低ホスファターゼ症③|病態生理
~TNSALP遺伝子変異からPLP, PPi蓄積まで~
<目次>
前回まで、低ホスファターゼ症(hypophosphatasia; HPP)の臨床症状、検査所見について扱ってきました。検査異常として出てきた血清ALP値低値も病態のALP抑制という根幹に関わっており、そこから病態生理について深掘りするという内容です。
今回は、調べていてブログ記事にするかとても悩みました。前々回の「また1年を迎えることができました」でも書かせていただいたように、ChatGPTなどのジェネラティブAIの実用的な方向での進歩をしています。実際に私自身が書く必要性にも悩まされたため、途中からはReviewをお読みいただければと思います。そのことを予めお断りさせていただきます。
5. 低ホスファターゼ症の病態生理
それでは、病態生理についてチェックしていきましょう。大枠を掴んでいただくことでReview読みやすくなったり、理解がしやすくなったりすると思います。
- TNSALP遺伝子は第1染色体短腕(1p36.1-p34)に存在し、これまでに300以上のTNSALPの変異が確認されており、TNSALP活性が様々なレベルで低下していることが分かっている。
- ALP活性の欠損や低下は、無機ピロリン酸(PPi)、ピリドキサール5'-リン酸(PLP)、ホスホエタノールアミン(PEA)という3つのリン酸化合物の増加を引き起こす。
- これらのリン酸化合物、特にPPiの細胞外への蓄積は、ハイドロキシアパタイトの結晶形成と成長の障害につながり、それによって小児と成人にそれぞれくる病と骨軟化症、およびその他のさまざまな症状を生じさせる。
(出典)Clin Cases Miner Bone Metab. 2017 May-Aug;14(2):230-234.
TNSALP(組織非特異型アルカリホスファターゼ)遺伝子の変異により、リン酸化合物の分解をする酵素であるALPの活性が低下します。ALP活性低下または消失により、リン酸化合物が蓄積することが病因にあると掴めれば、大枠としての理解が進むのではないでしょうか。
その蓄積するリン酸化合物がPLP(ピリドキサール5’-リン酸, ビタミンB6)であれば、神経症状が生じ、PPi(無機ピロリン酸)であれば、骨格障害やそれに伴う呼吸器症状、筋症状や関節症状、さらには腎障害というような症状が生じるとまとめることができます。PEA(ホスホエタノールアミン)に関してははっきりとは解明されていないようです。
アミロイドーシスと似ている部分があると感じました。炎症で生じた様々な種類のアミロイドが蓄積することで障害を生じるのと病因の仕組みとしては似ています。
さらに詳しく病態生理(病因)について調べてみたい人は、ぜひReviewなどをチェックしてみてください。マウスモデルにおける知見を含むFree Articleを紹介しておきます。興味がございましたら、よろしければご覧ください。
PMID: 26590809
PS. 低ホスファターゼ症の関連記事
低ホスファターゼ症の①から続いたシリーズはここまでとさせて頂きます。低ホスファターゼ症関連の記事は低ALP血症の鑑別の話を次回以降にして終わりにしたいと思います。
お待たせ致しました。よろしければ、ご覧ください。
【低ホスファターゼ症の記事】
- 低ホスファターゼ症①|臨床症状(成人型含む) ~意外な全身症状も!?~ - "Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記
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低ホスファターゼ症②|検査所見、鑑別疾患 ~尿中PEAや血清ALPの感度・特異度まで深掘り~ - "Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記
本日もお読みくださいましてありがとうございました。
今回のようなブログ記事に対する考え方の変化につきましては、下記の読書ログの記事の最後の章「PS.【感謝】また1年を迎えることができました」をご覧ください。