医学生からはじめる アウトプット日記

医学生のうちにはじめてみたいということで始めてみたブログです。体験のシェアや、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場としても使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いですが、自己責任でお願いします。また、内容に関しては自身の所属等とは一切関係ありません。

比較的徐脈(相対的徐脈)の重要性は?

比較的徐脈(相対的徐脈)

relative bradycardia

 

 今年度のどこかで、「比較的徐脈は特異的ではない」というような文献があるという噂を聞いていたので、これをきっかけに比較的徐脈をちょっとだけ深堀りしてみたいと思います。 

 まず、国試で比較的徐脈と言えば、

ぐらいでしょうか?

そもそも、すべて感染症ですね(笑)比較的徐脈かどうかのひとつの目安として国試前に少し勉強会に参加したことがある人ならば、39℃110番(39℃でHR 110/min)ぐらいを目安に覚えている人はいるかもしれませんね。

 

では、比較的徐脈について調べてみたいと思います。

まずは、おそらくこれが噂のReview Articleであろうというものから、簡単に読みました。

 

The Clinical Significance of Relative Bradycardia

Fan Ye, Mohamad Hatahet, Mohamed A. Youniss, et al.

WMJ. 2018 Jun;117(2):73-78. PMID: 30048576

【Introduction】

 通常、38.3℃(101℉)以上となると、体温が1℉上がるごとに心拍数が8または10回/分あがる。

・HR 108/分 @38.3℃、+1℉ごとにHR+8/分

・HR 110/分 @38.3℃、+1℉ごとにHR+10/分 

 38.3℃より高温のときに、心拍数が予想される値より低い状態を比較的徐脈とする。原因は数が限られ、感染症(Table 2)と非感染症がある。

f:id:mk-med:20210216135820j:plain

 

【Method】

 "relative bradycardia, fever, pulse-temperature dissociation and pulse-temperature deficit"を含むものをPubMedならびにMedlineにて検索。

【Discussion】

・比較的徐脈の定義は心拍数が予想される値よりも低い状態とし、不整脈や心伝導系に影響のある薬剤などを服用している場合も除く。

・非感染性の原因:悪性リンパ腫、薬剤性、人為的発熱、副腎不全、周期的好中球減少症。薬剤性の発熱(148例)による比較的徐脈は11例という報告がある。

感染症が原因のとき:細胞内・非腸内グラム陰性菌では、非特異的でありながら感度は高い。

感染症の原因の鑑別に役立つこともある(in some cases)が、渡航歴をはじめとする病歴全体からはじめるべき。

・比較的徐脈の病因は様々で、詳しいことはあまり分かっていない。

【conclusion】

・比較的徐脈がベッドサイドでの感染性・非感染性の病因の診断に役立ちうるという認識は大切。

・他の兆候や所見がない、もしくはいまひとつの時に、比較的徐脈は病因を探すために役立つかもしれない

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 学生ですが簡単に読んでみました。まずは、感染症による比較的徐脈の原因の多さに驚きましたが、報告レベルでしかみられないものもありました。たくさん原因を挙げれても、その疾患において比較的徐脈が稀であれば、あまり使いにくいのではないかと感じました。比較的徐脈がみられる頻度、感度・特異度も意識してみないといけないと思いました。詳しくはdiscussionのところにも書いてありましたが、判断に困りました。

 

 ということで、今度は教科書で比較的徐脈について調べてみたいと思います。教科書ということで皆さんご存知の『ハリソン内科学 第5版』を見てみるも索引で見つからず、身体診察の教科書へ。『サパイラ 身体診察のアートとサイエンス 原著第4版』、『マクギーのフィジカル診断学 原著第4版』、『ベイツ診察法 第2版』の索引でも比較的徐脈を見つけることができませんでした。目次のバイタルサインの項目でも、比較的徐脈は確認できませんでした。

 バイタルサインに興味のある人で知らない人はいないであろう入江先生の書籍にたどり着きました。本当に、この本にはバイタルサインについて学んだりとお世話になっています。

比較的徐脈を呈する病態

<感染性>

・ウイルス、結核、膿瘍(嫌気性菌)、リケッチア、スピロヘータ、オウム病、野兎病など

・肺炎:マイコプラズマクラミジア、レジオネラ

・下痢:チフス属(サルモネラカンピロバクター含む)

<非感染性>

・薬剤熱:抗菌薬、抗痙攣薬、H2受容体拮抗薬など

・腫瘍熱:リンパ腫

膠原病:SLE、成人Still病、サルコイドーシス

 

(出典)『バイタルサインからの臨床診断 改訂版 豊富な症例演習で、病態を見抜く力がつく!』,入江聰五郎(著)

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 やはり、比較的徐脈の原因の多さを考えると、このようなところに落ち着くのでしょうか。見ていて、すーっと入ってきやすい気がします。

 

 さらに、どの程度の体温と心拍数の乖離比較的徐脈と判断する一筋縄ではいかないと感じました。

 そもそも基準とする体温、心拍数も様々であり、そこから「ある程度」以上体温に対して心拍数が低いから比較的徐脈であるという判断にあると思います。さらに、βブロッカーを服用しているといったような薬剤をはじめとする他の要素も入りこんだら、なお難しいと思いました。

予測HR=(実測体温℃-36.5℃)÷0.55×10回/分+基準心拍数

・予測心拍数よりも20回/分以上遅くなる状態を比較的徐脈の目安としている

(出典)『バイタルサインからの臨床診断 改訂版 豊富な症例演習で、病態を見抜く力がつく!』,入江聰五郎(著)

  確かに判断の基準として分かりやすいと感じました。やはり、教科書等は役立つと感じた一場面でした。

 

 前述のReview articleの体温・心拍数をしっかり覚えて、もしくは予測心拍数の式やまで計算して判断することはできれば理想かもしれません。でも、「39℃でHR 110/min」で比較的徐脈を意識するというようなのも、やはり心に留めておくという意味でも重要であると思いました。

 そして、比較的徐脈はやはり全身的な病態で絞り切れないので、フィジカルの前にやはり病歴随伴症状服薬歴をはじめとする医療面接、そしてフィジカルでもバイタルサイン以外の身体診察も大切であると感じました。

 

・比較的徐脈だけでなく、病歴や随伴症状も大切にする

・その上で比較的徐脈もヒントになりうると考える

・比較的徐脈の体温と心拍数の乖離の程度でAll or Noneでもない

 

ぐらいを心に留めておきたいと思います。

 個人的な感想にお付き合いくださり、ありがとうございました。