"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記

趣味人"Med-Hobbyist"のブログへようこそ。体験のシェアする場所として、日常の医学に関連する疑問の「なぜ」・「なに」を大切にアウトプットする場所として、こころが温まる場所として、様々なかたちで拠りどころとなるような場所として使いたいと思います。少しでもお役に立てば幸いです。

116D69 医師国家試験 ~レジオネラ肺炎: 暴露歴、予測スコア~

116D69 医師国家試験

レジオネラ肺炎を深掘り ~レジオネラらしさ: 暴露歴予測スコア

 

<目次>

 

 医師国家試験(以下、国試)で「レジオネラ肺炎といえば温泉!」というような状況であったと思います。実際には温泉以外でも、市中肺炎としてレジオネラ肺炎は散発的にあるのですが、第115回まで国試ゲームといった状況でした。

 今回は、そこに少しではあるもののメスを入れてきた国試から少し深掘りしてみようという記事です。また、国試シリーズはいったんここまでにしようと思います。



1.問題文 116D69

 71歳の男性。発熱、食欲不振を主訴に来院した。1週間前に貯めていた雨水で庭に水をまいた。数日前から食欲不振を認め、2日前から38.8℃の発熱、全身倦怠感、関節痛も出現したため受診した。意識は清明。身長 172 cm、体重 68 kg。体温 39.1℃。脈拍 76/分、整。血圧 104/66 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 94%(room air)。右下胸部にcoarse cracklesを聴取する。血液所見:赤血球 373万/μL、Hb 11.9 g/dL、Ht 35%、白血球 18,600 μL/L(好中球93%、好酸球0%、好塩基球1%、単球4%、リンパ球2%)、血小板 16万/μL。血液生化学所見:AST 28 U/L、ALT 16 U/L、LD 177 U/L(基準120~245)、CK 323 U/L(基準30~140)、尿素窒素 18.9 mg/dL、クレアチニン 0.97 mg/dL、血糖 169 mg/dL、Na 127 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 93 mEq/L。CRP 24 mg/dL。胸部エックス線写真で右下肺野に浸潤影を認める。喀痰グラム染色で多核好中球を多数認めるが、明らかな原因菌は確認できなかった。

 

治療のために適切な抗菌薬はどれか。2つ選べ。

 

a. セフェム系

b. カルバペネム

c. マクロライド

d. ニューキノロン

e. アミノグリコシド

 

 

2.解説

2-1. 軽く解説

 2日前の関節痛という部分に少し戸惑った人もいたと思いますが、右下胸部のcoarse crackleを認め、胸部X線で右下肺野に浸潤影を認めているあたりから、数日前からの急性感染症肺炎)というのは、想像に難いと思います。

 次に、体温が39℃程度であるのにもかかわらず、脈拍が86回/分であることから比較的徐脈も認めており、感染症であれば細胞内で異物と認識しにくい細胞内寄生菌などを少し疑います。国試なのでGeckler分類などの喀痰の質やグラム染色の質は保たれているとして「喀痰グラム染色で多核好中球を多数認めるが、明らかな原因菌は確認できない」という部分から細胞内寄生菌(レジオネラ、マイコバクテリウム、リケッチア、クラミジア、淋菌、チフスなど)を思い浮かべました。さらに、「1週間前にためていた雨水」というキーワードがあるため、レジオネラ肺炎であることを想定した細胞内寄生菌に効く抗菌薬を選ぶことにしましょう。

※尿中レジオネラ抗原検査は取られていない(詳しくは後述)。

 

 すると、抗菌薬選択としてレボフロキサシン(LVFX)のようなレスピラトリーキノロンを考えて選択肢dニューキノロン系、もしくはアジスロマイシン(AZM)のようなマクロライドを選ぶことになると思います。

 

2-2. 回答選択肢

 解答: マクロライド系)、ニューキノロン系)



3.少し深掘り ~レジオネラ肺炎~

 レジオネラ肺炎を疑う状況や、レジオネラ肺炎の感染経路を調べていこうと思います。今まで、レジオネラ肺炎は重症化しやすい(意識障害のような肺外症状)とか、血清P低下や血清Na低下というようなこと、肺炎の浸潤影がしつこいというようなことを聞いたことがあります。その辺りをしっかりと確認します。

 

レジオネラ・ニューモフィラ(Leginonella pneumophila

特徴

  • 河川やクーリングタワーの冷却水、人工呼吸器、ネブライザー、高温でも生息可能である。温泉や24時間循環式風呂などの水中に広く分布する
  • 汚染された水、土壌の暴露、誤嚥や、エアロゾルの吸引により潜伏期2~10日で発症する。
  • 汚染された水、土壌暴露による肺炎のアウトブレイク、リスク因子(50歳以上、喫煙、ステロイド免疫抑制剤使用、暴露歴)を有する患者の重篤な肺炎(半数近くが、ICU入室レベルの肺炎)や、肺外症状(頭痛、意識障害、下痢、肝機能障害、PやNaの低下、CPK増加など)の強い肺炎、相対的徐脈、βラクタム薬の無効の肺炎でレジオネラ肺炎を想起する。
  • 画像所見は典型的には浸潤陰影であり、画像所見での区別は困難。
  • 尿中レジオネラ抗原検査は、特異度は99%と高いため診断に有用。
  • 尿中抗原は、陽性であれば確実な診断となるが、レジオネラには複数の血清型があり、そのうち1型のみを検出するため感度は70%程度と低い。よって陰性であっても感染を否定できない。
  • 尿中抗原陰性の場合、レジオネラを診断する方法として、培養(BCYE培地)、抗体検査、PCR検査がある。
  • レジオネラ感染における一過性のインフルエンザ様症状をPontiac熱というが、治療は不要。

 

(出典)感染症プラチナマニュアル Ver.7 2021-2022, 岡秀昭, メディカル・サイエンス・インターナショナル

 

 今回の症例の理解を深めるために使えそうな部分を抜粋してきました。今回の問題では、「1週間貯めてあった雨水」という汚染された水を示すキーワード、潜伏期間も2~10日で潜伏期間に当てはまり、関節痛もインフルエンザ様症状ということでPontiac熱と捉えることもでき、比較的徐脈もあります。検査では、血清Na値の低下(127 mEq/L)やCPK(CK)の上昇も認めています。また、71歳というのもリスク因子に入っています。

 尿中レジオネラ抗原を書かなかったのは、陽性と書けば、問題文をそこまですべて読まなくても、レジオネラ肺炎の抗菌薬選択の問題として成立してしまうからというが考慮されていると感じます。さらには尿中レジオネラ抗原検査に関しては1型のみのものは感度が70%程度と高くなく除外できないこともあるが、受験生は混乱する(クレームになる)という視点や陰性と書いて難しくするぐらいなら、検査自体を書かないというように、とても配慮されていると感じます。

(3/27追記:血清1型のレジオネラ抗原のみの検査キットをERで使ったことがありますが、1型以外もチェックできるものが増えてきているようです)

 

 少し初期研修以降でも使える書籍(しかもプラチナマニュアルは安くベストセラー!)に手を伸ばせば、かなり理解も深まると思います。

 

 

4.さらに深掘り

4-1. レジオネラ予測スコア

 先ほどのプラチナマニュアルにレジオネラ予測スコアというものが、少し載っていました。いわゆる「レジオネラ肺炎らしさ」のヒントとなります。まずは、それから確認します。

 

レジオネラ予測スコア

① 体温>39.4℃

② 喀痰がない

③ Na<133 mEq/L

LDH>255 IU/L

CRP>18.7 mg/dL

⑥ PLT<17.1万/μL

のうちあてはまるのが0~1個だとレジオネラだと考えにくくなる。4個以上でレジオネラによる肺炎である可能性は66%。

(出典)感染症プラチナマニュアル Ver.7 2021-2022, 岡秀昭, メディカル・サイエンス・インターナショナル

 

 この臨床予測ルール(Clinical Prediction Rule: CPR)をみると、いわゆる特異的な検査を除いて、一般的な検査結果までそれらしいものを集めてあるとも言えそうです。しかし、検査するまでに分かる項目は体温と喀痰の有無ぐらいでしょうか。

 このCPRを見ると、その点数のカットオフのスコアそのものだけでなく、感度や特異度、レジオネラ肺炎の予測スコアの点数ごとの推移のような詳細まで気になります。そこで、孫引きしてみます。

 

4-2. レジオネラ肺炎らしさ

 それでは、レジオネラ予測スコアをもとに、レジオネラ肺炎らしさを深掘りしていこうと思います。

※元の文献中では「レジオネラ予測スコア」という固有名詞的な言い方があるわけではありません。

 

 スイスの大学病院に市中肺炎(CAP)で入院した人(レジオネラ肺炎82名、レジオネラ以外の肺炎368名)の後ろ向き研究です。それでは、レジオネラ肺炎らしさの補足ができないかを見ていこうと思います。

 まずは、レジオネラ肺炎レジオネラ以外の肺炎比較した項目になります。有意差(p<0.05)のある項目にマーカーを引いてあります。赤色がレジオネラ予測スコアに使われている部分、黄色が予測スコアの項目以外で有意差のあった項目(アウトカム以外)、青色がアウトカムで有意差のあった部分になります。

 

レジオネラ肺炎とレジオネラ以外の肺炎の比較

f:id:mk-med:20220316121337j:plain

(出典)BMC Pulm Med. 2009 Jan 19;9:4. doi: 10.1186/1471-2466-9-4.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 レジオネラ肺炎とレジオネラ以外の肺炎を比べていきます。レジオネラ肺炎において、年齢がやや若く、既往歴・併存症において、うっ血性心不全COPDが少ないと言えます。それだけ、基礎疾患がなくても、少しではあるものの若くても発症しやすいと考えられそうです。

 病歴では、抗菌薬投与がすでにされていることが多く、が少なく、喀痰の増加もみられにくく、呼吸困難も少ないと言えそうです。いわゆる自覚症状が少ないのに加え、入院前にレジオネラ(細胞内寄生菌)に効く抗菌薬を投与されておらず、βラクタム系やアミノグリコシド系の抗菌薬が投与されていた可能性が高いということも言えそうです。

 検査結果では、血清CRP値、血清プロカルシトニン値、血清クレアチニンキナーゼ(CK)値、肝酵素上昇のみられる割合、血清LDH値が高く、炎症や組織破壊が多いと考えられます。一方で、血清Na値は低く、血清Na値低下も重度の感染症を示していると考えられます。血小板数低下に関しても、重症化すると血栓性血小板減少性紫斑病に至る症例もあり、結びつけられそうです。ヘモグロビン尿症や蛋白尿も、肺外症状の多さと結びつけられそうです。

 

