的アクセシビリティも悪いでしょう。HLH-20046項目から比較するというのは、救急外来のような場面で適応しやすい指標に近づいたように考えられます。そういう意味ではHScoreの方がスコアリングの複雑さはさておき、臨床予測ルールとしては少し良いと考えられそうです。

 比較してエビデンスの状況ごとへの適応のしやすさの部分も意識でき、良かったと思います。しかし、血球貪食症候群の可能性があると気がつくためのヒントは大きく変わりませんでした。さらにDelphi analysistといった他の臨床予測ルールを深掘りしていくこともできますが、項目が少し異なる程度で新たなヒントとなりにくい気がします。

 

 もっと新たなヒントになりそうなことはないかということで、二次性血球貪食症候群Secondary HLH原因を考えれば、その原因ごとの特徴を追うことができるのではないかと考えました。

 

 

4.Secondary HLHの原因

 血球貪食症候群を疑うきっかけとなるような新たなヒント探しとして、次回はSecondary HLHの原因から調べていきたいと思います。

mk-med.hatenablog.com

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。