抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎②
~抗MDA5抗体の陽性/陰性による臨床像の比較~
1.基本事項(国試レベル)の確認(前回)
2.皮膚潰瘍の有無と抗体陽性率(前回)
3.抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の臨床像
前回は皮膚筋炎の国試レベルの基本事項の確認と皮膚筋炎における抗体と皮膚潰瘍の相関について調べました。今回は、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の臨床像を抗MDA5抗体陰性皮膚筋炎との比較を交えながら深堀りしていきたいと思います。
3.抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の臨床像
続いて、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の皮膚潰瘍以外も含めたClinical Manifestationを中心に全体像を掴んでみたいと思います。まずは調べ直すきっかけとなったNEJMから、見ていきます。
- Cutaneous ulcerations overlying the metacarpophalangeal and interphalangeal joints, elbows, and nail folds are seen in up to 85% of patients with anti–MDA-5 dermatomyositis, often with lateral digital hyperkeratosis, which was observed in this patient.
- Approximately 50% of cases are associated with oral ulcers, often on the tongue.
- The arthralgias, fever, presence of anti-Ro antibodies, abnormal results on liver function tests, and elevated ferritin level seen in this patient are common in patients with anti–MDA-5 dermatomyositis.
(出典)N Engl J Med 2021; 385:2282-2293.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcpc2107353
要するに、
- 皮膚潰瘍(中手節関節、指節間関節、肘、爪郭を覆っている部位)は多い場合約85%の症例で認められる
- 皮膚潰瘍ではよく指趾側面の角化病変を伴う
- 口腔内潰瘍は約50%の症例で認められ、舌に多い
- 関節痛、発熱、抗Ro抗体陽性、肝機能障害、フェリチン上昇は一般的である
ということらしいです。
二次文献のUpToDateでは特に抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎について臨床的な特徴を簡単にまとめたような記述を見つけたので、そこから紹介します。
- 抗MDA5抗体は、自然免疫反応に関与するタンパク質であるメラノーマ分化関連遺伝子5(MDA5)がコードするRNAヘリカーゼを認識するものである。
- 当初、抗MDA5抗体はclinical amyopatic dermatomyositis(CADM)の特殊な自己抗体として報告され、抗CADM-140と呼ばれた。
- 高い罹患率と死亡率を伴う急速に進行する間質性肺疾患と強く関連している。
- 筋の病変を持たない傾向があるが、しばしば関節炎を有する。
- Gottron丘疹および皮膚潰瘍、痛みを伴う手掌丘疹および斑点、口腔内潰瘍、および非瘢痕性脱毛を含む特徴的な皮膚所見が存在する。
(出典)UpToDate>Overview of and approach to the idiopathic inflammatory myopathies, last updated: Jun 09, 2021.
二次文献で信用できる全体像はこの程度のようですね。
これでは満足しない性格(?)なのでさらに深堀りしていきます。
これら上記記述の引用元を調べるというのもアリですが、抗MDA5抗体の有無による症状の違いにも注目しながら調べてみたいと思います。抗MDA5抗体の陽性/陰性にて比較した2つの文献から紹介します。
(出典)Arthritis Care Res (Hoboken). 2012 Oct;64(10):1602-10. doi: 10.1002/acr.21728.
入院に至った抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の臨床症状の特徴として以下の項目で有意差が認められたようです。
- CADM(clinically amyopatic DM)が多い(80% vs. 40.8%)
- 皮膚潰瘍が多い(80% vs. 8.2%)
- 嗄声やバッキングが多い(46,7% vs. 8.2%)
- 筋痛が少ない(26.7% vs. 61.2%)
- 間質性肺疾患(ILD)が多い(100% vs. 63.3%)
他にも、血清CK、LDH、アルブミン値においても有意差がありました。死亡率が高いというのも要注意です。母数(n)が多ければ、他の項目でも有意差が認められたかもしれません。他にも、入院症例であるという偏りはあるものの間質性肺疾患が100%というのも母数が増えればもっと自然な数値になったかもしれません。
それでは次の文献も見てみます。次の文献の方がnが小さく、もっと参考程度かもしれませんが、せっかくみつけたので紹介します。
(出典)Clin Exp Rheumatol. Nov-Dec 2014;32(6):891-7. Epub 2014 Aug 15.
ここでは、Amyopathic DMが多いこと、発症時の血清CKが低いこと、間質性肺疾患が多いことにて有意差が認められます。母数が小さすぎて中には0%という項目まであることには留意が必要だと思います。
私自身なりにまとめるとすると、これらの文献からは抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の特徴は、
というあたりに注目したいと思います。特に急性間質性肺炎は命にかかわることも多く、皮膚筋炎の中でも抗MDA5抗体が国試でも注目されがちな理由でしょうか。
本日もお読みくださり、ありがとうございました。
【前回記事】