読書ログ(書籍紹介)+体験記
『医師の感情-「平静の心」がゆれるとき』
初期研修 〜勇気を出して感情を共有してみたら〜
<目次>
4月から初期研修の人は、初期研修がはじまり、早いことにそろそろ2ヶ月が経とうとしています。新緑もいつのことやら、気がつけば梅雨入りしていました。
今回は初期研修が始まって、多かれ少なかれ「意外とみんなも同じようなことを感じているんだ」というようなことを知って、少しでも肩の荷が降りればという想いで書いた記事です。
今のこの気持ちを少しでもブログにも書き残す意味も込めて書きました。お恥ずかしい思いもありますが、感情を赤裸々に書きます。
同じような辛い思いをしているんだと思うきっかけや、それをこの春から同じ場所で働くことになった同期と話してみるきっかけとなった本(『医師の感情』)やその本との出会いのきっかけから紹介します。
1.出会った本(書籍紹介)
『医師の感情-「平静の心」がゆれるとき』というタイトルからは、ピンとくる人とそうでない人がいると思います。「平静の心」というウィリアム・オスラー博士の「医師のお手本」たる名著があります。それがゆれるときということで、常に「平静の心」を維持できる聖人君子は多くはないと思うので、このタイトルから自然と興味を持ちました。
<手にとって欲しい人>
- 初期研修が始まった人
- 病院実習が始まった人
<おすすめの理由>
- 同じ様な感情を持つ人がいることを理解できる
- 同期内で感情を共有してみようと思える
このような人に手に取ってももらえれば、何か共感できるところがあると思います。
2.出会ったきっかけ
この書籍と出会ったきっかけは、「医師の教養 チャンネル」です。
<医師の教養 チャンネル@YouTube>
YouTubeをみるだけでも、ホッとするような瞬間があると思います。「平静の心」であるべきとは思いつつも、様々な感情が湧くことがあってよいのだというような心をなでおろすような内容です。
しかし、医学生のときには実際に読むにまでは至りませんでした。本(『医師の感情』)の存在をYouTubeで知り(先生方とのご縁もあり)、実際に本を手に取り読むきっかけを頂きました。そして、5月20日の民間医局×医師の教養のセミナー企画へ参加によるブーストの機会を頂いたからです(下記動画には続編あります)。
このような経緯で、しっかりと読み込む機会を得ました。この読書体験と私自身の経験から想像できてしまうことを紹介します。
3.本と私自身の経験
この本は医師、とりわけ若手医師の感情について体験等を振り返りながら赤裸々に書かれた本です。実際に初期研修がはじまると、次のような場面が生々しく想像できませんか?
<本の中には次のようなシーンがあります>
・共感が大切と学生時代に学んだけど…。
「医学生が医学の理想、そして共感することの重要性、医師ー患者関係の価値について何を教わってこようが、あるいは何を純粋に信じていようが、いったん病棟に足を踏み入れてしまえば、それらはすべて水面下に沈んでしまうのだ。最も理想主義的な医学生ですらすべての新しい入院患者を新たな負担とみなすようになり、患者のあらゆる要求は仕事をこなすうえでの障害物と見なし、無駄話をすればそれだけ睡眠時間が減る、と考えるようになる」
本当に、日本でいう医学生の時の方が初期研修の時と比べて時間もあり、締め切り時間も少し意味合いが違ったように感じます。特に朝の回診の時に感じがちな感情の人もいるのではないでしょうか?夕方の時にせめてゆっくりとお話を聞きたいと自分の心に留めておきたいものです。
・下品で失礼なジョークへの複雑な想い
「こっそりと裏側で内輪のジョークを聞かされたことで、自分はいまやチームの一員なのだ部外者ではなく内部の人間なのだ、と感じていた」
確かに、チームの一員ではなく何もできない見学生や医学生とは異なり、やっと居場所があるという安心感のようなものと、こんなことを言っていいのかというジレンマを感じる人も多いと思います。初心を忘れずにいたい反面、一員にもなりたいもので考えさせられます。
・フリーズする瞬間:恐れ
「本物の生きた人間を前にして、私は一つたりとも思い出すことができなかった」
コードブルーの時のフレーズより。もちろん、この場では、恐怖によって何も行動できなくなってしまっている状況で、「○○(判断し、介入)をすることで害があったらどうしよう」と震えあがってしまった状況描写で、だれしも講習会でACLS等を学んでも実際に患者さんを目の前にすると恐怖があるということも共感できればと思いました。
また、恐れの感情を自覚し、徐々にそれをちょうどいい加減に調節する術をどのように獲得していくかも大切な課題であると思いました。
・急性ストレス反応
「頭の中のどこかで、自分が崖から後ろ向きに落ちていくのがわかりました」、「もうこれ以上何か決断することなんてできそうもない、ということだけでした」。「よく……わからないんです」と泣き始める場面。
この後の仲間との会話で「早く病院から帰ってとにかく休め」といわれる場面です。仲間の大切さや、仲間に「あなた、今回がはじめてだったのね」と、みんな悩まされている、急性ストレス反応を経験しているということも分かります。もっとこういう感情に対して、オープンに共有していき仲間で支え合っていくことの大切さを感じました。
コロナで一緒に食事をしたり、飲みに行ったりすることが難しい中ですが、上手に信頼関係を築いていく工夫もしてみようと思いました。
・恥
「過失から生じる恥の気持ちは、医師の成長にもつながらなければ、治療の質の改善プログラムにプラスに働くこともない。それどころか、現実には正反対の効果をもたらす」
ずっとうなだれた状態にならないように、環境づくりの難しさを感じさせる話しがありました。もちろん、情報を後悔し過失を認めていく姿勢は大切であるが、その公開後にどのように医師を支えていくのかという環境の整備の難しさを考えさせられました。
他にも、燃え尽き症候群の話(具体的な現実のストーリー)、研修そのものがトラウマになりうるぐらいの経験の話、心が折れたように3ヶ月間研修を離脱したストーリーをはじめ、赤裸々にリアルに記述されています。
4.最後に
この本を読んでみると、とりわけ前半は初期研修生活のはじめに読むととても共感できたり、自分だけが悩んでいるわけではないということを知れたり、研修先の同期ともっと赤裸々にそういう感情等について話してみようというきっかけになると思います。
研修医1年目の先生、4月から研修医の人が研修始まって1~2カ月というタイミングですね。慣れてきた半面、疲れの出てくるきせつでもないでしょうか。
すてきなご縁をありがとうございました。ぜひ、そのような状況の人は手に取ってみてください。
P.S.
研修生活が始まって1カ月ちょっとの間の様々な感情だけでなく違和感等を自分の日記として記録していました。それを今見直すだけでも様々な気持ちが出てきます。それをさらに10年後とか20年後に見直したときに、どのような感情になるのか、また違和感に対してどのような判断を下しているのかはじめ、とても気になるものです。そして日々、精進して参りたいと思います。
本日もお読みくださり、ありがとうございました。
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