医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

モルヌピラビル(Molnupiravir)~夢のコロナ治療薬!? Covid-19関連~

モルヌピラビルMolnupiravir)~夢のコロナ治療薬!? Covid-19関連~

エビデンスを探して~

 

 新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の治療薬として、モルヌピラビルという薬が「死亡リスクが半減、飲めるコロナ治療薬を米当局に申請」というようなニュースを昨日に見かけました。しかも、米国FDAへの申請が認可されれば、年内には日本でも許可されるのではないかというような予想もされていました。

 正直なところ、年内に新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の治療薬が登場するとなれば、どのようなものか気になります。

 

 そのため、この情報を詳しくはどのようなものか深堀りしてみることにしました。まずは信用できる二次文献ということでUpToDateを検索しましたが、Covid-19におけるモルヌピラビルに関する記載はありませんでした(記事作成時 10月12日)。しかし、BMJのNewsにて”Covid-19: Molnupiravir reduces risk of hospital admission or death by 50% in patients at risk, MSD reports”というタイトルで記事になっており、簡単に見つけることができました。

 

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  • モルヌピラビルとは抗ウイルス薬であり、軽症もしくは中等症の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)にかかった患者のうち転帰不良リスクのあり入院していない患者の入院または死亡のリスクを約50%低下させたというMerck Sharp and Dohme(MSD)による中間分析報告
  • 第III相試験におけるランダム化二重盲検比較試験として、モルヌピラビルを投与された患者(モルヌピラビル群)と プラセボを投与された患者(プラセボ群)の比較

<結果>

  • 29日以内の入院または死亡率:モルヌピラビル群 7.3%(385人中28人)vs. プラセボ群 14.1%(377人中53人)
  • 29日以内の死亡数:モルヌピラビル群 0名 vs. プラセボ群 8名
  • 有害事象発生率:モルヌピラビル群 35% vs. プラセボ群 40%
  • 薬物関連有害事象発生率:モルヌピラビル群 12% vs. プラセボ群 11%
  • 有害事象による中止率:モルヌピラビル群 1.3% vs. プラセボ群 3.4%

(出典)BMJ. 2021 Oct 4;375:n2422. doi: 10.1136/bmj.n2422.

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34607801/

 

 重症化の指標としてランダム化後29日以内の入院または死亡を指標として比較していますね。入院または死亡率がモルヌピラビル群 7.3% vs. プラセボ群 14.3%と大きく開いています。絶対値として入院や入院後の死亡が約7%減少したことはとても嬉しく感じます。重症化が約50%減少(半分)と聞くと、差異の絶対値はどの程度か気になります。約7%という数字は「新型コロナウイルス感染症のワクチン3回目接種による罹患率と重症化率」の絶対値の差(86.6/100,000人日)よりも大きく感じます。

→過去の記事「新型コロナワクチン 3回目接種(ブースター)のエビデンスを探して - 医学生からはじめる アウトプット日記を参照

 

 一方で、薬物関連有害事象までプラセボ群のほうが少ないことは意外でした。

 

メルク(MSD)の発表HPはこちら

https://www.merck.com/news/merck-and-ridgebacks-investigational-oral-antiviral-molnupiravir-reduced-the-risk-of-hospitalization-or-death-by-approximately-50-percent-compared-to-placebo-for-patients-with-mild-or-moderat/

 

 

 まだまだ分からないところもあり、この結果の最終報告・詳細を待ちたいと思います。この中間報告を受けて主に気になるのは以下の点です。

 

①第III相試験(MOVe-OUT試験)における患者の特徴(例:ワクチン接種率)

 例えば、ワクチン接種率がこの試験時より高いとするとモルヌピラビル使用以前に重症化(入院または入院後死亡)しにくなっていることも考えられ、モルヌピラビルの有効性が低下しまう可能性もあると考えられます。他にも両群間の差だけでなく、現在の日本の状況と患者群が似ているかも気になります。

 

②値段や生産量は?

 どれだけ一般的な環境で使える値段であるのか?生産量は十分であるのか?というあたりはとても気になります。高価であれば、先進国ではまだ使用することができても途上国では厳しかもしれません。費用対効果を考えれば、ワクチンの方が良いなんてことも十分にありそうです。

 

③今までの抗ウイルス薬とどう違うの?

 Molnupiravir (MK-4482/EIDD-2801) is an investigational, orally administered form of a potent ribonucleoside analog that inhibits the replication of SARS-CoV-2, the causative agent of COVID-19.

(出典)https://www.merck.com/news/merck-and-ridgebacks-investigational-oral-antiviral-molnupiravir-reduced-the-risk-of-hospitalization-or-death-by-approximately-50-percent-compared-to-placebo-for-patients-with-mild-or-moderat/

 

 モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)新型コロナウイルスの複製を阻害するリボヌクレオチド類似体のようです。今までにもタミフルのような抗ウイルス薬がありました。モルヌピラビルがそれらとどのように異なり、どういうプロセスでどれぐらい値段が異なるのか、新規薬として登場した意義なんかも気になります。もちろん、治療薬ということでの期待、ワクチンを打つことができない人への適応にも期待ができます。

 

 

--おまけ--

 モルヌピラビルを調べる際にPubMedにて様々な文献を見つけました。そのうち、一部だけ紹介だけしておきます。

 

タイトル:Molnupiravir, an Oral Antiviral Treatment for COVID-19

medRxiv. 2021 Jun 17;2021.06.17.21258639. doi: 10.1101/2021.06.17.21258639.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34159342/

 

タイトル:Rethinking Remdesivir: Synthesis, Antiviral Activity, and Pharmacokinetics of Oral Lipid Prodrugs

Antimicrob Agents Chemother. 2021 Sep 17;65(10):e0115521. doi: 10.1128/AAC.01155-21. Epub 2021 Jul 26.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34310217/



 本日もお読みくださりありがとうございました。