4-3. ROC曲線をチェック

 それでは、ここから臨床予測ルールとなった部分を深掘りしていきます。スコアごとの結果(点数ごとの推移)が気になります。Univariate analysisでは予測因子として、年齢、体温、呼吸困難なし、咳なし、喀痰なし、血清Na値、肝酵素上昇、LDH、CK、CRP、血小板数、ヘモグロビン尿症、蛋白尿が挙げられています。そして、Multivariate analysisにて、体温、喀痰なし、血清Na値、LDHCRP、血小板数の6項目に絞られています。解析の詳しいことは分からないので、気になる方は出典をご覧ください。

 この6項目でのROC曲線、AUCをみてみます。

 

レジオネラ予測スコアの診断の正確性

f:id:mk-med:20220316121706j:plain

6項目のROC曲線とAUC

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2636761/bin/1471-2466-9-4-1.jpg

図1. ROC曲線(URL添付)

(出典)BMC Pulm Med. 2009 Jan 19;9:4. doi: 10.1186/1471-2466-9-4.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 上記のスコアごとの感度、特異度を見れば、臨床予測ルールとして使おうとすれば「多少は使える」ものの、「だいたい」レジオネラ肺炎っぽいという程度に思えました。論文中ではオッズ比も出されていますが、4点以上というのはあくまで設けた閾値であると感じました。スコアだけでスカッと分けられるほどのものではなさそうに感じます。3点でも2割程度がレジオネラ肺炎ということや、レジオネラ肺炎とレジオネラ以外の市中肺炎で差のあった他の症状、所見、さらには暴露歴なども参考にしたいものです。

 

 臨床予測ルールの表面的な部分(何点で〇〇)だけでなく、その疾患病態についての理解を深めるきっかけに使うのはいかがでしょうか。他にも詳しい条件(例: 起炎菌)を見てみたいなどありましたら、ぜひ論文にアクセスしてみてください。

 

 

5.国試に向けて

 今回はレジオネラ予測スコアという臨床予測ルールでしたが、国試でも有名な抗凝固薬のCHADS2スコアをはじめとする臨床予測ルールが多数あります。こういうのの丸暗記は苦手で、理解を深めてみたいものがあれば、時間を決めて少しだけ調べてみるのはいかがでしょうか。例えば、いつもの通りの勉強を8時間、あとは好きにやるというような感じです(これほど普通の勉強をやる必要があるかはさておき)

 また、国試の勉強に3の少し深掘りまでして興味深い研修でも使える書籍に触れて楽しみながら学ぶ時間を少し作るのもいかがでしょうか。

 

~国試シリーズを通して~

 4回(4問)に渡る国試シリーズ、いかがだったでしょうか。まずは合格点を手っ取り早く取れる予備校(私の場合は主にmedu4)で倍速でささっと学び、その後に興味に任せて国試に縛られずに楽しくやっておりました。合格点から先の勉強を少しでも好奇心から、興味の湧くテーマから、楽しみながら学ぶヒントとなれば幸いです。

 例えば、2倍速で国試予備校の動画を見て、浮いた時間の半分(とは言わないまでも)を深掘りに、半分を遊びになんていうのはいかがでしょうか。2倍速までは特に理解度も変化しないというような研究もあり、元々国試予備校の講義も話し方がゆっくりで倍速に向いていると思います。

 また、医学生4, 5-6年生の時の勉強のボリュームゾーンはやはり国試対策予備校の講義であり、競争もあり、オンデマンドで便利で分かりやすいコンテンツがあるように感じます。そこから先の勉強は、アクティブラーニング、初期研修医向けやさらにその先の本や論文、一緒にやる人こそ選ぶ面があるもののTeam-Based Learning(TBL)となってくると思います。国試に向けて予備校のテキストを数社も何周もするほど心配になりすぎず、気が向いたら楽しみがてら、このシリーズで扱ったように初期研修やその先の論文も見てみようと思ってもらえれば幸いです。何より、実習や学生生活実りあるものにしてください!

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

 

 

国試シリーズはこちら

mk-med.hatenablog.com

116C22 医師国家試験 炎症性マーカーとサイトカイン

116C22 医師国家試験 炎症性マーカーサイトカイン

CRP、IL-6をはじめ~

 

<目次>

 

 

 今回は、短めの医師国家試験(以下、国試)の問題から深掘りします。免疫学の時に習ったり、もしくは感染症内科や膠原病内科の実習のときにCRPについて少し学ぶことがあったりした人は知っているかもしれない内容です。この問題をもとに、学びを広げていきたいと思います。

 あっさりとした知識問題ではありますが、さっそく問題文から見ていきましょう。

 

1.問題文 116C22

炎症性疾患にみられるCRP上昇に最も関与するサイトカインはどれか。

 

a. IL-1

b. IL-6

c. TGF-β

d. TNF-α

e. インターフェロンγ

 

 

2.解説

 問題文だけ見れば、本当にあっさりとした知識問題です。これに関しては、問題を解く際には知っているかに近い問題であると思います。IL-6が主にCRP上昇に関わります。

 それに加えて、感染症の際にCRPが上昇する機序に関して分かりやすい図もありました。図のリンクの紹介を含めて引用しておきます。

 

図A. 細菌感染症/ウイルス感染症におけるCRP値とフェリチン値

図B. サイトカインと炎症性マーカー 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5158075/bin/ppat.1005973.g002.jpg

  • 細菌感染症ではIL-1βならびにIL-6の反応によって、血清中のCRPが上昇する。
  • ウイルス感染症ではIL-18による反応が特徴的である、高フェリチン血症となる。
  • 細菌感染症とウイルス感染症で完全に二分されるわけではなく、血漿中のIL-18を上昇させる細菌感染症もある一方で、血漿中のIL-1βを上昇させるウイルス感染症もある。

(出典)PLoS Pathog. 2016 Dec 15;12(12):e1005973. doi: 10.1371/journal.ppat.1005973. eCollection 2016 Dec.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 正解を導くだけであれば、これ以上詳しい説明は不要だと思います。CRPフェリチン細菌感染症らしさ/ウイルス感染症らしさのひとつの指標にもなりそうです。細菌感染症でIL-6が上昇する流れは図Bをご覧ください。また、この流れの関係でIL-6を含むサイトカインの流れから肝臓でC反応性蛋白(C-Reactive Protein: CRP)が上がるのにタイムラグが2~3日ほどあるというようなことを聞いたことがある人もいると思います。

 正解はIL-6となります。

 

 正解 (IL-6)



3.深掘り

 先ほどの文献によると、細菌感染症の場合はCRPが上昇しやすく、ウイルス感染症の場合はフェリチンが上昇しやすいということでした。鑑別のヒントの一部にもなりそうです。

 今回の深掘りは、IL-6阻害薬を使用する場合の注意点や、他のインターロイキン・サイトカインの感染症時の変動について簡単に深掘りしたいと思います。

 

3-1.IL-6阻害薬使用時には要注意

 今回は、IL-6が上がることでCRPが上がるというつながりを問う問題でした。一般的にステロイドのような免疫抑制剤を使っていると、炎症が抑えられてCRPが上がりにくくなります。それと同じような・似たような状況が生物学的製剤のIL-6阻害薬でも生じます。CRPだけをチェックしていても炎症があるか分かりにくくなるのです。

 

重症感染症であってもCRP/ESRが上昇しないことがある:

IL-6は免疫反応に関わるサイトカインであり、IL-6受容体阻害薬により感染症の全身症状(発熱など)やCRPおよび血沈上昇をマスクすることがある。

(出典)レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版,青木眞,医学書院,2020

 

 先ほどの図Bでの流れを踏まえれば、IL-6のところでブロックされたら、CRPも上昇しにくくなります。トシリズマブやサリルマブというような抗IL-6受容体抗体(IL-6阻害薬)を使っている際には気をつけておくとよいと思います。

 薬歴しっかりと把握しにくい救急外来でも、関節リウマチの既往のある患者(実は生物学的製剤のトシリズマブを毎月点滴している)などの場合で、少しでもCRPが上昇していたら、「おや?」と思う感覚は必要かもしれません。もちろん、膠原病でよく用いるステロイドの副作用にも要注意です。

 いずれにしても、肺炎や腸管穿孔のような感染症が生じても、症状CRPのような炎症性マーカーは上がりにくくなるということは要注意だと思います。また、IL-6阻害薬の図Bでの経路的にはフェリチン上昇はブロックしにくいと考えられます。

 このように薬と絡めてやや基礎医学的なところを学ぶことができる問題でした。



3-2.細菌感染症とウイルス感染症

 それでは、他のインターロイキンが細菌感染症のときならびに、ウイルス感染症のときにどのように変化するかを詳しく見ていこうと思います。

 

血漿中のサイトカイン濃度の変化

 

細菌感染症

ウイルス感染症

IL-1α

低下/N.D.

N.D.

IL-1β

増加

増加

IL-1Rα

増加

正常/N.D.

IL-2

増加

増加

IL-6

増加

低下/N.D.

IL-18

増加

増加

IFN-α

N.D.

増加

IFN-γ

増加

増加

TNF-α

増加

正常、増加

(出典)PLoS Pathog. 2016 Dec 15;12(12):e1005973. doi: 10.1371/journal.ppat.1005973. eCollection 2016 Dec.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 先ほどの図Bと照らし合わせながら見ると、分かりやすいかもしれません。細菌感染症とウイルス感染症における違いもありますね。もっと興味を持てば、免疫学の教科書でそれぞれ調べてみると、楽しそうです。Toll-like Receptor(Toll様受容体)とかまで遡れそうです。



4.国試に向けて

 今回は、国試では知識問題としてさらりと問われた問題でした。実はこんなに臨床に役立つことや臨床問題で聴かれそうなことが隠されていそうな問題もあります。少しずつ、ただの知識問題に見えるものから、実臨床や臨床問題で使えそうな知識を広げていってみてはいかがでしょうか。

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。



国試シリーズはこちら

mk-med.hatenablog.com

耳で聴く本 ”Audible” 体験記 ~感想・他のサービスとの比較~

耳で聴く本 "Audible"(オーディブル  

~体験記:感想他のサービスとの比較

 

<目次>

 

 

 お待たせいたしました。以前公開した『言語が消滅する前に』の読書ログ(本: 言語が消滅する前に ~人間らしさを取り戻す哲学的対話~)の続きになります。読書ログを通じてAudibleで耳から聴く読書体験をしたことをお話しました。この耳で聴く本のサービスであるAudibleについてお話します。もともと、Podcastが好きでアウトプットの手段として考えた私にとっては、耳からのソースというホットな分野でもあります。

 Audibleについての感想を交えつつ、他の耳から読書できるサービスや読書のサブスクリプションについて比較していこうと思います。聴き放題になったAudibleをサブスクリプション契約するか悩んでいる人の一助になれば幸いです。

 

 

