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医学書Log: Jmed 87『シチュエーション別 整形外科の触診・徒手検査』, 大内洋(編)

医学書Log (<書籍紹介

  • 日本医事新報社 Jmed 87

シチュエーション別 整形外科の触診・徒手検査, 大内洋(編)

 

<目次>

 

 今回は、非整形外科医骨折・捻挫の診察等で役立ちそうな医学書の感想・紹介です。どうせ2方向~4方向ぐらいでレントゲン写真を撮るにしても、その前に触診や徒手検査でアタリをつけておきたいときに役立つ本でもある気がします。

 

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1. こんな人おすすめ

整形外科専門医 or 研修医で…

  • 救急外来等で骨折・捻挫も診る
  • 整形外科触診徒手整復に興味がある

 

 身体診察と聞くと、ジェネラリスト向けの書籍では『マクギーのフィジカル診断学』や『サパイラ 身体診察のアートとサイエンス』をはじめとする名著があります。一方で、整形外科的な診察の際に役立ちそうなジェネラリスト向けの本は案外ないなーという印象を受けます。

 整形外科専門書は、非専門医には専門向けすぎたり、全科当直や研修医の救急外来ぐらいでも役立ちそうな部分の多い書籍は少ないと感じます。

 そんな中、非整形外科医に役立ちそうなものを偶然にも見つけました。

(注)2章への追記の通り、整形外科コーナーにて徒手検査」をキーワードに本を探してみると、ポケット本や簡単なものを外来にて応用できることも感じました。総合診療系の身体診察の本がよくあるコーナーを見ているときの盲点であったということに後日気づかされました。お詫び申し上げるとともに、追記させていただきました。(2024/09/23)

 

 

2. 本特徴・感想

 様々な状況や疾患に対する触診徒手検査を診察の仕方が具体的に分かりやすく説明されているのが特徴です。

 小セクションの中でも、例えば、足関節外側靭帯損傷、前十字靭帯(ACL)損傷、後十字靭帯(PCL)損傷、半月板損傷、脊椎圧迫骨折などを疑うような状況は、救急外来でもあるのではないでしょうか。これらのような触診・徒手検査の仕方は参考になると思います。一方で、ドケルバン病とか、手根管症候群などは、経過的に救急外来ではなさそうですが…。

 

 さらに、一例として第6章「足関節・足」の足関節外側靱帯損傷(捻挫)について詳しく掘り下げてみます。よく「バスケの試合中に足を捻った→足関節の腫脹・疼痛」というようなウォークインが考えられます。そのような状況が具体的に挙げられています。Ottawa ankle ruleで重症度評価をして、骨折の評価もしたうえで、前距腓靱帯の触診、前下脛腓靱帯の触診、踵腓靱帯の触診、前方引き出しテストといった診察について触れられています。

 前距腓靱帯の触診の仕方のようなものが、具体的に体表から触る部分分かりやすいような写真もついています。「解剖の本をチェックすればよい」というのとは異なる実用性の高さ(実践のしやすさ)だと思います。

 

 欲を言えば、「足関節の内反受傷」の場合のようなテーマの中で、外果骨折(腓骨遠位端骨折)、前距腓靭帯(ATFL)損傷、踵腓骨靭帯(CFL)損傷、…、第5中足骨骨折というような鑑別と診察がセットであったり、Ottawa ankle ruleもセットであったりというような、状況別の診察がまとまっているような感じだと、もっと救急外来では使いやすいとも感じました。

 後述の「骨折ハンター」でも骨折疑いの場合には状況別でチャートのようにチェックすべき流れが、章の最後にまとまっています。これらに加え、他の腰痛のような状況も含めてまとめられているような本があれば、ぜひご教授いただきたいと思います。

 

【追記】整形外科 徒手検査

 整形外科の診察において、徒手検査」についてまとめられている医学書を参考にすれば、自分自身で徒手検査・診察の組合せを考えることで活かせるとも感じました。徒手検査の本として下記のようなものがあります。

 医学書整形外科コーナーで探すと初めから各身体診察(徒手検査)の本も複数あり、切り口(状況別の使い方)を自分で考えて組み合わせれば、使用可能であったとも気づかされました。お詫びして追記させていただきます。(2024/09/23)

 

  • 『適切な判断を導くための整形外科徒手検査法 エビデンスに基づく評価制度と検査のポイント』

 タイトルの通り徒手検査のエビデンスということで感度・特異度などにも触れながら、それぞれの徒手検査のやり方まで載っている本です。例えば、足関節→様々な主訴→フローチャート→各徒手検査というのがまとまっていて、1冊で綺麗にまとまっていると思います。

 

  • 『適切な臨床に導くための整形外科徒手検査法ナビ 検査の選び方とエビデンスに基づくアプローチ』

 先ほどの「適切な判断を導くための整形外科徒手検査法 エビデンスに基づく評価制度と検査のポイント」を症例ベースにもっと具体的にどの徒手検査をするかを考えていくような本です。

 

  • 『整形外科テスト ポケットマニュアル』

 手技(徒手検査)だけを中心にという本の一例です。手技そのものとワンポイントの注意点が分かりやすくコンパクトにまとめられています。

 

 

 

3. 「骨折ハンター」補完!?

 先ほどの感想のように、徒手検査と骨折とを含めた状況別の診察等がセットになっていれば、なお良かったのにと感じました。そのように考えると、『骨折ハンター レントゲン×非整形外科医』, 増井伸高(著)(以下、「骨折ハンター」)とセットで持っていると徒手検査には載っていないものと合わせて補完できそうにも感じます。

 「骨折ハンター」は、非専門医や研修医向けに骨折・捻挫などの診断から初期対応に焦点をあてて上手に内容が絞られ、まとめられていると感じる本です。簡単な症例提示とレントゲン写真の後の解説から学ぶことが多かったです。

 改善点というのか、現場での個人的な診察の仕方との乖離を上げるとすれば、あまりにも画像が最初に来すぎている感じがしました。「レントゲンを撮る触診アタリをつけて撮りたい・読影したい」、というような感じがします。例えば、「足関節の中でもどこなのか」というようなのを触診アタリをつけたい感じです。

 その知識と、この本の触診・徒手検査を上手に組み合わせると、救急外来等の現場にさらに活かせるような気がします。

 

 

 

4. まとめ

 まとめると、特定のものを疑ったときに、具体的にどの部分を触診したらよいのかというのが分かりやすく、専門でないがゆえに救急外来(ウォークイン)などでもお目にかかりやすいものだけでも、参考になると感じました。「骨折ハンター」等での知識と合わせて活用してみてください。

 どのような疾患等の触診・徒手検査を取り扱っているのかをはじめ、気になる方はチェックしてみてください。

 

 
 
 
【関連記事】
 下記は整形外科的な症候の視点から鑑別疾患を考える上で参考になる本です。