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医学書Log: 医療AI入門書 ~4冊比較特集~

医学書ログ(書籍紹介)

医療AI 入門  ~4冊比較特集~

 

<目次>

 

 

 先日、読書Log&Linkということで、従来からの読書ログに加えて過去に読んだ書籍ともつなげていくという記事をやってみました。そこで、成田悠輔さんの『22世紀の民主主義』という書籍を中心に、そこから医療AIの話までゆるっとさせていただきました。

 そこで、医療AIの本について検索すれば見つかるというお話を最後にしたのですが、具体的な入門書(概論)について聞かれました。これをきっかけに、医学書コーナーにある医療AIの入門書ということで簡単な医学書紹介としつつ、前回の新たな試みの読書Linkの「つなぐ」という部分に注目して複数の本を紹介するということを融合して簡単な医学書ログにしようという試みです。



1.【こんな人におすすめ】

  • 医療AIの具体的な活路について興味がある人
  • 画像解析や身近なサービスに興味がある人
  • AIの理論やプログラムの概念を知りたい人

 

 医学書コーナーの中で医療AIとタイトルに書いてある入門用の概要を説明する書籍には、医療AIの導入例や検討例、今後のAIの応用や、今後の社会とAIについての構想のような話が載っています。また、昨今の第3次医療AIブームとして画像解析(AI画像診断)についてある程度の概要が書かれている本が基本でした。書籍ごとに、少しずつ焦点を当てている部分(取り扱っている内容や深さ)が異なってきます。そのうち、おススメしやすそうな写真の2冊(①『医療AIの知識と技術がわかる本』、②『これだけでわかる! 医療AI』)を中心に取り扱いたいと思います。

 

医療AIの入門書

 

 

2.医療AI入門書: 4冊の比較

 医療AIに関する入門書4冊について具体的にレビューしていきたいと思います。いずれも医療AIの導入例や検討例、今後のAIの応用、今後の社会とAIについての構想のような話や、第3次医療AIブームとして画像解析(AI画像診断)について触れられています。

 特におススメしやすい①『医療AIの知識と技術がわかる本②『これだけでわかる! 医療AIを中心に、それぞれの書籍の特徴について触れたいと思います。

 

①『医療AIの知識と技術がわかる本』 小西 功記, 清水 祐一郎 ら (著)

 概念的な説明で数式や数字はあるにはあるものの、画像処理編での具体例におけるオマケ程度の数式です。数字による例や数式で理解は深まりやすいと感じますが、そもそも数字が苦手な人のためにも図なども用いており、実質的には数式抜きで分かりやすく理解できる内容となっています。画像診断における画像処理の話が多い印象はありますが、具体的な画像解析の手法の概念(例:機械学習による画像分類、セグメンテーションなど)も記述されています。

 画像解析以外にも再生医療電子カルテ・医療文章、リハビリ、データ解析などのAIの話もあります。自然言語処理のような系列データ編では機械学習について、データ解析ではアノテーションについてなどいろいろと書かれており、興味のある人には楽しめる書籍です。この4冊の中では一番盛りだくさんの印象です。さらに、本文中のキーワード等に太字・下線を引いてあり、文章量の割に読みやすくなるような工夫もされていておススメです。



②『これだけでわかる! 医療AI』 井川 房夫, 藤田 広志 (編集)

 本全体を通して特に数式はなく概念的な説明であり、画像解析等の第3次AIブームにも合わせて画像解析にも触れつつ、医療での他の具体的な導入例の話もされている印象でした。まずは医療AIの情勢を知るという意味で、数式や具体的な画像処理の方法概念の話まではなく、肩肘貼らずに読みやすい書籍だと思います。もちろん、図などで分かりやすくなっています。

 画像解析の例として、画像診断や病理診断、ゲノム・エピゲノム解析日本医師会の取り組みというような具体的な医療AIでの取り組みの話があり、身近に感じやすい内容に感じます。特に、内視鏡マンモグラフィーの画像といった身近に感じやすい実画像を用いた画像解析AIの概念的な説明があります。4冊の中で最も臨床からちょっとAIへというような医療者でも読みやすいというような親しみやすさがあり、おススメです。



<その他>

③『臨床医のための 医療AI概論』 山田 朋英, 谷田部 卓 (著)

 医療AI概論は、概念的なところが基本でした。数式は特になく、統計もそこまででした。人工知能についてや自然言語処理についての概念的な部分の説明が多く、他の本のように画像診断の話などの具体的な医療AIでの機械学習ディープラーニングの話は触れる程度で詳しくなく、第3次AIブーム(画像解析)であるにもかかわらず、画像解析のお話も少なく、特におススメする前述の2冊と比べて少し内容としては物足りない印象を受けました。



④『ドクターがやさしく教える! 医療AI入門』 山下 康行 (著)

 医療AI入門は、機械学習、レイズの定理の診断への応用、ディープラーニングニューラルネットワークについて触れられています。ベイズの定理の診断への応用をはじめ、分かりやすく具体的な数字を用いた例で説明されています。もちろん、数式なしで理解できる書き方ですが、データサイエンス(数式)寄りに感じました。おそらく数式まで行かなくとも具体的な数字による解説が苦手な人が多いと思います。個人的には好きですが、万人向けというよりもデータサイエンスの入門書が好きそうな人おススメです。



 

3.さらにその先へ

 医療AI入門書で概要を掴んだら、その先が広がります。データ解析の際のアノテーションで専門性を活かせそうとか、思うことがあるかもしれません。もっと具体的に言えば、医用画像を解析する際に専門家が腫瘍領域を囲んでAIのトレーニングデータとする際やデータ理解の際に、医療の専門知識を用いるというようなことが挙げられます。

 他にも素地としてデータサイエンスについて学ぶ、Pythonなどのプログラミング言語で簡単な機械学習についてプログラムを作り動かしてみる、医用画像ディープラーニングやAI画像診断についてもっと専門書で深めてみるなど、様々でしょう。これらのキーワードをGoogleで検索してみたり、アマゾンで検索して本を探してみたり、書店(医用画像以外は情報工学系のコーナー)で探して眺めてたりするといいでしょう。

 画像診断AIに関しては概念に驚きはなく、実用性や精度の問題といった印象もあるのですが、触診をセンサーでデータ化して、それによって診断などに役立てるような概念もすでに本に書かれているほどでした。コストや人の意識等の問題はあるにしても人による「手当て」の意味・必要性についても考えさせられる未来でした。

 データサイエンスについても、概念を数式なし(数学抜き)で学ぶものから、データサイエンスのための数学を扱う書籍などの教材まであります。Python(注: パイソン=プログラミング言語のひとつ)に関して言えば、最近流行りのプログラム言語のため日経BPのようなムック本まで出ています。医療に限定しないデータサイエンスやプログラム言語に関しては特に教材も豊富にあります。

 まずは医療AIの入門書を読んでみて、さらに興味を持った先に進んでみるのはいかがでしょうか。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 

 今回取り上げた書籍のうち、特におすすめしやすい2冊(①、②)です。アマゾンの読者レビューをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。

 

 

【関連記事】

 医療AIの入門書について触れるきっかけとなった読書Log&Linkになります。成田悠輔さんの『22世紀の民主主義』のお話よりブレインストーミングのように話を広げて、医療AIや過去に読んだ本とつなげてみた記事です。

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