1.Audible(オーディブル

 Amazon.co.jpのオーディオブックであるAudible(https://www.audible.co.jp/についてのレビューです。1月下旬から、月額1500円で12万冊から聴き放題になりました。そこで聴き放題を使ってきました。これまでにトータルでいわゆる書店でも売っている類の書籍で30タイトル以上聴いてきました。その経験をもとにAudibleをレビューしてみたいと思います。

 まず、Audibleに関してはメリットを享受できる人とそうでない人がいるといった印象です。良い点と悪い点は次のようなものが思い浮かびました。

 

良い点

  • からインプット
  • ナレーターの声が良い
  • ペースキーパーになる
  • アプリでの操作が簡単
  • 12万冊ある

悪い点

  • 速読の限界/軽い書籍まで
  • 書籍内の情報が探しにくい
  • 12万冊しかない
  • Audibleになるまでのタイムラグ

 

 それぞれを詳しく解説していこうと思います。

 

 

2.良い点

 良い点についてです。耳からインプットというのは、別体験とも言えます。料理中や掃除中といった家事をしている際や車を運転している際など、画面を見ることが厳しい時間にも、時間を有効に使いながら読書体験ができました。苦手な内容や初めての内容に関しても、音読スピードによってある程度ペースキーパー的に音読で読み進める(聴き進める)ことがしやすかったです。

 また、ナレーターの声も、とても良い声をしており、活舌の面からも聴きやすく、2-3倍速ぐらいまでであれば、とても聴きやすく感じます。特にAudibleでの小説体験は、別次元でした。登場人物によってナレーターも異なり、聴いていて心地よかったです。例えば、流れゆく景色を眺めながら小説を聴くために買うだけでも価値があると思います。また、どのような書籍でも倍速以上にしても容易に聞き取ることができました。

 iPhone上でAudibleのアプリをインストールして聴いていますが、操作性もよく音読スピードもきめ細かく設定することもできます。また、書籍のAudibleのデータをダウンロードしておけば、機内モードや圏外でも聴くことができます。

f:id:mk-med:20220317004754j:plain

Audibleの画面(iPhoneアプリ

 12万冊という点に関しては、悪い点にも挙げたとおり、後ほどまとめて詳しくお話します。

 

 

3.悪い点

 悪い点についてです。音読なので通読するのに時間がかかるということです。音声データ(オーディオブック)として等倍の音読スピードで5-10時間台の物が多い印象です。『言語が消滅するとき』は6時間1分です。1冊聴くのに2-3倍速で2-3時間かかります。小説のようにゆったりと楽しむ書籍であれば、1.5倍速から2倍速ぐらいでも心地よく聴くことができます。一方で、情報収集を目的とする軽い書籍でも1冊読むのに2-3時間かかり、メモしようと思ったキーワード等も少し聞き慣れないときに書き留めにくく感じました。

 軽い書籍までが良いというのも、耳からインプットするからでしょうか。新書ぐらいまでのものであれば、耳からで何かしながら聴くのにちょうどよかったり、心地よかったりしますが、長くなってくると全体像を掴みにくかったり、聴き終わるまでに時間がかかります。飛ばし読みもできません。内容の理解についても、長さについてもそのように感じます。

 また、書き言葉をそのまま朗読しているというデメリットです。後述の『NFTの教科書』のような書籍は、Audibleで聴いても音声としてではなく、書き言葉をそのまま読んでいることやカッコ(引用元等)まで音読することから聴きにくく感じます。1冊あたりの音読時間も長く、全体像をつかむのにも時間がかかり、全体像を掴みつつ聴いていくのは難しく感じました。特に、引用に関する部分で引用元を音声として読んでいるときの耐え難いものがあります。

 小説以外での朗読には少し難点を感じます。前回の読書ログで挙げた『言語が消滅する前に』では、対談形式であるのに、音声は同一で「千葉、…」「國分、…」というように話している点は改善点かなと思いました。それでも聴いていて聴きにくいというほどではありませんでした。また、ナレーションの声は良いのですが、通常の書籍の書き言葉を声にして聞いている感じがする場面がありました。書き言葉を聴いているという点に関しては、Podcastがやっぱり話し言葉として良いと再確認できました。ただし、PodcastだけでAudibleのサブスクリプションを契約するかは悩ましいものです。

 また、後で内容を必要性があって振り返る際に、「この本の真ん中ぐらいで聴いた話のはずなんだけど…」というような際にAudibleでは振り返りがしにくかったと感じました。

 Audible版ができるまでのタイムラグについてです。『言語が消滅する前に』(2021年11月25日出版、Audible版2022年2月10日配信)では、出版からAudible版の販売までに2-3カ月のタイムラグがあります。話題のこの本をAudibleで読みたいとなったときには、そのときのアツい気持ちタイムラグの間冷めてしまうと思います。また、Audible版が販売されるのか分からないというのも難点です。発売のタイミングを待って読む(聴く)のではなく、ふと時間ができて何かを読みたく(聴きたく)なってAudibleで探すというような使い方が向いていると思います。そういう意味でも、前述の『言語が消滅する前に』ぐらいの新書がちょうど良かったのかもしれません。

 

 

4.12万冊で満足!?

 12万冊という点について、これは捉え方によって良い点にも悪い点にもなると感じました。良い点としては、ポッドキャストPodcast)のようなコンテンツを含めてそれなりの数の書籍のAudibleがあり、「どこかの書店で平積みなっているこの本を見たことがある」という程度に書籍があります。人気タイトル一覧、よく聴かれるタイトル、今話題のタイトルを利用していろいろな分野の書籍を好き嫌い言わずに、事前にタイトルを決めずに見つけたものを聴いてみるという手段としてはいいと思います。聴くものがないというような状況はないでしょう。

 一方で、ポッドキャストを含めて12万冊というのは、自分から「この書籍、著者に興味を持ったので聴いてみよう」、もしくは友人に「あの本、良かったよ!」と言われたので聞いてみようというには書籍数が少なく、Audibleが存在しない書籍が多い印象です。また、Audibleになっている本も、ハウツー本や新書程度のあっさりした内容の物が多く自己啓発本がおススメになることが多い印象です。カテゴリーを意識して「政治学、社会科学」などを選んで書籍を探した方が気になる書籍が見つかるかもしれません。また、洋書や一部の和書といったようにAudibleの中にも聴き放題対象外のものもあります。そして、医学書に関しては聴く読書が向いているかはさておき、医学書のような専門書も基本的にAudibleにありません

 ポッドキャストに関してです。ポッドキャストが12万コンテンツの一部を占めており冊数稼ぎの印象を受けます。ポッドキャストに関してはYouTube等の対談・会話と同じく本当の対談・会話であり、自然な話の文体で聴きやすいと感じました。一方で、普通の書籍の朗読をずっと長時間聴いているのは、読書の進捗も遅く感じ、飽きやすいかもしれませんが、ポッドキャストだけでAudibleを契約する必要があるのかは微妙です。

 

 Audibleにある書籍について具体的に調べてみます。例えば、小説でも有名な『君の名は。』は聴き放題の対象です。しかし、私の興味のある原田マハさんの小説の場合は『総理の夫 First gentleman 新版』と『星がひとつほしいとの祈り』の2冊のみです。しかも、この2冊は聴き放題対象外です。『たゆたえども沈まず』や『リボルバー』のような他のタイトルはありませんでした。

 『スタンフォード式 最高の睡眠』のように読んだ記憶のある書籍も読み放題対象でした。『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』もAudible版がありますが、これも聴き放題対象外でした。友人が読んだと言っていたベストセラーの『人新世の「資本論」』(2020年9月出版)はAudibleにはありませんでした。

 

 

5.Audiobook.jpと比較

 小説以外だけ、かつ日本語の書籍であれば、Audiobook.jphttps://audiobook.jp/)というような他のオーディオブックサービスを考慮することも良いと思います。聴き放題と聴き放題対象外とがありますが、。月額料金はAudible(月額1,500円)と比べて安く、月額料金は880円になります。また、聴き放題以外の書籍においてもAudibleと比べて安い傾向にあるようです。

 例えば、おススメに表示されていたひろゆきさん(西村博之さん)の『1%の努力』はAudible、Audiobook.jpともに聴き放題対象でした(2月17日現在)。単品では、Audiobook.jpでは1,650円、Audibleでは3,000円でした。また、AudibleでもAudiobook.jpでも、ひろゆきさんの単独著書は3冊ずつありました。Audibleでは『僕が親ならこう育てるね』、『自分は自分、バカはバカ。』があり、2冊とも聴き放題の対象でした。Audiobook.jpでは『無敵の思考』、『働き方完全無双』があり、2冊とも聴き放題の対象でした。

 月に1冊買う時点で、サブスクリプションの方が安上がりです。しかし、聴き放題プランと異なり、月に1冊聴くかどうかという人には、書籍のAudibleの値段によっては購入した方が安上がりです。しかも、月額料金を払うサブスクリプションの解約後と異なり、ずっと手元に残るという点がメリットであると思います。買い切りしたい人もAudiobook.jpの方がお得です。

 

 まとめると、AudibleよりもAudiobook.jpが向いている人は次のような人でしょうか。

 

Audiobook.jpに向いている人

  • ビジネス書だけを聴く人(ポッドキャストや小説などは聴かない人)
  • Audibleの月額1,500円は高いという人(Audiobok.jpは月額880円)
  • 単品で安く買いたい人



6.Kindle Unlimitedとの比較

 耳で聴くことという枠の外に目を向ければ、Kindle Unlimitedのようなサービスがサブスクリプションであります。200万冊はあると言われています。漫画や写真の多い雑誌等の視覚的な情報がメインとなる媒体はこちらでしょう。

 対象の書籍の違いを少し調べてみます。先ほどのAudibleとAudiobook.jpで比較に用いたひろゆきさんの書籍を調べてみます。Kindleで購入可能なものは複数ありますが、Kindle Unlimitedで読み放題の対象外でした。読み放題の対象が、書店に並んでいないような書籍で、薄い書籍漫画のようなものが多い検索結果でした。

 他の読んだことがある書籍で調べてみます。天羽健介さんらの『NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来』という書籍です。メタバース等でも考えるべきネット上の著作権・所有権のような非代替性トークン(NFT)のお話です。Audibleでは聴き放題ですが、Kindle版はUnlimitedの対象外でした。一方で、「NFTの教科書」で検索すると、これ以外は書店で目にした記憶がないような『【ネコでもわかるNFTの教科書】: ブロックチェーン技術?デジタル資産?徹底解説します』(購入時300円)というような書籍が多数でした。

 

 読んでみたい本は通常のKindle版にて購入、さらにプラスαとしてKindle UnlimitedやAudibleを使いたいと感じました。Kindle Unlimitedに比べるとAudibleの方が、書店に並んでいる本(漫画や雑誌を除く)を聴くことができるように感じました。

