新型コロナワクチンの安全性(有害事象)を調べてみる!
<目次>
※(お断り)このブログ記事は、紹介する内容・文献が未来半永久的に絶対的に正しいという主旨ではなく、普段このような感じで疑問等を感じて調べているという過程を紹介する一例になります。
1.調べたきっかけ
ブログ記事にしているうちに日付が翌日になってしまいましたが、8月26日の朝のYahoo!ニュースにて、『ファイザー製ワクチン 3ヵ月後の抗体量4分の1に』というタイトルのニュースが飛び込んできました。
(出典)https://news.yahoo.co.jp/articles/4df059bb27de5a56326b68eecbfe34f8795610c1
正直なところ、まったくの深掘りもない記事で文章はたったのこれだけでした。具体的な抗体価の数値も記事中の文字になければ、日本のマスコミらしい記事でした。これだけ見れば、最後の文章の「量の減少がワクチンの発症予防効果にどの程度影響しているかは今後も研究が必要」という部分の印象はほとんど残らず、この先の結果によらず「ワクチンは効かない」というような不安も残しそうです(もちろん、本当に有効性が抗体価がある一定以下になることで効果がない可能性もありますが、それ以上に印象だけで操作されている感じがします)。
※マスメディアについての常日頃からの意見等はありますが、本題ではないので今回はこれぐらいにて割愛します。
藤田医科大学のホームページにて詳しいものを見つけました。
ファイザー社の新型コロナワクチンで、接種約3ヶ月後に抗体価が低下することを発表しました | 藤田医科大学 - Fujita Health University
まだ、論文としてアクセプトされたものではなく、209名の抗体価(IgG)の結果が出たというプレスリリースというところでしょうか。特に論文へのリンク等はありませんでした。抗体価そのものは2回目ワクチン摂取後14日目で高く(20~30歳代、40~50歳代で約250 U/mL、60~70歳代で約150 U/mL)、2回目ワクチン摂取後3か月目に低下している(約50 U/mL)という結果でした。抗体価低下が風疹等ではワクチンの再接種の目安になってたりというのもあるので一理はあるとは思いますが、獲得免疫ができればある程度下がっても問題ないと思います。さらにワクチン接種後に感染という刺激がなければ抗体価はワクチン接種時(2週間後)ほど高くならないというのは当たり前ではないでしょうか?「抗体価の減少≠獲得免疫の消失」なので、どの程度の抗体価減少で感染の重症化の程度にどの程度影響があるのかの続報が必要かと思います。抗体価だけでなく、その中和抗体の中和能力の高さの変化(中和能力がより高いものがつくられている等)があれば、そのことも考慮しないといけません。
「抗体価の低下がどの程度ワクチンの発症予防効果、重症化予防効果などの低下を示しているかは今後も研究が必要」と先ほどの藤田医科大学のホームページに書いてあります。やはり今後の研究結果を待ちたいですね。今後、どのような結論になるのかが気になります。
これをきっかけに新型コロナワクチン(ファイザー製)を打つことになったらという視点で有害事象について再度調べてみました。最近、忙しさ等のために追えていなかった新型コロナウイルスに関する科学的な情報のアップデートを行いました。有名Journalの最近のもののタイトルを見ながらチラ見をし、Pubmedやgoogle Scholarでの検索も軽くしてみました。その際にNew England Journal of Medicine (NEJM)でワクチンの有害事象についての文献をタイムリーに見つけたので紹介します。
2.新型コロナワクチンの安全性(有害事象)@NEJM
ファイザー製の新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン(BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine)の安全性についての論文です。国レベルの広範囲・大人数での安全性(有害事象: adverse events)について調べたものになります。NEJM 2021年8月25日号の“Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting”という論文です。
イランにおける884,828人のワクチン摂取群と同人数の対照群を比較したものになります。
(出典) N Engl J Med. 2021 Aug 25. doi: 10.1056/NEJMoa2110475
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2110475
10万人あたりの差異になります。そもそも10万人あたりの差異ですので、そこまで差が多くはないですが、ここで有意差があったものは次の通りです。急性腎障害、貧血、頭蓋内出血、その他血栓症にてなんと減少傾向が認められました。虫垂炎、帯状疱疹、リンパ節腫脹、心筋炎の増加傾向が認められました。もちろん有害事象が報告レベルであり、しっかりと因果関係が分かっているものだけではなく相関関係といったレベルのものも含まれています、
しかし、この論文の良いと感じるところはこの後に新型コロナウイルス感染症になった際とワクチン接種の際をも比較しているところです(※NEJM上への画像URLが変更に無効になっております)。
Figure3. Risk Ratios for Adverse Events after Vaccination or SARS-CoV-2 Infection.
Figure4. Absolute Excess Risk of Various Adverse Events after Vaccination or SARS-CoV-2 Infection.
(出典) N Engl J Med. 2021 Aug 25. doi: 10.1056/NEJMoa2110475
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2110475
例えば、心筋炎や深部静脈血栓症はワクチン接種でも相対的に増えていますが、新型コロナウイルス感染症となればさらに深部静脈血栓症になる可能性が高いということができます。理由までは分かりませんが、貧血や頭蓋内出血に関してはワクチン接種をした方が少ないという結果になっています。
もちろん、ワクチン接種をした人とワクチンを接種しなかった人でどれほどかかりやすさが違うか等の考慮は必要ですが、「ワクチンを打てば有害事象が生じうるものの、新型コロナウイルス感染症にかかればワクチン接種のときの有害事象と同様の症状等が生じうる」ということや新型コロナウイルス感染症にかかればもちろん他の症状が生じることを暗に示してくれているように感じます。
ワクチンの有害事象も考えることは大切ですが、そもそものワクチンの恩恵を忘れてもいけないということですかね。その両方を忘れずに両方をアップデートし、各個人に合わせて判断していく必要性を感じました。
また、国や人種さらには環境や背景が異なること、ワクチン接種した人の年齢の中間値が38歳であること(日本の高齢者接種より若い)等をどのように、どの程度、自分自身の現場や日本全体に当てはめていくかという課題はありますが、とても参考になると思います。最終的に、ワクチンそのものは各個人の体質や判断によります。
さらに、COVID-19の行動制限等に関しては、医学的な視点としての現時点(最新)のエビデンスに基づいた生物学的な側面だけでなく、精神面への影響、経済への影響などにもよって、最終判断は異なってくるでしょう。例えばワクチンによる免疫獲得など、個々のパーツとしての有効性を認める問題と、全体としてどういう政策を打つかはまた異なってくる側面があると考えています。
あくまで私自身のさらっと目を通した解釈になります。新型コロナウイルス関連の論文は無料で読むことができます。読みやすい英語で書かれていますので、是非原文に目を通してみてください(下記URL)。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2110475
本日もお読みくださり、ありがとうございました。
【新型コロナワクチン関連記事】
新型コロナワクチンの3回目の接種(ブースター)についてニュースで話題になった際に調べたものです。