~結核と皮膚病変~
<目次>
2週間以上続く発熱と下腿の皮疹を認めた40歳台の男性の症例と症例集にて出会いました。皮疹は結節性紅斑で、最終診断は肺結核でした。
やはり結核の症例は様々なclinical maniestationsがあり、興味深いですね。皮膚所見が苦手で、結節性紅斑やその他の皮膚病変がいまひとつ理解できていません。結節性紅斑は、結核に対する免疫反応とのことで、結核と皮膚病変について調べてみたいと思います。
結節性紅斑も気になりますが、結核による他の皮膚病変についてもどのようなものがあるか知りたいため、まずは肺外結核や皮膚結核について調べてみます。
1.肺外結核
まずは、肺外結核の部位と疫学から調べてみます。
肺外結核は結核患者の10~40%に発症する。さらに、HIVと結核の両方に患者では、最大3分の2の患者が、肺結核と肺外結核の両方ともか、肺外結核のみかを発症する可能性がある。
肺外結核は頻度の順に次の通りです。
・リンパ節:結核性リンパ節炎(35%)
・胸膜:胸膜結核(20%)
・尿生殖器:尿生殖器結核(10~15%)
・骨関節:骨関節結核(10%)
・髄膜:結核性髄膜炎および結核腫(5%)
・腹膜
・心外膜:結核性心外膜炎
実際には、上記以外にも胃腸結核(3.5%)、播種性結核がある。さらにまれな肺外結核として、結核は脈絡網膜炎、ぶどう膜炎、汎眼球炎、結核性耳炎、皮膚病変、結核性乳腺炎、副腎結核の原因となる。結核の皮膚病変には、直接接種による初期病変、膿瘍と慢性潰瘍、皮膚腺病、尋常性狼瘡、粟粒病変、結節性紅斑といったものが含まれる。
また、すべての臓器が感染しうる。
(出典)『ハリソン内科学 第5版 <全2巻>』
本当に何でもありですね。肺外結核の中でも皮膚結核(皮膚病変)は稀な肺外結核のひとつのようです。
2.皮膚結核
肺外結核のひとつである皮膚結核について深掘りしていきます。皮膚結核がどれぐらい稀なのかを調べてみます。
(出典)Clin Dermatol. May-Jun 2019;37(3):192-199. doi: 10.1016/j.clindermatol.2019.01.008. Epub 2019 Jan 11
結核全般ではなく、肺外結核のうち1~2%とというと多いとは言えないといった印象です。ちょうどよさそうなreview articleなので、このまま皮膚結核について読んでみます。
Cutaneous tuberculosis: A great imitator
Qiquan Chen, Wen Chieh Chen, FeiHao.
皮膚結核(cutaneous tuberculosis; CTB)について
<疫学>
・全肺外結核のうち、皮膚病変がみられるのは1~2%のみ
<分類と病態>
・CTBの分類は複雑で、様々な分類がある。
・「(真性)皮膚結核」(“True CTB”)と「結核疹」(“tuberculid”)に大きく分ける分類が最も広く受け入れられている(table 1)。
・真性皮膚結核では、病変部から一般的な検査によって結核菌が認められ、病原菌に対する直接的な免疫反応である。
・結核疹は、結核菌に対するアレルギー反応による皮疹である。真性皮膚結核
・真性皮膚結核はさらに、外因性と内因性に分けられる。
・外因性は結核菌の接種によるものである。
・内因性は直接拡散、自己接種、または血行性によるものである。
<皮膚所見と分類>
・紅斑、局面:主に尋常性狼瘡(lupus vulgaris)や疣状皮膚結核(TB verrucosa cutis)でみられる。
・斑、丘疹:典型的には腺病性苔癬(lichen scrofulosorum)、丘疹状壊疽性結核疹(papulonecrotic tuberculid)、粟粒結核(miliary tuberculosis)でみられる。
・潰瘍、びらん:皮膚腺病(scrofuloderma)、バザン硬結性紅斑(erythema indruratum of Bazin)、開口部皮膚結核(orifical TB)、ならびに時折 丘疹状壊疽性結核疹で潰瘍性びらん病変がみられる。
・結節:バザン硬結性紅斑(erythema indruratum of Bazin)でみられる。
※結節性紅斑(erythema nodosum: EN)は肺結核に関連しうるが、皮膚結核(CTB)には分類されていない。
・膿瘍:転移性結核膿瘍(結核性ゴム腫: tuberculous gumma)でみられる。・他にも、シクロホスファミドならびにプレドニゾロンで治療中のSLE患者における粟粒結核では蜂窩織炎様を呈する皮膚結核もみられる。
(出典)Clin Dermatol. May-Jun 2019;37(3):192-199. doi: 10.1016/j.clindermatol.2019.01.008. Epub 2019 Jan 11
この文献には実際の皮膚病変の臨床写真も掲載されていました。実際の臨床写真を見てみたい人は上記よりどうぞ。
この文献の分類では、結節性紅斑は皮膚結核には分類されていないとされています。結節性紅斑も結核に対する免疫反応であれば、結核疹(“tuberculid”)に含まれてもいいような気がしましたが、そうではないようですね。
ハリソン内科学の肺外結核の項目では、結核の皮膚病変の原因として挙げられているので「皮膚結核」とは少し意味合い異なる、もしくは分類の仕方が異なるのかもしれません。
ひとまず、皮膚結核・結核の皮膚病変についてこのようなものがあるということが分かりました。次回は、皮膚結核には含まれないとされる結節性紅斑について深堀りしてみようと思います。
今回も、拙い文章をお読みくださりありがとうございました。