 

Kindle Unlimitedが向いている人

  • Kindle Unlimitedにある雑誌/漫画を読む人
  • 読みたい本が決まっていない

 

 上記のように感じました。Kindle Unlimitedにある雑誌を定期購読、もしくはUnlimitedにある類の漫画(メジャーではないと考えられる漫画)を読んでいる人には向いていると思います。読みたい本が決まっていないというのは、書店で見かけたあの本を読んでみようとか、〇〇さんに薦めてもらった本を読んでみようとかではなく、Kindle Unlimitedから探すというような感じです。

 

 

7.私なりの結論 ~いったん解約します~

 私なりに、Audibleが向いている人を考えつつ、私なりの結論を出してみたいと思います。次のいずれかを満たせば、Audibleをサブスクリプション契約しておくことを考えるとよいと思います。

 

Audibleが向いている人

  • 読む本を決めていない
  • 小説(情報獲得以外の目的の本)を聴きたい人
  • 家事や移動時間が多い人(画面が見にくい人)

 

 私自身は、読みたい小説が見つかったとき、家事・移動などが多く、耳からの情報取得が有意義なときにAudibleを契約するのが良いという考えました。また、過去に書店で平積み等で見たことはあるものの購入に至らなかった書籍を何冊か聴く時間があるときに契約するという考えに至りました。Audibleを聴く時間が少しであれば、YouTubeをはじめとする対談コンテンツ(NewsPicksやRe:Hackなど)を聴くぐらいの時間しかないと感じました。このブログ記事の執筆時(2022年2月下旬)から状況が変わり、書籍の数が増え、読みたいと決めている本がAudibleにある・聴き放題対象である状況になったり、リアルタイムでAudible版が登場するというような変化があれば、私なりのAudibleの導入基準を随時変えて行こうと思います。

 

 Audibleを体験してみないと分からない、耳からの読書体験があると思います。気になるようであれば、ひとまず無料体験してみて考えてみることをお勧めします。

www.audible.co.jp

 

 本日もお読みくださり、ありがとうございました。

G-CSF製剤による薬剤性血管炎 〜ペグフィルグラスチム!?〜

G-CSF製剤による薬剤性血管炎

ペグフィルグラスチムにて多い大血管炎/大動脈炎!?

 

<目次>

 

 先日、アルコール性肝炎とG-CSFについて話題となったことから、内輪でG-CSFについての話題に発展しました。アルコール性肝炎の治療にG-CSF製剤の効果があることに関してたくさんの論文が見つかりました。一方で、治癒の流れとして肝障害の際に内因性にG-CSFが上がることを直接的に示す論文は見つけられませんでした。

 そこから話は盛り上がり、仲間とG-CSF製剤による血管炎の話に至る話題をありがとうございました。今回はG-CSF製剤による薬剤性血管炎について調べてみたいと思います。



1.G-CSF製剤のはじめの一歩

 G-CSF製剤について何もイメージできないと先に進みにくいかもしれないため、簡単に復習してから本題に向かいたいと思います。

 G-CSFとは、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor)のことで、前顆粒球系細胞を刺激することで末梢の顆粒球を増加させる働きがあります。好中球減少症や発熱性好中球減少症(FN)で用いるというぐらいの知識でいます。

 少し、GーCSF製剤の副作用について調べてみます。

 

①骨痛・腰背部痛(1~3%)

  • 末梢血幹細胞の動員ドナーではG-CSF 投与により約半数に骨痛・腰背部痛が生じるとされており、注意が必要である。
  • また、ペグフィルグラスチムでは背部痛 19.1%,関節痛 14.2%を認めており、通常のG-CSFと比較して頻度が高い可能性があるため、症状の発現に注意が必要である。

 

②その他

  • 発熱(1~2%)
  • LDH 上昇(2~6%)
  • ALP 上昇(4~5%)
  • ALT 上昇(1~2%)
  • AST 上昇(1~2%)

 ペグフィルグラスチムにおいては,背部痛と同様にその他の有害反応についても,LDH上昇 (25.6%),ALP上昇 (9.7%),AST上昇 (7.1%),ALT上昇 (9.7%)と通常のG-CSFより高頻度に認めており,併せて注意が必要である。

(出典)日本癌治療学会>がん診療ガイドライン>G-CSF適正使用>11.G-CSFの薬物有害反応

http://www.jsco-cpg.jp/guideline/30.html#g11

 

 どうも、ペグフィルグラスチムでの副作用(有害事象)が多そうです。しかし、G -CSFによる血管炎は多くはなさそうです。GーCSF製剤に関しては、また詳しく調べてみたくなった際に調べてみます。それでは、今回のテーマである血管炎について深掘りしていきたいと思います。



2.G-CSF製剤による薬剤性血管炎

 G-CSF製剤による薬剤性血管炎が生じた際の腫瘍、G-CSF製剤の種類の組合せについて調べてみようと思います。

 ※G-CSF製剤による血管炎については、G-CSF製剤による薬剤誘発性血管炎、大動脈炎(G-CSF vasculitis/aortitis, G-CSF-related vasculitis/aortitis, G-CSF associated vasculitis)というように症例報告などで様々な言葉が使われています。

 

 耳学問的には婦人科系腫瘍で多い、日本人女性に多い、ペグフィルグラスチムが多い、というようなことを聞きました。今回は、どのような腫瘍のときに、どのG-CSF製剤を使っているときに多いのかというような辺りを探してみます。

 まだ、二次文献にしっかりと項目があるほどの症例が蓄積されていなかったり、解析されていなかったりする新しい有害事象であるせいか、数に限りがありました。今回は表がとても見やすいsystematic literature reviewを見つけましたので、そこから見ていこうと思います。

 

2-1.腫瘍/G-CSF製剤の種類

 それでは、G-CSF製剤によって薬剤性血管炎/薬剤誘発性血管炎が生じたケースの腫瘍の種類やG-CSF製剤の種類をチェックしていきます。

 

<G-CSF製剤による薬剤性血管炎>

f:id:mk-med:20220311131213j:plain

<補足>

  • レジメン: タキサン系レジメン(40%)、タキサン系以外(10%)、情報なし(50%)
  • 再発患者4名: 3名は同一製剤、1名はペグフィルグラスチン→フィルグラスチム

(出典)Future Oncol. 2021 Nov;17(33):4619-4634. doi: 10.2217/fon-2021-0701. Epub 2021 Aug 25.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 出典の”Future Medicine”というのは始めてみるような、デジャブなような印象です。しかも、PICOS framewokとかいうダジャレもきいています(笑)Population, Intervention, Comparison, Outcome and type of Studies (PICOS) frameworkの略になります。

 ”G-CSF”+”vasculitis”もしくは”G-CSF”+”aortitis”というMeSH termの組合せをMedline、PubMed、Embase、Cochrane Libraryで2021年2月までに調べてようです。このSystematic Reviewの目的は、担癌患者における発熱性好中球減少症(FN)の予防・対策にG-CSF製剤を用いることのメリットが、稀に起こる有害事象である血管炎のデメリットよりも勝るということをConclusitonで結論付けるためのものです。

 

 実際に、腫瘍の種類G-CSF製剤の種類を見ていきましょう。母数はn=57です(57名です)。

 第1位乳がん 27名と圧倒的に多く、第2位は卵巣腫瘍 10名、第3位が子宮がん 7名です。しかし、他にも非小細胞性肺癌(NSCLC)、食道がん膵臓がん、大腸がん(腺癌)、卵管がん、前立腺がん、骨肉腫(骨外性粘液性骨肉腫)、松果体腫と多様です。婦人科系の腫瘍での症例報告が多いというのも納得ですが、化学療法で好中球減少症がみられやすいレジメンを使っているなどの他の要素も考えてみる必要もありそうです。

 

 次にG-CSF製剤の種類を見ていきましょう。

 第1位ペグフィルグラスチム(pegfilgrastim) 36名で圧倒的に多く、第2位はフィルグラスチム(Filgrastim) 11名でした。他にもG-CSF製剤のうち種類が特定できない報告、レノグラスチム(Lenograstim)やリペグフィルグラスチム(Lipegfilgrastim)の報告もあります。

 

2-2.本当の好発は? ペグフィルグラスチムが鍵?

 症例報告等の患者数からすれば、耳学問的な「婦人科系の腫瘍に多い」や「ペグフィルグラスチムで多い」というのは納得です。G-CSF製剤を必要とするレジメンが他の腫瘍で増えれば、また異なってくるような印象もあり、分母が「G-CSF製剤を投与された人全体」(G-CSF製剤投与数の多い癌で絶対数も多い)なのか、「G-CSF製剤を投与された〇〇癌の人」(〇〇癌の時に罹患率が多い)なのか、「分母をG-CSFを投与された男性全員、女性全員で分ける」(同じ数のG-CSFを投与されている同数の男女ではどちらに多いか)で罹患率も変わってきそうです。

 

 G-CSF製剤のペグフィルグラスチムで血管炎が多いというのは、ペグフィルグラスチムを使うことが多いのがちょうど乳がんや子宮がんであったということでしょうか。好中球減少やFNでG-CSFを用いるとしても、そもそも婦人科系腫瘍よりも血液腫瘍のレジメンの方が好中球減少症やFNそのものは多いと考えられます。

※追記: 日本癌治療学会のがん診療ガイドライン(下記)に各腫瘍のレジメンごとのFN発生率の記載があります。

http://www.jsco-cpg.jp/guideline/30.html#g03

 

 タキサン系が多いというのであれば、肺癌などの他の腫瘍のレジメンでも使うことがありそうなので、タキサン系というのはあまりピンときません。女性に多いというのも乳がんや子宮がんが多いことの影響でしょうか。

 各種G-CSF製剤の用い方がヒントになると思い、保険適応について調べてみました。次のようなものがあります。

 造血幹細胞の末梢血中への動員,造血幹細胞移植時の好中球数の増加促進,白血病・固形腫瘍に対する化学療法による好中球減少症などのがん治療で使用する各G-CSF 製剤の投与量・投与法はその病態や対象疾患によって大きく異なり,注意が必要である。

 国内で保険承認を得たG-CSF は,フィルグラスチム,レノグラスチム,ナルトグラスチムの3 種類の遺伝子組み換えヒトG-CSF 製剤と最近保険承認されたフィルグラスチムバイオシミラー,ペグフィルグラスチムがある。NCCN ガイドラインに準じて,末梢血造血幹細胞移植時の末梢血幹細胞の動員,造血細胞移植後の好中球の増加促進,化学療法による好中球減少症(造血器腫瘍および固形腫瘍),骨髄異形成症候群に対して,それぞれの用法用量に従い投与される。

