~Physical Rehabilitation for Older Patients Hospitalized for Heart Failure~
心不全の病態や治療薬について以前、ブログ記事にしました。心不全(急性胃心不全、慢性心不全急性増悪)で入院になった際に数週間も入院していると、入院前と比較して患者さんの歩行距離・歩行速度や筋力がとても落ちていると感じました。50歳代ぐらいまでの患者さんでは筋力は落ちたものの若さゆえなのか、生活に支障のあるような筋力低下とまでは感じなかったのですが、年配の患者さんの際には大丈夫かなと不安になったりしました。
実際にどの程度、何が落ちているのかを定量的にすることはできないかということで調べてみました。
運が良いことに2021年7月15日のNew England Journal of Medicine(NEJM)のOriginal Articleにて、”Physical Rehabilitation for Older Oatients Hospitalized for Heart Failure”という文献を見つけました。こちらを紹介していきたいと思います。
BACK GROUND急性非代償性心不全にて入院した高齢者では、身体的フレイル、QOL(quality of life)の低下、回復の遅れ、頻回の再入院がある。ガイドラインでは心不全で入院した患者の身体的障害についてしっかりとした指針はなく、入院して間もない患者でのリハビリテーションについての先行研究がない。
METHOD
<REHAB-HF trial>
・多施設共同ランダム化比較試験
・349人の60歳以上で急性非代償性心不全で入院した患者
→175名の介入群(73.1±8.5歳)、174名の対照群(72.2±7.7歳)
・4つの身体機能に注目(特にEndurancde: 歩行持続性)
①椅子からの立ち上がり ②起立時間 ③歩行持続時間 ④歩行速度
(Appendixより)
介入群
~対照群〔通常の治療(リハビリ含む)〕に加え~
・3カ月後までの週3回(60分/回)の外来リハビリ
・3か月後以降、4週ごとの運動処方
対照群
・1カ月後、3か月後の外来受診と2週間ごとの電話
RESULTS
Primary Outcome
・介入群で26名の離脱(12名死亡、16名追跡不可)、対照群で19名(6名死亡、13名追跡不可)の離脱
・Short Physcial Performance Battery Score(SBBP Score)の点数(3カ月後,、12点満点)
表.結果(抜粋)
Outcome
介入群
対照群
Effect size
(95%信頼区間)
SPPB score, Primary Outcome
・開始前
6.0±2.8
6.1±2.6
・3カ月後
8.3±0.2
6.9±0.2
1.5(0.9 - 2.0)
6分間歩行距離(m)
・開始前
194±104
193±107
・3カ月後
293±8
260±8
34(12 - 56)
KCCQスコア
・開始時
40±21
42±21
・3カ月後
69±2
62±2
7.1(2 - 12.2)
EQ-5D-5L visual-analpgue scale score
・開始前
58±22
58±21
・3カ月後
71±2
65±2
7.0(2.3 - 11.6)
Secondary Outcomes @6カ月後
・再入院、死亡において有意差なし
試験中の死亡原因
介入群
対照群
心血管系
16名
8名
>心不全
うち10名
うち6名
3名
6名
心血管系以外
6名
8名
試験中の有害事象
・転倒や心不全は対照群で多かった。
(出典)N Engl J Med. 2021 Jul 15;385(3):203-216.
↑↑詳しくは文献をお読みください
やはり、SBBP Scoreが1.5点良いというあたりはリハビリのおかげというべきでしょうか。身体機能は良くなっていそうです。他にも、カンザスシティ心筋症アンケート(KCCQ)overall scoreからは生活の質(QOL)あたりも良くなっているといった印象を受けます。
週に3回もリハビリ(通院)をしていれば、やはり当たり前と言えば当たり前な感じもします。週3回もリハビリのための通院ができる環境を達成できるかも考えなければいけないと感じました。
一方で、この研究では再入院、予後(死亡)といったイベントに対して有意差を示すことはできなかったので、他の研究も出てくることを楽しみにしています。有意差はなくとも、心血管系での死亡や重篤な有害事象はやや介入群に多く、それより軽い有害事象は少ない印象です。
有害事象での死亡に関しては介入群の方が多いという結果になっています。有意差だけではなく、実際に安静度を緩くしていく際にはまた心不全に陥ってしまうリスクも鑑みて、リハビリをしっかりと行う場合は、心不全の状況もしっかりフォローしないと行けないと感じました。
年齢に関しては、介入群も対照群も72歳から73歳程度の年齢中央値で、実際の日本の心不全の高齢者よりも年齢層が若い印象です。あくまで印象ですが、試験として75歳以上(後期高齢者)のみを対象とした試験もあれば、もっと高齢者に目を向けてみたいものです。もっと離脱者が増えてしまうかもしれませんが…。
本日もお読みくださり、ありがとうございました。
cf.【心不全に関する記事】