医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

しゃっくり(吃逆)の原因 ~High Yieldな症候?~

しゃっくり(吃逆)の原因

High Yieldな症候Low Yieldな症候?~

 

 実際に聞いた話しですが、「しゃっくりが止まらない」と救急外来に患者さんがきたら、どうでしょうか。何となく、GERDの患者さんで生じることがあるとか耳学問で聞いたことあるレベルです。

 しゃっくりの原因なんて考えたことがないという人が他にもいればと思い、深掘りしてみることにしました。しゃっくりの原因の緊急性についてや、そもそも「しゃっくり」という症候がhigh yieldな症候であるのかについても考えてみたいと思います。

 

 まずはと思って調べた『ハリソン内科学 第5版』の索引には「しゃっくり(吃逆)」という言葉は見つかりませんでした。そこで、UpToDateで”singultus”と検索して、しゃっくりという項目を見つけました。

 

しゃっくり hiccups

 

 しゃっくりは、英語ではhiccup、hiccoughもしくはsingultus(”gasp”や”sob”を意味するラテン語のsingultが由来)として知られている。

(出典)UpToDate > Hiccups, 2021年6月7日

 

 何かあって日本語の教科書等で見つけられなければ、英語で検索することも多いと思うのですが、胸痛=chest painとは違って、こういう単語はなかなか思いつかないので、冒頭にこのような記載記載があり、ちょうどよかったです。

 

 では、しゃっくりについて深掘りしていきたいと思います。



しゃっくりの分け方

持続時間で分ける:特に48時間!!

 

<48時間以上続くしゃっくり(持続性 ”persistent”)>

稀に重大な病気によるものであることがある

・問診、身体診察、いくつかの検査により根底にある原因を探す(多くの患者では特異的な原因が見つからない)

・病因を探す間に症状を取ることも行う

・しゃっくりが日常生活にどの程度影響を及ぼしているかを評価すべき

 

※1カ月以上続くものは”intractable”

 

<48時間以内のしゃっくり>

典型的には重大な病気によらない

・症状の改善に重点を置く⇒physical maneuver

 

(出典)UpToDate > Hiccups, 2021年6月7日

 

 

 しゃっくりの原因(鑑別疾患)を基本的に頭の片隅にでも考えるのは、48時間以上しゃっくりが続く場合と言えそうですね。では、しゃっくりの原因について挙げていきます。

 

しゃっくりの原因(鑑別疾患)

 

中枢神経系疾患

・血管系

虚血性・出血性脳卒中*、動静脈奇形(AVM)、巨細胞性動脈炎

感染症

脳炎*髄膜炎、脳膿瘍、神経梅毒

・構造的原因

頭部外傷*、頭蓋内腫瘍、脳幹腫瘍、多発性硬化症、脊髄空洞症、水頭症

迷走神経および横隔神経の刺激

甲状腺*、咽頭炎喉頭炎、異物もしくは毛髪による鼓膜の刺激、頸部嚢胞またはその他腫瘍

消化管疾患

・胃拡張、胃炎、消化性潰瘍、膵炎、膵癌、胃癌、腹部膿瘍、胆嚢疾患、炎症性腸疾患、肝炎、空気嚥下症、食道膨満、食道炎、腸閉塞

胸部疾患

感染症または新生物によるリンパ節の腫大*、肺炎、膿胸、気管支炎、喘息、胸膜炎、大動脈瘤、縦隔炎、縦隔腫瘍、胸部外傷、肺塞栓

心血管系疾患

心筋梗塞、心膜炎

中毒・代謝性疾患

アルコール*、糖尿病、低カルシウム血症、低CO2血症、低ナトリウム血症、尿毒症

術後

全身麻酔、挿管(声門の刺激)、頸部伸展(横隔神経根の伸展)、胃拡張、内臓の牽引

薬剤性

・αメチルドパ、短時間作用型バルビツール酸系、化学療法(例:カルボプラチン)、デキサメタゾンジアゼパム

精神疾患

・食思不振症(AD)、転換反応、興奮、ストレス、統合失調症詐病

その他感染症

横隔膜下膿瘍、マラリア結核帯状疱疹、COVID-19

*より一般的な原因

 

(出典)UpToDate > Hiccups, 2021年6月7日

 

 

 しゃっくりの原因は多岐にわたり、そもそも48時間以内の際に原因を考えるべきかというのに加え、とてもLow Yieldな症候であり、何でもありな印象を受けました。

 

 逆流性食道炎が”chronic hiccups(48時間以上続くしゃっくり)”の原因の中で50%を占める

(出典)Rev Med Interne. 1992 Nov;13(6):454-9. doi: 10.1016/s0248-8663(05)81547-4

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 上記のような一報告もありますが、これ以外にも様々な報告があり、UpToDateぐらいが上手にまとまっているように思います。



 今回は、しゃっくりの原因が少ないであろうという期待はハズレでした。鑑別疾患を絞り込むのに使えるHigh Yieldな症候かと思いましたが、アテにはならなさそうです。しゃっくりだけでなく、他の症候があれば他の症候の方が診断のヒントになることが多そうです

 

P.S. 

 ちょうど、そんなことを言っている間に総合診療2021年6月号が発売になりましたね。タイトルにも、この診断で決まり! High Yieldな症候たちとあって、類似性があるとか思いきや、ちょっと違いました。例えば、呼吸困難ではなく「歩くと楽になる呼吸困難」というような特徴的な病歴でした。

 

患者さんがいろいろ言っている中で、「これは意義が高い」、「このことを言えば病気が絞れる」というHigh Yieldな症候がいくつかあるので、それを知っておくことは“強み”ですよね。病歴を聞くだけで、グッと絞りに行けますから。

(出典)Vol.31 No.6 2021-June, 総合診療, 693.

 

 特集の中の志水太郎先生と上田剛士先生の対談の形式の病歴聴取に関する部分からです。是非、タイトルやその表紙のHigh Yieldな症候(例:風が恐い、ヘソが毎月痛む、歩くと楽になる呼吸困難?、…)に興味のある方は是非どうぞ。しゃっくりの鑑別の様な主旨とは違いますが、このような症例が49症例も紹介されています。 

 

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 本日もお読みくださり、ありがとうございました。