(出典)日本癌治療学会>がん診療ガイドライン>G-CSF適正使用>8. 投与量・投与法(保険診療

http://www.jsco-cpg.jp/guideline/30.html#g08

 

 上記出典から、実際にがん治療におけるG-CSFの保険適応の表も確認してみると、高額なペグフィルグラスチムは発熱性好中球減少症(FN)のみの記載であるのに対し、

他のG-CSF製剤は、造血幹細胞の末梢血液中への動員、造血幹細胞移植時の好中球数(ANC)の増加促進、がん化学療法による好中球減少症、骨髄異形成症候群に伴う好中球減少症と効能・効果、適応疾患が異なるように感じました。

 

 また、ペグフィルグラスチムには次のような特徴があります。

 

 ペグフィルグラスチムは,G-CSF であるフィルグラスチムのN 末端にポリエチレングリコール(polyethylene glycol: PEG)を化学的に結合させ,血中消失半減期を長期化した持続型製剤である。2 週毎または3 週毎投与レジメンの抗がん薬投与終了から24 時間以上経過したタイミングで、皮下注射により、1 サイクルあたり1 回のみ投与される。2002 年に米国および欧州で承認され,わが国でも、2014 年9 月に、「がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制」の効能効果で承認された。

(出典)日本癌治療学会>がん診療ガイドライン>G-CSF適正使用>10.ペグフィルグラスチム 

http://www.jsco-cpg.jp/guideline/30.html#g10

 

 ペグフィルグラスチムが持続型製剤である点や投与方法(皮下)にもヒントがあるかもしれません。しかし、これでも正解の理由は分からず、実際に各種G-CSF製剤の使い方(〇〇がんでは△△のG-CSF製剤をよく用いるなど)を各科の専門家に聞いてみたいものです。



2-3.Clinical manifestations/臨床像

 次に、さきほどのReviewで他の臨床像を追っていきたいと思います。

 

性差/年齢など

  • 男女比: 男性 9%、女性 91%
  • 平均年齢: 60歳(40-77歳)
  • レジメン: タキサン系レジメン(40%)、タキサン系以外(10%)、情報なし(50%)
  • 再発患者4名: 3名は同一製剤、1名はペグフィルグラスチン→フィルグラスチム

 

症状/所見

  • 発症はG-CSF製剤の最終投与から日単位(”days”)(中間値 7日)であった
  • ほとんどの症例で診断時に発熱を認めた
  • 診断時に画像診断学的所見のみであったのが3%
  • G-CSF初回投与時ならびに複数回投与後のいずれの症例もある
  • 心筋炎や大動脈解離(Stanford B型)がみられた症例も1名ずつあり

(出典)Future Oncol. 2021 Nov;17(33):4619-4634. doi: 10.2217/fon-2021-0701. Epub 2021 Aug 25.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 また、Table3に炎症マーカーとして白血球数、好中球数、CRP、IL-6、PCT、LDH、ESRもまとめてありました。No Dataのものも多くありますが、参考程度に平均値中央値も出してみました。

 

  • 白血球数 16976/μL (中央値12265, n=33)
  • 好中球数 13388/μL (中央値14098, n=12)
  • CRP 23.95 mg/dL (中央値24.41, n=39)
  • IL-6 190.2 pg/mL (中央値241, n=3)
  • PCT 0.845 ng/mL (中央値0.18, n=11)
  • LDH 300.1 U/L (中央値189, n=4)
  • ESR 106.5 mm/h* (中央値117, n=15)

*ESRの平均値は>140のデータ2つを除外して算出

 

 母数が10程度以下の検査結果は参考になるのかも怪しく感じます。それでも、白血球数好中球数CRPIL-6あたりは上がる(炎症があると言えば当たり前ではあるものの…)とはいえそうです。詳しくは論文のTable3をご確認ください。

 

 病変の血管部位(involvment vessels)についても見てみます。大動脈に関連するものやその他多いものをTable2より探してみます。大動脈は大動脈弓から腹部大動脈までのどこかに病変のあるものとしてカウントします。

 

  • 大動脈(aorta) 54名/57名(95%)
  • 頸動脈(CA) 13名/57名(23%) ー総頸動脈(common carotid artery: CCA)  12名/57名(21%)

 

 大動脈に病変が認められるものが大半でした。大動脈に関しては”Aorta”とのみ記載の症例も多く、部位ごとに分けることは難しそうなのでここまでとしました。詳しい記載としては大動脈弓胸部大動脈も、胸部大動脈から腹部大動脈までもありました。中には、大動脈弓から鎖骨下動脈(subclavian artery: SCA)までというものまでありました。

 大動脈以外で多いのは総頚動脈で、頸動脈という記載のみのものが1件ありました。大動脈に病変がなかったものは3例で、そのいずれにも総頚動脈に病変がありました。

 

 血管炎の中でも大血管炎といった印象です。そうすると、はっきりとした臓器障害よりもGCAやPANのような発熱やはっきりとしない症状というのが多くなってきそうです。

 

 今回は表を理由に先述の論文を持ってきましたが、他のReview Articleにて症状を深掘りしました。

 

<症状>(重複あり)

  • 発熱: 85.7%
  • 疼痛(腰痛、胸痛、腹痛): 40.8%
  • 無症状: 8.2%

 

<大動脈炎の部位>

  • 胸部大動脈: 71.4%
  • 腹部大動脈: 2.0%
  • 腹部大動脈のみ: 26.5%

(出典)Cancer Treat Res Commun. 2021;29:100454. doi: 10.1016/j.ctarc.2021.100454. Epub 2021 Sep 12.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 血管炎の炎症部位に関しては大動脈以外に関してはやはり、大血管炎らしいように感じます。他にも、女性が多かったり(90%以上)平均年齢が60歳程度であったり、G-CSF製剤投与から発症までの日数も10日未満が多かったり、タキサン系のレジメンが多かったりと似たような結果を示しています。

 先ほどの論文と比べて、ステロイドで治療した人とそうでない人での比較もある点が、この論文の特徴でしょうか。巨細胞性動脈炎のような自己免疫疾患であれば、おそらくステロイドをはじめとする免疫抑制剤なしには治療できないと思うので、それこそ薬剤性の特徴であるとも思います。他にも、報告の地域ごとの集計もありました。

 

  • 2014年の報告以降、アジア諸国からの報告が37例と最も多く(75.5%)、うち日本からの報告が31例、韓国からの報告が6例である。

(出典)Cancer Treat Res Commun. 2021;29:100454. doi: 10.1016/j.ctarc.2021.100454. Epub 2021 Sep 12.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34530312/

 

 欧米からの報告よりも多いということは、おそらく日本で多いと言うことができる支えのひとつにはなりそうです。一方で、そもそも日本人が人種としてなりやすいのか、認知されているだけなのか、G-CSF(特にペグフィルグラスチム)を用いるようなレジメンが偶然多いのかというような部分が気になります。もう少しデータが増えたり、後ろ向き研究であれ新たな研究が増えるのが楽しみです。それぞれの論文の詳細に興味のある方は、2つのsystematic literature reviewに是非アクセスしてみてください。

 

<画像所見>

 G-CSF製剤による血管炎を探している際に、病変の画像所見にも出会いました。画像所見(CTによる大動脈壁肥厚所見、PET-CT)を具体的に見てみたい人は下記の文献もしくは、ご検索ください。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov



3.鑑別疾患/除外すべき疾患 ~診断の流れ~

 大血管炎ということが文献から掴めてきました。年齢性別病歴(G-CSF製剤の投与)からも違いはありますが、巨細胞性動脈炎(GCA高安病のような大血管炎結節性多発動脈炎(PAN)のような中血管炎があります。G-CSF製剤による薬剤性血管炎を疑った際の鑑別疾患や除外すべき疾患について深掘りしてみたいと思います。

 

 特異的な症状や臓器障害がないときの鑑別疾患として大血管炎が挙がりそうですが、それだけとはいかないので鑑別についても、読み進めてみました。

 

正確に診断するために

f:id:mk-med:20220312082011j:plain

  • 特異的な症状のみられない血管炎の原因は様々であり、感染症(例: 梅毒、結核、ウイルス性肝炎)、自己免疫疾患/膠原病、傍腫瘍症候群などが挙げられる。
  • 他の原因を除外するために血液培養や血清学的検査、自己抗体の検査を必要に応じて行い、陰性もしくは抗菌薬治療に反応しない場合は薬剤性を考慮する
  • 薬剤性の原因を慎重に調べることが必要があり、Naranjo Scale(もしくはNaranjo algorithm)が広く用いられている

(出典)Future Oncol. 2021 Nov;17(33):4619-4634. doi: 10.2217/fon-2021-0701. Epub 2021 Aug 25.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 診断の過程を1枚のスライドにしたかったので少しビジーなスライドになってしまいました。

 薬剤性血管炎(薬剤誘発性血管炎)を疑うにしても、まずは危ないもの除外しておくというようにも認識しました。大血管炎でもGCAのような膠原病であれば、ステロイドをはじめとする治療が必要ですし、感染症であればステロイドで悪化することが考えられます。薬剤性では、薬をやめるだけで治ることもあるので、治療方針も変わってきますね。

 また、薬剤性でもタキサン系抗がん剤薬剤性血管炎の例として挙げられているのが、またどちらかややこしいとも感じました。

 

 Naranjo Scaleに関しては、PubMedだけでなくGoogleで検索すればたくさんでてきました。薬による有害事象の可能性を質問項目から点数付けし、そのスコアから推測する方法です。下記のような文献もよろしければご覧ください。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 また、Wikipediaでも記載があるようです。上記の文献だけでなく、Naranjo Scaleを特定の状況ごとに調べている論文もありました。興味のある方は調べてみてください。

 

 G-CSFによる血管炎について、楽しく調べることができました。本日もお読みくださり、ありがとうございました。

"Med-Hobbyist" 医学の趣味人のアウトプット日記 へ

"Med-Hobbyist" 医学の趣味人のアウトプット日記

ブログ名変更のお知らせ

 

当ブログをご覧くださっている皆様へ

 いつも、当ブログをご覧くださり誠にありがとうございます。このたび、当ブログの名前を「"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記」に変更することにいたしました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

<目次>

 

1.変更のきっかけ

 今まで抽象的なゴールはありました。しかし、どう具体的にかたちにしていくのか、考えても試す方法は思い浮かばず、迷ったり、そのゴールの解像度は低いまま…。
 先日、リラックスした際にぼんやりとしたアイデアが突然思い浮かびました。そしてその後の様々な「ご縁」から、天からふと降ってきたかのように、次への移行に向けて行動に移せるような具体的なイメージにすることができました。

 様々な「ご縁」とは、人だけではなく、この日、この時、この場所でこのようなことをしたという偶然の重なりです。徹夜後の昼下がり、さらには夕方を過ぎても興奮を覚えた「これ」をかたちに近づけて行こうと思います。

f:id:mk-med:20220309191247j:plain

 

