結節性紅斑 erythema nodosum
~全身性疾患の徴候~
前回、結核による結節性紅斑が認められた症例をきっかけに結核の皮膚病変、皮膚結核について深掘りしてみました。
結節性紅斑は結核による皮膚病変であるが、皮膚結核ではないような何とも言いがたい分類を前回の深掘り(肺外結核と皮膚結核 ~結核と皮膚病変~ - 医学生からはじめる アウトプット日記)で見つけました。
分類によるのかもしれませんが、何だか腑に落ちないので、結節性紅斑について調べてみます。
Erythema Nodosum: A Sign of Systemic Disease
Robert A Schwartz, Stephen J Nervi
結節性紅斑は、皮下脂肪の有痛性の炎症で蜂窩織炎の最も一般的なもののひとつ。【疫学】
・10,000人のうち約1〜5人に生じる
・成人の場合の男女比は1:6(女性に多い)
・小児の場合の男女比は1:1
【臨床症状・所見】・結節性紅斑は、径1〜10cmで境界不明瞭。
〈結節性紅斑の基本的な特徴〉・有痛性
・対称性
・赤色の小結節
・前脚(前脛骨)が最も好発
・数週で打撲様を伴い、紅斑は消退する
・潰瘍はなく、完全に治癒する傾向にある(1〜2カ月)
・前駆症状は一般的に1〜3週間前に見られ、体重減少、倦怠感、微熱、咳嗽、関節炎を伴わない関節痛が特異的な症状に含まれうる。
【一般的な検査結果】・白血球増加(10,000/mm3以上)、赤沈亢進、CRPの上昇が認められうる。
【病因】・皮下での様々な抗原による非特異的な反応
・IV型(遅延型)アレルギー反応が関与するとされている
【病理組織】
・皮下脂肪組織における中隔の炎症: 中隔性脂肪織炎
・新生血管周囲への好中球の浸潤がみられる
・光線性放射状肉芽腫(actinic radial granulomas)が特徴的な所見である。
・血管の炎症や出血を伴いうるが、血管炎とは関連なし
【結節性紅斑の原因】〈Common〉
・特発性 (up to 55%)
・感染症: streptococcal pharyngitis (28-48%), Yersinia spp. (ヨーロッパ), mycoplasma, chlamydia, histoplasmosis, coccidioidomycosis, mycobacteria
・サルコイドーシス(11-25%)(両側性肺門リンパ節腫脹を伴う)
・薬剤性(3−10%): 抗菌薬(e.g. サルファ剤,アモキシリン), 経口避妊薬
・妊娠 (2-5%)
〈Rare〉(1%未満)
・ウイルス性: 単純ヘルペスウイルス, Epstein-Barrウイルス, B・C型肝炎ウイルス, HIV
・細菌性: Campylobacter spp., rickettsiae, Salmonella spp., psittacosis, Bartonella spp., syphilis Parasitic: amoebiasis, giardiasis
その他:リンパ腫, その他悪性腫瘍
・結節性紅斑の全患者は、結核への暴露のリスクによって階層化されるべきある。・潜在的には治療可能な全身性疾患の兆候であることが多い。
【診断】・包括的な病歴や身体診察のあとに診断的な評価・検査を行う。
【鑑別疾患】
【治療】
・基本的に治療をしなくとも自然消退する。
・根底にある疾患に対する治療と支持療法が最も一般的。
(出典)Am Fam Physician. 2007 Mar 1;75(5):695-700.
やはり、結節性紅斑の原因の多さはじめ結核特有ではなく様々な抗原によるIV型アレルギー反応の様です。結核菌が皮膚病変から認められるわけでもなく、真性皮膚結核に含まれないのはもちろん納得ですが、免疫反応という意味では結核疹に含まれないのは少し腑に落ちない部分もあります。
しかし、いろいろと結節性紅斑について分かりました。そして、結節性紅斑であれば結核というわけでは全然ないという意味からも、全身疾患の兆候としての皮膚所見として結節性紅斑を見直すいい機会になりました。
出典はFree Article なので、もっと詳しく見てみたい方は是非どうぞ。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。