読書ログ
『こんなときオスラー - 『平静の心』を求めて』
平島修、徳田安春、山中克郎(著)
<目次>
ふと書店で手に取り、コロナで中止になってしまったものの2020年3月の医学書院の「こんなときオスラー」のワークショップに行ってみたいと思っていました。今回、環境を変えて改めて読む機会がありました。
1.書籍紹介
かの有名なウィリアム・オスラー先生のお言葉を残してくださった故 日野原重明先生の『平静の心』をさらに読みやすく、とっつきやすくしてくださった書籍です。
しかも、総合診療に関することを学んだ人であれば、知らない人はいないであろう平島修先生、徳田安春先生、山中克郎先生が書かれています(私自身も大変お世話になりいました)。具体的に『平静の心』からオスラー先生のお言葉を引用しつつ、具体例や症例を持ちながら、分かりやすく説明してくださっています。
【こんな人におススメ】
この本のタイトルの一部にもある『平静の心』は、故 日野原重明先生がウィリアム・オスラー先生のお言葉を後世に残してくださった素敵な書籍です。やはり忙しいときに読もうと決心するのはしんどい時もあると思います。そのような時でも、オスラー先生の素晴らしさに触れることができる書籍になります。『平静の心』をすでに読んだという人にとっては解説から平島修先生、徳田安春先生、山中克郎先生のご自身での経験を交えた解説の素晴らしさに触れることができる書籍であると思います。
具体的エピソードと感想
では、具体的に紹介していきます。思ったよりも説教地味ていないところも素敵なところかと思います。
1 医師という職業に挫折しそうになったとき
オスラーの理想と実践
(実習でのエピソード:病歴聴取の際に、「ちゃんとわかっている医師に代わってください」と患者から言われ、翌日に病院実習に行くのが億劫になっていた。)
オスラー先生の言葉:私が理想とするものの1つは、その日の仕事を精一杯やり、明日について思い煩わないことである。この理想だけでは満足できないと今まで言われてきたが、私にはそうは思われない。この理想で十分に事足りる。(中略)その日の仕事に徹して、自分の能力を最大限に発揮する努力をし、明日のことは明日に任せるという能力に、私はどれだけ恩恵をこうむってきたことであろうか。
やはり、目の前のことに集中することの大切さを説いています。しかし、このように言われても目の前の事だけに徹することがどれだけ難しいことかと感じる私自身もいます。確かに納得ですが、具体的にどのように対処していくのかにも興味があります(むしろ、私自身は目の前のことだけでなく翌日以降のことにも気を割いていました)。
これを本当に実行できることのすごさがオスラー先生ではないのでしょうか。私自身は、今日のようにならないようにと何か準備はできないかと空回りしてしまいそうな気がします。
2 理想的な医師になりたいとき
オスラー先生の言葉;一般の医師は、世の人々のために熱心に働く。この自己犠牲を伴う献身的な態度が、ひいては立派な仕事の刺激となるのである。
もはや、これは医学部の入試の際の面接での模範解答のようです。もちろん、このような考えは医師を志すものとして誰もが持っていると思いますが、われわれ人間が100%これだけで行動できるかは疑問です。もちろん立派な仕事の刺激になる場面は多いと思いますが、守るべき人やもの(ホームがあるからこそ頑張れる)が崩壊しかけたりしないようにも配慮しながら、こなせる力が必要そうです。
5 医師として最終的に勝利を収めたいとき
医学は「人類への奉仕」である
オスラー先生の言葉;最終的に勝利を収めるには、できうる限り骨を折り、労を惜しまないことである。(中略)手がけている内容が取るに足らないものであったにせよ、全精力を傾ける意気込みでやり、やり遂げたあとは批判的な眼でその成果を点検し、容赦せず自分自身に厳しい審判を下すとよい。
たしかにその通りでございます、としか言いようのない内容です。例に野球選手のイチロー選手のことも書いてあり、粘り強く努力を重ねること「グリッド(grid)」が大切であると書かれていますが、継続するための方法を自分なりに探すことが課題になりそうです。
いかがだったでしょうか?
やはり、崇高な理想であると感じました。他にも日野原重明先生が書かれた『平静の心』には医学生に向けて「二十五年後に」ということで、次のようなことも書かれていました。
- 余技となるもの(芸術、科学、文学の世界と接触を持つのに役立つ知的な気晴らし)を持つように心がけるべきである
- 勉学に純粋で熱烈な喜びを味いつつ、勉学に没頭するあまり他の関心事を排除するようなことはあってはならない
- 仲間の学生に交わってスポーツや娯楽を共にすべき
私自身の拙い言葉で言い換えれば、いわゆるスーパーマンでしょうか。確かにこれだけのことがすべてしっかりとできている医学生はお手本だと思います。
2.全体の感想
書籍全体を通じて、多くの人がこのようなお手本となる医学生になりたいと少なくとも一度は感じたことがあると私は思います。
しかし、このようになりたいと心では思っていても理想像ばかりでは辛いことも多いと思います(特にバーンアウトしかけた時や理想を追うことに疲れた時)。実際にどのようにして達成していくかという具体的な方法論については分からないと感じたり、基本的には具体的な達成方法の記載はないという印象も受けました。私自身はコーチング(PX2)を受けたことがあり、一部の方法等に違和感の様なものを感じる場面もありました。
個人的な見解では、好きで熱中している姿が、周りから見たら「頑張っている」というように理解されるような現象でしょうか。しかし、いずれにせよオスラー先生が聖人君子的な理想の医師像であると感じずにはいられませんでした。そこまで突き進むことができたゆえの当たり前の結果なのかもしれません。
医師を志した人の多くにはオスラー先生の様な理想の医師像があると思います。一方で、以前紹介させて頂いた『医師の感情』のような「平静の心」が崩れるときにどのように対処していくかも大切であると再認識しました。以前のブログの記事でも紹介いたしました。
理想を追求するためにどうするかを考えてみます。さきほども述べましたが、「平静の心」を維持していく具体的な方法を考えていかないといけないと感じた書籍でした。むしろ、多くの人はそこが課題になるのかもしれません。そこにも触れてほしかったと思うばかりです。
私は、根本的な全体のゴールはコーチングで学びました。コーチングに追加する形で、
というようなことを具体的に他の本などで学ぶことは必要だと思います。Amazonや書店で本を探してみるとよいと思います。
このような具体的な方法を考える前に、医師の理想像について考えるきっかけ(鵜呑みにするという意味ではなく理想の医師像の一例やヒント)となる本が『平静の心』やこの『こんなときオスラー』であると思います。特に『こんなときオスラー』は読みやすく、始めるきっかけになると思います。
これをきっかけに『こんなときオスラー』(『こんなときオスラー:『平静の心』を求めて』)、さらには『平静の心』(『平静の心ーオスラー博士講演集』)を読んでみたいと思う方は是非、手に取ってみてください。
また、自分自身の環境や心境が変わった際に再び読んでみてどのように感じるかも気になるものです。
本日もお読みくださりありがとうございました。
今回取り上げた書籍です。アマゾンの読者レビューをはじめ、よろしければチェックしてみてください。
さらに、原著にあたる日野原重明先生の書かれた『平静の心』が気になる方はこちらをどうぞ。