 その移行に向けて、当ブログの名前も「医学生からはじめる アウトプット日記」より「"Med-Hobbyist" 医学の趣味人 アウトプット日記」へ変更することに致しました。

 

 

2.変更後のコンセプト

 新たに、”Med-Hobbyist”という名の医学の趣味人という通り、好きにこだわる趣味人のように、枠にとらわれない趣味人のように、そして私の趣味のひとつである漂う旅人のように。

 今までのまとめやすいものをまとめて記事にするだけでなく、疑問を投げかけるような記事も、他の人とのコラボやパートナーシップによる記事も、もっと短く趣味でも読みやすい記事も、投稿していこうと思います。

 記事のストックもあるため、しばらくはそのままですが、最近の1万文字超えを週1ではない形態も考えています。2次文献や論文を読んだりするだけで良いものを、わざわざストーリーを考えて、調べてみたいと思った内容の前後に基本的なことや終わりになりそうなことを考えて追加し記事としての体裁を整えることに少し疲れたのかもしれません。勉強会運営と異なり、個人のスキマ時間に書けることが最大のメリットでもありますが、スキマ時間に加え、空いている時間を使いすぎるデメリットにもなってしまったようにも感じます。

 そして、ここにこだわらず、趣味として何かを新たに誕生させていこうと思います。

 

Facebook上でのブログ記事のお知らせの削減~

 今まではFacebookをチェックする理由があり、ついでもあって投稿更新をアナウンスしてきましたが、徐々に減らしていく予定です。思い出したときにブログを見に来てもらえれば幸いです。

 Facebookでは在学中(高学年になる前)にFacebook上で学内の上下関係で嫌なことがあり、毎日2回程度は必ず「通知をチェックする」というのに取りつかれていました。FB投稿のコメントで上下関係にある方が私に話をしてくださったのですが、通知を見ておらず数日後に連絡が来た際に「返信がないのはOK」と勘違いされて話が進んでおり、後ろに戻れない状態になっていたというのがありました。それ以降、FBゆえの人間関係(リアルの関係とは異なり、FBだけの関係の人は困った時には特に助けてくれない・一緒に何かを立ち上げるほどのことはないのに、プライベートとプライベートにはつながらない職場関係が交錯する複雑な関係)に疲れてしまいました。特に職場関係的な方での先ほどの出来事もあり、チェックを維持させてきました。しかし、それを維持するよりもFacebook上に予めお断りを自己紹介欄に書いておくことでFacebook週に数日チェックする程度に減らそうと考えています。

 FBのチェックを減らす他の理由もあります。FBの通知をチェックすると、気が弱いせいか表示されてくる様々な方の投稿を閲覧してしまいます。他のSNSと比較して、Facebook上のアルゴリズムのせいなのか、世間の風潮、投稿の傾向なのか、フォローしている人の割合や傾向なのか分かりませんが、先生方の本・記事や論文のURL、学びのあるコンテンツ・イベントのシェアよりも、つながりのない人の顔写真と「内容はどこ?」程度の開催報告や食事程度の投稿が増えた(卒業や入学、お祝いのようなハレや身近な人の報告は嬉しい限りですが、相対的に少ない)ように感じています。

 また、誕生日のお祝いメッセージの件もありました。どなたからでも誕生日メッセージを頂くことはとても嬉しく、誕生日には通知に気を取られたり、返信に時間を取られても返信しようと思っていました。しかし、「誕生日おめでとう」ぐらいのメッセージを送ってくださった方と話した時に、その人はFacebookの通知で機械的にメッセージを送っている方(以下、"誕生日おじさん")でした。その方と話をして返信のメッセージを真剣に考えることへの葛藤も生まれました。誕生日おじさんレベルのメッセージにはいいねでいいかなというような、Facebookという場所への適当になるという意味での適合と、返信しないと失礼かなという仕事等の関係の複雑な絡みに疲れを感じていました。

 そして何より職場関係での面倒もありFBに個人的な近況をFBへアップしない友人も増え、クローズドなテキスト・トークでの近況報告・お話が増えております。発信用に残しつつも、気のおけない仲間感情に素直な、深くつっこんだ会話をする時間にまわしていきたいと思います。

 

 

 ニュースがコロナ一色でなくなったと思いきや、ウクライナ侵攻という悲しいニュースが増えましたね。
 1週間前の"NO WAR"から、徐々に認知戦になりつつあると感じています。SNS等を通じて、自らの正当性と相手の不当性を事実として人間の認知に刷り込んでいく戦いです。そのような中、例えば、自分の意志で援助をしに来た人が被害にあったというような情報から、「〇〇が悪い、だから、〇〇を倒すために戦いをすべきだ」というプロパガンダにならないことを願うばかりです。二者一択だけではありません。いくらロシアがウクライナに侵攻したという枠を外すことはできないにしても、ウクライナの味方(例: 日本でウクライナの国旗を挙げない)をしないことが必ずしも悪でも、「ロシア」と関連のある物事(例: 料理や大学提携など)が全て悪でもありません。情動的な情報活動だけでなく、当事者ではない両方の話を聞きながら広い視点で見ていきたいし、戦争が終わるように、終わった後の支援ができるようにと思います。もちろん、どちらの情報にも「嘘」も「本当」もあります。いくら事実であっても、それを戦争継続のために使わないでほしいと願っています。
 多くの場合、戦争で利益を得る人がいる。そういう人はほんの一握り。多くは被害を受ける人なのだから。

 

 

 何か、心温まるような情報発信や、ゆるゆるとしたものもできればと思います。何かぼんやりとテーマだけでも思いついたから、書いてみてほしいというようなDMはじめ、お待ちしております。

 今後ともよろしくお願い致します。

116A35 医師国家試験 ~irAEの概要・ニボルマブ×肺癌のirAE、PD-1阻害薬の機序~

116A35 医師国家試験

免疫チェックポイント阻害薬免疫関連有害事象(irAE)

 ニボルマブ(PD-1阻害薬)のirAEや機序についての深堀りまで

 

<目次>

 

 

 前回の116A53(緑膿菌による肺炎)を扱った記事はアツくなりすぎました(笑)今回は、もう少し読みやすい文章量・内容のものを扱いたいと思います。「irAEは普通にあるけど、国試ではまだ前面に出てこないね」ということで、この問題も友人と話題となった問題です。問題そのものは内分泌代謝の知識で解くことができますが、せっかくなのでこういう時に学びを深めるというような部分を感じてもらえれば幸いです。

※4は興味の赴くままに近いので、1~3をお読みくだされば幸いです。興味を持ち、さらに先へ読み進めたいと感じた際に4もお読みいただければ幸いです。

 

1.問題文 116A35

 さっそく、問題から解いてみましょう(解説は2へ)

<116A35>

 52歳の男性. 全身倦怠感を主訴に来院した. 6週間前に進行肺腺癌と診断され, 3週間前に免疫チェックポイント阻害薬による初回治療を受けた. 全身倦怠感が出現したため受診した. 意識は清明であるが受け答えは緩慢である. 体温 36.8℃. 脈拍 108/分, 整. 血圧 72/50 mmHg. 呼吸数20/分. SpO2 97%(room air). 軽度腫大した甲状腺を触知する. 血液所見: 赤血球320万/μL, Hb 12.0 g/dL, Ht 38%. 血液生化学所見: 血糖 104 mg/dL, TSH 0.1 μU/mL(基準0.2~4.0), ACTH 2.0 pg/mL(基準60以下), FT4 1.8 ng/dL(基準0.8~2.2), コルチゾール0.1 μg/dL(基準5.2~12.6)であった. 胸部エックス線写真で原発巣の縮小を認める. 甲状腺超音波検査では軽度の甲状腺腫大以外は異常を認めない. 

 

 治療として適切なのはどれか. 

 

a. 赤血球輸血

b. インスリン投与

c. 殺細胞性抗癌薬投与

d. 甲状腺ホルモン投与

e. 副腎皮質ステロイド投与

 

 

2.解説・回答

 今回は正答率もとても高いようなので、さらりと解説します。本当は免疫チェックポイント阻害薬というのがキーワードだと思いますが、国家試験では親切に内分泌のTSHやT4、ACTHやコルチゾールの検査値が提示されています。ACTHやコルチゾールが低値ということ、腫瘍の原発層の縮小ということまで親切に書いてあります。肺癌で多い腫瘍随伴症候群や腫瘍の悪化を考えるよりも、検査結果から下垂体機能不全からの副腎不全で選択肢eのステロイドを選ぶことになると思います。

 

正解選択肢: e(副腎皮質ステロイド投与)



3.少し深掘りしてみる

 実際に問題を解く際に、甲状腺腫大が見られる点にも注目しました。「これ、何だろう?」と思っている人もいると思います。おそらくですが、免疫チェックポイント阻害剤による有害事象(副作用)として、免疫関連有害事象(irAE)にて1つの線にできるのではないかと思います。今回は、そのirAEについて下記の2点に分けて深掘りしてみようと思います。

 

  • irAEの概要と問題解説

 

4以降でさらに興味の赴くままでに次のことも深掘りします。

  • 具体的なirAEの疫学: 非小細胞性肺癌×ニボルマブ
  • irAEと治療効果、免疫学(機序)の振り返り



3-1.irAEの概要と解説

 まずは、免疫関連有害事象immune-related adverse events: irAE)とは何かについてから調べていきたいと思います。同時期の朝倉内科学(11版)、さらにはハリソン内科学(第5版)の索引にも記載がありませんでした。ハリソンも翻訳に時間がかかっているからでしょうか。ガイドラインを参考にします。

 

 まずは、定義に当たる部分から調べてみます。

 免疫チェックポイントは免疫反応の恒常性維持に関与しており、自己抗原に対する末梢性免疫寛容の成立とその破綻の結果生じる自己免疫疾患の発症に深く関わっている。そのため、CTLA-4やPD-1などのco-inhibitory moleculesをブロックする抗体である免疫チェックポイント阻害薬では、免疫の調節が正常に機能せず、自己免疫疾患・炎症性疾患様の副作用が出現することがある。これらの免疫に関与した副作用は免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれている。

(出典)がん免疫療法ガイドライン, 公益社団法人日本臨床腫瘍学会(編), 2019

 

 要するに、免疫関連有害事象とは、免疫チェックポイント阻害薬(例: PD-1阻害薬)によって免疫の調節が崩れたことによる自己免疫疾患・炎症性疾患様の副作用ということですね。

 免疫学的なことを復習すれば、CTLA-4やPD-1といった免疫チェックポイント分子は、T cellの免疫調節の話のところで学んだと思います。興味があれば、免疫について深掘りしてみるのも楽しいと思います。

 

