医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

胸水の原因① ~原因検索:胸腔穿刺とLightの基準~

胸水の原因① 

~ 原因検索:胸腔穿刺とLightの基準~

 

 血性胸水をみて胸水穿刺時の出血か、血性胸水かを判断する機会がありました。ガーゼに少し垂らしてみて、凝固するかというような判断の仕方もあるんだと驚いた次第です。

 それをきっかけに胸水の原因を考える機会がありました。下記の様な順で胸水の原因を突き詰めていくようです。

 

診療のフローチャート

1.臨床情報をもとにした原因検索

 病歴、身体所見、血液検査、胸部画像検査から原因疾患を探る

 胸水の原因が明らかであれば、原因疾患に対する治療を行う

2.胸腔穿刺

 胸水一般、生化学検査、細菌培養、抗酸菌培養、細胞診を提出する

3.滲出性と漏出性の分類

 Lightの基準をもとに、滲出性か漏出性を判断

 漏出性胸水:全身性疾患

 滲出性胸水:莢膜の病変

4.原因疾患の診断

 

(出典)レジデントのための呼吸器診療最適解, 2020, 医学書

 

 「さあ、胸水を見つけた!」と思ったときに、簡単な胸水量の目安もあるようです。



胸部X線所見と胸水量の目安

胸部X線正面像の所見

胸水量

肋骨横隔膜角(CP angle)が鈍化

200-300 mL

外側胸腔の半分

1000-2000 mL

片側ほぼ全体を占める

2000-3000 mL

 

(出典)レジデントのための呼吸器診療最適解, 2020, 医学書

 

 胸水があることもわかり胸水の量も何となくわかったとして、すぐに胸腔穿刺ではないんですね。先ほど引用した大まかな胸水の原因検索の流れが、胸部X線ぐらいや血液検査は胸腔穿刺より先に行うことは納得でしたが、胸部CTも胸腔穿刺よりも一般的に先であるということは感覚的で調べるまでは確証がなかったです。

 臨床情報をもとにした原因検索として、病歴や身体診察はもちろん納得できますが、胸部X線、血液検査、胸部CTを用いて、さらに先の原因検索として胸腔穿刺になるようです。病歴や身体診察は鑑別疾患についても考える(胸水を見た時点で挙げておく)必要があると思います。また、検査では実際にどのような点を評価するかも気になります。

 鑑別は後で胸水の性状等ともセットに考えてみたいと思いますので、まずは検査(胸部X線、血液検査、胸部CT)にてチェックすべき点を深堀りしてみます。



胸部X線

 過去との胸水量の比較で急速に増加する片側胸水では悪性胸水や急性膿胸の頻度が高い。

血液検査

 肝機能、腎機能、心機能を評価→血算・生化学・BNPなど

 ※大量胸水で呼吸不全を呈している→動脈血ガス分析

胸部CT

 肺内病変の検索。

 

(出典)レジデントのための呼吸器診療最適解, 2020, 医学書

 

 

 これで原因が明らかでないときに、皆様お待ちかねの胸水の原因検索に胸水穿刺が登場します。胸水穿刺では、胸水一般、生化学検査、細菌培養、抗酸菌培養、細胞診を提出するらしいですが、胸水一般の中で胸水蛋白や胸水LDHが分かるとやっと、みなさんご存知のLightの基準に至ります。

 

Lightの基準

以下のうち、1つ以上満たせば滲出性胸水と判断

① 胸水蛋白/血清蛋白 >0.5

② 胸水LDH/胸水LDH >0.6

③ 胸水LDH>血清LDH正常上限値の2/3

 

 Lightの基準で「滲出性胸水」を見つけ、全身性疾患で生じることが多い漏出性胸水と胸膜の病変で生じることが多い滲出性胸水に分けます。でも、このCriteriaのEBMが気になるので深堀します。Lightの基準を満たしたときにどの程度、滲出性胸水らしいのかを深堀りします。

 

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(出典)N Engl J Med. 2002 Jun 20;346(25):1971-7. doi: 10.1056/NEJMcp010731.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 Lightの基準は滲出性胸水に対する感度が98%と高いですね。また、特異度が83%であることから考えれば、Lightの基準から滲出性胸水であると判断されても、漏出性胸水である可能性も残っている(逆に滲出性と判断した際も少しあり)とも言えますね。

 他にもコレステロール値やアルブミン値も補助的に滲出性胸水であるかを判断するのに使えそうです。

 

 ここで、漏出性胸水(原因:主に全身性疾患)滲出性胸水(原因:主に胸膜の病変)の鑑別を調べてみます。

 

胸水の原因

漏出性胸水transudative effusions

滲出性胸水exudative effusions

・うっ血性心不全

・肝硬変

ネフローゼ症候群

・糸球体腎炎

・腹膜透析

・低アルブミン血症(典型的には1.5mg/dl未満)

・無気肺

・上大静脈閉塞

・Trapped lung

・サルコイドーシス

・粘液水腫

・脳脊髄液漏出症または脳室・胸腔シャント

・Urinothorax

・肺動脈性肺高血圧症

肺塞栓症

・心膜疾患

・中心静脈カテーテルの血管外への移動

感染症:細菌性、ウイルス性、結核性、真菌性、寄生虫

腫瘍性:転移性疾患(例:肺癌、乳癌、リンパ腫、骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌胆管癌)、中皮腫原発性体腔リンパ腫

肺がんによる反応性胸膜炎

反応性胸膜炎:例、肺炎

塞栓性疾患:肺塞栓症

腹部疾患:膵炎、胆嚢炎、肝または脾臓の膿瘍、食道静脈瘤硬化療法後の食道穿孔

心筋梗塞(冠動脈バイパス術、心臓手術、心臓アブレーション術後)、肺静脈狭窄症などの心臓または心膜の損傷

婦人科領域:卵巣過剰刺激、メイグス症候群、子宮内膜症、分娩後の合併症

膠原病血管疾患:関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、家族性地中海熱、好酸球性肉芽腫症、多発性血管炎を伴う肉芽腫症

薬剤:ニトロフラントイン、ダントロレン、メチセルギド、ダサチニブ、アミオダロン、インターロイキン2、プロカルバジン、メトトレキサート、クロザピン、フェニトイン、β-ブロッカー

エルゴット系薬剤

血胸

乳び胸(外傷後またはリンパ腫患者によく見られる)

サルコイドーシス

リンパ形質細胞性リンパ腫

コレステロール性胸水(結核、リウマチ性胸水、その他の慢性胸水によく見られる)

その他:アスベスト胸水、黄色爪症候群、尿毒症、溺死、アミロイドーシス、電気火傷、異所性胸水、毛細血管漏出症候群、髄外性造血症

 

(出典)N Engl J Med. 2018 Feb 22;378(8):740-751. doi: 10.1056/NEJMra1403503.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 胸水の意外な原因として急性膵炎を知っている人は多いと思いますが、他の腹部疾患で生じることもあると分かりました。薬剤性、黄色爪症候群(Yellow nail syndrome)、尿毒症あたりは知らなければ思い浮かばないような胸水の原因かなと思います。

 これらの胸水の原因から問診(病歴聴取)や身体診察も意識できるのではないかと思います。


 次回はこの先の胸水の鑑別や胸水の一般検査等も深堀することも考えてみたいと思います。

【続きはこちら:胸水の原因② ~胸水検査の各項目と鑑別~】

mk-med.hatenablog.com

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。