"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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読書ログ: 『経営リーダーのための社会システム論 構造的問題と僕らの未来』

読書ログ(書籍紹介)

経営リーダーのための社会システム論 構造的問題と僕らの未来』
宮台 真司 (著)、野田 智義 (著)

 

<目次>

 

 「経営リーダーのための」とは言いつつも単なるノウハウではなく、良い意味で裏切ってくれる、誰にでも読んでほしい社会の構造的問題社会学の視点から宮台真司先生が切り込んで現状把握させてくれる書籍でした。よくありそうな本の「経営リーダーのため」という予想を裏切られたような気もしますが、ここまで吸い込まれるかのように読み切った書籍でした。

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【こんな人におすすめ】

  • 社会学を通じて「いま」を把握したい
  • この社会の構造的問題とは?
  • 安全、快適、便利失ったものは?

 このようなことに興味がある人におススメの本です。

 

 

感想・印象に残った

 まずは、著者の宮台真司先生を誤解していらっしゃる、もしくは話の内容が複雑ゆえによくわからないと感じていらっしゃる人もいるかもしれません。このご時世では珍しいぐらい利他的公共性の高い考えをもっている方で、出来ること・出来ないこと、人の気持ちまで理解して書かれています。これらを合わせた思慮深い考えの結果として、複雑な話になるため、誤解している人も多いようにも感じます。しかし、その根底には優しさもあふれていると感じます。もちろん、この思慮深い考えを自分自身の状況にどの程度適応できるかは各個人の状況にもよって異なると思います。それでは、書籍の話に移りたいと思います。

 国際化グローバル化の違い、2段階の郊外化(団地化→郊外化)による地域、家族の空洞化といった話を通じて、まずは現状認識を深めていくことができます。ちょうど、この中の例えであった、地域の憩いの場であった銭湯の話もありました。場所は違えど私自身の経験として、一部を除き観光地化していないコミュニティの一部である京都の昔ながらの銭湯を思い出しました。ひょんなことから、おじさん、おじいさんと会話のはじまるあの空間。スーパー銭湯や、サウナとリノベで観光地となってしまった銭湯と、地域のコミュニティとして手入れされながら存続している銭湯の違いが脳裏によみがえってきました。
 さらに、生活世界システム世界の話において、コミュニティ(共同体)は生活世界、一緒になる人を選んでいるアソシエーション(組織集団)はシステム世界という分かりやすい視点をくれます。

 システム世界は、快適、便利な2段階の郊外化で達成したものであるという話や、今の初老の人の退職することでの老害」化(キレやすさ)も、昔からの会社という共同体がなくなった(辞めた)からという状況とそれによる仕事以外に共同体を持っていなかたことへの不安によるものであるという説明も目から鱗でした。

 快適、便利なチェーンの24時間営業のようなレストランやお店システム世界でなくて、いつもの近所で旅先で、深夜に飯は食えないけど、近所のおばちゃんがやっている「ちょっと不便かもしれないけど、当たり前」のような環境生活環境があったな~と。別に深夜に食べ物が食べれなくても、それぐらい今でも我慢すればいいと思うんですが、私自身の生活スタイルを見ても反省する点があるな~と身に沁みます。だいたい、カウンターで時間ありそうであれば、旅先では何かを聞きながら食事をし、近所では、近所の何かや事件、覚えていないけれども何かを話していたような気がします。チェーンやチェーンみたいなお店でそういうことって、なくなった~と。むしろ旅先で残っている会話って、旅先の民宿か、コンシェルジュか、体験型アクティビティのような場所ぐらいだな~と、私自身の振り返りにもなりました。

 話を書籍に戻すと、システム世界についてのお話が続きます。詳細や続きは是非、書籍に目を通してみてください。

 過剰なほどに便利で快適なシステム世界への依存をやめて、生活世界(共同体)の再生を図るために、私たちが利用しているテックやシステムをデフォルトとしつつ、仲間意識を取り戻してみんなによいものを選んでいくために、何をすべきかという話に至ります。そこで、ミメーシス(感染的模倣)となれるように何かできればいいと思った次第です。マクロなアプローチ(例:政治)では無理でも、これならミクロなアプローチから何かを変えられるかもしれないと期待が膨らみます。
 よい世の中になることを願って、便利・快適なだけで代替可能な何かじゃないものを目指したいと思います。新年度、ちょうと意識してみたい、ちょうどいい指標にもなるとワクワクしています。経営だけでなく、そんな視点を持ったリーダーが増えることを願って…。

 読みやすい文章で吸い込まれるかのようにあっという間の読書体験、そして改めて宮台真司先生による言語化された現状把握がとても目から鱗の読書体験でした。

 
 

PS. 終わりなき日常を生きろ

 宮台真司さんの書籍は、『14歳からの社会学『日本の難点』『中学生からの愛の授業』とをはじめ、多数あります。私の中では終わりなき日常を生きろが特に印象的でした。
 自己啓発にハマりすぎてしまったのか、意識高い系のビジネス動画でも見すぎてしまったのか、普段の生活に意味を見出さないといけないと焦っている人もいると思います。そのような人へのメッセージとして、今でも通用するものがあると思います。「日常に意味なんか求めすぎず、でも楽しめる」というのは、仏教中観にも通ずるような、空でもなく下観でもなく中間というような匙加減を教えてくれる良い本だと思います。
 それこそ「さまよえる良心」と上手に付き合っていくための良い本だと思います。例えば、本書の出てくる40年ほど前の具体的な話を応用して今に当てはめて考えること(例: テレクラ→パパ活に置き換える)ができれば、昭和から令和になっても色褪せない内容だと感じます。こちらもよろしければ、手に取ってみてください。
 
 
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 本日もお読みくださりありがとうございました。

 

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