『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』
松田光弘(著)
皮疹の診かたの本といえば、皮疹の分類を覚えるだけでもひと苦労というような印象がありました。それを覆してくれた初歩的な皮疹の診断の思考プロセスに焦点を当てた皮疹の診かたの書籍です。
【こんな人におススメ】
- 皮膚科診断の初歩に
- 皮疹の思考プロセスに興味がある
- 皮疹の名前を覚えるのに挫折したことがある
いわゆる従来よくみてきて皮膚科のアトラスのような書籍ではありません。「皮疹は〇〇(専門用語)であるから、鑑別が…」というのではなく、もっと簡単に皮疹の組織学的な深さから鑑別を考えていきます。皮膚科医ではなくても、とっつきやすいというのもおススメの点のひとつです。
大きく分けると、皮疹が「ツルツル」か「ザラザラ」かという視点で分けていきます。「ツルツル」であれば表皮より下の病変(例:真皮)、「ザラザラ」であれば表皮の病変、として原因を大きく分けて鑑別していくという流れです。
「ザラザラ」(鱗屑)であれば、病変の深さは表皮として湿疹、感染症、悪性腫瘍、その他炎症性疾患を鑑別するというような流れです。
「ツルツル」であれば、まずは真皮として蕁麻疹(24時間以内)もしくは中毒疹(24時間以上)として考えていくような流れです。中毒疹の原因に薬剤性、感染症、膠原病、悪性腫瘍というような原因があります。
最後の最後まで詰め切れるわけではないですが、従来のような皮疹名を大きく意識せずに症例ベースで初歩的に学ぶのに良いと思います。人によっては良くも悪くも、私自分の中では「最初はここまででいいかな(これ以上は諦めよう)」と思えるのが、この本が到達目標として気軽さや満足度を増していると思います。
野口善令先生の『誰も教えてくれなかった診断学』の皮膚科診断学版のような印象さえあります。今回は、皮疹の診かたという事で症例(皮疹)を用いて実践的なものではありますが、臨床推論(診断推論)とも通じるものがあります。
皮疹に苦手意識があれば、一度手に取ってみることをおすすめします。医学書ログでは、次回も読んで良かったと思える医学書を中心にお送りいたします(読んでいても医学書ログにならないものも少なくありません。あまり印象的ではなかったものだけでなく、ホスピタリストのように期待通りすぎて、医学書ログは書かないなんてこともあります。その際はDMもお待ちしています)。
本日もお読みくださり、ありがとうございました。
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