 今回の症例で見られている症状や検査所見をひとつの線でつなぐために、このirAEにてどのような障害がみられるかを具体的に見ていこうと思います。

 

表1.免疫関連有害事象のまとめ

分類

有害事象の種類

皮膚障害

皮疹、白斑、乾癬

肺障害

間質性肺炎

肝・胆・膵障害

肝障害、高アミラーゼ血症、高リパーゼ血症、自己免疫性肝炎、胆管炎

胃腸障害

下痢、腸炎、悪心、嘔吐、腸穿孔

心血管系障害

心筋炎、血管炎

腎障害

自己免疫性糸球体腎炎、間質性腎炎

神経・筋・関節障害

自己免疫性脳炎、無菌性髄膜炎、脊髄炎、脱髄性ニューロパチー(ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性ニューロパチー)、重症筋無力症、筋炎、リウマチ性多発筋痛症、関節炎

内分泌障害

甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、副腎機能障害、下垂体不全、1型糖尿病、低血圧症、脱水、低Na血症、高K血症

眼障害

ぶどう膜炎、結膜炎、上強膜炎

その他

血小板減少、血友病A、無顆粒球症、溶血性貧血、血球貪食症候群、サイトカイン放出症候群(CRS)、インフュージョンリアクション

  • irAEは、皮膚、消化管、肝臓、肺、内分泌器に比較的多く生じることが知られているほか、腎臓や神経、筋、眼などにも生じうることが報告されている
  • irAEは理論上、全身のどこにでも生じうる

(出典)がん免疫療法ガイドライン, 公益社団法人日本臨床腫瘍学会(編), 2019

 

 免疫の調節が崩れることで自己免疫疾患や炎症性疾患様の状態となることを考えれば、全身どこに生じても納得です。一方で、irAEを疑うためにも、irAEで障害されやすい臓器・病態、特徴的な臨床像などが分かれば、irAEを想起しやすいようにも思います。まずは、irAEの全体像として次のようなことをまずは知っておけばいいと感じます。

 

  • 免疫チェックポイント阻害薬による副作用
  • 自己免疫自己炎症性疾患 →皮膚、消化管、肝臓、肺、内分泌器に比較的多い

 

 とりわけ、自己免疫疾患や炎症性疾患に似ていると考えれば、全身どこでも生じることや多発部位にもイメージが湧きそうです。

 そして、今回の症例(116A35)下垂体不全であったと想像がつきます。また、甲状腺の腫大もirAEであったとも考えれば、甲状腺の炎症(甲状腺炎)により組織が破壊されたりすることで軽度に甲状腺ホルモン(FT4)が上昇しており、フィードバックもしくは下垂体不全によってTSHは低値であったとも考えられます。副腎不全と甲状腺腫大も一つの線で繋ぐことができると思います。

 

 問題の背景を理解していると、より問題の理解が深まり、応用がしやすくなると思います。次は、国試範囲を大きく超えて、深掘りしてみようと思います(興味がある方は読み進めてください)。

 免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)ついてのReview Articleが、New England Journal of Medicine (NEJM)にもありました。普段、上手にReviewを見つけることができれば、日本語のガイドラインよりも、Review Articleの方がオンラインでアクセスできるので、アクセスがいいかもしれません。参考までにリンクを貼っておきます。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov



4.さらに深掘りする

 3でirAEの基本的な概要について少し調べてみました。ここから先は、本領発揮ということで調べていきたいと思います。まずは、先ほどの続きから行きたいと思います。

 

4ー1.具体的なirAEの疫学: 非小細胞性肺癌×ニボルマブ

 免疫チェックポイント阻害薬にも、CTLA-4阻害薬(例: イピリムマブ)、PD-1阻害薬(例: ニボルマブ)、PD-L1阻害薬(例: アテゾリズマブ)というように複数あります。適応となる腫瘍も様々です。

 そこで、今回の症例(116A35)に近い状況のirAEについて、詳しい状況を仮定しつつ深掘りして具体的な有害事象の疫学をチェックしてみようと思います。肺癌といっても、組織が扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌など様々です。今回は、治療方法を考える際に用いる分類の小細胞癌と非小細胞癌の分類のうち、疫学的にも多い非小細胞癌に絞って具体的に探してみようと思います。

 また、免疫チェックポイント阻害薬もPD-1阻害薬のニボルマブやペムブロリズマブ、PD-L1阻害薬のアテゾリズマブ、デュルバルマブというように様々です。ここでは、有名なニボルマブに絞って調べてみようと思います。

 

 ということで、非小細胞肺癌(NSCLC)におけるニボルマブ投与時のirAEの具体的な発生率の載った文献を探してみました。

 

f:id:mk-med:20220302142001j:plain

(出典)JAMA Oncol. 2018 Mar 1;4(3):374-378. doi: 10.1001/jamaoncol.2017.2925.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 Stage IIIBまたはstage IVの非小細胞肺癌(non-small cell lung cance: NSCLC)または再発性のNSCLCに対してニボルマブを用いた患者134名におけるコホート研究です。Supplementに書いてあるのですが、日本国内の大学病院ならびに市中病院におけるもので、患者さんの状況がとても似ていると思います。

 

 有害事象(adverse events: AE)について具体的にみていきましょう。表を見て、そのまま楽しめる方は、読み飛ばしてください

 有害事象の全体像から見ていきます。何らかの有害事象を認めた割合は51%で約半分です。発症までの中間値は4.1週です。

 皮膚病変(skin)を32%で認め、臓器別で最多です。約3分の1で認めるのでとても一般的と言えます。発疹(rash)を25%で認め、掻痒(pruritus)を12%で認め、白斑(vitiligo)を1%で認めています。

 肺炎(pneumonitis)を4%で認めています。Grade4まで増悪する可能性も含め、チェックは必要でしょう。間質性肺炎とは書かれていませんが、ほぼ同義になってくると思います。

 内分泌障害(endocrine)を8%で認めています。内分泌障害も少なくはありません。甲状腺炎/甲状腺機能低下症(thyroiditis/hypothyroidism)を7%で認め、下垂体炎(Hypophysitis)を1%で認めており、特に甲状腺の占める割合が多く、下垂体炎も今回の症例のように副腎不全へとつながる可能性もあり、注意が必要でしょう。また、発症までの中央値も4.6週であり、今回の症例の3週間後というシナリオも理解しやすいように感じます。

 消化管障害(gastrointestinal)は9%で内分泌障害と同程度です。下痢/腸炎(diarrhea/colitis)を7%で認め、粘膜炎(mucositis)を2%で認めています。腸穿孔に至ってしまったような症例はなかったようですが、注意は必要だと思います。

 肝胆道障害(hepatobiliary)は5%で多くはないでしょう。また、発症までの中央値が12.2週と長いことも特徴だと思います。肝炎(hepatitis)を4%で認め、胆管炎を1%で認めました。

 その他は8%で認めました。倦怠感(fatigue)を5%で認め、食欲不振(appetite loss)を2%で認めています。思ったより少ないという印象を受けます。さらに、多関節炎(polyarthritis)や重症筋無力症(myasthenia gravis)を1%でしか認めないことは、驚きでした。免疫をいじっているのに…、という印象でした。

 

 免疫チェックポイント阻害薬の種類や悪性腫瘍の種類、患者像(人種など)によって、irAEも異なってくると思います。ある程度の想像つきますが、具体的な状況になったら、PICO(PECO)を想定するまでいかなくとも、このように調べてみるのも面白いかもしれません。

 この先、他のチェックポイント阻害薬での有害事象を調べてみようとも思ったのですが、この論文との出会いもあったので、次はirAEの有無治療効果について深掘りしてみます。まだ免疫チェックポイント阻害薬のirAEについて知りたいという方は、CTLA-4阻害薬のirAEについてのSystematic Reviewとメタ解析のFree Articleも見つかりました。気になる方は、下記リンクよりご覧ください。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov



4-2.irAEの有無と治療効果

 今まで「irAEがあった方が免疫チェックポイント阻害薬が効いている」というようなことを耳で聞いたことがありました。4-1で紹介した論文は、それをデータとして示している論文という部分にも興味を持ちました。文献のタイトル ”Association of Immune-Related Adverse Events With Nivolumab Efficacy in Non-Small-Cell Lung Cancer” からも明らかですが、実際にこの論文の結果を見てみます。

 

  • irAEsを発症した患者(irAE発症群)の方が、irAEを発症していない患者(irAE非発症群)よりも全奏功率が有意に高く(44例中23例[52.3%]vs. 61例中17例[27.9%], P = .02)、irAEは無増悪生存期間(PFS)(P = .04)と全生存期間(OS)(P = .01)の増加と有意に関連していることが示された。
  • 無増悪生存期間(PFS)の中央値はirAE発症群の方が高く、irAE発症群 9.2ヶ月(95% CI, 4.4 to not reach [NR] )と、irAE非発症群 4.8ヶ月(95% CI, 3.0 to 7.5)(P = .04)であった。
  • 全生存期間(OS)の中央値もirAE群の方が高く、irAE発症群 NR(95% CI, 12.3 to NR)と、irAE非発症群 11.1ヶ月(95% CI, 9.6 to NR)(P = .01)であった。
  • 多変量解析でもirAEは生存期間と正の相関があり、PFSのハザード比は0.525(95%CI, 0.287~0.937; P = .03)、OSは0.282(95%CI, 0.101~0.667; P = .003)であった。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6583041/bin/jamaoncol-4-374-g001.jpg

(出典)JAMA Oncol. 2018 Mar 1;4(3):374-378. doi: 10.1001/jamaoncol.2017.2925.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 生存曲線を見れば、一目瞭然だと思います。irAEのある方が生存期間が長いですね。全生存期間(OS)がirAE発症群はNRですが、12カ月のところで60%ほどに大きく下がっているのも気になります。もう少しでirAE発症群の中央値になりそうですが、数カ月は長そうであるように推測されます。また、無増悪生存期間(PFS)もirAE群の方が長いですね。(※今回の話のテーマとは異なるため、irAEの有無を問わず上記の生存期間を延ばすために免疫チェックポイント阻害薬(医療費)がいくらかかるというような話はしませんが、医療費や日本政府の支出などに興味がある方はぜひ調べてみてください。)

 もちろん、相関関係であり因果関係を示したわけではありません。しかし、免疫学で学んだことを考えれば、PD-1阻害薬の役割やT cellの機能から納得するような形でつなぐことはできると思います。

 次は、少し免疫学を復習してみましょう。

 

 

4-3.PD-1とT細胞 ~免疫学を復習~

 PD-1阻害薬をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬がなぜ効くのかという部分を免疫学から少し復習してみようと思います。

 

