"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

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二次性血小板減少性紫斑病(ITP)の原因

二次性血小板減少性紫斑病(ITP)の原因

 

 結核による免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura; ITP)の症例報告を見て、ここでも結核か!と驚きました。結核がITPの原因として不思議ではないものの、主な原因として何があるのか疑問に思ったため、ITPの原因について調べたいと思います。

 ITPはPrimaryとSecondayに分けられて、Primaryと診断する前の2次性の除外にも少しでも役立てばと思います。原因として、自己免疫疾患、ピロリ菌やHIVHCVのような感染症をぱっと思い浮かんだのですが果たして…

 

 2002年と古いですが、NEJMのReview articleを見つけたのでこれから見ていきたいと思います。

二次性ITPの原因
・SLE
・抗リン脂質症候群
・免疫抑制状態(IgA欠損症、低γグロブリン血症)
・リンパ増殖性疾患(慢性リンパ性白血病、リンパ腫)
感染症HIVC型肝炎ウイルス
・薬剤性(例:ヘパリン、キニジン

(出典)N Engl J Med. 2002 Mar 28;346(13):995-1008. doi: 10.1056/NEJMra010501.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


 これだけ挙げられればいいということなのでしょうか。
 ピロリ菌についての記述はなかったことが、気になりました。教科書に立ちもってみます。

 

ITPは基礎疾患に併発すれば、二次性と称せられる。基礎疾患としては自己免疫疾患,特に全身性エリテマトーデス(SLE)や,HIVC型肝炎などの感染症が一般的である。ITPとHelicobacter pylori感染との関連は不明である。
(出典)ハリソン内科学 第5版

 

 二次性ITPの原因の数としては、先ほどと同じぐらいでしょうか。ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染との関連は不明と書かれています。ピロリ菌が頭から離れず、ITPに限らず深堀りしてみます。

 “Pathobiology of Secondary Immune Thrombocytopenia”というタイトルのReviewを見つけました。

 

二次性ITPにおける免疫性血小板減少の原因
全身性エリテマトーデス(SLE)
・SLE患者の約20-25%が中等度もしくは重度の血小板減少になる。
・グリコプロテイン抗体、免疫複合体、抗リン脂質抗体(APLA)、血管炎、血栓性微小血管障害、血球貪食、c-Mpl受容体やMKに対する抗体、骨髄間質の変化といった様々な病因が関与する。

抗リン脂質抗体症候群
・ITPの患者の20-70%で抗リン脂質抗体を認める。

甲状腺疾患
・ITPの患者で抗甲状腺抗体がよく認められる。
・治療抵抗性や脾摘の前に検査をしたほうが良いとする報告もある。

Evans症候群
・根底には免疫不全があることもある。子供の約50%と一部の成人において、自己免疫性リンパ増殖症候群とのオーバーラップもある。

リンパ増殖性疾患
・慢性リンパ性白血病(CLL)、CD8 T-lymphocyte large granular lymphocytic leukemia (LGL)の患者においてITPの罹患率が高い。
・ホジキンリンパ腫の患者において、おそらくITPの罹患率が高い。

感染症
HIV
・ITPの患者でHIVのリスクがある場合は除外すべき。

C型肝炎ウイルス
・明らかな肝炎がなくても、ITP患者の約30%でHCVが検出される。

Helicobacter pylori
・H.pyloriと強い関連性がある地域がある。
・USではピロリ菌の検査をすべきというコンセンサスはない。

ワクチン・その他の感染症
・風疹、麻疹、流行性耳下腺炎のワクチンでは、25,000-40,000人に1人が重度の血小板減少が生じうるが、肺炎球菌ワクチン、Hibワクチン、水痘帯状疱疹(VZV)ワクチン、B型肝炎ワクチンではそれより少ない。
サイトメガロウイルス、風疹、EBウイルス、VZV、重症急性呼吸器症候群SARS)、その他多くの感染症でも生じる。

輸血(輸血後紫斑病)

薬剤性血小板減少症(DITP)
ヘパリン
 Heparin-Induced Thrombcytopenia
 未分画ヘパリンを静脈的に治療量を投与された患者の1-3%。診断はヘパリン投与と特徴的な臨床症状による。ELISA法は感度が高く除外目的での価値があるが、擬陽性の可能性がバイパス手術後の患者では50%を超えうる。
金製剤
アブシキシマブ
fiban drugs
キニーネ
(以下、多くはないが)
・βラクタム系抗菌薬の一部
・リストセチン(骨髄抑制の例)
・チクロピジン血栓性微小血管障害の例)

Semin Hematol. 2009 Jan;46(1 Suppl 2):S2-14. doi: 10.1053/j.seminhematol.2008.12.005.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 個人的には、原因とされるものの一部は原因なのか相関なのか今ひとつわからないものもありました。一方で、ITPの原因には免疫的な機序等により、何でも生じうるといった印象を受けました。特に感染症の「その他」のあたり納得です。
 今回の結核によるITPの症例報告では、結核も原因になりうるのは何となくわかるけど、まだまだ知らないことがたくさんと思って調べました(当たり前ですが)。
 H.pylori感染の診断が血小板減少の数か月前だったかにあったものだったので、結核の前にH.pyloriに目が行っていたのですが、H.pyloriとITPの関連性における地域の違い(日本とアメリカ)も盲点でした。

 詳しい機序などが気になる方は、2つ目のPubMedからの文献も是非お読みください。

 

 今回も、たわいのない調べごとにお付き合いくださりありがとうございました。