"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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いつもと違う本との出会い|読書Log:『トリオリズム』etc, おすすめの4冊

いつもと違う本との出会い

読書Log:『トリオリズム』etc おすすめの4冊~

 

<目次>

 

 今回の読書ログは、「普段読まない本も意識して読んでみると新たな発見がある」という拡散的な筆休めのような感想です。当ブログもおかげさまで、また1年を迎えられましたことをお礼申し上げます。

 

1.きっかけ

 今回の読書ログのメインは『トリオリズム』なのですが、この本との出会いのきっかけはYouTubeのおすすめ動画でした。

 最近話題の成田悠輔さんと「東京の本屋さん ~街に本屋があるということ~」のコラボです。動画の6分25秒ぐらいから、今回の本題でもある『トリオリズム』が紹介されています。他の本の紹介(2冊)や、実際に本屋さんへ行って「あなたにとって本屋さんとは?」(13分35秒以降)というようなことも聞くことができる動画です。

 今回はこの『トリオリズム』に加えて、過去に「出会った」と感じた書籍も紹介しようと思います。比較的過去に出会った本ですが、今でも読む価値があると思っていて、きっかけとなる時の内容の難易度としても違和感のなかったものです。



2.『トリオリズム』 - 叶恭子 (著)

 著者についてはもちろん、書籍についてもご存じの方もいらっしゃると思います。叶姉妹の1人として、華やかな印象をお持ちの一方で、よく分からない世界というような方も多いのではないでしょうか。

 この本の中では、Make Loveお金といったことについて逃げることなく赤裸々に語られています。プロ意識というような自己肯定感の高さも伺えます。そして、自伝のようでありながら、人物、状況も具体的な場面を想像させられる小説のような描写も魅力的です。そこに登場するお金持ちなどの飛び抜けた世界垣間見る好奇心のようなものを搔き立てる本だと思います。大衆雑誌の編集者が想像したような疑問点だらけの年収1,000万円・3,000万円生活のような世界観とは異なります。

 愛とお金の関係のような、多くの人があまり口にしにくい内容にまで突っ込んで、飛び抜けて書くことで、中途半端に凝り固まった常識のようなものを客観視させてくれます。「愛とお金とかなんだよ」と反射的に批判的に揚げ足を取りたくなるような人は、特に読んでみることをおススメします。中途半端な範囲の視点最適解だと思い込んでいたものを、違うという事を発見させてくれます。イメージとしては、数学のある範囲での極大値を最大値だと思い込んでいることに気がつかせてくれるようなものがあります。

 愛をはじめとする様々な人間関係社会的活動において、キレイな情動的・精神的なことばかり強調して、それが唯一の正義のような考えの人にも是非読んでもらいたいと思います。例えば、ある診療領域のようなセミナーでBioや医療経済等の話を抜きに、やたらと思いやりとか、寄り添いとか、地域での繋がり・関係性ばかりを強調していると感じる団体もあります。表面的な思いやり、寄り添いが、プロフェッショナルであるにもかかわらず、共依存関係になるリスクもあります。そして何より、嫌悪感を示す前にそういう団体の人にも読んでもらいたいと感じます。

 もちろん、個人の自伝や体験が一般化してすべてに当てはまるというわけではありません。これは患者さんの体験談が心に訴える力は強いものの、一般化とは別であるのとも類似しているとも言えます。個の感情が先で全体へは難ありだと思いますが、合理的/理性的でやった方が良さそうなことに対して、最後に行動できるように感情で後押しするために使えるものでしょう。

 話の中身のすべてを一般化はできない面もありますが、飛び抜けた環境・視点からの知見は、想像力を豊かにし、他の考え・視点・選択肢もあることを腑に落として理解し、対話や昇華して解決していくための環境を育てやすくするて素晴らしさがあると思います。



3.『京都花街の経営学』 - 西尾久美子 (著)

 続いては、舞妓さんや稽古さんといった京都花街に焦点を当てた書籍です。これは、先程の『トリオリズム』はさすがに読むのに抵抗があるという人に向けて、知らない世界を覗いてみるというコンセプトでおすすめしたい本です。『トリオリズム』の世界と比較的類似点を感じやすいものを選びました。

