"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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"頭以外"の片頭痛 !? ~腹部片頭痛まで~

"頭以外"片頭痛 !? ~腹部片頭痛まで

 

<目次>

 

 

 先日、MKSAPで片頭痛の問題に触れることがありました。治療薬の機序をはじめ、興味深いところが多いですね。今回は頭以外の片頭痛ということで、興味深い・奥深い片頭痛の中でも、頭以外にフォーカスして読んでくださった方がちょっと調べるきっかけになればというような記事にしたいと思います。

 

 

1.片頭痛の分類

 片頭痛(migraine)と言えば、その名の通り「頭が痛い」だと思います。今回は片頭痛スペクトラム(migraine spectrum)の中で「頭」に関連がなさそうなものを取り上げて行きたいと思います。まずは定番の教科書をチェックということで、ハリソン内科学をチェックしてみます。片頭痛について国際頭痛分類第3版(ICHD-3)で分類されていました。

 

国際頭痛分類第3版(ICHD-3)

(出典)ハリソン内科学

 

 国際頭痛分類第3版(ICHD-3)による片頭痛の分類になります。頭以外の片頭痛がテーマなので、下位の亜分類を一部省略しています。脳幹症状・片麻痺の伴うもの、発作重積・痙攣発作を伴うもの、視覚障害を伴うものもあります。他にも1.6 片頭痛に関連する周期性症候群まで多岐に渡ります。

 偏頭痛といえば、前庭性偏頭痛など興味深いものがたくさんあります。今回、注目したいのは1.6 片頭痛に関連する周期性症候群です。再発性消化管障害(周期性嘔吐症候群、腹部片頭痛良性発作性めまい、良性発作性斜頸片頭痛の分類には到底思えません。これらがどのような疾患で、どこが片頭痛スペクトラムであるのかが気になるので調べていきたいと思います。



 

2.片頭痛に関連する周期性症候群などを深掘り

 まずは、片頭痛に関連する周期症候群(Episodic syndromes that may be associated with migraine)再発性消化管障害その下位分類、良性発作性めまい良性発作性斜頸がどのようなものなのかを調べてみたいと思います。ハリソンでは分類までしか記述はないので、国際頭痛分類そのものをチェックしてみたいと思います。

 

1.6 片頭痛に関連する周期性症候群

  • この疾患群は「前兆のない片頭痛」または「前兆のある片頭痛」を併せもつ患者、あるいはこれらの片頭痛を発症する可能性の高い患者に起こる。かつては小児期に起こるとされていたが、成人でも起こる場合もある。
  • これらの患者では、乗り物酔いや夢遊、寝言、夜驚症、歯ぎしりなどの周期性睡眠障害の症状を合併する場合もある。

 

1.6.1 再発性消化管障害

  • 腹痛、不快感・悪心または嘔吐のいずれか1つ以上の症状を繰り返す発作である。たまに起こる場合も、慢性的に起こる場合も、予測可能な一定間隔で起こる場合もあり、片頭痛と関連している可能性がある。

 

1.6.1.1 周期性嘔吐症候群

  • 激しい悪心と嘔吐を繰り返す発作で、通常、個々の患者では症状が安定化しており、発作のタイミングは予想できる。発作時に顔面蒼白と嗜眠傾向を伴うことがある。発作間欠期には、症状は完全消失する。
  • 小児期に起こる反復性疾患であり、典型的には自然寛解する。発作間欠期は全く正常である。周期性が特徴であり、周期は予測可能である。

 

1.6.1.2 腹部片頭痛

  • 主として小児に認められ、中等度~重度の腹部正中の痛みを繰り返す原因不明の疾患である。腹痛は血管運動症状、悪心および嘔吐を伴い、2~72時間持続し、発作間欠期には正常である。これらの発作中に頭痛は起こらない。
  • 腹部片頭痛の痛みは正常な日常生活を妨げる重度な痛みである。年少児では頭痛の存在はしばしば見落とされる。
  • 小児は食欲不振と悪心の区別ができないこともある。顔面蒼白には眼の下の隈を伴うことが多い。少数の患者では顔面紅潮が主たる血管運動現象として出現する。
  • 頭部片頭痛を有する小児の大多数は、後年になって片頭痛を発症する。

 

1.6.2 良性発作性めまい

  • 繰り返し起こる短時間の回転性めまい発作が特徴の疾患で、発作は前触れなしに起こり自然に軽減する。それ以外には、健康上問題がない小児に起こる。

 

