医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

急性リウマチ熱 ~日本をはじめとする疫学~

急性リウマチ熱(リウマチ熱)

~日本をはじめとする疫学~

 

 今回は急性リウマチ熱(acute rheumatic fever)です。リウマチ熱についてパッと思い浮かぶのは、A群β溶連菌感染症の2、3週後に続発する非化膿性炎症性疾患で、発熱や関節痛などがみられ、リウマチ性心疾患が問題となるというようなことです。

 先日、リウマチ熱の症例報告に出会いましたが、疫学的に近年は珍しいということを聞いているせいか、血管炎の症例報告ほど巡り合うことがなく、知らないことが多いと感じました。それこそが、今回深堀りをしてみようと思ったきっかけです。

 

疫学
 まずは、日本での疫学から調べてみたいと思います。

 1970年代から激減し、2004年の小児慢性疾患治療事業の登録数は42例にすぎない.
(出典)『内科学 第11版』, 矢崎義雄(総編集者), 朝倉書店, 2017.

 好発年齢的には小児の疫学が反映されていると思います。1970年代から激減といわれてもピンときません。昔の状態と今の状態の比較が定量的にできないかと、さらに探してみました。

 

東京都における1968年の学童(調査学童数 115,165人)のリウマチ性疾患ならびにリウマチ性心疾患の疫学的調査

リウマチ熱既往あり 492名(0.435%)
・リウマチ性心疾患 32名(0.027%)

<地域別>
住宅地(学童 20,523名)
・リウマチ熱既往あり 0.594%
・リウマチ性心疾患 0.019%(心炎既往0.07%)
工場地(学童 72,882名)
・リウマチ熱既往あり 0.345%
・リウマチ性心疾患 0.029%(心炎既往0.05%)
郊外(学童 16,383名)
・リウマチ熱既往あり 0.549%
・リウマチ性心疾患 0.018%(心炎既往0.04%)
農山村(学童 5,368名)
・リウマチ熱既往あり 0.521%
・リウマチ性心疾患 0.074%(心炎既往0.11%)

(出典)村上正中:東京都公立小・中学校生徒におけるリウマチ熱・リウマチ性心疾患の疫学的調査.心臓4巻8号, 1972年.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/4/8/4_974/_pdf

 

 直接比較はできませんが、およそ0.5%もいれば200名ぐらいの高校で1名ぐらいはリウマチ熱の既往がある人がいる計算になりますね。一方で、平成21年(2009年)の調査においては、わずか両手で数えられるだけの人数しかいません。

 平成21年1月1日から12月31日おいて、小児循環器学会評議員と理事,大学附属病院小児科,専門医修練施設・施設群 185 施設(うち142施設より回答)におけるリウマチ熱は6例であった。
(出典)市田蕗子ら:平成21年度 稀少疾患サーベイランス調査結果.PEDIATRIC CARDIOLOGY and CARDIAC SURGERY VOL. 26 NO. 4 (348 –350)

http://jspccs.jp/wp-content/uploads/j2604_348.pdf

 衛生状況の向上やそれによるA群溶連菌感染症罹患率の減少、さらには抗菌薬の使用も関わっていそうですね。抗菌薬使用と聞くと、溶連菌感染を疑うときにはCentor Scoreをよく耳にします。

 これだけリウマチ熱の症例が減っていれば、珍しいと言われるのもとても納得です。果たして、世界ではどうでしょうか。

 

 急性リウマチ熱とリウマチ性心疾患は貧困に起因する。これらの疾患はどの国でもよくみられるものであったが、20世紀初頭になって先進国では発生率が低下しはじめた。この低下は、主として生活環境の改善、特に過密住居の解消衛生状態の向上によって、A群レンサ球菌の伝播が減少したことによる。さらに抗菌薬の導入と医療システムの改善も、発生率に補助的な役割を果たした。

 20世紀が終わるまでに、先進国では急性リウマチ熱は事実上消失し、リウマチ性心疾患の発生率も低下した。しかし、残念ながら途上国ではそうはいかず、これらの疾患は依然として認められる。途上国においてリウマチ性心疾患は小児の心臓病の最たる原因であり、さらに成人でも罹患率が高く(有病率のピークは25~40歳)、主な死因となっている。

 現在、急性リウマチ熱症例やリウマチ性心疾患による死亡例の約95%が途上国で発生しており、その頻度はサハラ以南のアフリカ地域、太平洋の国々、オーストラリア、南。中央アジアで特に高い

 

(出典)『ハリソン内科学 第5版<全2巻>』

 

 

 リウマチ熱のそもそもの要因となるA群溶血性レンサ球菌感染症(GAS)が減ることで、リウマチ熱やリウマチ性心疾患が先進国では事実上消失した一方、途上国では依然として存在するというのも納得です。日本でリウマチ熱が希少疾患となるほど少なくなるのが理解できます。ちなみに、溶連菌感染症に罹患した人のうち、どの程度の人がリウマチ熱になるかという疫学データもあるようです。

 A群β溶血性レンサ球菌の咽頭感染症例の0.3~3.0%に発症するといわれている。
(出典)Lancet. 2018 Jul 14;392(10142):161-174. doi: 10.1016/S0140-6736(18)30999-1.

 

 この文献がちょうどreview articleであり、定量的な表現もあるものなので、急性リウマチ熱の日本以外も含めた疫学、病因、臨床的特徴、診断(Jones基準)などを引き続き読み進めていきたいと思います。

 

 急性リウマチ熱日本をはじめとする疫学の深堀りお読みくださり、ありがとうございました。

 

 続き(急性リウマチ熱の全体像~ゲシュタルト~)については、下記の記事をお読みください。

mk-med.hatenablog.com