 『トリオリズム』とは異なり、小説のような描写はありません。そういう意味でも『トリオリズム』に抵抗を感じる人にも手に取っても貰いやすいと感じました。入念な調査に基づいて、花街の仕組みについて丁寧に書かれている印象です。この本との出会いは古く、著者の新たな書籍の方が良いというようなアマゾンでのレビューもありましたが、その本は読んだことがないので分かりません。気になる方はレビューを読んでみてください。

 この本は、本屋さんの棚で偶然見つけて買ったものです。本との出会い方についても、後ほど書いてみたいと思います。

 


4.『Ai 愛なんて 大っ嫌い』 - 冨永 愛 (著)

 世界的なモデルとして有名でご存じの方がほとんどだと思いますが、冨永愛さんの自伝ともいえるような本です。『トリオリズム』ほど、それぞれの場面について具体的に書かれているわけではないのですが、飛び抜けた人世界垣間見れる本です。いじめられた子供の時の話や家庭環境など、活躍されている姿からでは想像もつかないような反骨精神のようなものを感じます。そして、モデルという世界についても触れることができます。

 そして何より、憎悪というような感情や、子育てというような悩みにもつながっていくお話が、私たちとは異なる世界のような場所にいる人でも似たような側面を持つ悩みというものもあるのだということも認識させてくれます。『トリオリズム』のような自己肯定感が前面にある本ではないですが、これもまた様々なことで人が悩み様々な世界があるということを意識させてくれ、キレイごとだけではないことを教えてくれる良い本だと思います。そして、『トリオリズム』や小説と同じく想像力豊かにしてくれる側面があると思います。

 しかも嬉しいことにKindle unlimitedの対象書籍でもあるので、ぜひ興味のある方は読んでみてください(2023年3月2日追記)

 

 

5.『遺言 私が見た原子力放射能の真実』 - 服部 禎男 (著)

 これまでに紹介した3冊に興味を持ってもらえればとも感じたのですが、テーマ的に興味が湧かない人もいると思います。少し、時事的な話題に関連する本にしてみました。投資や政治の分野だけでなく、2023年春の約30%の電気料金値上げの背景としてつながる原子力発電が話題となっています。もちろん、この分野の話は多数あるのですが、『トリオリズム』が動画で紹介されていたのと似ており、過去に人に紹介してもらった本というご縁で選びました。

 著者の原子力に対する技術者としての見識の深さや業界の話を垣間見ることができる本です。フクシマ等の旧来からの原子炉と、新たな超小型原子炉の違いの根本となるような知識を知らずに、概念を理解せずに、原発反対も賛成も考えるのは難しいと感じました。ここから、さらに調べたり、深掘りしたりするスタートになるような素敵な本でした。

 他にも人は正論だけでは動かないということも分かるような本です。先程の『トリオリズム』飛び抜けた原始的な・非理性的な欲求とするならば、理性的な欲求と合わせた両方大切さも感じさせてくれます。社会のために理性・理論的に理想と考えられるもののひとつに近づけていくためには、知識はもちろん必要で論理的な理想を根底にしつつも、感情・欲求などの理性的な部分と上手に折り合いをつけてやっていく必要があるということも示唆しているように感じます。マルクス主義社会主義がうまく機能しなかったのと似ているかもしれません。



 

6.いつもと違う本を出会うために

 医学書やいつも読んでいる分野等の決まった著書やテーマであれば、アマゾンのようなネットでクリックすれば簡単便利に買うことができます。医学分野でも医書.jpをはじめ電子書籍も増えてきました。紙の本でもアマゾンプライムであっという間に届きます。

 そして、普段アマゾンで買い物をしていると購入・閲覧履歴等に基づいておすすめの本が表示されます。しかし、異なる方向興味を広げたり想像を超える新たな本に出会うには、アマゾンのおすすめ本や検索結果ようなアルゴリズムによるものには、やはり限界のようなものも感じます。そこで、新たな本に出会うために普段から時間のあるときに意識していることがあります。そのうちの一部として、試して見やすい方法を紹介します。

 