・腫瘍は免疫応答を抑制する分子を保有する。ある種の腫瘍に対するT細胞免疫応答が、T細胞における最も明らかにされている2つの抑制経路であるCTLA-4あるいはPD-1(第14章参照)などの抑制系経路によって抑制されていることが実験的に証明されている。CTLA-4の抑制効果の理由は、強力な自然免疫が存在しなくても、すなわちB7コスティミュレーターが低水準な状態であってもAPCが腫瘍抗原を提示するからである。B7コスティミュレーターが少なくてもCTLA-4レセプターが高アフィニティを示すためCTLA-4が抑制効果を示す。T細胞の抑制性レセプターであるPD-1に結合するB7タンパク質であるPD-L1は多くの腫瘍に発現しており(第14章参照)、動物実験ではPD-L1の発現によってT細胞の抗腫瘍免疫が減弱することが示されている。APCに発現したPD-L1はおそらく腫瘍特異的なT細胞活性化の抑制にも関与すると考えられる。

(出典)アバスーリックマンーピレ 分子細胞免疫学 原著第7版, 2014

 

 私の本棚に並んでいたのが少し前の書籍ですが、この書籍が発売されていた当時からこのようなことが言われています。PD-1とPD-L1、CTLA-4とも原理は似ていますが、今回はPD-1阻害薬の部分(PD-1とPD-L1)に絞って、イラストを用いて解説してみようと思います。

 

f:id:mk-med:20220302142823p:plain

T細胞とPD-1阻害薬の機序のイメージ

 

 あくまでイメージ図ですが、T細胞〔例:細胞障害性T細胞〕は本来であれば、異物である腫瘍細胞に対して免疫を発揮します。ところが、腫瘍細胞も対策として、PD-L1を出すことでT細胞からの免疫回避をしようとします。T細胞は、PD-L1→PD-1経由のシグナルによって、T細胞の役目(異物退治)は終わったと誤認し、疲弊(exhaustion)してしまいます。

 T細胞の不要な疲弊を起こさないために、PD-1阻害薬(もしくはPD-L1阻害薬)で、これらが結合してシグナルを送ることを阻害しています。これによってT細胞は元気に走り回ることができるということもできます。

 すると、どうでしょうか。腫瘍に対する効果だけでなく、通常の部分でも同じようにT細胞が活発であるためにirAEが生じると考えることもできます。すると、irAEが見られる方が、腫瘍細胞に対するT細胞の攻撃も強く、免疫チェックポイント阻害薬が腫瘍に効いていると解釈することができます。

 

 もちろん、かなり大雑把な解釈なのでしっかりと免疫学の教科書を読んで理解を深めてほしいものです。そして、理解が深まれば、逆にこのような比喩を用いた理解もできるようになると思います。



5.国試に向けて

 いかがだったでしょうか。おそらく、3のように少し調べたぐらいが国試対策として現実的であると感じた人が多いと思います。一方で、3のように少し調べた程度では物事(今回はirAEについて)がただ羅列されているだけのように感じます。

 余裕があったり、今までのやり方に疑問を感じるようなら、4のようにもっと実臨床に近づけてPICO(PECO)に近づけるような形で具体的に調べてみたり、基礎医学の楽しさまで味わってみたりしながら、好奇心による学習も取り入れてみたら良いと思います。

 

 116A35を通じて、問題の理解を深めるためにぜひ知っておいてほしい部分と、さらに余力と興味があれば深掘りして見てほしい部分の一例を紹介させていただきました。

 

<ぜひ調べてみてほしい部分>

  • 免疫関連有害事象(irAE)の概要

 

<是非深掘りしてみてほしい部分>

  • 免疫チェックポイント阻害薬×腫瘍ごとのirAE特徴
  • 基礎医学(免疫学)臨床医学つながり

 

 もちろん気になるところがあれば、今回のブログ記事からさらに調べることも面白いでしょう。また、他の問題で気軽にチャレンジしてほしいと思います。特に、英語が読めるとNEJMのようなしっかりとしたReview Articleから無料のものまで選択肢が広がると思います。その分野の単語は覚えることになるとは思いますが、結構簡単な英語で書かれているので、食わず嫌いするのはもったいないと思います。

 このように深掘りすると、全然先に進めないという問題に直面すると思います。そういうときには、〇時間もしくは〇〇問という1日のノルマを決めて、その分は従来通り学習して、ノルマの後の余った時間にその日に解いた問題から深掘りしてみるというようなマイルールを設けるとよいと思います。

 

 そして、入試と異なり約9割が合格する資格試験である国試に対して、丸暗記だけではなく楽しみも見出してもらえたらと思います。

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。

 

 

国試シリーズはこちら

mk-med.hatenablog.com

本: 言語が消滅する前に ~人間らしさを取り戻す哲学的対話~

書籍紹介(読書ログ)

『言語が消滅する前に』

國分功一郎千葉雅也(著)

 

<目次>

 

 気がつけば3月。日差しも少し長く、暖かくなってきましたね。今回は、少し筆休め的なブログ記事になります。国試関連は続編を予定しているのですが、前回の医師国家試験関連記事のように短く書くことが難しく、こんなときこそと、読書ログのストック記事より放出しました。良かった本の読書ログになります。

 

1.書籍紹介

 『言語が消滅する前に』というタイトルから内容を想像することは難しいかもしれませんが、平たく言えば表紙にあるような人間らしさについて2名の学者が哲学的対話をする書籍です。どこかの書店で平積みになっていた記憶があり、目にしたことがある方もいるかもしれません。

 

https://m.media-amazon.com/images/I/51XDCOM+6OL.jpg

https://www.amazon.co.jp/dp/B09M5WZYJM/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_V6PE7P6FJACA5JVB1132

 

【こんな人におススメ】
  • 同調圧力に飲み込まれている人
  • 過去に「キモさ」に没入していた人
  • 孤独も楽しんでみたい人
  • 人間らしさをはじめとする哲学的対話に興味がある人

 書籍について説明しながら、もう少し具体的にどのような人におススメかも紹介していきます。

 

書籍のインプレッション

 まずはタイトルからです。書籍のタイトルをみてもピンと来なくて、ジャンルをみてもAmazon上では「言語学」ということでピンとこない書籍だと思います(笑) 私はAudibleで聴き放題のため、何か書籍を探していたところで偶然見つけた書籍となります。『言語が消滅する前に』というタイトルよりも、表紙のキーワード(情動ポピュリズム完全至上主義エビデンス主義、…)人間らしさを取り戻すためには」というキャッチフレーズの方が、この本の内容を掴みやすいと思います。

 また、2名の学者による哲学的対話ということで読みやすい新書である点がおススメです。例えば、ハンナ・アレントの書籍(例:『人間の条件』)に比べて読みやすく、詳しい書籍を読む前のきっかけになればと思います。あくまで新書であり、すでに詳しい本を読んでいる人にはそこまでおすすめではありませんが、筆休めのような感じで読んでみたいときにいかがでしょうか。特にAudibleで耳から筆休めのように聴いたため、通常の読書とは異なる体験となったかもしれません。

 

書籍で興味を持ったところ

 この書籍を聴いてみて気になったところを紹介します。

 まず、読者層の想定として、大学の飲み会でうぇーい、うぇーいと騒いでいることに何か違和感を感じているような人を例に挙げつつ、同調圧力に飲み込まれてしまっている人や、「キモさ」(おそらく良くも悪くもを問わずエッジが効いたこと)に没入していた人を読者に想定しています。逆に「キモさ」に自覚のない人は読者として想定していないそうです。

 そういう意味では、同調圧力に違和感を感じていて、それに対して何かアクションしてみたい人や、すでに1周まわって、大学や職場で「私は周りとは違うことしている」という認識をすることができるが、周りにも合わせることができる様々な意味でエッジの効いた人とも言えます。前者であれば、同調圧力に負けずにズレてみて、いったん「キモく」なった後に、それを操作可能(自らオン・オフできるよう)になるヒントとなることを目的として書かれています。しかも、ユーモアとアイロニー込みで説明されています。

 

 内容としては、目次を読んでいただくと分かる部分もありますが、興味深い論説もあります。勉強の哲学について、別の言葉を使えるようになることであるとか、私淑からも学ぶことであるとかいうお話があります。

 ムラ的コミュニケーションのお話もインターネットの開けたイメージから意外性もあり、興味を持ちました。コミュニケーションという言葉の意味する/付与するものが、20-30年前の「発表して伝える」という主旨から「空気を読んで人と話をするというノリ」になりつつあるという話があります。さらには、インターネットによってむしろ、ムラ社会的な感性のものが劇的に増えたというお話があります。

 「心の闇」がインターネットのSNS上という見える場所に置かれていることに言及もあり、納得でした。アレントによると「心の闇」とは明るみに出してはいけないものという意味だそうです。これに関しては分かる反面、インターネットによって各個人がSNSという発信する手段を持ったことを痛感しているので、意見の幅や深みとしても参考になりました。

 エビデンス主義による、言葉の価値の低下責任回避の話もありました。エビデンスパラメータが限られていることやメタファーがないことにはついては同意する部分もあります。これはEBMでも同じなんじゃないかなと思います。エビデンスから治療の選択肢は考えるけど、最後はメタファーというか、患者さんのn=1にマッチさせるというように言えそうです。

 講義はコンテンツであるかという問いに関しても、学生の視線や反応、質問等によって話の難易度だけでなく話の展開を含めて変えていくのであれば、単なるコンテンツではないと思います。双方性の講義であれば、単なるコンテンツにはならず、対話の側面を持ってくると思います。一方で、多くのところで受けてきたような反応による変化もなく、「これを覚えて」というような従来からの講義であれば、コンテンツとなり予備校の動画授業コンテンツと競合するのもやむを得ないと考えさせられました。コンテンツ作りをしている身としては、オンデマンドで見ることができるコンテンツは便利なのですが、対話のような部分を仮にオンデマンドでどのように保っていくかという部分に興味を持ちました。AIでどこまで可能であるかも気になります。

 

 他にも、勉強と孤独、孤独と寂しさの違い、権威主義なき権威、ネオリベラリズム、自分の殻といったようなキーワードにも興味のある方にも良いかもしれません。さらっと読む(聴く)ことのできる書籍なので機会があれば手に取ってみてください。

 

 

2.オーディオブック"Audible"について

 今回の『言語が消滅する前に』に出会ったアマゾンのオーディオブック"Audible"は、耳からの読書という新しい体験ができるツールでした。特に今回のような新書(哲学や歴史など)のようなゆるゆると聴くことができる内容小説において、素敵な読書体験となりました。最近、1万5000や1万文字越えの記事(勉強会運営や国試の記事)を書いて読むのに時間を要したという声も聞いたので、可能範囲で分割できるものは分割していきたいと思います。後日、アマゾンAudibleついてもレビューしてみたいと思います。

mk-med.hatenablog.com

 

 

 本日もお読みくださりありがとうございました。