医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

嗄声の原因 ~嗄声の定義から調べてみる~

嗄声の原因 ~嗄声の定義から調べてみる~


 今回は、突然の嘔吐と嗄声が出現した80歳代男性の症例報告でした。最終診断は胸部大動脈瘤切迫破裂ということで、反回神経麻痺嗄声の原因でした。

 嗄声の原因は、今回のような大動脈瘤をはじめとする神経麻痺、声帯ポリープをはじめとする咽頭や声門の器質的なものぐらいで、high yieldな症候でしょうか?悪心・嘔吐よりはhigh yieldであるとは思いますが、深堀りしてみます。


 まずは嗄声の定義から。何となくかすれ声という程度の認識なので再確認します。

 嗄声(hoarseness、かれ声)は音声障害のうち、声帯およびその付近の異常状態によって発声時の声の質が異常になることをいう。一般的には、失声(無声、ささやき声)、気息声(息漏れのある声)、無力声(力のない声)、努力声(力み声)なども含めて嗄声ということが多い。

(出典)『内科診断学福井次矢,奈良信雄,磯部光章ら(著),医学書院,2016

 意外と無力声や努力声も嗄声に入ることもあるようですね。昔、実習中でしたが、嗄声の訴えがないと嗄声に気がつかないということがありました。そのときには、ひと呼吸の間に話すことができる時間がヒントになるとも聞きました。他にも普段との比較も重要になってくると感じました。実際、嗄声どのように訴えられるのかも調べておきます。

嗄声の患者は
「声がかすれる、出ない、ふるえる」
「ガラガラ声になった」
「高さがおかしい」
などと訴える。反回神経麻痺の患者は、
「会話中疲れやすい」
と言うことがある
(出典)『内科診断学福井次矢,奈良信雄,磯部光章ら(著),医学書院,2016


 会話中に疲れやすいというのは盲点でした。息継ぎする回数が増えるからでしょうか。
 では本題に戻り、嗄声の原因(鑑別疾患)を調べてみました。意外と症候学の簡単な教材には嗄声という項目がありませんでした。

“Hoarseness—Causes and Treatments”というReview articleから、原因と頻度(嗄声の全症例のうちの割合)を紹介します。

Hoarseness—Causes and Treatments
Rudolf Reiter, Thomas Karl Hoffmann, Anja Pickhard, et al.
嗄声の原因
<機能性>
・機能性音声障害(30%)

<器質性>
・急性咽頭炎(42.1%)
・慢性咽頭炎(9.7%):ニコチン乱用、吸入ステロイド、環境中の刺激物の吸入、胃食道逆流症
良性腫瘍(10.7-30%):ポリープ、嚢胞、Reinke浮腫(ポリープ様声帯)、再発性乳頭腫
・悪性腫瘍(2.2-3%):声帯癌
・声帯裂傷(n.d.)
・生理的/加齢(2%)

<内科疾患による兆候>
・胃食道逆流症(9.7%)
結核(n.d.)
・リウマチ性疾患(n.d.):関節リウマチ、SLE、血管炎、サルコイドーシス
・アミロイドーシス(n.d.)
・リンパ腫(n.d.)

<神経疾患>
・声帯麻痺(2.8-8.0%)
 声帯麻痺の大部分(24-79%)は迷走神経または反回神経の麻痺による。手術などの医原性、外傷、悪性腫瘍が原因にある。悪性腫瘍では甲状腺癌(甲状腺癌のうち0.9-1.6%)肺癌(肺癌のうち1.5-43%)といったものの初期症状のことがある。特発性も2-41%でみられる。
・痙攣性発声障害(n.d.)

<声帯機能不全>(n.d.)

心因性
心因性発声障害(2-2.2%)

(出典)Dtsch Arztebl Int. 2015 May 8;112(19):329-37. doi: 10.3238/arztebl.2015.0329

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 声帯麻痺については少し詳しく記載しました。胃食道逆流症、慢性咳嗽の原因以外にもここでも原因として挙げられていますね。
 他にも攻める問診や嗄声の中での鑑別に役立ちそうな典型的な症状の記載、各原因についての詳しい記載、綺麗な表もありました。例えば、良性腫瘍のポリープや嚢胞の典型症状に声のボリュームの低下、発話への倦怠感という記載や、心因性発声障害の典型症状に突然の嗄声(数時間、数日)というような記載もありました。気になる方はFree articleなので、目を通してみてください。


 嗄声に身体所見がないかと調べた際に偶然分かった問診項目や、追加の鑑別疾患です。嗄声についての直接的な身体所見は見当たりませんでした。

<問診項目>
・環境に対するアレルギー
・胃酸の逆流
・喫煙、煙や他の刺激物の吸入
・2週間以上続く慢性的なものか
・喫煙や飲酒は継続的であるか
・咳や喀血、体重減少、片側性の咽頭痛はないか

 嗄声が2週間以上続くなら、喉頭鏡検査を紹介して甲状腺機能低下症、逆流性食道炎、声帯結節、頭頚部癌および、パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症重症筋無力症など神経学的障害が原因かどうか調べる。
 
(出典)『ベイツ診察法 第2版』リン S. ビックリー,ピーター G. シラギ(著)

 

ということで、嗄声の原因として原理的に考えれば神経(筋)疾患も入るということを確認できました。

 悪心・嘔吐や腹痛のような鑑別に比べると、嗄声を元に考えると比較的絞って考えやすそうでhigh yieldな症候という印象を受けました。そして、嗄声の原因の疫学的なこと、自身の中で盲点であった部分の復習にもなりました。

 本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。