6-1. 本屋さんへ足を運ぶ

 新たな本を探しに本屋さんに行く際には、大きく2つのことを意識しています。1つ目は、ふわっとして「キーワード」も自発的には思い浮かばないような興味を形にする場所として、分野を限定せずに様々な本棚を眺めることです。表紙をみて、特集コーナーをみて、ひょんなきっかけでカタチになることがあります。

 2つ目は、この本棚(もしくは通路等)から必ず1冊買うというような買い方です。全く興味がない分野のコーナーでも必ず買わないといけないという制約をつけることで、全く知らない分野のことについて書かれた本を読むきっかけになります。お金がない場合はBOOKOFFの200円コーナーのようなところでやってみても良いと思います。ニッチな古書狙いで神保町というような選択もあると思います。また、普段の本屋では目に入るものが似てくることもあり、地方から帰る時にターミナル駅や空港で偶然目に留まった本との出会いというようなこともあります。

 いずれにしても、本の中を少し読んでみて、難易度的にも最初に読むのにちょうどよいと感じるものかをチェックしましょう。自分自身が心地よい・少し難しいと感じる程度のものが良いと思います。難しすぎると、名著でも読むことはできないでしょう。

 

 

6-2. 本を紹介してもらう

 信頼できる人紹介してもらうというのも、新たな出会いとなります。もちろん、信頼できる人というのは医療関係者とは限りません。むしろ医学以外の方が良いかもしれません。その人の得意分野であったり、その人の趣味の領域であったりなどでのおすすめの本を聞きます。場合によっては、会話の中で自然と紹介になることもあります。

 あなたのことを知っている人であれば、難易度まで配慮してくれることもあるでしょう。そうでない場合はとりあえず読んでみて、難易度が合わないけどテーマとして興味を持った場合には他の似たようなテーマの本に触れてみても良いでしょう。

 

 

6-3. 図書館・読み放題を利用する

 本だけというより雑誌も含みますが、図書館、アマゾンKindle Unlimitedのようなサービス、待合室の雑誌、ANAのeコンテンツ(搭乗時の電子雑誌サービス)といった機会に、普段自分でお金を払って買わない本や雑誌も見てみることです。

 図書館では、本屋さんで意識的にいつもと違う本との出会いを作る際と似たように、この本棚(通路)から1冊を選ぶというような方法から、図書館の司書さんがおすすめコーナーのようなところから1冊を選ぶというような方法もあります。

 図書館で借りて返すぐらいなら、立地や時間の関係から忙しくて他のサービスを使うというような人もいると思います。図書館以外にも目を向けてみましょう。Kindleの場合は冊数が多すぎて検索ではもともと興味のあるものしか見つけにくいというようなデメリットもあります。その時ランキング上位からというような視点でも良いでしょう。限定的ではありますが、アマゾンをはじめとする通販サイトで新たな本を探すときにも応用できます。

 雑誌にまで広げてみます。待合室の雑誌は、そこまで種類はないと思いますが、普段手に取らないようなものを手に取ってみると何か発見があるかもしれません。他にも、ANAなどの一部の交通機関・宿泊先などで提供している電子書籍サービス(雑誌・新聞中心)も、書籍は100点程度に限られており、待合室の雑誌の拡張版というような機会となるでしょう。普段買わないような雑誌が多数あります。いや、ラウンジや機内で見れるからと買わなくなった雑誌もあるような気もします。例えば、『東京カレンダー』のような雑誌も「誰が東京でこんな生活をしているんだろう?」というような疑問も湧きつつ、人間の煩悩と向き合いつつ雑誌のコンテンツとしての統一感等も楽しむことができます。閲覧のしやすさという視点で言うと電子版より紙であり、まだスマホよりタブレットのほうがよいですが、電子コンテンツの良いところは、紳士向けも、婦人向けも、日本語のものも、海外のものも、というように1ページ1秒のようなペースでいろいろと読んでいても変な目でみられないことでしょうか。

 ぜひ機会があれば、ちょっと意識して本や雑誌などを手に取ってみてください。



 

