黄熱病とワイル病
〜野口英世記念館を訪問して〜
<目次>
1.野口英世記念館へ
前のことですが、冬の寒さの残る中、野口英世記念館へ行く機会がありました。その時の言葉にはし難いものの私自身を勇気づけ背中を押してくれたような展示に感動したのを今でも覚えています。
振り返ると、あの綺麗な猪苗代湖と磐梯山に囲まれた地で育った野口英世のことを想像しながら、生家を見学し、野口英世の母(シカ)の「はやくきてくたされ」と帰国して再会を望む母の手紙に感動し、さらに野口英世の研究に励む姿勢に感動したのでした。
野口英世の生涯を詳しく知り、とても努力家であると同時に寝る間も惜しんで研究をし、当時は渡航を周りからは止められながらも途上国へ行き、「黄熱病ワクチンが効かない」という理由を究明しようとしたようです。
実際に、野口英世が黄熱病の原因だと突き止めた病原体はワイル病の病原体であるレプトスピラであって、黄熱病の原因である黄熱ウイルスと間違えたと言われています。そして、「黄熱病」(実のところのワイル病)のワクチンを開発し、「黄熱病」が減少した。それを称えられている国もある一方で、「黄熱病ワクチン」が効かないということも表面化してきました。
その際に「黄熱病」に似ているが、ワクチンが効かないというのが、実は本当の黄熱病であったと言われています。(他にも諸説もあるかと思います)。
今回はその両者がどの程度似ているのか、深掘りしてみたいと思います。
2.黄熱病とワイル病の比較
それでは、黄熱病とワイル病を実際に教科書で調べていきたいと思います。
〈黄熱病〉Yellow Fever
病原体: Aedes aegypti
臨床像
→著名な肝臓壊死を伴う出血熱
→重症例では、後期(letter phase)に特徴的な黄疸、出血、黒色嘔吐、無尿、最終的にはせん妄が生じる
→アルブミン尿がみられることがある
〈ワイル病〉Weil's Disease病原体: Leptospira
臨床像
(出典)Harrison’s PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE Eighteenth Edition
まず似ているところといえば、目に見える黄疸でしょうか。出血熱と出血も「出血」という視点から似ていると言えそうです。黄熱病の無尿と、ワイル病の急性腎障害が似ていることもありえそうです。当時のことを考えると、黄疸は目に見えるので、似ていると考えられたのかもしれません。
他にどのような点が似ている・異なるかを疫学的なことを調べてみようと思います。
〈黄熱病〉
・蚊による媒介が分かる(1900年)前、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパで流行していた。
〈ワイル病〉・郊外もしくは田舎に住む途上国もしくは先進国の社会経済レベルの低い人で、動物の尿が混ざっていうる水と接触する人。
(出典)Harrison’s PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE Eighteenth Edition
当時のことを考えれば、ワイル病も黄熱病も両方見られうる地域もあると思います。具体的には、黄熱病を媒介するヤブカ(Aedes)の生息域に重なる部分はどちらの疾患もみられるということになると思います。
黄疸がみられるものの肝胆膵系限定の疾患だけでなく、さらに黄疸や出血がみられることでこれらを混同したのではないかと思います。それぞれの症状の出現割合にもよると思いますが、ワイル病はそもそもがレプトスピラ感染症の重症なもので、これらの症状が見られて当然ともいうことができると考えています。
当時はウイルスを発見することのできる電子顕微鏡もなく、ウイルスは発見できなかったものの正体を掴みかけていたということも展示で書かれていた記憶があります。
皆さんも、福島県の会津・猪苗代方面へ行く機会があれば、ぜひ野口英世記念館の見学に行ってみてください。何かしら、普段の勉強を頑張ろうと思えるかもしれません。
野口英世記念館のホームページはこちら
本日もお読みくださりありがとうございました。