"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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地域実習|体験記①: 下調べから病院実習まで~

地域実習体験記① @和歌山県東牟婁郡串本町

 

<目次>

【次回記事】地域実習 ~体験記②:病院外実習から振り返りまで~ - 医学生からはじめる アウトプット日記

 

~下調べから病院実習まで

 地域実習に行った際には、ネタバレへの配慮(オフィシャルな方での発表を初紹介とする約束)といった諸所の事情から紹介せずにいました。今となっては、COVID-19によって地域実習(地域研修)に行くことができない人もいるのではないかという思いから、可能な範囲で思い出しながら書いてみます。

 そもそも、「地域医療」という言葉が様々な意味を持つ言葉になっていると感じます。都会でも、へき地でも、どこでも地域の視点やプライマリケアの視点からみた医療を地域医療という人がいます。一方で、へき地医療のことを地域医療という人もいます。他にも医療圏での医療のことを地域医療という人もいます。
 今回の地域実習は、特に後者以外の2つについて触れることができる実習であったと思います。大学病院でも地域医療の意識は大切だとは思いますが、とりわけ地域の視点やプライマリケアに近く、町内唯一の病院としての側面から離島ほどではないにしてもへき地医療について考えるきっかけになると思います。また、医療圏のことも調べるきっかけにしてみたいと思います。

 (※地域実習で学ぶ「地域医療」の言葉の意味が異なってしまうと、お読みいただいてもお時間を頂戴することになると思い、予めお伝えさせていただきました。)

 

 

1.地域実習先の下調べ

 地域実習先は本州最南端の町、和歌山県東牟婁郡串本町です。テレビの台風中継の際に潮岬という地名を聞いたことがある人が多いと思います。まさに、その潮岬があるのが串本町です。東京からですと、南紀白浜空港から陸路、もしくは大阪経由で向かう人が多いかと思います。大阪市内(新大阪駅)からはJRの特急電車「くろしお号」で約3時間ほどで着きます。実際に、串本町ではおいしいお魚も頂きました。

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串本町の位置関係(点線:和歌山県の県境)

 

 まずは串本町の概要から。

 2015年の国勢調査では、串本町の人口は16,558人、65歳以上人口割合43.0%(全国平均 26.6%)といった町です。

(出典)総務省 国勢調査 / 平成27年国勢調査 / 速報集計 人口速報集計

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei02_02000055.html

  全国平均よりも高齢化が進んでいます。そういう意味では、日本全体(平均)の高齢化が今後さらに進んだ時のヒントがあるかもしれません。


 今回、お世話になる病院は「くしもと町立病院」です。串本駅から徒歩25分程度の「サンゴ台」という丘の上にあります。平成23年に移転して建設された病院です。周りでは、すさみ串本道路(高規格道路・自動車専用道路)、串本町役場新庁舎等の移転のための土地の造成や建設をしている風景がみられました。津波対策を兼ねて、高台への移転計画が進められていました。

 くしもと町立病院は、病床数は130床(一般病床90床、療養病床40床)二次救急医療機関で、災害時には災害支援病院としても機能します。医療圏としては和歌山県新宮医療圏に属します。新宮医療圏には新宮市立医療センターといたような大きな病院もあります。他にも、和歌山県の三次救急医療機関は3つあり、南和歌山医療センター(田辺市、田辺医療圏)、和歌山県立医科大学附属病院(和歌山市、和歌山医療圏)、日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山市、和歌山医療圏)です。また、ドクターヘリ等でくしもと町立病院から搬送することもあるようです。

 

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くしもと町立病院の外観

 

2.地域実習

<実習に向けての想い>

 普段の実習では、病院(特に大学病院)での医療について学ぶことが多いですが、地域実習ということで病院の前の医療(例:予防医学、健康増進)や病院の後の医療(例:在宅医療)の場で実習することができます。さらには、地域社会と医療のつながりも感じられて、考えるきっかけになればという思いで行きました。BPSモデルのB(Bio)の部分だけでなく、P(Psycho)やS(Social)の部分に、もっと触れられればいいなと期待していました。家庭医療の学生向けの一部の勉強会・団体で違和感を感じる「思いやりの話だけ」というような始終一面からの視点だけでなく、Bioはもちろんのこと、患者さんの街のデータを調べたり、人類学や社会学の研究や視点も取り込んだり、深みを少しずつ探っていければと思います。どの診療科臨床医でも、非臨床医でも大学病院以外の医療に触れておくという部分に意味があると思います。専門家でも「総合診療はマインド」という視点で取り入れつつ地域とかかわったり、非臨床医でもデジタル化と共に地域を支えるシステムを作るようなことがあるかもしれません。

 前述の「地域医療」というと、前述のように言葉の定義があいまいで都市部でも地域医療はあります。都市部以外での医療をみることができるという意味でも、何か考えるきっかけになればと思い、先ほどのように下調べとして地域実習先の基本的な街のデータを調べてみました。そして、データから抱く印象と実際の街での医療についてみていき、今後他の地域のデータを見れば他の場所にも多少は応用して考えられるようになればと思います。

 

<それでは、実習のお話へ>

 色々調べてみても、最後は百聞は一見にしかずということで現地でのお話をしたいと思います。(人によって実習内容も異なります。また、個別の個人的なお話は控えさせていただきます。)


 地域実習は月曜日の朝に大阪を出発して、実習は午後から始まります。移動に片道あたり半日があてがわれ、実習は4日間というスケジュールです。

 まずは、くしもと町立病院での実習からお話します。普段と特に異なるのは療養病棟での実習でしょうか。病棟(普段の大学病院は急性期)の雰囲気から異なります。これは病院も異なれば、当たり前のことかもし得ませんね。入浴介助の実習等を行いました。入浴介助では、入浴される方が不安になりにくいよう浴槽自体が上下することだけでも驚きました。永久気管孔の方の入浴の際の注意事項も身を持って実習から学びました。さらに、今までこのような実習をしたことがないからだと思いますが、実際に介助をすることで、人も重みも伝わります。そして、今まで以上により生活に身近なこと(例:ADL)に興味を持ちました。
 これをきっかけに、フレイルロコモティブシンドロームといった分野を勉強するきっかけとなる人もいると思います。地域実習までにこれらを学んでおいて、理解しやすかったこともあったと感じたことを覚えています。

 外来実習の時間もありました。内科でしたが、大学病院の際とは異なり様々な内科疾患にめぐり合いました。それ以上に印象に残っているのは、紹介状に紹介元の医院が「高齢につき閉院します」ということが書いてあったこと。普段、そこまで意識することはないかもしれませんが、改めて高齢化のことを思い出したのでした。
 また病棟に関しては、どのような疾患の患者さんがどの程度いらっしゃるかについては、病院のホームページの入院患者実績や手術件数をご覧ください(→http://www.hsp.kushimoto.wakayama.jp/aboutus/jisseki)。大学病院よりも、様々なCommon Disease(しかも比較的典型例)に巡り合う可能性が高いと思います。 

 

 

3.病院外実習から振り返りまで(次回)

 引き続き、次の記事にてもっと地域に根差した病院外での実習についてから、実習後の振り返りから社会と医療についても触れていきたいと思います。

【続き】

mk-med.hatenablog.com

 

 今回は病院での実習までのお話でした。本日もお読みくださいましてありがとうございました。