7.いつもと違う本と出会ったら

 いずれのパターンの本との出会いでも、それをきっかけにさらに読んでみたいテーマや著者などのキーワードが手に入ります。次のスタート地点になるという意味で、新たな出会いへとつながります。最初の本との出会いほどではないですが、キーワードを手に入れた分野普遍的に説明している本に手を出してみると、大きく視点が広がり、その分野の地図のようなものが手に入る(引き出しのようなものができる)ことが楽しく感じる時もあります。

 例えば、『経済ってそういうことだったのか会議〔佐藤 雅彦 (著), 竹中 平蔵 (著)〕を読んで、興味を持って『クルーグマン ミクロ経済学』・『クルーグマン マクロ経済学』〔ポール クルーグマン ら(著)〕で体系的に引き出しを作って、さらに…というようなことがありました。その流れの1冊目です。もちろん、体系的にするだけでなく、『フェアプレイの経済学―正しいことと間違っていることの見わけ方』〔スティーヴン・E. ランズバーグ (著)〕のような楽しい次の読み物へもつながりました。もっとも経済学に興味を持つモチベーションが湧かない人には『スタバではグランデを買え』のような本の方が興味を引くかもしれません。これはいずれも10年以上前のことなので、あくまで例になります。

 きっかけとなるようなから、その興味をもとに体系的に広めて、さらにそこから興味の湧いたことを深めるという嬉しい学びの連鎖となることを願っています。電車に乗っていても隣でスマホでゲームをしている中年以上の男性もよく目にします。電車の中で学びをするかは人それぞれであり、様々な要因がありますが、やはり学んでいかないと会社の中でしか通用しなくて給料も良くなるわけないと個人的に感じる時もあります。そんな意味でも読書等を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

特別展「毒」図録

 先日も、国立科学博物館特別展「毒」に行ってきた際に、「毒」についてまとめられた図録と出会いました。『臨床中毒学』を久しぶりに調べるわけでもなく目を通してみようと思う内容でした。また、図録と言っても小学生の頃の図鑑のグレードアップを彷彿させる、興味深い「書籍」でした。百科事典も久しぶりに見てみたいとか、小学生の頃の図鑑のようなものにも、もっと目を向けてみようと感じた次第でした。

www.dokuten.jp

※東京国立科学博物館では、2023年2月19日(日)までの特別展になります。大阪市立自然史博物館へ巡回するようです。

 

 いろいろなところで本との出会いがあると思います。拡散的な思考と集中的な思考を組み合わせ、想像力豊かにしてくれる本との出会いをお楽しみ下さい。

 

 

PS.【感謝】また1年を迎えることができました

 おかげさまで当ブログもまた1年を越すことができました。お読みくださり、ありがとうございます。それが継続の支えとなっております。

 はじめのうちはアクセスも集まらず、継続するモチベーションが湧かないときもありました。しかし、多くはないものの継続的アクセスしてくださり、感謝致しております。

 特にこの1年(特に直近)では、PerplexityやChatGPTをはじめとするジェネラティブAIを用いたシステムの実用化に向けた進歩により、が文章を書く必要性についても考えております。特に医学的なテーマのものであれば、すでにUpToDateもあり、DynaMedもあるうえ、教科書のような書き方であればAIというよきライバルも発展してきました。ChatGPTに顕著な気がしますが、正しいことを言うかのように平然と嘘をつくこと、引用元などのAIの至らない点はあります。しかし、このようなものも発展してきているので、そういう記事は徐々にAIに任せてということでしょうか。AIはまだ課題を設定したり、決断することは苦手と感じますが、課題を投げれば(質問をすれば)答えてくれます。人の強み課題設定でしょうか。

 そのような背景もあり、読み物としての話の展開・内容も意識しつつ、医学的なテーマについて書くことを意識が増えました。話の展開を考えたり、それに合わせて書き直す時間もかかるようになりました。そういう意味では、紹介記事のようなスタンスも良いのではないかと考えて、今回の読書ログと「いつもと違う本との出会い」の会にさせていただきました。ChatGPTのようなものが生成する短い作品(今のところ、数千文字程度)だけではなく、様々な世界に触れられる長い文章(作品・本など)もお楽しみいただければとも思います。

 記事の更新頻度や内容等をまた調節していくかもしれませんが、今後とも当ブログをよろしくお願い申し上げます。



 本日もお読みくださいましてありがとうございました。

 

 

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