1.6.3 良性発作性斜頸

  • 反復発作性に頭部が片側に傾き、若干回旋している場合もある。症状は自然寛解する。この疾患は幼児および乳児にみられ、生後1年以内に発症する。

(出典)国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版 > 第1部:一次性頭痛 > 片頭痛

https://www.jhsnet.net/kokusai_2019/1-1.pdf

 

 片頭痛に関連する周期症候群概要はいかがでしょうか。発作性・周期性・良性・自然寛解という部分が原則的にはいわゆる片頭痛との共通点でしょうか。

 以前の分類では小児の疾患として扱われてきたものが多くあります。そして、今でも小児に多いもの・小児の疾患としての趣きがあります。診断基準や以前に使用された用語(旧疾患名)に関しては出典に詳しく書かれていますので、気になる方はチェックしてみてください。

 良性発作性めまいは「めまい」ということで頭とリンクしやすいイメージですが、良性発作性斜頸はちょっと首で頭に近いという程度にしかイメージできません。さらには再発性消化管障害の周期性嘔吐症候群(cyclical vomitting syndrome)や腹部片頭痛"頭"から離れている印象を強く受けます。

 周期性嘔吐症候群に関しては過去に少し学んだ記憶があります。一方で恥ずかしながら、腹部片頭痛(abdominal migraine)に関しては特につっこんで学んだ記憶なく、血管運動症状やら興味深そうな記述があることや、腹痛ということで他の疾患も想起することが多そうな症状もあると感じます。私の独断と偏見で、ここでは腹部片頭痛深掘りしてみたいと思います。

 

 

2-1. 腹部片頭痛をさらに深掘り

 腹部片頭痛(abdominal migraine)に関して、定番のハリソン内科学には特に記述もなく、朝倉内科学はそもそも片頭痛の記述も少なく興味深い機序・薬の話や頭痛分類すらない状態でした。そこでReveiw等を探してみました。

 

How common is abdominal migraine?

 有病率は、客観的な診断マーカーがないため、定義、認知度、条件に左右される。イギリスの2つの小児研究では、1986年の定義を用いた場合、腹部片頭痛の人口有病率は4.1%と2.4%であった。ローマIII基準を用いた949人の子供の母親を対象とした米国のアンケート調査では、有病率は9.2%であった。英国の学童を対象とした調査では、有病率は6〜12歳でピークに達し、12歳で9%と最も高く、14歳で1%に減少し、女性:男性の比率は1.6:1であった。

 

What other conditions is abdominal migraine associated with?

 人口調査から、腹部片頭痛患者の70%が、前兆のある、または前兆のない片頭痛を現在または過去に経験していることがわかった。腹部片頭痛の患者は、他の同時または過去の片頭痛に関連する周期症候群(84人中60%、1134人中30.6%)、特に周期性嘔吐(66〜76%)と片頭痛性四肢痛を有することが多い。その他、良性発作性めまい、良性発作性斜頸、乳児疝痛レイノー病、運動機能亢進症などとの関連も考えられている。

(出典)BMJ. 2018 Feb 19;360:k179. doi: 10.1136/bmj.k179.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29459383/

 

 先ほどの延長的な部分を中心に取り上げてみました。有病率といった疫学的なことや、腹部片頭痛の腹痛以外の症状についてもより具体的に分かりました。診断されているかはさておき、年齢的にも小学生のときに意外と多くみられる疾患とも言えそうです。一方で、14歳での有病率の低下(14歳時の有病率1%)からは、予後の良い疾患と考えられそうです。そして、関連・随伴する症状定量的な頻度も含め疾患像がより掴めたような気がします。

 他にも、腹部頭痛の概念、診断や治療の概論だけでなく、トリガー寛解因子、メンタルヘルスとの関連、治療介入ごとのエビデンスレベル予後まで詳しく書かれています。Free Articleなので気になる方は是非アクセスしてみてください。また、片頭痛そのものの奥深さに関してもハリソン内科学レベルでも発見がある人もいると思いますので、良い教科書も手に取ってみてください。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。



P.S.

 お読みくださる方は、検索などで当ブログまで情報を探してくる積極的な方だと感じることが増えました。そして、中途半端に羅列するぐらいであれば、ここではきっかけを提供できればと感じることが増えたことによる試みをさらに取り入れた記事です。

今回取り上げた腹部片頭痛Review

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov